2023.11.09 INTERVIEW

ゲノム解析技術がもたらす恩恵を多くの人に届けたい

改めまして、齊藤さんのお言葉でVarinosの事業内容を解説いただけますか?

齊藤:Varinosはゲノム解析技術をもとに各種臨床検査サービスを提供するスタートアップです。現在は不妊治療の一環として行われる子宮内フローラ検査、着床前ゲノム検査、次世代POCゲノム検査のほか、妊娠中や妊娠に備える女性のためのサプリメントの提供も行っています。いずれも不妊治療に費やす時間や経済的負担を減らし、不妊に悩む女性やご家族の苦しみを和らげるために開発したサービスです。

競合状況はいかがでしょうか?

齊藤:創業後最初のサービスとして開始した子宮内フローラ検査が現在でも事業の柱となっていますが、その国内市場においては、われわれが競合と認識している企業は現在は外資系企業の1社のみという状況です。弊社がスタートアップであり、かけられる予算や人員の規模に差もあったため、当初は競合との間で遅れを取っていました。しかしここ2、3年でVarinosが提供するサービスの品質や検査精度を高く評価してくださる医療機関が増え、競合を上回るご支持を集められていると自負しています。

齊藤さんの管掌範囲と職務内容を教えてください。

CSOとCOOを兼務しています。CSOとしての役割は全社戦略や事業戦略の全体像から、各戦略を実現してくための事業プランを策定することで、もう一方のCOOとしての役割ではそれら戦略や事業プランに基づき、組織やオペレーション構築から、プロジェクトマネジメントを含めた実行・運用部分を統括しています。さらに最近、管掌範囲に広報・PRも加わって、戦略策定から実行フェーズまで幅広い業務にコミットしている状況です。

齊藤さんは北大獣医学部を卒業された後、アステラス製薬で臨床開発に携わり、その後、戦略コンサルティングのドリームインキュベータ、医療ITのエムスリー、AI開発のPreferred Networks(以下、プリファード)で活躍されました。これまでどのような基準でキャリアを選択してこられましたか?

齊藤:新卒で入社したアステラス製薬で医薬品の臨床開発と社会人としてのイロハ、特に事業会社的なウェットな仕事の進め方などを学び、次に選んだのが戦略コンサルティングファームのドリームインキュベータでした。製薬企業での仕事は、ビジネスや経営といった企業活動の上流部分とは無縁だったので、まったくの素人から大局的な思考やビジネスの上流設計を身に着けていくには戦略コンサルティングが一番近道だと考えたからです。その後、戦略構築だけでなく、そこで身に着けたスキルや思考力で事業を実際に立ち上げて成長させてみたいと思い、エムスリーとプリファードという分野の異なる事業会社に進みました。いまVarinosにいるのはこれまでの経験を活かして、創業間もないスタートアップをどこまで成長させていけるかにチャレンジしてみたいと思ったからです。

優れたサービス品質とそれを裏付ける確かな技術力

 齊藤さんはVarinosのどこに将来性を感じたのでしょう?

齊藤:まずはシンプルにサービスと市場を見たときに、これはきっとうまくやれば勝てると思ったことです。市場の特性や、その市場におけるアンメットニーズと提供するサービスバリューのマッチングが明確で、かつバリューを支える品質と技術力の確かさ全てが揃っているなと。不妊治療における体外受精成功率が残念ながら高いとは言えない状況の中で、Varinosが提供する子宮内フローラ検査にはその課題を解決するという明確なバリューがありました。かつ、超微量の菌量を測定するという難易度の高い解析においても、解析結果が出ない割合はわずか1%程度に過ぎないという高い性能を誇っています。きちんとしたエビデンスがあることや、細かい精度の差が医師や患者さんにとって大きな価値となりうる医療業界の中で、この製品力はこの上ない大きな強みであり、スタートアップでもこの業界で十分戦っていけると確信したので、このサービスの成長に貢献しようと決めました。

入社後、とくに大変だったことについて聞かせてください。

齊藤:そもそも勝ち筋とアプローチ方法に関しては、入社前にある程度想定できていたので、正直、事業面で苦労した記憶はあまりありません。強いて言えば、入社時に、余りにも何も整ってなかったので、これを1から整えていくのは大仕事だなあと思ったことくらいでしょうか。自分は事業活動の中で見出したファクトをベースにPDCAを回して行く事が基本スタンスなのですが、当時は顧客リストも案件管理も整備されておらず、過去のファクトなども洗えない状況でした。そのため、現状を把握し業務プロセスをイチから整えるのはそれなりに手間がかかりましたが、優秀な元同僚に声をかけてVarinosに参画いただき、短期間でインフラを整備できました。また事業面のみならず財務面や経営管理などでも、すぐにでもやるべきことが山積みの状態だったので、自分だけでは手が回らないかも、と思いはじめていた矢先に、河西さんが現CFO兼経営管理本部長の平川を引っ張ってきてくれたんです。おかげでずいぶん気が楽になりましたし、会社活動全体もうまく回るようになりました。河西さんにはいくら感謝しても足りません。本当に助かりました。

河西:齊藤さんと平川さんが入社されてからVarinosの売上が大きく伸びたので、私としてもご紹介した甲斐がありました。齊藤さん、平川さんを往年の時代劇「水戸黄門」にたとえるとすると、CEOの桜庭さんが黄門様で、おふたりは黄門様を支える家臣の助さんと格さんといったところではないでしょうか。どちらも非常に心強い存在です。

齊藤:結果を残すのが私たちのミッションですからそう言っていただけて嬉しいですね。

河西:齊藤さんはさまざまな業界で経験を積まれています。異なる環境下で常に結果を出し続けるため心がけていることはありますか?

齊藤:結果を出すのは、特に現場で数字を上げてくれるフロントメンバーや、バックでサポートいただいてるメンバーの尽力あってのことという前提があっての話ですが、私の立場で心がけているのは、戦略立案はもちろん、結果を出すまでのロードマップやそれらが順調に進んでいるかを評価するためのKPIの作り込みと、実行した際の評価と改善を徹底することですね。勘や楽観的な解釈、妄想と大差ない思い込みなどはできるだけ排除し、常にファクトに基づいて施策や活動を評価し、成功事例は拡大させて、うまくいかないものは改善するなり、切り捨てるなりする。それを成果を出すまで繰り返していくというのが私のやり方です。要は愚直に当たり前のことを当たり前に突き詰めるというだけなのですが。これは決して唯一解ではないと思いますが、少なくともVarinosではこういった取り組みがいまのところ功を奏しているのかなと思います。

河西:確かに。齊藤さんの仕事ぶりを間近で見ているのでよくわかります。

齊藤:ありがとうございます。いまお話しした結果とは、要は売上や利益です。個人的には、当然経営者として追求すべき指標であると同時に、事業活動に対する公正な評価指標だと思ってます。たとえば、自分ではうまくやったつもりでも売上が全然上がってなかったら、その活動成果は意味がないと同時に着目すべき課題がほかにあるという示唆にもなるでしょう。また、逆に何もしてないのに売上が上がってたら未知の外部要因による可能性を示唆しているので、さらに事業をレバレッジさせる成功要因を見つけるきっかけにもなります。このような形で徹底的に知恵を絞って客観的に出てきた数字を評価をして、課題を特定・対処可能なサイズにまで分解して、勝ち筋を見つけ徹底的にやりきることが、成功に繋がる道なのかなと思います。ですからどんなに泥臭いことでも取り組むスタンスは重要でした。

経営者の孤独を癒やす「クロスラーニングの会」

話は遡りますが、おふたりが出会ったのはいつですか?

