2021.09.27 INTERVIEW

海外での移動の不安を取り除きたい

SmartRydeはどのような事業を行っているのですか?

木村:SmartRydeは空港送迎に特化したマーケットプレイスです。地元のタクシー事業者と、オンライン上で取引を行う旅行事業者であるOTA(Online Travel Agency)をマッチングするビジネスを展開しています。

SmartRyde

旅行客のどのようなペインを解決しているのですか?

木村:オンラインで旅行を手配する人は世界的に年々増えており、OTAもそれに伴い増えています。しかし、航空券やホテルなどを別々で予約するのは非効率で手間がかかります。そこで、一つのサイトで航空券・ホテル・現地での移動までセットで予約するという世界観が広がってきており、我々はこの中で現地での移動サービスを提供しています。

Uberなどの事業者ではこのペインは解決できないのでしょうか?

木村:OTAは世界中の旅行商品を扱っていますが、Uberが実際にオペレーションできている国は限定的です。そのなかで、世界中の空港送迎を航空券やホテルとまとめて予約できるというのは、非常にエンドユーザーに対する付加価値が高いと思います。

なぜベンチャー企業であるSmartRydeが世界トップクラスのOTAと提携できるようになったのでしょうか?

木村:一番大きなターニングポイントとなったのは、2018年に中国の大手OTAであるCTripと接点を持ち提携に至ったことです。CTripはグローバルでも非常に名前の通ったOTAですが、そういったOTAとベンチャーが提携しているという実績がトラックレコードになり、ExpediaやBooking.comといった大手OTAとも連携できるようになりました。

どれくらいの数の空港をカバーしているのですか?

木村:現在は700の空港をカバーしています。しかし世界中には約3,500の空港がありまだまだ20%くらいしかカバーできていないので、さらに広げていく予定です。

創業した当初はCOOの朝川が旅行業界でのキャリアを通して培った現地の会社とのネットワークを頼りにしていましたが、去年からビジネスデベロップメントのチームを各国に作り、各地域の担当者が新規の空港・タクシー会社の開拓、そしてリレーションシップの構築もしています。

起業家シェアハウスで生まれた繋がり

なぜSmartRydeを設立しようと思ったのですか?

木村:もともと起業にずっと興味があり、大学2年生の時に大学の近くに起業家のシェアハウスができたというニュースを見て、そこに住むことを決めました。1年ぐらい住んでいたのですが、周りが新しいことにどんどんチャレンジしていくのを見て、自分も何かやりたいと思い起業を決めました。

SmartRyde

なぜこの事業をやろうと思ったのですか?

木村:まず元から旅行が非常に好きで、大学1年目に東南アジアに行きました。その時航空券やホテルはOTAで予約したのですが、空港からの移動はその場で手配し、タクシーに乗りました。しかし、ぼったくられたり全然違うところに連れていかれるなどハプニングが大変多く、こういった現地での移動もユーザーのペインとしてあるのだなと痛感しました。そこで、空港からの移動のハードルをまず下げたいと思い、この事業で起業をするに至りました。

起業時はどんなメンバー構成だったのですか?

木村:元々1人で起業し、そこから人を集めていきました。COOの朝川はシェアハウスで出会ったのですが、25年以上の旅行業界経験を持つこの分野のプロフェッショナルで、ハイヤー会社に強いネットワークがありました。

CFOの池田は外資系の証券会社に勤めていましたが、彼もシェアハウスで出会い、CFOとして参画してもらうことになりました。いろんな経験のあるメンバーにサポートしてもらえる環境がシェアハウスを通じて出来ていたことに気づきました。

現在は他にどんなメンバーが集まっているのですか?

木村:今はカンボジアやタイなど海外にもオフィスを展開しており、ビジネスデベロップメントは基本的に海外オフィスで行っています。海外のメンバーにはまずオペレーション業務からスタートしてもらい、2年ほど経験を積んだ後、営業やマネージャーの部署などよりバリューがある部署に異動し活躍してもらえるような設計にしています。またエンジニアも最近オーストラリア人を採用したりなど、国籍を問わず優秀な人は採用するという方針をもっています。

例えばヨーロッパの人は日本人が行かないような地域にたくさん行きますが、そういった地域は朝川のように海外での経験が長いメンバーや、海外に住んでいるメンバーに聞かないと情報がすぐ入ってきません。SmartRydeにはベネズエラ、インド、アフリカに住んでいるようなメンバーもいるので、そういった情報がスピーディーに手に入り、それをもとにすぐサプライヤーの開拓をしたりOTAを広げることができているのが我々の強みだと思います。

海外に進出するという大きな絵を共に描くこと

Angel Bridgeとはどのように出会ったのですか?

