2024.08.19 INTERVIEW

当事者のペインから生まれたLoglass 経営管理

——ログラスの事業内容を教えてください。どのようなサービスを手がけていますか?

布川:ログラスは2019年に創業した経営管理SaaSを提供するスタートアップです。主力の「Loglass 経営管理」のほか、同じLoglassブランドで「人員計画」「販売計画」「IT投資管理」を提供しています。さらに今年から、経営企画業務の一部を代行する「Loglass サクセス パートナー」というBPO・コンサルティングサービスをスタートさせました。現在は大企業を主なターゲットとし、サービスを提供しています。

——経営管理SaaS事業に参入した経緯を教えてください。

布川:きっかけは、私がSMBC日興証券の投資銀行部門を退職し、GameWithの経営戦略室にて経営管理をひとりで担っていたときの体験がベースとなっています。GameWithは創業4年で株式上場を果たしたこともあり、私が入社した直後は、上場会社にふさわしい経営管理体制が整っていませんでした。ゼロから仕組みを作り、なんとか運用可能な管理体制ができたものの、悩みのタネは尽きませんでした。

——どのような悩みがあったのでしょう?

布川:たとえば経営戦略室が予実管理に使うスプレッドシートを「親シート」、各部門の予算担当者が管理するシートを「子シート」とします。当時、親シートに連動する子シートが数十個あり、誰かが子シートを書き換えてしまうと、履歴を追えない状態でした。これではガバナンスを利かせられません。みなさんどうしているのかと思い、経営企画部門やファイナンス部門で働く人のためのFacebookグループを立ち上げ、聞いてみたところ、大きな企業でも私と同じ悩みを抱えている人がいることがわかりました。その後、国内外の経営管理サービスを利用してみたのですが、どうもしっくりくる製品がありません。それなら自分で作ったほうが早いのではないかと思い、経営管理システムの開発を考えはじめました。 

——以前から起業志向があったのですか?

布川:実は大学時代、学生ながら人材系ベンチャーでフルタイム勤務していたころから、ずっと起業に関心がありました。社会に出てからもその気持ちは変わらず、経営管理システム以外の可能性を探った時期もあったのですが、この課題に気づいた自分がサービスを作らなければ、経営企画で働く人たちの悩みは解消されないだろうと思い一念発起して起業しました。

——「しっくりくるサービスがなかった」とおっしゃっていましたが、新規参入の妨げになる障壁があったのでしょうか?

布川:とくにありません。経営管理システムのアメリカの市場規模は約4,000億円といわれるなか、経済規模がアメリカの1/5といわれる日本の市場規模は800億円ほどの市場があってもおかしくないはずです。しかし、いまだ200億円規模に留まっているのは、参入障壁があるからというよりも、エンジニアリングやマーケティング、セールスに一定の資本を投資しサービスを提供する企業が少なかったからだと考えています。市場を分析すればするほど、正しいところに正しく投資をすれば、必ず成功するという確信が高まったので、その可能性に賭けてみることにしました。

強力な経営陣を集めるための秘策

——ログラスの強みはどこにあると思われますか?

布川:プロダクトの質以外の面で申し上げると役員の陣容でしょうね。共同創業者でCTOの坂本龍太はビズリーチやサイバーエージェントでサービスをゼロから立ち上げてきたエンジニアで、技術力もさることながら仲間をインスパイアすることに長けた人物です。また、COOの竹内將人はセキュリティ関連会社の取締役経験者ですし、プロダクトを見ているCBDOの斉藤知明はスタートアップの共同創業経験の持ち主です。ちなみにfreeeやREADYFORでエンジニアとして活躍していたVPoEの伊藤博志は河西さんの新卒時代の同期なんですよね。

河西:そうなんです。奇遇なことにゴールドマン・サックスで同期でした。

——そんなご縁があったんですね。ところで、どうしてこれほどまで優秀な人材を集められたのでしょうか?

布川:採用にコミットし続けたからだと思います。毎朝欠かさず最低1時間、採用に充てると決めていまも実践しているんです。具体的にはFacebookで転職を考えている人はいないか探してみたり、スカウト媒体で見つけた人にスカウトを自ら送ったり、知人や知人のつてで知り合った人に毎朝メッセージを書いたりしています。もはや毎日歯を磨くのと同じ感覚ですね(笑)。その甲斐あって、経営陣の7割はリファラルで獲得できました。もちろん人材エージェントに頼んでもいいのですが、トップが特別な思いを持って声をかけたほうが印象に残るはずですし、心が動くと思うんです。毎日の積み重ねが、ボードメンバーの布陣につながっていると自負しています。

——そもそもAngel Bridgeとログラスの接点はどんなきっかけで生まれたのですか?