齊藤:私がプリファードにいたころでしたね。

河西:そうでした。私はVarinosと創業直後からかかわっており、当時からVarinosをサイエンティストの集団として高く評価していました。しかし、サイエンティスト集団であるがゆえ、事業を回しスケールさせる人材が足りないという弱点も抱えていました。そこで以前からお付き合いのあった人材エージェントに相談をもちかけたところ、紹介していただいたのが齊藤さんでした。

齊藤:河西さんにお会いしたころはまだ会社を辞める予定はなかったのですが、はじめてお会いした後も、3カ月に1度くらいのペースで定期的にお会いしてましたね。

河西:ええ。判で押したように定期的にお会いするよう働きかけたのは、齊藤さんが転職したいと思われるタイミングを逃したくなかったからなんです。

齊藤:そうだったんですね。おかげさまでいまの自分にあった環境に巡り合えました。ありがとうございます(笑)

ところで河西さんは、なぜ齊藤さんがVarinosの経営陣にふさわしいと感じたのでしょうか? 白羽の矢を立てた理由を聞かせてください。

河西:齊藤さんは獣医学部出身で獣医師免許もお持ちで、サイエンスもわかるし製薬の経験もおありです。それに加え、戦略コンサルや事業会社で新規事業の立ち上げもある。レジュメをひと目見てこの人が必要だと思いましたね。

齊藤:Varinos以外にも何社か投資先をご紹介いただきましたね。私の目にとりわけ魅力的に映ったのがVarinosでした。

河西:それで早速、桜庭さんに引き合わせたところ意気投合し、その後トントン拍子に話が進み入社が決まりました。齊藤さんは経験も実力も兼ね備えており、かつ当事者意識も強い方です。当時からバランスのよさが際立っていました。桜庭さんとの相性もバッチリでしたしね。齊藤さんがVarinosにジョインされるまで1年半から2年はかかったと思います。ようやく口説き落とせました。

齊藤:エムスリーやプリファードで、イチから事業を立ち上げ、手離れするところまで経験できたので、次はより小さなスタートアップで、自身の管掌範囲を広げて会社の成長にコミットしたいと思っていたんです。将来性のあるアイデアや技術をビジネス化しスケールするようなフェーズが自分の得意領域なので、その点、当時のVarinosの状況にもピッタリ符合していましたね。加えて、当時体外受精は自由診療だったため、医療業界における他の領域に比べて戦略変数が多く、会社規模や累積経験といった点でディスアドバンテージがあったとしても、大企業と戦いうる数少ない領域です。チャレンジしがいがあるテーマだと感じて入社しました。

齊藤さんは、河西さんにどんな印象をお持ちでした?

齊藤:経営者のウェットな部分に触れることを恐れず、暖かく見守るようなケアをしてくださる印象がありますね。「あれやれ」「これやれ」と上からモノを申すようなことがなく、経営者であるわれわれをリスペクトしてくださった上で、必要なケアを提供してくださる方だと思っています。

どんな支援が印象に残っていますか?

齊藤:いろいろありますが、とくに私はAngel Bridgeが投資先を集めて主催している「クロスラーニングの会」がとても気に入っています。

どんなところがお好きなんでしょう?

齊藤:クロスラーニング会はAngel Bridge投資先の経営者が集まり企業運営のノウハウや成功体験、失敗体験をざっくばらんに共有し合う場です。経営者は孤独な存在だとよく言われますが、実際、目の前にある課題に深く入り込めば入り込むほど視野狭窄に陥ってしまいます。でもこうした会合に参加することによって「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」「こんなやり方があるのか」と、実践した人しか語れない説得力のある話が聞ける。視野が開かれるようで、とてもありがたいんですよ。これまで2度参加しましたが、その都度、目から鱗が落ちるような経験をさせてもらいました。

河西:人事制度や評価制度をどうすべきかといったテクニカルな話から、経営者のメンタルケアについてまでいろいろな話題が出ますよね。

齊藤:そうですね。毎回ためになる話が聞けるので、お金をお支払いしたほうがいいのではと思うほどです(笑)。経営者同士が開襟を開いて話せる場ってなかなかありませんから、ぜひこれからも続けてください。

河西:私は投資先も含めてAngel Bridgeファミリーだと思っているので、それは嬉しい言葉ですね。身内同士で学び合えるのは相互扶助につながりますし、もちろん成長意欲を高める刺激にもなりますからね。私も長く続けていくべき取り組みだと思っています。

 

学び直す気概でスタートアップに飛び込んでほしい

齊藤さんは今後、Varinosをどんな会社にしたいですか?

齊藤:これまでは業界内でのポジショニングの確立を急いでいましたが、その取り組みが一定の評価を得る段階まできたので、今後は海外進出を含め新たな取り組みを加速させます。他の業界同様、医療業界も大きく変わりつつある一方で、まだまだレガシーな側面があるのは否めません。新たな手法やアプローチで業界の常識を打ち破り、Varinosを各界からベンチマークされるような企業にする。それが私の目標です。

河西:私たちとしても、困ったときにはいつでも手を差し伸べるつもりでいるので、これからも常に本音で話し合えるような関係を保っていきましょう。

齊藤:そうですね。これからもよろしくお願いいたします。

最後に、プロフェッショナルファームで積んだ経験をスタートアップで活かしたいと考える方にメッセージをお願いします。どんなことに注意するべきでしょうか?

齊藤:プロフェッショナルファーム経験者は、仕事の進め方や思考のフレームワークが共通するだけに、同質性が高い者同士でやりとりすることに慣れているように感じます。しかし、そのやり方をそっくりそのまま事業会社に持ち込んでも、すぐにはうまくいかないことが多いのではないでしょうか。業界ごとや職種ごとにそれぞれ考え方や仕事の仕方に特質があるからです。とくにスタートアップは成長途上にあり、その点も踏まえた上での環境作りからはじめる必要もあります。大所高所から経営を見渡すのも大事ですが、現場では普段何が起こっているのか、どんなモチベーションで働いているのか、まずはそれを知ることからはじめることをお薦めします。そうして既存のメンバーを巻き込み、スタートを切るのが重要です。個人的にはこれまで身に付けてきた常識を一旦忘れ、学び直すくらいの気概で飛び込むべきだと思います。もしそれだけの覚悟がありやり切れるのであればきっといい成果が残せるのではないでしょうか。

 

2023.09.08 TEAM

幼少期からドバイで暮らし、カナダ留学を経て投資銀行へ

髙橋さんの仕事内容を教えてください。どんなスケジュールで動いていますか?

仕事の割合でいうと、新規案件の目利きとソーシング活動に6~7割、既存の投資先への支援に1割、社内イベントやマーケティング活動に残りの2~3割を費やしています。1日のスケジュールとしては、朝9時に出社、国内外のスタートアップ動向をチェックした後に、投資先候補の方々との面談や検討案件の目利き、既存の投資先定例会への参加、社内マーケティング作業などを経て、退社するのは18時過ぎになることが多いです。その日にVC業界の交流会や飲み会があれば退社後に参加しますが、特にない日はジムやサウナにいって1日を終えます。

実は日本より海外に住んだ期間が長いようですね?