木村:CFOの池田の繋がりでAngel Bridgeを紹介してもらい、オフィスに伺いました。そして最初の河西さんとのミーティングでかなりの質問攻めにあったのを覚えています(笑)。ホワイトボードにビジネスモデルの図を書き、どういうふうに空港を広げていくのかとか、1回目とは思えないくらい白熱した議論をしました。こちらも一生懸命力を出し尽くして、最初のミーティングを終えました。

林:河西は真理の探究がライフワークなので、ビジネスでも真理をとことん探求してしまうんですよね(笑)。

SmartRyde

木村:初めてのミーティングであそこまでの質問攻めにあったことがなく、だいたい初回は簡単に会社紹介をしてその後質問シートをもらうケースがほとんどだったので、とてもびっくりしました。しかし、我々も本質的なご質問をいただくことでビジネスモデルについて深く考える機会になりましたし、投資検討の段階から伴走しているような感覚を勝手に持っていました。

なぜAngel Bridgeから投資を受けようと思ったのですか?

木村:まずキャピタリストの方々皆さんがとても魅力的でした。事務所にお伺いするだけではなく食事にも行ってパーソナルな話もさせてもらいましたが、投資前に食事に行ったのは初めてだったのでとても印象に残っています。親身になって伴走してくれるのではないかというのが当時期待としてありました。

シードアーリーの段階ではリソースがまだ足りていないので、経営者として色々なことをやりながらも困ることが多いです。例えばタイの現地法人をどう展開していくのかが分からず林さんに相談した際は、タイでの経験に長けている方を紹介いただいたりもしました。あらゆる点でご支援いただけることは、Angel Bridgeの良いところだなと思っています。

今でも経営戦略についてアソシエイトの八尾さんにフィードバックをもらったり一緒にディスカッションできているのは非常にありがたいです。

なぜSmartRydeに投資しようと思ったのですか?

林:経営者の木村さんから、凄まじいやり切り力やエネルギーを感じたからです。木村さんがこんなに大きなエンジンをどこに積んでいるんだろうという動機の確認にとても時間がかかりました(笑)。しかしお話ししていくうちに元々スケールの大きな方なのだと分かり、大きな絵を描いているというのを確認し、投資させていただくに至りました。

また、当初から木村さんより年上のメンバーが沢山いらっしゃって、特にCOOの朝川さんのような経歴のある方が木村さんのようなお若い方と組んでやっているのが非常に印象的でした。話していくにつれて、朝川さんは旅行業界でのビジネス経験が長く、その経歴を木村さんとSmartRydeに惜しみなく提供したいと思っている非常に純粋な方だということが分かり、お二人を中心としたチームを心強く思いました。

コロナ禍でもできることを積み上げていく

新型コロナはSmartRydeにとってかなりの逆境だったと思いますが、どう立ち向かったのですか?

木村:新型コロナはSmartRydeにとってすごく影響があり、当時月次で1,400万円くらいだった売り上げがほぼ無くなるというのを2020年4月に経験しました。最初は中国だけだと思っていましたが、それが4月になるとほぼすべての国に旅行者が入国できなくなり、衝撃を受けました。

それからは売上をすぐに伸ばすというよりは、生き残るべく今どういった対策をできるのかを全て洗い出しました。当時進めていたけれども一旦ストップした施策もありますし、コストダウンしたところもありました。あとはどういったタイミングで事業を回復させるかを試行錯誤していきました。

コロナ禍でも毎月Angel Bridgeと定例会をさせてもらい、今の状況は報告しながらも、こういうことをトライしてみたら?など一緒にディスカッションし、心理的にとても助かりました。報告することも少なかったのですが、やっぱり報告や相談が大事だということで定例会を続け、その時にいろんなコミュニケーションをとるなかで、やっぱり親身に支援してもらっているなとつくづく感じました。