河西:3年前のIndustry Co-Creation®(ICC)サミットにいった際、布川さんがピッチイベントに出られていて名刺交換させていただいたのが最初です。それまでは幅広い業界にサービスを提供するHorizontal SaaSは、もう開拓の余地がないくらいやり尽くされていると思っていたのですが、布川さんの話を聞いてこんなに大きな市場が残されたのかと思って興味を惹かれました。

布川:覚えています。その後、しばらく経ってミーティングをすることになり、河西さんのSNSアカウントを拝見していたら、ご友人のなかにぜひ口説き落としたいと思っていた会社社長の名前を見つけたので、ミーティングの議論の後にぜひ紹介してほしいとお願いしました。

河西:そうでした。採用に対する意気込みからもわかる通り、布川さんの経営に対する真摯な姿勢とコミット力の高さをうかがわせる出来事だったので印象に残っています。弁えるべき部分はしっかりと弁えつつ、必要なことはしっかり投資家にリクエストされる姿勢。しかも熱意が伝わってくる。がぜん興味が湧いたのを覚えています。

布川:その節は失礼しました。(笑)

河西:いえいえ(笑)。ちゃんと調べられた上でのご依頼でしたから、逆にうれしいくらいでしたよ。本格的にお付き合いがはじまったのは、今年の2月ごろでしたね。当社のディレクターの八尾が出席した経営者が集まる会に布川さんもいらしていて、シリーズBに向けた実務的なお話が一気に進みました。

布川:はい。個人的には、検討期間がとても短かったのが印象的でした。たしか1カ月半ぐらいでお返事をいただきましたよね。

河西:お話をいただいてから間を置くことなくお返事できたのは、先ほど申し上げた通り、布川さんの着眼点の素晴らしさやビジネスに賭ける熱意に心打たれていたからです。しかも、シリーズBのリード投資家は世界的に著名なSequoia Heritageさんと既存株主のALL STAR SAAS FUNDさんです。VC間の競争も激しくなりそうだったので、いち早く手を挙げました。

人材がハイレベルなAngel Bridgeの魅力

——Angel Bridgeが他のVCと違うところはどんな点ですか?

布川:人材のレベルが間違いなくトップクラスだと思います。河西さんをはじめ、先ほども話に出た八尾さんはもちろん、ほかの方々も含め、これだけ優秀な方がギュッと集まっているファンドはなかなかありません。しかも経歴にたがわず実務レベルが非常に高い。投資検討段階でお送りいただいたディスカッションペーパーを拝見して強く感じました。分析や議論テーマが非常に洗練されていてムダがなかったんです。

河西:何事においてもそうなのですが、Angel Bridgeは、メンバー全員で何度も検討を重ねた上でアウトプットをお出しするが常なので、そこを感じ取っていただけたのはうれしいですね。

布川:その後も、どうしても調べたい競合他社について調査・分析をお願いしたことがあるのですが、即座に「ぜひやらせてください」とおっしゃっていただけたのも印象的でした。投資家の責任範囲の外にあるので断られても仕方ないと思っていたので、正直言って驚きましたね。アウトプットの質は高く、短期間で戦略策定の参考になる貴重な情報と示唆を提供いただけました。投資先を「必ずグロースさせるぞ」という気迫を感じました。

河西:エンタープライズセールスのベストプラクティスやプロダクト多角化戦略についての調査・分析でしたね。すごくやりがいのあるテーマをいただき「われわれが提供できる価値を感じていただくチャンスだ」と思いお引き受けしました。Angel Bridgeにとっても勉強になったので、逆にいいチャンスをいただけたと思っています。

布川:その節は本当にありがとうございました。

リスクを取ったからこそ掴んだ、組織の「勝ちぐせ」

——創業から5年が経ちました。この間、経営者として一番大変だったことを教えてください。

布川:私には、2歳、1歳、0歳の子どもがいるんですが、2人目の子が生まれたときに、仕事と家庭のバランスに悩んだ時期がありました。自分の家族に加え、社員とその家族、投資家のみなさんも含めたらもの凄い数の人生を背負っているわけです。家庭と仕事のどちらかひとつを選ぶのではなく、両立した上で最大のパフォーマンスを発揮するにはどうしたらいいか、悩んでいた時期はそれなりにしんどかったですね。

——どうやって克服を?

布川:妻やメンバーに無理をいって1週間、家庭からも仕事からも離れる時間をもらって何とか持ち直しました。結局変えられるところから変えていくほかないんですよね。いまは、強力な経営チームを構築することができて自分が抱えていた業務の権限移譲が行えていたり、ベビーシッターを利用したり、妻の両親にも家事や育児を手伝ってもらったりしながら、なんとかやりくりしています。家族や会社のみんなには感謝しかありません。

河西:素晴らしい業績の後ろでそんな大変な時期があったんですね。

布川:はい。実はそんなことがあったんです。

——大変な時期を経て今回の資金調達に至ったのですか?

布川:2023年の10月前後のことです。設定した高い目標に対して売上が追いつかず、社内がどんよりした空気に包まれていたちょうどそのころ、米国の著名な機関投資家であるSequoia Heritageさんから「来期の売上を達成できるのであればぜひ投資したい」とオファーをもらい、社内の空気が一変しました。何としても投資を勝ち取るため、売上を着実に積み上げるための戦略を練り「セコイア決戦」と名付け、全社を挙げて取り組みはじめました。しかしその一方でリスクも感じていたんです。

——どんなリスクですか?