埼玉県で生まれて、小学校に上がるタイミングで親の仕事の都合でドバイに移住しました。小学校から高校卒業までの12年間をドバイで過ごした後に、カナダのトロント大学に留学しました。カナダには約5年間住んでいたので、日本より圧倒的に長い期間を海外で過ごしていますね(笑)。

投資銀行に入った背景を聞かせてください。

トロント大学に入学して最初の1年は数学と統計学のダブルメジャーを選考していました。しかし卒業後のキャリアがなかなかイメージできず、入学2年目に数学と経済学の要素が揃っていたFinancial Economicsに進路を変更しました。当時学内で実施されていた金融関係のセミナーに参加したところ、ハードワークである一方、若手のうちからM&Aや資金調達などの重要案件に携われる投資銀行の存在を知りました。自分を鍛えるにはもってこいの環境だと思い、サマーインターンでお世話になったBofA証券に入社しました。

BofA証券ではどんな案件にかかわっていたましたか?

入社1年目はいわゆる営業部隊であるカバレッジチームに配属され、再生エネルギー、自動車、テクノロジー業界を対象としたM&Aや資金調達の提案資料の作成や、案件執行のサポートに従事していました。2年目からは実際に案件を執行するM&Aチームの一員として、企業評価を算出するバリュエーション業務などに携わる機会が多かったです。

投資銀行出身者は、どんなセカンドキャリアを選ぶことが多いですか?

プライベートエクイティファンド(PE)やヘッジファンド(HF)など、金融業界におけるバイサイドに転職する人が一番多い印象です。その次に事業会社やスタートアップへ転職する方が多いイメージです。今まではベンチャーキャピタル(VC)に転職する人はあまり多くなかった印象ですが、最近はベンチャーキャピタルに転職する人が増えているように感じます。私が前職からAngel Bridgeに転職した年に、同期を含め数名の方々がベンチャーキャピタルに転職したと聞いています。

髙橋さんはどうしてベンチャーキャピタルに惹かれたのでしょう?

一番のきっかけは前職の同期のひとりがベンチャーキャピタルに転職を決めたことになります。その前まではベンチャーキャピタル業界について詳しくなかったので、積極的に話を聞いて勉強しました。創業間もないスタートアップの将来性を見抜き、リスクをとって投資した企業がメガベンチャーに育っていく姿を間近で見れたら面白いだろうなと。そのダイナミックさや社会的意義の大きさに惹かれました。大企業を相手にすることが大半の投資銀行ではそういった経験はできないと思い、転職を決めました。

信頼関係の構築なくして投資はできない

ベンチャーキャピタルといっても、規模や個性はいろいろです。なぜAngel Bridgeを選んだのですか?

Angel Bridgeの存在を知ったのはヘッドハンターからの紹介です。一度、情報交換しませんかといわれお会いしたのがパートナーの河西でした。話した際に凄く優秀だと思いましたし、何より人柄のよさが際立っていました。その後もパートナーである林を筆頭に、メンバーの皆さんとお目にかかる機会を作っていただき、Angel Bridgeのカルチャーに対して強いフィット感を感じました。皆さんプロフェッショナルファーム出身者で、仕事の進め方やカルチャーに馴染みがありましたし、少数精鋭で個人の裁量が大きいのも魅力的でした。Angel Bridgeはまだ少人数なこともあり、これから組織を大きくしていく段階なので、自社の組織作りにも関与できるのは貴重な経験だと思い、入社を決めました。

入社後、具体的にはどんな仕事に携わっていますか?

シニアアソシエイトの八尾とペアを組んで、既存投資先の支援や新規投資検討案件を通じて、ディールの全体の流れ、投資先の支援方法、検討案件の目利きの方法などについて幅広く学ばせてもらっています。私が自分でソーシング、目利きを行い投資まで至った案件はまだないので、はやく独り立ちできるようになりたいですね。

入社から3ヶ月(取材時)。率直な感想を聞かせてください。

前職とベンチャーキャピタルの一番の違いは、人と話す機会が非常に多いことですね。優れた起業家や有望なベンチャーと出会うには、ピッチイベントに出かけたり、人を介して紹介していただいたりとプロアクティブな行動が欠かせません。私は以前から人と話すのが好きなので、その点はまったく苦になりません。もうひとつ違いを感じるのは仕事のスパンですね。投資銀行時代はM&Aや資金調達(エクイティ、デット)など数ヶ月単位の仕事が多かったので、比較的短期間で案件がクロージングまで至ります。それに比べてベンチャー投資は息の長い仕事です。シード案件だとプロダクトも未完成、売上もゼロの状態から、ビジネスをつくり経営者が自走できるまで伴走します、フェーズやマイルストーンはあっても明確なゴールはありません。同じ金融の世界でも、見ている景色も、大事にしているものもまったく違う印象です。

投資銀行での経験が、いまの仕事に活きていると感じることはありますか?

複数案件を同時にこなしながら限られた期間内にアウトプットを仕上げること、また、開示されている財務数値から対象企業の分析をしてきた経験はとても役立っています。ただその一方で、起業家と一緒に事業戦略を検討したり、定性的な情報を見ただけで起業家やビジネスのポテンシャルを見極めたりする部分については投資銀行で経験してこなかった業務なのでまだまだです。経営や事業に対する解像度はまだそこまで高くないので、引き続き色んな案件を経験して、自分のスキルアップを目指そうと思っています。

いつかメガベンチャーの創出に携わりたい

Angel Bridgeの魅力は?

Angel Bridgeは、社員同士の仲が非常によく、社内イベントを開いて盛り上がることもしばしばです。バーベキューやゴルフ、フットサル、スカッシュなど、投資先を招いたイベントを通じて親睦を深めており、チームワークや団結力は非常に高いです。公私にわたる付き合いを通じて信頼関係を醸成できるのは、前職にはなかった魅力だと思います。Angel Bridgeのメンバーは、それぞれが別の強みをもつプロフェッショナルでありながら、互いに支え合う仲間でもあります。
私が入社した直後にチーム全体で歓迎会を主催してくれたり、誕生日をサプライズで祝ってくれたりもしたので、非常にチームを大事にしてくれているのもAngel Bridgeの魅力です。

髙橋さんにとって、ふたりのパートナーはどんな存在ですか?

人柄、仕事の両面でも尊敬できるロールモデルです。河西は事業の精査や分析に長けており、特にバイオ分野に強いです。面倒見もとても良く、チーム全員が成長できるようにコミットしてくれています。林はあらゆる業界に通じているだけでなく、人間的な魅力に溢れています。厚い人望があり、林が主催する会には業種問わず色々な方々が集まります。お二人とも気さくで話しやすく、自然と人が集まる魅力的な先輩方です。知見や経験、人脈の広さに加え、リーダーシップや面倒見のよさ、チームワークを尊ぶ姿勢——そのどれをとっても学ぶことばかりです。

どんな人と働きたいですか?