SmartRyde

林:一度応援させていただくと決めたら最後までずっと応援しますよ。

木村:起業家としてはこれ以上ないありがたいことだと去年痛感しました。

林:旅行業界は10年に1回鳥インフルエンザなど大変なことが起こる、だからいろんな国にリスクを分散し展開するのだと昔朝川さんがおっしゃっていました。でも今回の新型コロナはリスクの分散を超えてしまった。これは難しい例ですね。

木村:50年以上旅行業界に携わっている人に聞いても、新型コロナはいままでの天変地異とは規模が違うと言われました。だいたいどこかがストップしてもどこかは動いているというのがこれまでの旅行業界でしたが、今回の新型コロナでは全世界がストップしました。だれも経験したことがないことを去年経験したと思っています。

その後に少しずつ希望の光が見えてきたのは去年の秋ぐらいからです。それまでの期間は事業を止めず、広げられるところは今広げるのがいいだろうということで提携しているOTAとタクシー会社を2倍以上に増やしていましたが、こういった強化の取り組みが秋ごろから成果として出てくるようになりました。

林:コロナの中でもできることを積み上げていきましたね。

一番初めに回復の可能性を感じたのはカリブ海です。メキシコのカンクンやドミニカ共和国のプンタカナなどがまず伸び始めました。初めて聞いた地名でしたが、アメリカ人がよく行くリゾート地だと知りました。このエリアは観光産業で成り立っているので、1年以上ストップすると経営が立ち行かなくなり、そこにアメリカ人の入国が緩和されたことで、観光客が増えていました。そのトレンドが掴めたので、カリブ海のニーズをしっかり取ろうと集中的に事業開発をしたことで数字が回復しました。

この経験から、日本人の感覚でビジネスを考えてはいけないなと強く感じました。日本では移動がまだまだストップしていましたが、アメリカ人はアクティブでした。広い視野で物事を考えるのが大事だと痛感しましたね。

今回はコロナ禍での資金調達でしたが、どのように押し進めたのですか?

木村:今回のラウンドでは、リードのAngel Bridge以外にも、金融系やコーポレート、海外のVCにも出資をいただきました。

まずシリーズAの調達をするというタイミングで、Angel Bridgeに調達をやりたいですとご相談したのが去年の12月の定例のミーティングでした。その時にまず事業計画書を作って見せて欲しいと年末年始の宿題を出され、頑張って作りました(笑)。すぐに提出しアドバイスをいただき、ある程度きちんとした資料ができたところで投資家回りをスタートしました。

一番初めは私が以前からお付き合いがあったVCにアプローチしその反応を見てから、優先順位まで細かく分析したVCのリストをAngel Bridgeからいただきました。次のラウンドでどんなVCにアプローチすればいいのかもなかなか分からなかったので、非常に助かりました。また直接色々なVCの紹介もいただき、投資実行まで至ったVCもあったので、Angel Bridgeのご支援があってのシリーズAの調達だったなと振り返ってみて思います。

まだまだ旅行に対しては逆風ですが、SmartRydeの予約が増えているという数字によって旅行業界が回復してきているというのをお示しすることができたのと、アメリカのようにある程度ワクチンが普及すれば旅行が戻るというエビデンスも出てきていたので、外部環境が良くなってきたのは追い風でした。

本気で取り組めるビジネスで起業する

SmartRyde

後輩起業家に伝えたい、起業するにあたって気を付けるべきポイントはありますか?

木村:起業する時、どんなビジネスを立ち上げるか色々考えると思います。その際、考慮することの中で例えばマーケットや市場規模なども大事です。しかしそれ以上に、本当に自分がやりたいことなのかはもっと大事だと思っています。ビジネスをしていると、大なり小なり壁に当たります。その時に、本当にやりたいことであれば、困難な状況でも前を向いてやり切れると思います。起業では継続力こそ一番大事なんじゃないかと思っています。

SmartRydeをどんな会社にしていきたいですか?

木村:グローバルな会社にしていきたいと思っています。それは、サービスやプロダクトに限らずに人材や文化なども含めた真のグローバルな会社です。空港送迎は二ッチなマーケットですが、グローバルでの展開が可能です。さらに、将来的にビジネスを周辺領域に広げていけて、TAMの拡大余地が高いなと感じています。グローバルなビジネス展開をすることで、日本に限らず世界中の優秀な人材がSmartRydeに流れてくる組織を目指していきたいです。

SmartRydeの事業を通して何を社会に届けたいですか?