布川:売上施策を徹底した際の副作用として考えたのは、カルチャーの希薄化、オペレーションの混乱といった組織崩壊が起こるリスクです。しかし千載一遇のチャンスを逃すわけにはいきません。経営陣と膝を詰めて議論し、もし万全の体制で臨んでダメなら、またゼロから積み上げればいいという結論に達し、あえてリスクを取ることにしました。

河西:それが功を奏して今回の出資につながったわけですね。

布川:そうです。もちろんリカバリープランを考えた上での取り組みでしたが、結果的に事業戦略と関係者の努力が噛み合っていい成果を残すことができました。この決戦を無事乗り切ったことで、会社全体に「勝ちぐせ」がついたように思います。

河西:リスクを取った結果、世界的な投資家を頷かせ、しかも組織の成長も手にしたわけですからね。

布川:そうなんです。以前読んだ、データクラウドのSnowflakeを経営したフランク・スルートマンが書いた「AMP IT UP~最高を超える~」という本にも、基準を上げに上げて組織が壊れそうになったとしても、最後になんとかるというようなことが書かれていたのを思い出し、励みにしました。

日本のGDPにインパクトを与える存在になりたい

——経営者として大事にしているポリシーを教えてください。

布川:子どものころ恩師や親友の死が重なった時期があって、人生は長いようで短いと感じるようになりました。経営哲学というとおこがましいかもしれませんが、その短くて貴重な人生を共に過ごしてくれた社員が、のちに自分の人生を振り返ったときに、ログラスで働いた時間が無駄ではなかったと思ってもらえるような経営を行っていきたいと思っています。まだまだ、経営者として至らない面がありますが、できる限りみなさんと誠心誠意向き合うことをポリシーとしています。

——布川さんはログラスを通じて、どんな社会を実現したいですか?

布川:ログラスは「良い景気を作ろう。」というミッションを掲げ、日々のビジネスに取り組んでいます。多くのみなさんが成長の実感を持って、明るい未来を描けるような社会作りに貢献したいと思っています。具体的にいうと、日本のGDPを押し上げている上位10社にログラスが入っているような状況にしたいですね。

河西:Angel Bridgeも、GDPにインパクトを与えるようなメガベンチャーの創出を目指しているので、とても共感を覚えます。

布川:ありがとうございます。世の中に素晴らしい価値を提供できるような会社であり続けたいと思っています。

——これからAngel Bridgeに期待することは?

布川:河西さん、担当の八尾さんや山口さん、ほかのメンバーのみなさんからは戦略面のサポートに加え事業執行レイヤーの強化、またパートナーの林さんには営業の面で手厚いサポートをいただいているので、今後も引き続きご支援をお願いできたらうれしく思います。

河西:日本経済の再興はスタートアップの成否にかかっています。布川さんがおっしゃったように、ログラスには日本のGDPにインパクトを与えるくらいのスケールになってほしいと願っています。そのための支援なら我々は力を惜しみません。

——最後にスタートアップに興味がある読者にメッセージをお願いします。

布川:スタートアップは数少ない成長分野のひとつです。安定した大企業に飽き足らないのであれば、ぜひThink Bigなスタートアップに挑戦して人生をよりよい方向に変えてほしいですね。もしそれがログラスであればこれに勝る喜びはありません。

2024.08.08 INVESTMENT

2024年8月にペイトナー株式会社(以下ペイトナー社)が、シリーズCラウンドにおいて累計12億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。
ペイトナー社は、フリーランスや個人事業主向けのオンライン2者間ファクタリングサービス、ならびに請求書処理SaaSを提供するスタートアップです。
今回の記事では、Angel Bridgeがペイトナー社に出資した背景について、特にファクタリング業界を取り巻く環境と、ペイトナー社の強みに焦点を当てて解説します。

  1. ファクタリング業界の動向と課題
  2. ペイトナー社の事業概要と強み
  3. 経営陣
  4. おわりに

1.ファクタリング業界の動向と課題

ファクタリングとは、保有する売掛債権をファクタリング事業者に売却し、現金を調達する資金調達方法です。特に資金繰りに課題を抱える中小企業、フリーランス、個人事業主などによく利用されています。通常、入金まで一か月~数か月かかる売掛債権をすぐに現金化できることが特徴になっています。
フリーランス、個人事業主の資金調達方法としては、ファクタリング以外にも消費者金融からの融資と銀行からの無担保フリーローンがありますが、ファクタリングはそれらの方法に対して以下の3つのメリットがあります。

  • 利用金額に総量規制が適用されない
    消費者金融や無担保フリーローンは規制上年収の1/3までしか借入出来ませんが、ファクタリングにはその制限がありません。最大で売掛債権の範囲内での資金調達が可能となっています。
  • ノンリコース型
    ファクタリングの場合、売掛債権が回収不能になった際には利用者はファクタリング事業者に利用金額を支払う義務がありません。
  • 期間に応じて手数料が増えない
    借入の場合は、借入期間に応じて金利の負担額が上昇しますが、ファクタリングの手数料は契約時から変化しません

       

      図1 個人の資金調達方法

      以上の観点からファクタリングは独自価値の高い資金調達手法となっています。
      続いて、より詳しくファクタリングの仕組みについて解説していきます。
      ファクタリングは大きく分けると、「3者間ファクタリング」と「2者間ファクタリング」の2種類があります。

      3者間ファクタリングは、利用者、ファクタリング事業者、取引先企業の3者で契約を結ぶ方法です。取引先の企業も巻き込むため契約に時間がかかる傾向にありますが、売掛金の支払いが取引先の企業から行われ、ファクタリング事業者としては回収の手間や未回収のリスクが減るため、手数料が比較的安めになるケースが一般的です。一方で、利用にあたり取引先企業の調査も必要になり、時間がかかったり、資金繰りが必要なことを取引先に知られてしまうといったデメリットも存在します。