好奇心が旺盛でコミュニケーション力が高い人ですね。好機は向こうからやってくるわけではありませんし、どんなに優秀であっても相手から信頼されなければ投資は実現しません。ベンチャーキャピタルは色々な起業家、他ベンチャーキャピタリストなどと話す機会が非常に多いので、そういったコミュニケーションを楽しめる人が向いている職業だと思います。

今後の目標を聞かせてください。

まずは、自分でソーシングした案件を社内で通し、投資実行まで持っていくことが当面の目標です。投資実行後に、自分がかかわったベンチャーの成長に貢献できればと思っています。究極の目標は、自分の英語力や海外人脈を活かし、海外の機関投資家をLPとして巻き込んだり、必要に応じて投資先を海外事業会社や海外VCと繋げたりして、世界に誇るメガベンチャーの創出を実現すること。少し先の話になると思いますが、いつか実現させたいですね。

最後に髙橋さんが大事にしている信念を教えてください。

人生一度きりです。何事に対しても妥協せずやりきることを信念にしています。それをひと言で表すなら「妥協なき人生」になります。
カナダ留学中に、ニューヨークで投資銀行で働きたいと考えた時期がありました。あるとき現役のバンカーに相談しようと思い立ち、LinkedInでピックアップしたバンカーたちに自己紹介とプレゼン資料をメールで送ったことがあります。最終的に300人以上にメールを送り、返事がいただけたのは15人で、実際にニューヨークでお会いできたのは5人でした。結果的にはビザの関係で日本での就職を選びましたが、とても有益なアドバイスをいただけました。これまでにやったことがないことであっても、妥協せずやり抜けば価値あるものが得られる。それを知れただけでもやってよかったと思います。これからも妥協せず貪欲に挑戦し続けるつもりです。

2023.09.05 INTERVIEW

最新の研究成果をいち早く医療現場に届ける

Varinosの事業内容を教えてください。

平川:Varinos​は、高速でDNA配列を解読する次世代シークエンサーを用いたゲノム検査サービスを提供するバイオベンチャーです。現在は医療機関から送られてくる検体を自社ラボで解析し、その結果を不妊治療に活かしていただく一方、妊活に役立つサプリメントや検査キットの提供なども行っています。

競合の状況はいかがですか?

平川:現在、海外に類似サービスを手掛けている企業が1社ありますが、いまのところ国内の競合もその1社のみとなります。(2023年8月現在)。

ゲノム検査を手掛ける企業は数多くあります。なぜ競合が少ないのでしょう?

平川:最新の研究成果をもとにしたサービスだから、というのが大きな理由です。それまで無菌とされていた子宮内に細菌叢が存在することがわかったのが2015年で、子宮内の細菌叢に善玉乳酸菌の比率が低い場合、体外受精の成功率が下がるという研究結果を発表されたのが翌年の2016年のことでした。Varinosは2017年2月に創業し、その年の12月に子宮内フローラ検査の実用化に成功しています。最新の研究成果を圧倒的なスピード感で実用化に漕ぎ着けられたのは、創業者である桜庭喜行と長井陽子がゲノム研究のエキスパートであったからです。さらにサービスの実用化をいち早く実現したことにより、検査数はすでに2万検体を突破しており、いち早く先行優位性を獲得できたことも競合の少なさにつながっていると思います。

予備校の恩師の助言で監査法人からベンチャーへ

そもそも平川さんは、なぜ公認会計士になろうと思われたのですか?

平川:高校時代は剣道一筋で、インターハイで8位入賞するくらい入れ込んでいました。当時は剣道の強豪校に進もうと思っていたのですが、推薦を受けられず大学進学を諦めざるを得なかったんです。それで給料のよかった地元のパチンコホールに就職し、5年ほどたったころだったでしょうか。「このままでいいのかと」と考えるようになり、パチンコホールを辞め資格予備校に通い出しました。高校時代に簿記2級を取っていたので、1級を取ってからその先の人生を考えようと思ったんです。予備校に通い出してしばらくたったころ、先生から「予備校でバイトすれば学費が免除になる」と教えてもらい、それなら簿記よりも難しい公認会計士資格を目指そうと思ったのが資格を取るきっかけになりました。

平川さんは、公認会計士試験合格者として監査法人PwCあらたでご活躍後、3社のベンチャー企業を経てVarinosに参画されました。なかでも、2015年から19年まで在籍された不動産テックのGA technologies社では、取締役経営管理本部長としてIPOの実現をリードし、いまや同社は売上高1,000億円を超える大企業です。結果からすると素晴らしい成果だと思いますが、監査法人での安定したキャリアを捨てるのは勇気が必要だったのでは?

平川:安定志向で監査法人に入ったのであればそう感じたかもしれません。でも私の場合、いずれベンチャーにいくつもりで監査法人に入りました。公認会計士の資格を取るために通っていた予備校の先生からの影響です。

予備校の先生から、どんな言葉をかけられたのですか?

平川:公認会計士の知識が活きるのは監査法人だけではないといわれたんです。公認会計士資格を取るには4科目の短答式試験と5つの論文式試験をクリアしなければなりません。会社法に至っては弁護士資格並の知識が求められるのに、監査法人で主に使うのは会計学と監査論のふたつだけ。その先生から、企業のバックオフィスを支えるほうがはるかに公認会計士の実力が磨かれるし、ダイナミックで面白い世界が体験できるといわれて、なるほどなと。事業会社のなかでも組織が小さく、ひとり一人の裁量が大きいベンチャーならさらに面白い経験ができそうだと思いました。

監査法人ではどんなお仕事をされていたのですか?

平川:将来、事業会社のバックオフィスを支えるとしたら、財務会計だけでなく適切な業務プロセスやリスク管理などについても熟知しておく必要があります。そのためメガバンクを顧客とする内部統制の評価支援業務プロジェクトを通じて、ベンチャーでも活かせる知識や経験を育みました。

 

求めていたのはイノベーションを起こすベンチャー

目指していかれたとはいえ監査法人とベンチャーでは環境がまったく異なりますよね。理想と現実のギャップに苛まれたこともあったのでは?

平川:そうですね。でも、それは入る前からわかっていたことですから、環境が違うことに憤ったり、仕事を選り好みしたりするつもりはありませんでした。CFOは決算書を語るのではなく決算書をつくる責任者です。組織をどう動かせば決算書にいい変化が起こせるか考え実行するのが仕事でもあります。日々の帳簿付けから経費精算、請求書の発行、入金や振込確認など経理実務に加え、営業同行に忙殺された時期もありましたが、それでもあまり苦にせずやりきれたのは、それをやることが組織のなかで必要だと思ったからに過ぎません。たまたま仕事を通じて知り合った公認会計士資格をお持ちのCFOからも「ベンチャーに入ったからには、会社の成長に必要なことは何でもやるべき」といわれていたので、それが当たり前だと思っていたというのもあります。

平川さんは、GA technologiesを皮切りに、その後もキャスターやRecro、そしてVarinosとベンチャーのCFOとしてキャリアを重ねてこられました。平川さんはどんな基準でご自身がコミットするベンチャーを選ばれてきたのですか?

平川:自分では「リノベーションではなく、イノベーションを起こすベンチャー」を選んできたつもりです。世の中を便利にするだけでは飽き足らず、これまでにないものを生み出そうと意気込んでいる企業を支えるのが自分の使命だと思っているので、そうした志がある企業かどうかで判断してきました。

Varinosに参画されたのは改めてIPOを目指したいと思われたからですか?

平川:そうですね。株式上場を経験後、複数のベンチャーで各種規程の策定や運用、M&Aや資金調達などにかかわる機会を得て、CFOとしてのキャリアに厚みを持たせることができました。ここで改めてIPOを達成すれば、これまでの経験を整理できるだけでなく、再現性のある取り組みだったことを証明できます。だからこそ先駆的な取り組みを行っているベンチャーで経験を積んできたわけです。もちろんVarinosを選んだのは、文字通りイノベーティブな事業を手掛けているからにほかなりません。

 

希有な経歴と実績に惹かれ、贈られたラブコール

Varinosとの出会いについて教えていただけますか?