木村:私たちのミッションは「移動を通じて地域社会の持続的発展に貢献する」です。私たちは、地元の交通事業者が軸の会社です。現在注力をしている空港送迎は、特に観光地のタクシー、ハイヤー、バス事業者にとっては大きな稼ぎ頭になっています。今後私たちのプロダクトを通じて、地元の交通事業者にとってなくてはならない存在になっていきたいと思っています。その先に、移動を通じて地域社会の安心安全な生活や旅を実現することで、地域社会の持続的発展に貢献していきたいと思います。

2021.09.27 COLUMN

今回は、AI技術を活用してソフトウェアテストを自動化するクラウドサービス「Magic Pod」を開発・運営している、株式会社MagicPodへの投資に至った背景について解説したいと思います。

ノーコード/ローコードとは、アプリケーションなどの開発やテストを行う際にコードを書かない、もしくは少ないコードでも開発ができるというものです。ノーコード領域はグローバルで注目度が高く、またソフトウェアテストの自動化ニーズも急速に顕在化してきており、今後市場が拡大することが予想されています。

Webブラウザ向けテストは比較的容易に実現可能であり多くのプレイヤーが存在していますが、一方でモバイルアプリのノーコードテスト自動化ツールは高い技術力を必要とし、世界でも成熟したソリューションとして製品化できているプレイヤーはTRIDENT以外に存在していません。こういった背景から、非常に可能性のある領域だと考え、投資に至りました。

それでは今回はAngel BridgeがTRIDENTに投資する際にどのような点を検討したかについて、ご紹介します。

サービス概要

まずTRIDENTのサービス内容について説明します。

エンジニアでない方には馴染みがないかもしれませんが、ソフトウェアテストは開発工程の30%を占める重要な工程であり、その中でTRIDENTが取り組むのはE2E(End to End)テスト領域です。

サービス概要

E2Eテストとはシステム全体が正しく動作することを確認するもので、アプリやWebサービスをバージョンアップした際にはリリース前に必ず実機でのテストをします。具体的には利用者による画面操作により、想定通りの動作となっていることを確認します。特にE2Eテストは多くの場合エンジニアがいちいちスマホやタブレットを何個も用意して手動でリリース前に動作確認しているため、ミスも起こりますし時間もかかります。またローンチ前に毎回手動でテストを行うため、ローンチサイクルを早める上でボトルネックとなります。

E2Eテストを自動でできるエンジニアもいますが数は多くなく、そういったエンジニアを雇っていたとしても、バージョンアップのたびに動作しなくなるためコードのメンテナンスが必要で工数が割かれてしまいます。こういったテスト工数の削減は大きな課題でした。

手動テストはこのように時間も工数もかかり品質面でも問題がありますが、一方でプログラムを書いて自動テストを行うハードルが高く、未だに多くの企業で手動テストが行われています。そういったペインを解消しているのが、TRIDENTが開発している「Magic Pod」でした。

Magic Pod

Magic Podでは、UI変更やiOS⁄AndroidのアップデートにもAIが自動対応しており、ノーコードで専門知識がなくても比較的容易にテストプログラムを構築できます。月々数万円で導入できるため、かなりのコスト削減になります。

テスト作成手順

Magic Podを活用したテスト作成手順は以下の通りです。

AIエンジンがアプリケーションの画面から項目を自動検出するので、ノーコードで非エンジニアでも簡単に自動テストを実装可能です。

テスト作成手順

またテスト対象アプリケーションのUIに変更があった時には、AIが自動でスクリプトを修正しテストスクリプトのメンテナンスの手間を大幅に削減します。

競合

次にTRIDENTの競合についてです。まずソフトウェアテストには、「Webブラウザ向けテスト」と「モバイルアプリ向けテスト」があります。

Webブラウザは更新ペースが比較的遅く、端末による挙動の違いを考慮する必要もないことから、比較的容易に実現可能です。また市場規模もモバイルアプリ向けテストより大きく、そのため多くのプレイヤーが存在しています。