      次に2者間ファクタリングですが、こちらは利用者とファクタリング事業者の2者間で契約を結ぶ方法です。取引先の企業を介さないため、最短即日での入金が可能なケースもあり、早急に資金が必要な場合に適しています。また、取引先の企業に通知がされないため、資金繰りに不安があるなどの懸念を与えなくて済むことがメリットです。しかし、回収リスクが高まる観点から回収リスク分を手数料に含める場合が多いことには注意が必要です。

      図2 3者間ファクタリングと2者間ファクタリングの取引構造(ペイトナー社HPより引用)

      さて、このようなファクタリング市場ですが、今後も大きな成長が見込まれます。主な要因はフリーランス人口の増加です。昨今働き方が多様化する中で、2020年に1,062万人だったフリーランス人口は2022年に1,577万人と2年で1.5倍弱、労働人口全体に占めるフリーランスの割合も22%に上るなど、顕著な増加がみられます。
      フリーランスの平均年収の約7割が年収400万円ほど、さらにアンケートで資金繰りに困った経験があると回答した割合が2割に上ることに鑑みると、柔軟に資金調達が可能なファクタリングサービスに対するニーズは堅調に成長していくことを見て取ることができます。これを踏まえて、Angel Bridgeではファクタリング市場規模はおよそ3,275億円に上ると試算しています。特に建設業や運輸業などは業界構造上、コストを先払いする文化が多く、資金繰りのニーズが高い業界で、ファクタリングに対する需要も大きく存在する業界になっています。

       

      図3 フリーランス・個人事業主向けの業界別ファクタリングの市場規模

      図4 フリーランスの資金調達ニーズ

      また、法規制や原材料高騰による物価高の観点からも追い風が吹いています。
      法規制に関しては、1998年債権譲渡特例法の緩和による2者間ファクタリングの解禁、2020年債権譲渡禁止特約の改正により、債権譲渡禁止特約付きの債権の譲渡も可能になるなど、年々緩和傾向です。加えて、原材料も高騰しており、過去10年で資材価格が5%上昇しています。建設業界や運輸業界など、慣習上立替え金額が多い業界は資金繰りが厳しい状況に陥りやすく、ますます資金調達ニーズが高まる可能性があります。

      図5 ファクタリング業界の動き

      こういった市場環境の変化を受け、ファクタリングを活用した資金調達へのニーズが今後も高まっていくことが予想されます。

      2.ペイトナー社の事業概要と強み

      続いて、ペイトナー社の事業について説明します。

      ペイトナー社は大きく成長が見込まれるファクタリング市場において、フリーランスや個人事業主向けのオンライン2者間ファクタリングサービスを提供しています。特に、もともと対面で行われていた2者間ファクタリングサービスをオンライン化しており、審査の手軽さと現金化までの素早さを実現しています。ペイトナー社では、AIを用いた独自の与信アルゴリズムや審査オペレーションの高度化を強みの源泉として、以下の価値を提供しています。

      1. 最短10分で現金化
      2. 提出書類が少なく、審査が簡単
      3. オンラインで取引が完結し、どこからでも手軽に手続き可能
      4. 手数料が一律10%で分かりやすい料金体系

       

      図6 プロダクトの特徴

      図7 ペイトナー社の競合優位性

      また、従来のファクタリングに比べて、審査が手軽であり、実態の審査時間や利用開始時間も競合他社の1/3と早いことから、利用者にとっても利便性が高く、高いリピート率と満足度を誇っています。また、利用実績が増えることによって信頼性が向上し、認知度も高まるため、より利用者が安心して使用できるという観点でも好循環を生み出せるビジネスモデルとなっています。加えて、マーケティングにおけるエキスパートも数多く在籍しており、業界に適したマーケティングによって、ユーザー数を拡大できており、創業以来、累計取扱件数も右肩上がりに成長し続けております。

      図8 ペイトナーファクタリングの取扱い件数の推移

      さらに、ペイトナー社はこの革新的な手軽さでありながら、未払い率も大手の消費者金融と近い水準に抑えられていることも大きな特徴の一つです。
      この手軽さによってプロダクト利用の障壁を低減し、大量の審査データを解析可能にする。それによって審査の精度がさらに高度化し、未払い率が下がっていく、という好循環を回していくことができます。結果として、ユニットエコノミクスも良好な水準を実現できており、投下する運転資本に対して利回りのよい金融事業のモデルとなっています。

      このように消費者獲得、及び収益性の観点から規模が拡大すればするほどより強固になっていくビジネスモデルを構築でき、成長に拍車がかかる状況を実現できております。

      3.経営陣

      ペイトナー社の経営チームは、全体として高いレベルでの経営や事業の執行ができており、少数精鋭のチームで高い成果を実現しています。

      阪井CEOは大阪教育大学卒業後、新卒でNTTドコモの法人事業部に入社。その後、コイニー(現STORES)でクレジットカードの決済サービス事業のBizDev.として個人事業主や中小規模の顧客を対象に事業を開発するなど、個人事業主、中小規模の顧客を解像度高く理解されています。また、高いビジョンを掲げて、組織を推進していける力も併せ持っています。
      また、野呂COOは 高い論理的思考力や問題解決力を持っており、実現可能性を踏まえて戦略を活動計画へ落とし込む緻密さとそれを実行しきる推進力を持ち合わせています。三浦CTOも、エンジニアとしての経験も豊富なことに加えて、事業開発の経験も持ち合わせるなど事業への理解も高く、希少性の高い人材です。