平川:前職のプロジェクトが一段落したタイミングで、エージェントに相談したところ河西さんを紹介されました。それがVarinosとの出会ったきっかけです。

河西さんはいつからVarinosとお付き合いがあるのですか?

河西:以前から桜庭さんの評判を聞いており、ゲノム解析の領域で起業すると聞き「あの桜庭さんが起業するなら」ということで早々に投資を決め、私自身、いまも社外取締役にも名を連ねています。創業間もなくからのお付き合いですから、もはや身内のような立場です。

そんな経緯もあって、平川さんにお会いすることになったわけですね。

河西:はい。投資先支援の一環として普段からエージェントの皆さんとお付き合いしており、そのなかで平川さんをご紹介いただきました。ご経歴をひと目見るなり「VarinosのCFOにぴったりな人材」だと思いましたね。平川さんは公認会計士試験に合格された経緯もさることながら、創業間もないベンチャーをIPOに導き、1,000億円企業への礎を築かれました。監査法人での経験に加え、ベンチャーにおける財務会計、経理の実務に通じており、しかもIPOを成功させている。CFOとしてはかなり希有な存在といえます。ぜひCEOの桜庭さんと引き合わせたいと思って、私からラブコールを送りました。

平川:私自身、以前から少子高齢化問題を通じて、医療やヘルスケアテック領域に関心があったので、お声がけいただいたときはとてもうれしかったですね。でも、河西さんとお会いするのは正直躊躇しました。東大大学院で遺伝子工学を学ばれ、ゴールドマン・サックスやベインキャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て、ご自身でAngel Bridgeを立ち上げた投資の専門家です。とても緊張したのを覚えています。

実際にお会いになっていかがでしたか?

河西:実際にお会いしてみた第一印象は、ご経歴から受ける印象とはまったく違って、とても温和で接しやすい方でした。CFOは数字を管理する能力に長けているだけではダメで、社内外の人たちと健全な人間関係を築けなければ務まりません。その点、平川さんはベンチャーの現実を踏まえた上できちんと理想を追求できる人とお見受けしました。ここまでバランスがいい人材にはそうそう出会えませんから、面談後、桜庭CEOに「ぴったりの方を見つけました!」と、興奮気味にメールを送ったのを覚えています。

平川さんはいかがでしたか?

平川:私も河西さんもご経歴から受ける印象とは違い、すごく話しやすい方だなというのが第一印象でしたね。バイオや資本施策に関する知識が豊富であるにもかかわらず、押し付けがましいことは一切なく、常に私たちの考えや希望を聞いた上で的確なアドバイスをくださいます。その印象はいまも変わりません。だからこそ長くお付き合いできるのでしょうね。

Angel Bridgeにしかできない相談がある

普段、Angel Bridgeとはどんなお付き合いを?

平川:毎月の役員会や定例ミーティングで、さまざまな課題を一緒に検討して頂いています。Angel BridgeがほかのVCと違う点があるとすれば、直近の数字や実績についてだけではなく、不確実性の高い中長期的な戦略や課題などについて、腹を割って話せるところですね。IPOがゴールだと考える投資家が多いなか、その先を見据えて必要な情報や知見を提供してくださるので、Angel Bridgeにしか相談できない相談事は実はたくさんあるんです。先ほど河西さんから「身内」という言葉が出ましたが、まさにおっしゃる通りで、最近も営業資料に手を入れていただいたり、新オフィスへの移転を記念して投資家向けの内覧会を勧めて下さったりと、微に入り細に入りさまざまな面で助けていただいています。

河西さんはどんなことを意識して支援されているのですか?

河西:創業期から一緒に歩んできているので、我が子の成長を見守るような気持ちで接しています。褒めるべき点は褒めますし、耳の痛い話であってもオブラートに包むことなく率直に話せるのは、しっかりとした人間関係が確立されているからです。良いときも悪いときもずっとそばにいるつもりですので、本音で話し合える仲間だと思っています。

平川:私たちもファミリーの一員として迎えてくださっている感覚がありますね。フォーマルなミーティングだけでなく、ゴルフやフットサル、バーベキューなどAngel Bridgeの投資先を交えたイベントも頻繁に企画してくださったり、COO兼CSOの齊籐のように河西さん経由で優秀な人材を紹介してくださったりと、公私にわたるご支援には本当に感謝しています。

河西:Varinosのような将来性のある企業に対し、資金だけでなく人的貢献ができるのは私たちにとってもうれしいことです。今後も引き続き成長の過程で必要なリソースを提供できるよう末永く支援を続けていければと思っています。

VarinosからAngel Bridgeに期待することは?

平川:私自身、IPO後の成長をどう牽引すべきか未知数な部分があるため、河西さんを筆頭にAngel Bridgeの皆さんには、資本施策への助言はもちろん、事業展開やサービスの拡充、さらには組織拡大など、IPOの先の成長を見据えた支援に期待しています。

平川さんご自身はVarinosをどんな会社にしていきたいですか?

平川:子宮内フローラ検査の普及をきっかけに、オーダーメイド医療の発展に貢献していきたいですね。業界のパイオニアとしてしっかり利益を出し、持続可能なビジネスを確立しなければと思っています。個人的には国内外の有望なバイオベンチャーを集め、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を組成し、この業界を盛り上げられたらと思っています。

監査法人など、プロフェッショナルファームにいらっしゃる方にメッセージをお願いできますか?

平川:ベンチャーはリスクが大きい選択だと思われる方がいるかもしれませんが、それはもはや過去のものになりつつあります。むしろ国家資格という強い武器があるからこそ選択できるキャリアがあるはずです。この世界に興味があるならぜひチャレンジしていただきたいですね。

河西:実際、平川さんのように監査法人からベンチャーをはじめとする成長企業のCFOに転身されるケースが目に付くようになりました。しかしその一方で、志半ばで諦めてしまう方も一定数おられます。ベンチャーで成功するには何が必要ですか?

平川:一番大事なのは変化への対応力でしょう。もちろんプロフェッショナルとして知識や経験を駆使して我を通さなければならない局面はあります。しかし社会情勢の変化に対して大胆な選択を迫られることが多く、朝令暮改すら日常茶飯事なのがベンチャーです。その変化に翻弄されてしまうとツラいでしょうが、変化を受け入れ楽しめる人にとっては、これほどダイナミックで面白い環境はありません。

河西:平川さんを見ていると、自分が決めた役割や肩書きに固執しないことも重要だと感じますね。

平川:おっしゃる通りですね。ベンチャーのCFOはデスクの前にふんぞり返っていては役割は果たせません。企業によって程度の差こそあるでしょうが、泥臭い仕事を厭わない覚悟は必要でしょう。自分の役割の範囲を決めず何でもトライしてやろうという気概をもって、会社の屋台骨を支えるのは難しくもあり、楽しい仕事なのは間違いありません。

2023.07.21 INTERVIEW

2019年創業の社債専門のネット証券会社「Siiibo証券」

Siiibo証券の事業内容を教えてください。

宮崎:Siiibo証券は社債に特化したネット証券会社です。資金調達のために社債を発行する企業と投資家を結ぶオンラインプラットフォームを運営しています。

他の証券会社で扱っている株式や社債との違いは?