      現経営陣の三名がそれぞれの強みを持って補完しあい、全体として高いレベルでの経営が実現できており、ペイトナー社の強みの源泉の一つとなっています。

      図9 ペイトナー社の経営チーム

      4.おわりに

      ファクタリング業界は、現金化までの時間や利便性を武器に世界的にも利用者数が増えている領域で、フリーランス、個人事業主向けだけでも3,000億円の潜在市場規模を持つ成長市場です。一方で、いまだ審査に時間がかかる、必要な書類が多くて面倒など、手軽かつ早急に資金を手に入れたいニーズに十分対応ができておらず、ペイトナー社はこうした課題を的確に捉え、顧客から強い支持を得るプロダクトの開発に成功しました。
      また、優れた与信モデルによって未払率を上手くコントロールすることで、良好な水準でのユニットエコノミクスを実現できており、投下資本に対して利回りのよい事業モデルを構築できています。さらに優れたマーケティング人材を擁し、業界に応じた適切なマーケティングを実施することで、高い認知度を実現できており、これまでの利用実績データやAIを活用した与信モデルを活用することで素早い審査を実現し、利用者に対して高い利便性も提供できています。
      結果として、創業6年で累計20万件のファクタリングを取扱い、創業以来右肩上がりの成長を実現できており、リピート率も高く、顧客満足度も高いサービスを実現しています。

      資金繰りは事業や生活に関わる根幹であり、ペイトナー社は金融の観点からフリーランス、個人事業主の方々の日々の悩みを解決しています。そういったニーズの強さを的確にとらえ、ペイトナー社は創業以来、右肩上がりの成長をし続けてきました。今後もより一段と事業を拡大し、大きな成長を遂げていけると弊社も期待しております。

      Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

       

      2024.08.02 INTERVIEW

       

      中堅・中小企業にフォーカスした契約書レビューサービス

      ——リセの事業について聞かせてください。どのような課題を解決する会社ですか?

      藤田:リセを起業するまで、私は弁護士として数々の企業間紛争の解決に従事していました。この経験を踏まえ、立ち上げたサービスが、弁護士の知見とAI技術を掛け合わせた契約書レビューサービスの「LeCHECK(リチェック)」です。LeCHECKが想定する主なユーザーは、弁護士に契約書のレビューを依頼するのが費用の問題から難しい一方、不利な契約が会社に与えるダメージが大きくなりがちな中堅・中小の法務部門のみなさんです。AIの力で中堅・中小企業を不利な契約から守り、正当な企業活動を法的に支えるのが、われわれのミッションです。

      ——法律や契約に関するサービスは参入障壁が高そうに感じます。実際のところはいかがでしょうか?

      藤田:リーガルテック領域にはさまざまなサービスが存在しますが、そのなかでも契約書の内容を精査し、注意すべきポイントを喚起するレビューサービスは、比較的参入障壁が高いサービスといえます。なぜなら、経験豊富な弁護士に依頼するのと同等の品質でレビューがされる必要があるからです。また、LeCHECKは中堅・中小向けに特化したサービスなので、専門の法務組織を持っていることも多い大企業向けのサービス以上のホスピタリティを提供することを意識しています。弁護士クオリティの信頼性に加え、法務知識が不足していても使いこなせるユーザビリティの両面が求められるのも、参入障壁を高くしている要因のひとつといえます。

      ——中堅・中小企業向けサービスならではの難しさはありますか?

      藤田:中堅・中小企業の法務担当者の多くは、他の業務と兼任しているケースが多く、必ずしも契約や法務について詳しい方ばかりではありません。こうした現実を踏まえると、単に確認すべき項目を明示するだけでは機能としては不十分です。指摘すべき項目を網羅するのはもちろん、付帯する関連項目に関しても漏れなく分析を行い、具体的に何をどうすべきかを明示してこそ、中堅・中小企業を支えるサービスだと胸を張れるわけですが、実は言葉で表すより、実現するのはかなり難しいことなんです。

      ——どのような点が難しいのでしょう?

      藤田:LeCHECKはAIを使っていると申し上げましたが、コメント生成にはAIを使わず、指摘すべき問題箇所の抽出と弁護士によるコメントをつき合わせるのに活用しています。注意すべき項目を見つけ、的確なコメントを表示するだけでも大変なのですが、ひとつの項目から分岐を重ね、留意すべき項目を洗い出すだけでなくさらなる分析を行うため、的確なコメントを表示するだけでも計算量は膨大な数に上ります。最初は指摘箇所とコメントのマッチング精度にかなり苦戦を強いられました。仮に8割の精度が出せたとしても、2割外せば契約書レビューの役割を果たしているとはいえません。その点が非常に難しかったですね。

      ——どうやって精度を高めていったのですか?

      藤田:精度を出すには、膨大な数の契約書に基づき学習させつつ、ひたすらチューニングを重ねる以外に方法はありません。満足いくレベルに達するまでには、かなりの時間を要しましたが、その苦労を乗り越えたからこそ、競争優位性を確立できたのも事実です。現在、多くのお客様に喜んでいただけているのは、地道なチューニングの賜物だと考えています。

      プロダクトにフィットした経歴と明確なビジョンに惹かれ投資を決断

      ——Angel Bridgeとの出会いはどのような形ではじまったのでしょうか?

      藤田:2021年の秋だったと思います。Facebook Messengerでご連絡をいただいたのが最初でした。

      河西:そうでしたね。最初、当社のディレクターである八尾からご連絡を差し上げたのですが、ちょうどシリーズAの調達を終えられた直後で、資金需要は当面ないというお話でしたが、それ以来、定期的な意見交換をするようになりました。

      藤田:本格的なお付き合いがはじまったのは、2023年の年明けからですね。その年の夏を目処にシリーズBの資金調達を実施することになり、改めてこちらからご連絡を差し上げてから、頻繁にやりとりするようになりました。

      ——シリーズBに向けて不安だったことは?

      藤田:当時はスタートアップの資金調達市場が芳しくなく、どのような評価を受けるか少し不安はありました。ただ、業績自体は好調でしたし、サービスの品質にも手応えを感じていたので「ここで存在感を示さなければ」という思いに迷いはありませんでした。

      ——藤田さんのお話を聞いていかがでしたか?

      河西:最初にご連絡を差し上げた当時から、リーガルテックは残された数少ない有望なHorizontal SaaS領域だと思っていたので、お声がけしました。そのなかでもとくにリセに着目したのは、18年にわたる弁護士としての勤務経験をお持ちの藤田さんのご経歴に加え、契約書レビューサービスのなかでも中堅・中小企業に特化したサービスという立ち位置に興味を持ったからです。藤田さんは、激務で知られるトップファームでパートナーを務めていたほどの方。しかも4人のお子さんを育てる母親としての顔もお持ちです。そんな方が敢えてスタートアップを創業されたのであれば、魂を込めてプロダクトを開発しているはずですし、必ずや成功されると確信しました。

      ——即断即決だったのですか?

      河西:たまたま、競合となる契約書レビューサービスが大型調達を実施した直後だったので、投資の意思決定において二の足を踏むようなタイミングでもありました。しかし、詳しく見ていくと、顧客ターゲットも異なりますし、サービス設計が非常に的確かつ目指すべき目標についても明確なビジョンを描いていらしたので、投資すること自体に不安や迷いはありませんでした。プロダクト開発の指揮を執っている藤田さんご自身のポテンシャルもさることながら、日本有数の弁護士の方々とも協力関係を築かれており、お金では買えない無形の資産をお持ちです。確信に加えて期待が高まりました。

      藤田:そういっていただけて光栄です。お声がけしてから2カ月足らずでご判断いただけるとは思っていませんでしたから、そのスピード感に驚くと同時に期待の高さを感じずにはいられませんでした。

      経験豊富な弁護士がスタートアップ起業家に転身した理由

      ——改めてお伺いします。そもそもなぜ弁護士からスタートアップ起業家に転身しようと思われたのですか?

      藤田:パートナー時代に、海外のリーガルテック企業から営業を受け、テクノロジーで法曹の世界が変わると確信したのが一番のきっかけでした。せっかく時代が変わるタイミングに立ち会えるなら、変える側に立ちたいと思ったんです。弁護士時代から、中堅・中小企業が置かれている状況をなんとかしたいという思いもありましたから、何としてもこのチャンスをものにしたいと思いました。

      ——飛び込んでみていかがでしたか?

      藤田:テクノロジーについて詳しいわけでもありませんし、起業や経営経験もありませんから、「なぜそんなリスクを冒す必要があるのか」と、心配してくださる方は少なくありませんでした。その一方で、テック領域に詳しい方々や、スタートアップ界隈のみなさんからは「やるならいましかない」といってくださる方が多かったのも確かです。理解者や協力者のみなさんに支えていただきながら、なんとかここまで辿り着けました。

      河西:私もVCというスタートアップを経営しているのでよくわかります。まずやってみなければ状況を変えられませんからね。

      藤田:そうですね。朝令暮改を恐れず、状況に応じて常に見直しを図る気持ちがなければスタートアップの経営はできません。数々の失敗を繰り返してようやくその境地に達することができたように思います。

      事業戦略への的確な助言と公私にわたる交流が支えに

      ——その後、Angel Bridgeからはどのような支援を受けていますか?

      藤田:主に事業戦略について相談に乗っていただく機会が多いですね。自社の状況とビジネスを取り巻く環境を踏まえ、いまアクセルを踏むべきか、それともいったんブレーキを踏むべきか判断するにあたっては、できるだけご意見を頂戴するようにしています。Angel Bridgeさんには河西さんを筆頭にプロフェッショナルファーム出身の方々が揃っており、当然のことながらスタートアップ投資経験も豊富です。しかもご相談しやすいよう気遣ってもいただけるので、その点でとても助かっています。

      ——Angel Bridgeの特徴を感じることはありますか?

      藤田:Angel Bridgeさんは、より身近な存在ですね。おそらく、投資先を集めた勉強会やバーベキューなどのイベントなどを通じて、交流の場を設けていただけているからでしょうね。Angel Bridgeのみなさんや、投資先の起業家の方々と親しくさせていただきながら、ときに楽しく、ときに膝を詰めて話せる機会をいただけるのは、ひと味違う点だと思います。

      河西:こうした機会を設けることによって、起業家コミュニティが生まれ、先輩起業家からのアドバイスが得られたり、相互扶助の雰囲気が生まれたりするのではないかと思ってはじめた取り組みなので、そういっていただけるのは嬉しいですね。企画しがいがあります。

       ——藤田さんはこれから、社会にどのような価値を届けたいと思われますか?