宮崎:社債も株式も、企業にとって重要な資金調達の手段ですが、その位置づけは似て非なるものです。株式がエクイティファイナンスの手段であるのに対し、社債はデットファイナンスの一種。とくに私たちが扱っているのは社債のなかでも、不特定多数の投資家から数百億から数千億円規模の資金を集める「公募債」ではなく、49人までの限定された投資家から数千万から数億円規模の資金を募る「私募社債」です。公募債に比べ、手続き面や金銭的コストを抑えられるため、大企業でなくても利用しやすいというメリットがあります。Siiibo証券は、伸び盛りの成長企業に資金調達の手段を提供し、個人投資家には新たな投資先の選択肢を提供するため、2019年に創業されました。

競合状況はいかがですか?

社債に特化したネット証券会社はいまのところ当社のみで、直接的な競合は存在していないと認識しています。ただ、企業の資金調達手段という広い意味の競合では、株式投資型クラウドファンディングやソーシャルレンディング、デットファンド、レベニュー・ベースド・ファイナンスなどが挙げられます。私募社債は、多様化する資金調達手段における選択肢のひとつという位置づけです。

なぜ直接競合が存在しないのですか?

宮崎:まず、私募社債を取り扱うにあたって必要な「第一種金融商品取引業」に登録する難しさが挙げられます。とくに新興FinTech企業にとって事業の先行きが見通しづらいなか、登録要件に定められた自己資本比率規制を満たし、組織体制を整えるのはかなり厳しいハードルです。一方、すでに一種業登録が済んでいる証券会社がなぜ積極的に注力しないかというと、既存の公募債事業に比べて規模の小さい私募債は、短期的には収益の上がりにくいビジネスだから。個人的にはこうした構造が事実上の参入障壁になっていると思います。

なぜ、高いハードルがあるにもかかわらずSiiibo証券は参入障壁を突破できたのでしょう?

宮崎:一言で申し上げれば「やりきると決めたから」ですね。そもそもスタートアップ市場の盛り上がりや、分散投資に対する関心の高まりを見れば、社債の活用はもっと広がってしかるべき。発行企業、投資家の双方にメリットがあるのは明らかですし、テクノロジーを活用すれば、コストを抑えながらも法規制に則った形で、発行企業と投資家をつなぐオペレーションが実現できる。それなら、登録完了までは本業で売上を立てられないというリスクを取ってでもやりきろうという意志があったからこそ、ハードルを乗り越えられたのだと思います。

VCの代表を務める河西さんの目にはSiiibo証券の魅力はどう映りますか?

河西:Siiibo証券は企業と投資家双方のニーズをマッチさせるこれまでにない金融プラットフォームです。これだけスタートアップが増えているにもかかわらず、事実上、一部の企業や投資家にしかアクセスできない私募債の市場をより多くの人たちに開くことになるわけですから、非常に有意義な取り組みだと感じています。社会的にも大きな意味があると感じ投資させていただきました。

マッキンゼーで体得した、スタートアップ経営に欠かせない力

 宮崎さんは、東大大学院の工学系研究室を修了し、マッキンゼーを経て、Siiibo証券にジョインされたと聞いています。

宮崎:中学高校時代は天文部に所属しており理系学部を志望していたのですが、興味関心と得意科目が合わず、悩んだ末に法学部に進学しました。入学してはみたもののやはり法学にはあまり興味が持てず。思い切って後期過程で理系に転じ、大学院では、シミュレーションとビッグデータ解析の研究室で計算社会科学を学びました。研究対象は社会、つまり人間の集団行動なので、文系的なテーマに理系のアプローチで取り組めるのを面白そうに感じたこと、またものづくりへの憧れもあったので、ソフトウェアの力で社会に貢献できるかもしれないと思い選んだ研究室でした。ただ、結局職業としてエンジニアは向いていないと感じ、社会に出てからどのような分野で価値を出すことを目指すべきなのか、なかなか方向性が定まりませんでした。

マッキンゼーに入ったのはなぜですか?

宮崎:企業やビジネスを通して人間と向き合うコンサルの世界に興味を持ちましたが、面接で出会った方もクライアントのため、後進の育成のために自己研鑽を怠らない方ばかりで魅力的だったのが一番の理由です。幼い頃から要領がよく、与えられた課題を解くのが得意だった一方、テストでいい点を取るような人生に疑問も感じていたので、企業という人間の社会的行動の中から発生する課題への解決策を導くコンサルタントに惹かれたのだと思います。

マッキンゼー時代に身につけたスキルや経験で、いまの仕事に活きると思われるものは?

宮崎:一筋縄では解けない難題であっても、何度も仮説検証サイクルを回して粘り強くブラッシュアップし続ければ、解決策が見つかることを身を持って体験できたことですね。このほかにも、知見がない状態から情報をキャッチアップする力、不確実な状況のなかでも一度形にする力、トライしてダメでも新しいアプローチを試みるフットワークの軽さや変化に対する耐性、適応力などもマッキンゼーで体得したスキルです。どれもスタートアップの経営にも共通するスキルだと感じます。

河西:調査したり検討したりする時間も大事ですが、実際にやってみなければわからないことが大半です。まさに、仮説を立ててアクションを起こし、もしダメでも諦めず別の道を探るというのはまさに成功するスタートアップのあるべき姿とも重なります。マッキンゼーで素晴らしい経験をされたんですね。

宮崎:はい。ある程度形にできたら走り出して走りながら考えるというのは、スタートアップやコンサルに共通する価値観でありマインドだと思います。

そんな宮崎さんがマッキンゼーのあとに選んだのはSiiibo証券でした。理由を聞かせてください。

宮崎:あるとき大学院時代の同級生で弊社の代表を務める小村(和輝)から「週末だけでも手伝ってほしい」といわれたのが、Siiibo証券に入るきっかけでした。

河西:いずれ入社する心づもりで手伝いはじめたのですか? それとも手伝ううちに徐々に気持ちが変化してお入りになった?

宮崎:それで申し上げると完全に後者ですね。私はどちらかといえばゼネラリストで裏方気質。自分で起業するよりも誰か熱いパッションを持った人を支える立場の方が役立てるだろうなという思いは以前から持っていました。でも小村と違い私には金融のバックグラウンドはありません。小村のやろうとしているビジネスが本当に解くべき課題かどうか最初のうちは判断がつかなかったんです。しばらくの間、仕事の合間を縫ってミーティングの議事をまとめたりタスクの進捗を管理したりするうち、徐々に個人向け社債市場の小ささや、需給の間を取り持つシステムの必要性を痛感して考えが固まりました。

公私にわたるお付き合いで深まる信頼関係

改めて、現在、宮崎さんはSiiibo証券でどんな職務を担っていらっしゃいますか?