      藤田:企業活動において契約書は非常に重要な役割を担っています。契約書レビューサービスを通じて、中堅・中小企業が争いに巻き込まれたり、本来主張できたはずの権利を失ったりするような不幸をなくしたいですね。こうした社会に一日も早くなるようこれからも貢献するつもりです。

      ——これからAngel Bridgeに期待することがあれば教えてください。

      藤田:すでに十分過ぎるほどのご支援をいただいているので、これ以上望むことはありません。これからも、多角的な視点で物事を判断したいときに、いつでも気軽に相談できるような存在でいていただけたら嬉しく思います。

      河西:われわれとしても、いつでも困ったとき最初にご相談いただけるような身近な伴走者でありたいと思っています。いつでもお声がけください。

      藤田:心強いお言葉、ありがとうございます。日頃から身近に接している方でなければできない相談もあるので、それを引き受けてくださっているAngel Bridgeさんはかけがえのない存在です。これからも引き続きよろしくお願いいたします。

      ——最後にスタートアップ経営や起業に関心をお持ちの読者にアドバイスをいただけますか?

      藤田:これまで、ブランドもなければ実績もない状態からビジネスを立ち上げる難しさを何度感じたかわかりません。それでも諦めずに続けることで、少しずつサービスがよくなり、率先して仕事を拾ってくれる社員にも恵まれ、サービスを使ってくださるお客様も増えていきました。すべてが整った世界に留まったままだったら、そうした経験はできなかったでしょう。そう思うと思い切って挑戦してよかったと思いますね。「やり直しはいつだってできる」。そう思えば、きっと壁は乗り越えられるはずです。もし心の底から解決したい社会課題があるなら、その気持ちが熱いうちにぜひ挑戦してほしいですね。

      河西:藤田さんのような優秀な方が、スタートアップの世界に入ることが増えれば、きっと日本経済も好転するはずです。不退転の覚悟で挑戦される起業家を支援するのがわれわれの仕事。ぜひリスクを恐れずチャレンジしていただきたいですね。われわれはそんなみなさんを全力で支えるつもりです。藤田さん、本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

      藤田:こちらこそよろしくお願いいたします。

       

      2024.08.01 INVESTMENT

      2024年7月に株式会社ログラス(以下ログラス社)が、シリーズBラウンドにおいて累計約70億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。

      ログラス社は、経営企画向けのクラウドシステム『Loglass 経営管理』の開発・提供を行うスタートアップです。従来のExcelベースの経営管理は、作業の属人化や人為的なミスの温床となるだけでなく、経営の意思決定を複雑にしていました。ログラス社は、このペインにアプローチするため、データの集計作業を自動化した、誰もが直感的に操作できる経営管理ソリューションを提供しています。

      この記事では、Angel Bridgeがログラス社に出資した背景について、経営管理ソリューションを取り巻く環境と、ログラス社の強みに焦点を当てて解説します。

      1. 経営管理ツールの市場構造
      2. ログラス社のプロダクトと高い成長性
      3. 経営陣
      4. おわりに

      1.経営管理ソリューションの市場構造

      まず、経営管理ソリューション市場の全体像を説明します。

      企業の経営管理とは、経営目標を達成するために戦略・計画を策定し、その遂行のために社内リソースの管理・調整や設定した経営指標に対する実績のモニタリングを行うことを意味します。従来は経営管理のために活用するツールと言えばExcelでしたが、データの統合コスト・ファイル保守コストの大きさや、タイムリーな経営判断を行いづらいといった課題が存在し、経営企画担当/経営層の双方にとって課題が存在する領域でした。

      図1.従来の経営管理のペインとログラス社のアプローチ

      そんな市場の中で、データの統合や即時性の高い共有を可能にするソリューションが複数登場しており、導入が進んでいます。経営管理の業務はどの会社でも存在する業務ですが、企業規模によって管理するべきデータの量や複雑性が異なることもあり、市場は業界トップ企業、エンタープライズ〜ミドル、個人事業主や中小企業(SMB)で概ね棲み分けられています。具体的には、業界トップ企業向けのツールは、細分化されたデータ管理や高度な分析機能、各部門の特定のニーズ(管理体系や、勘定科目/明細ベースといったデータの粒度)に対応できるカスタマイズ性など、豊富な機能性に加えて、データ量への高耐久性などが求められます。SMB向けのツールは、高い操作性と導入の簡単さを実現するために、機能を絞って作られていることが多いです。

      図2.経営管理ソリューション市場における棲み分け

      ログラス社は、上記の分類の中で、主にエンタープライズ〜ミドル企業をメインターゲットにし、必要十分な機能を、操作性の高いUIで提供することで、独自のポジショニングを築いています。

      ログラス社がメインターゲットにしているエンタープライズ〜ミドル企業だけでも4.6万社、市場規模にして数千億/年が存在し、Horizontal SaaSである経営管理ソリューションには巨大な市場があることがわかります。

      2.ログラス社のプロダクトと高い成長性

      ここからは、ログラス社が提供するクラウドシステム『Loglass 経営管理』と、その高い成長性について詳しく説明していきます。

      『Loglass 経営管理』は、従来のExcelベースの経営管理で生じていた、手作業での集計によるミスや、管理作業の属人化、といったペインにアプローチしたプロダクトです。あらゆる集計作業を自動化する事でデータ収集時間を最大85%削減するだけでなく、システム上でのバージョン管理や、細かな閲覧権限の設定など、充実した機能を提供しています。

      図3.『Loglass 経営管理』の基本機能と特徴

      また、収集したデータの加工・分析機能にも優れており、多段階・複雑な配賦ルールへの対応や、複数の分析軸に基づいた予実確認など、「かゆいところに手の届く」システムを実現しています。更には、財務情報やKPIなどの経営の意思決定に必要なデータをダッシュボード上で可視化して管理することも可能であり、まさに、「経営管理に寄り添ったプロダクト」です。

      Angel Bridgeにおける投資検討の際には、『Loglass』を導入した複数企業へのインタビューも行いました。Excelやスプレッドシートから『Loglass』に乗り換えることで、大幅な工数の削減・属人化の解消・経営意思決定の精度向上などの効果が出ている様子を定性的に伺うことができました。また定量的にもチャーンレート・NRR・GRRなどの各種指標が非常に優秀な値であり、定性/定量の両面から顧客の満足度の高さを確認することができました。

      図4.ユーザー導入事例

      このような提供価値の高いプロダクトに加え、元経営企画やコンサル出身のメンバーが多く、顧客の課題解決能力に優れた質の高いカスタマーサクセスなど含めたCXの高さも評価され、結果としてMRRが急速に成長しています。

      更に、先述したログラス社のメインターゲットであるエンタープライズ~ミドル企業のみならず、KDDIグループ様、アサヒグループ様、関西電力様などの日本を代表するような業界トップ企業への導入事例も増えていること、2024年の2月にローンチした新規プロダクト『Loglass 人員計画』や『Loglass サクセスパートナー』においても順調にリードが獲得できていることからも、今後のログラス社の成長に対して大きな可能性を感じております。

      3. 経営陣

      Angel Bridgeがログラス社に投資するにあたり、経営チームへの理解も深めました。

      図5.ログラス社経営チーム

      代表取締役CEOの布川さんは、慶應義塾大学経済学部を卒業し、SMBC日興証券に入社。PE、総合商社によるM&Aや投資先IPOアドバイザリー業務を担当した後、GameWith経営戦略室にて、IR・投資・経営管理などを担当されていました。事業会社の経営企画での経験から、課題を深く理解し、その解決に情熱を持たれています。複数のリファレンスインタビューからも非常に高いやり抜く力をお持ちであることに加え、組織マネジメント力の高さもお伺いすることができました。

      CTOの坂本さんは、中央大学商学部を卒業し、新卒一期生としてビズリーチに入社されました。同社が急成長する中で責任者として新規SaaS事業の開発に携われるなど新規事業を中心に経験されました。その後サイバーエージェントでもエンジニアをされた後、2019年に布川さんとログラス社を共同創業されました。経営管理ドメインの特殊性を理解し、技術的負債を負わずにプロダクトの品質を最初から高く保つなど、新規事業に携わった経験を大いに活用されています。

      また、ココン(現GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社)のグループCOOとして、約10社のM&AとPMIを主導された経験豊富な竹内COOや、SMBC日興証券の元トップバンカーである伊藤CFO、複数社の創業経験がある斉藤CBDOなど、優れた経営陣が揃っています。

      4.おわりに

      最後に、Angel Bridgeの今回の投資のポイントをまとめます。

      1つ目は、巨大な市場があることです。経営管理ソリューションはHorizontal SaaSであり、巨大な市場が狙えます。その中でも、ログラス社はエンタープライズ〜ミドル企業をコアターゲットにしており、コアターゲットだけでも数千億円/年の市場が存在します。また足元でも業界超トップ企業へのプロダクト導入や、新規プロダクトのリード獲得が順調であり、今後さらに市場を広げていくことが見込めます。

      2つ目は、優れた経営管理プロダクトがPMF(プロダクトマーケットフィット)していることです。ログラス社の提供する経営管理プロダクト『Loglass』のトラクションは順調に伸びており、サービス提供開始から4年足らずにも関わらず、CARR、導入企業数、チャーンレートを始めとした各種指標が良好な数字を示しています。ログラス社では「お客様の業務理解をもとにプロダクトを設計する」ことを徹底されており、「経営管理に寄り添った」プロダクトを作り続けていることが数字によって証明されていることがわかります。

      3つ目は、直接の競合がいない独自のポジショニングを確立している点です。ログラス社が対象とする経営管理ソリューションの市場は、一見すると多数のプレイヤーが存在しています。しかし、エンタープライズ〜ミドル企業に対して必要十分な機能を使いやすいUI/UXで提供するポジショニングは十分に差別化されています。また一度導入されるとスイッチングが難しく、先行優位が働くプロダクトである点においても競合優位性が高いと認識しています。

      最後に優秀な経営チームです。代表の布川さんは、経営管理業務への深い知見をお持ちで、CEOとしてのビジョンを体現する力、問題解決能力、やり抜く力に優れた人物です。さらに、0から1を生み出す仕事に長けた坂本CTOや、他社でもCOO経験のある竹内COO、SMBC日興証券の元トップバンカーである伊藤CFOなどの採用にも成功しており、強い経営チームを構築しています。

       

      以上の観点から、ログラス社が、経営企画向けの経営管理SaaSを中心に「テクノロジーで経営をアップデート」するだけでなく、日本企業、ひいては日本経済全体の成長を支えることで、良い景気を作り出し、ログラス社がメガベンチャーとなる可能性が非常に高いと考え、投資の意思決定をしました。

      Angel Bridgeは、社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!