宮崎:代表と協力して経営方針の策定にも関われば、採用や社内制度・プレゼン資料作りにも携わりますし、ときには関係当局との対応を行ったり、関連法規を読み込んでエンジニアと一緒にシステムの仕様を考えたりすることもあります。スタートアップのCOO(最高執行責任者)は、社内における最後の砦。それだけに業務範囲は多岐にわたります。今の事業ステージだと、同じCOOでも「チーフ・オペレーティング・オフィサー」というより、何でも屋に近い「チーフ・アザーズ・オフィサー」なのかもしれません。

Angel Bridge との出会いについて教えてください。

宮崎:2021年の夏にお会いしたのが最初でしたね。

河西:はい。Siiibo証券さんのメンバーと私どもの投資先のメンバーに共通の知人がいらして、その紹介でお会いすることになりました。実は面会のお約束をいただく前からSiiibo証券の存在は耳にしており、近々ぜひお会いしたいと思っていたんです。実に絶妙なタイミングでの出会いでした。

宮崎:河西さんは「われわれのことも知っていただきたいので」とおっしゃって、早々にメンバーの皆さんを伴ってオフィスを訪ねてくださいましたよね。お会いした3か月後にはシリーズBラウンド投資にも参加してくださいましたし、意志決定はどのVCよりも早かったのが印象に残っています。

河西:そうでしたね。ネット証券会社をゼロから立ち上げるのは並大抵のことではありません。それにもかかわらず、すでに第一種金融商品取引事業者登録も済ませておられましたし、代表の小村さん、宮崎さんをはじめとした、経営チームの皆さんの優秀さに惹かれました。困難をものともせず課題に真正面から向き合っている姿を見て「決して途中で投げ出すことはない」と、確信しました。これはご支援しないわけにはいきません。そんな気持ちが、意志決定の早さに表れたのだと思います。

Angel Bridgeからはどんな支援を受けていますか?

宮崎:取締役会の運営についてご支援いただいたのが最初です。シリーズAからシリーズBに移るタイミングは、カルチャーや制度を含め、アーリーステージからの脱却が課題になります。河西さんをはじめ、Angel Bridgeの皆さんには、アジェンダの設計、報告すべき内容、KPI、討議すべき課題の優先順位など、他社の事例を交えながら丁寧にレクチャーしていただきました。現在は引き続き定例ミーティングで助言をいただいているほか、代表の小村の相談相手として力強いサポートをしていただいています。

Angel Bridgeが、他のVCと違うと感じる点があれば教えてください。

 宮崎:バーベキューやお食事会を開いてくださったり、フィンテック業界以外の起業家を交えた勉強会にお誘いいただいたりと、相互理解を深めることに気を配ってくださってくださるおかげで、私たちのことを人間性を含めて一番よくご存じのVCという印象です。プロフェッショナリズムには信頼できる人間関係が欠かせないと思われているからこそ、公私にわたるコミュニケーションを大切にされているのだと感じます。

河西さんは宮崎さんのお人柄をどう見ていらっしゃいますか?

 河西:代表の小村さんがグイグイとビジネスを引っ張っていくタイプに対して、宮崎さんはコミュニケーション能力高く社内の潤滑油のような存在だと思っております。小村さんのアイデアや構想を受け止め、周囲を巻き込みながら着実に実務に落とし込み実行に移していく。そんな実務家でありながら、一方で周囲に気配りができる方。そんな印象を持っています。

宮崎さんは河西さんの人となりを、どんなふうにとらえているんですか?

宮崎:河西さんはバイタリティがあり投資の目利き力がありながら、投資先に対して課題や問題点を指摘するにしても相手にストレスを与えずフランクにアドバイスしてくださるので、不安が先立つことが多いスタートアップの経営陣には良きメンター的な存在です。

「社債といえばSiiibo証券」といわれる会社に

宮崎さんはこれからSiiibo証券を通じて、どんな社会を実現したいですか?

 宮崎:貯蓄から投資へと日本人の資産形成のあり方が大きく変わりつつあります。これからも引き続きSiiibo証券を通じて、社債のメリットを広く社会にお伝えしながら、発行企業、投資家双方に有望な資金調達・投資の選択肢を提供したいと思っています。その結果「社債といえばSiiibo証券」といわれるようになれたらうれしいですね。

Angel Bridgeは、これからどんなバックアップを提供されますか?

 河西:これまで通り資金面や事業面でのご支援はもちろん、精神的な面からも積極的にサポートを提供しながら、より深いレベルで信頼関係を築ければと思います。宮崎さんがおっしゃるように「社債といえばSiiibo証券」といわれるよう、私たちも助力を惜しまないつもりです。

最後に現在プロフェッショナルファームや投資銀行などにお勤めで、スタートアップに関心をお持ちの読者にメッセージをお願いします。

 宮崎:スタートアップに飛び込んだ途端、会社の看板がなくなり、自分の身ひとつで課題と向き合うことになります。きらびやかで華やかなイメージがあるかもしれませんが、むしろ泥臭いことのほうがはるかに多いので、ゼロから学び直す気持ちでチャレンジしたほうがいいように思います。スタートアップは細かい失敗と挫折の連続です。特に経営者としてくじけずやりきるには「この人たちのためなら、どれだけしんどくても頑張れる」と思えるテーマや信頼し合えるメンバーでビジネスをすべきではないでしょうか。もしそんな人と出会えたら、スタートアップにジョインするチャンスかもしれません。

河西:答えが見えない大きな課題に挑むのは、コンサルをはじめプロフェッショナルファームもスタートアップも同じです。取り組むべき課題を見つけたなら、宮崎さんのようにどんどんチャレンジしてほしいですね。Angel Bridgeはこれからもアグレッシブな起業家マインドを持ったビジネスパーソンを応援し続けます。

2023.07.03 COLUMN

前回のスタートアップアカデミー#5-1では、Angel Bridgeが行うハンズオン支援の「組織」についてご紹介しました。

本記事では、Angel Bridgeが行うハンズオン支援の「事業・ファイナンス・経営のPDCAサイクル」について詳しく説明していきます。

 

1. 事業支援

「事業(モノ)」に関する支援では、企業の戦略策定に向けた壁打ちと顧客紹介を主に実行しています。

戦略策定の壁打ちでは何をしているのか?

月次定例会の中で戦略策定の議論を行い、事業戦略やIPO、資金調達などの様々な経験を生かしたアドバイスをします。Angel Bridgeのメンバーはコンサル・投資銀行出身者が多く、その経験を活かして経営課題の特定やKPI設計のサポートを行います。

具体例として、価格感度分析を行ったLocusBlueの事例があります。
以前LocusBlueの宮谷CEOにインタビューした時、次のようにおっしゃっていました。

宮谷:以前、価格体系を見直すにあたって、何を基準に妥当な価格を決めるべきかわからず悩んでいたとき、Angel Bridgeさんから「価格感度分析をやってみませんか」と提案いただいたことがありました。顧客に送る調査項目のリストアップから分析資料の作成までテキパキと進めてくれたおかげで、私は調査票をお客様に送って結果を聞くだけ(笑)。以前から数値分析に強い方々とは聞いていましたが、そのクオリティの高さはまさに戦略ファーム品質で感動を覚えるほどでした。

(参考記事:元エアバスの技術者が狙う建設DX [ローカスブルー宮谷聡代表 × Angel Bridge 林])

このような形でAngel Bridgeは戦略策定において投資先企業に対し、豊富な経験を活かしてプロジェクトベースで様々なアドバイスやサポートを提供しています。

 

顧客先の紹介事例

顧客先の紹介では、製品・サービスの営業先など、今後の事業拡大に役立つ可能性のある企業を紹介します。ベンチャー企業はまだ信頼が不足しており、ネットワークも脆弱で自社でリーチできないケースも多いため、VCが補っていくことが必要でしょう。

Angel Bridgeが行った営業先の紹介の一例として、飲食店DXサービスを手掛けるベンチャー企業であるGoalsの新たな導入先への営業支援が挙げられます。Angel Bridgeでは、自身のネットワークを活用してGoalsに対して飲食店の営業先を紹介しました。数十~数千の店舗を持つチェーン店でも、食材発注システムの内製化は難しくDX化がまだまだ進んではいないというのが現状です。以前Goalsの佐崎CEOにインタビューした時、次のようにおっしゃっていました。

佐崎:経営に関する課題についてご助言いただいているのに加えて、食品業界に豊富な人脈を持っていらっしゃる、パートナーの林さんのご助力で、大手外食チェーンの経営陣にお引き合わせいただくなど、特に営業活動の面で多大な支援をいただいています。

河西:林からはお客様候補をご紹介させていただき、私からは共有いただいた経営指標をもとにした数値分析や業界分析など、主に経営や営業戦略の面からサポートさせてもらっています。経営のPDCAサイクルを回す上で必要な支援は可能な限り行うというのが私たちの方針です。

佐崎:毎回、大所高所に立った視点でアドバイスしていただけるので、発見や気づきが多く、いつもディスカッションの時間が楽しみです。おかげさまで、当初は和食チェーンを運営するお客様が1社のみという状況でしたが、現在は上場企業を中心に20社ほどのお客様にご利用いただくまでになりました。Angel Bridgeさんのご支援にはとても感謝しています。

(参考記事:AIで食品業界の未来を変える [Goals 佐崎CEO× Angel Bridge 河西])

このような形でAngel Bridgeは顧客先支援も積極的に行っています。商談成功のためには、取締役や経営企画室の方に直接アプローチする事が重要となります。スタートアップだけではなかなかアプローチできない経営層の方を多数お繋ぎし、1,000店舗を超す大手飲食チェーン店の成約にも成功しました。MRRでは300万円と大きく売上に貢献しました。

2. ファイナンス

実践的な調達支援

Angel Bridgeは資本政策の策定や追加の資金調達支援も行います。特に、シードアーリー段階で投資を受けたベンチャー企業にとっては、次の成長段階での資金調達計画が重要です。具体的にはベンチャー企業と協力し、適切な資金調達の時期・金額を検討します。事業計画やピッチ資料の作成をサポートしたり、相性が良さそうなVCや事業会社をリストアップし、ベンチャー企業のニーズに合わせてお繋ぎします。

バイオベンチャーのHeartseedがその一例です。次ラウンドの出資先を探すにあたって、まずリード投資家となり得るVCを探しました。特にHeartseedは大規模な資金調達が必要なため、次のラウンドでも投資が可能なディープポケットのVCに優先的にアプローチしました。次に事業シナジーがある事業会社などもHeartseedに紹介し、大手製薬会社、医療機器メーカー、医療系卸売企業から資金調達を行いました。これまで計5回、累計102億円の資金調達に貢献しました。

 

IPO支援とは何をするのか?

Angel Bridgeは、ベンチャー企業のIPO支援も行っています。ベンチャー企業はIPOの経験がないことが多いため、成功確度を高めるために必要なノウハウやベストプラクティスを提供します。IPOの際には、適切な主幹事証券や監査法人を選ぶことが必要です。そのため、複数の証券会社から提案書をピッチしてもらい、証券会社のチームやエクイティストーリーに基づいて決定します。さらに主幹事証券の決定の手助けに加えて、その後のエクイティストーリーの作成においてもサポートを行います。このようにAngel Bridgeはベンチャー企業のIPOを成功に導くため、幅広い支援を提供しています。

 

3. 経営のPDCAサイクル

経営のPDCAとは

「経営のPDCAサイクル」に関する支援はヒト・モノ・カネをどう回すかといった経営のOS(オペレーティングシステム)のようなものです。取締役会を起点に株主も巻き込んだ年12回の大きなPDCAサイクルを回す体制の構築を支援します。会社の羅針盤となるKPIの設計や経営の見える化など、組織としての運営体制を経営陣と共に作り上げていきます。

図のように会社内のピラミッド構造に基づいた会議体を設計し、現場と経営陣の間、および経営陣同士のフィードバックを円滑に行うことを促進します。

Angel Bridgeは、このような形で経営のPDCAサイクルを確立するための取り組みを行い、ベンチャー企業の成長を支援しています。

 

経営のPDCAサイクルはなぜ重要か?

経営のPDCAサイクルは、経営陣が組織を適切に統率し、持続的な成長を実現するために不可欠なツールです。組織の人数の観点から経営のPDCAサイクルの重要性を深掘りしましょう。

組織人数が30人未満のシード期の場合、事業スピードが重視されるため、経営者と従業員の距離は近く従業員は比較的横並びの組織構造をしています。しかし、このままでは人的リソースが制限されるため、組織を大きくしていく必要があります。ここでよく言われるのは、「30人の壁」問題です。なんとなくで上手く従業員をまとめ上げてた経営者の多くは従業員が30人になった時に躓きます。乗り越えるためには、仕組みで支えられた経営へ早期に移行する必要があるのです。

KPIの設定と会議体の設計が適切に行われていると、執行の細部までマイクロマネジメントを行わなくても企業全体の状況が把握できます。社内メンバーに「権限移譲」ができ、経営者が一人で全てを見る必要が無くなるため、今後の成長戦略など特に経営者が取り組むべきことにリソースを注力できます。

さらに、経営のPDCAサイクルが上手く回っていると、IPOを達成した後の株主に対する適切な情報開示も円滑に行うことができます。

 

4. ステージごとの支援内容

Angel Bridgeはシード期からIPOまで一貫した支援メニューを提供しています。これまでに説明したハンズオン支援を、企業のステージごとに振り返りっていきましょう。

まずシード期は事業戦略の壁打ちを行ったり、実証実験の相手先のご紹介を行います。アーリーステージに差し掛かり、次の資金調達が近づくとそのサポートを行います。さらに調達した資金を使って事業が成長してくると、経営人材採用支援や事業提携先の紹介を行います。ミドル/レイターに入るとIPOに向けての人材採用支援、そして引き続き資金調達支援も行います。IPOが数年後に見えてきた際には、監査法人の選定・主幹事証券会社の選定・エクイティストーリー構築支援も行っていきます。

さらに、これまで行っていた定例会がIPO準備のタイミングになると取締役会へと移行していきます。取締役会に移行してからも経営のPDCAサイクルがより一層回るよう支援します。

このような形で投資したタイミングからIPOまで一貫したサポートをAngel Bridgeは実施しています。

5. まとめ

前回から引き続き、組織、事業、ファイナンス、経営のPDCAサイクルの4つの側面からAngel Bridgeのハンズオン支援を説明してきました。Angel Bridgeは単なる資金提供に留まらず、豊富な経験とネットワークを活かし、ベンチャー企業と共に走り抜けるパートナーとしてサポートしています。

VCと言っても投資先企業とのかかわり方は、多種多様です。最近ではSNSやブログ記事、イベントなどで積極的に情報発信しているVCも多いので、簡単にチェックすることができます。投資先の企業から評判を聞いたり、知人のツテを使うなど情報収集を行いましょう。アプローチ方法としてはツイッターアカウントへのDM・オフィスアワーへの申し込み・HPへの問い合わせ・人づての紹介・イベントへの参加など様々考えられます。後悔のない資金調達ができるよう、最大限活用していきましょう。