一方で、モバイルアプリのテストはWebと比較して圧倒的に実現が困難です。まず、iOS⁄Androidの更新ペースが速いため、頻繁にテストを実施する必要があります。また、様々なモバイル端末で動作確認する必要性があり、ミスも多くコストもかかります。さらに、ベース技術となるソフトウェア(Appium)が開発されてから歴史が浅く、トラブルが多く安定性に欠けていることも課題です。

また、手元端末では接続状況などの環境要因が不安定で動作が重すぎるという課題が存在し、さらに手元端末へのインストール作業が複雑であることから、クラウド仮想端末の開発も必要になってきます。こういった難易度の高さに加え、市場はWebブラウザに比べると少ないことから、世界でもTRIDENT以外に成熟したノーコードのサービスを提供できているプレイヤーは存在しません。

競合

このような市場環境の中で、TRIDENTはモバイルアプリとWeb両方に対応した、ノーコードで非エンジニアでも扱えるツールというユニークなポジションを確立しています。日本でもトップクラスのエンジニアが複数結集してチームを組成していることから、こういった難易度の高い技術を提供できています。

Magic Podは実際に技術力のある大手IT企業での導入実績も多数あり、投資検討をするにあたり実際に複数の導入企業にインタビューを行いました。その結果、優秀なエンジニアを抱えるベンチャー企業でもテスト自動化のニーズは強く、Magic Podは競合比較でも高い評価を得ていることがわかりました。

導入実績

経営陣

Angel BridgeがTRIDENTに投資するにあたり、経営する皆様への理解を深めました。

まず代表の伊藤氏は、本の執筆やコミュニティでリーダーを務めるなど、テスト自動化領域では名の通った日本でも屈指の技術力を持つ人物です。AIと組み合わせることで自動化ツールを実現できるという発想を得たことから、本領域で本格的な事業拡大を開始しています。また、チーフエンジニアの玉川氏は東京大学情報理工出身のエンジニアで、ソフトウェアテスト自動化領域において著書や講演実績もある著名な人物です。

経営陣

テスト自動化のプロフェッショナルである伊藤氏のもとに日本屈指の技術力を持つエンジニアが結集しており、このようなテクノロジーにエッジを持つ経営陣が結集してチームを組成していることで、こういった難しい領域でも勝っていけるのではないかと感じました。

おわりに

TRIDENTの経営チームは全員がエンジニアで、マーケティングは一切せずにユーザーの声を一生懸命聞いてプロダクトを磨きこんできました。結果としてエンジニアリング力の高いユーザーから高いエンゲージメントを得ています。PMFする前にマーケティングを闇雲に行うのではなく、しっかりユーザーと向き合うことが大事ですし、それが出来ているベンチャーが一番最後に勝つと思います。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2021.09.07 COLUMN

みなさんこんにちは、Angel Bridgeでジュニアアソシエイトとしてインターンをしている河野です。現在東京大学大学院医学系研究科の修士2年に在籍しながら、週5日間フルコミットで働いています。今回は、Angel Bridgeというベンチャーキャピタルで約半年間インターンをして学んだことについて書いています。最近VCでも学生インターンの募集が増えてきたので、VCのインターンってどんなことをするの?と疑問に思っている学生の方々の参考になればと思い、記事を書くことを決めました。文章を読んだだけではイマイチぴんとこない部分も多いかもしれませんが、できるだけイメージしやすいよう書いてみたいと思います!


Angel Bridgeの第1号インターン生となった経緯

それではここで、私がAngel Bridgeでインターンを始めることになった経緯について簡単に紹介します。

私はAngel Bridgeで働く前にもLinc’wellというヘルスケア領域のベンチャー企業で2年ほどインターンをしていました。もともと私は東大に入学したころは研究者志望で、国立の研究所にて長期インターンをしていましたが、段々とビジネスサイドにも関わってみたいと思うようになり思い切って応募してみたのがきっかけで、Linc’wellでもインターン1号として働くことになりました。私がジョインした頃はまだメンバーも少なく、毎日がむしゃらに働いていてとても楽しかったです。

Linc’wellはもの凄いスピードで成長しているベンチャーで、働いている中で資金調達の話題が出たり、既存VCについて考える機会もありました。そして、こんなにワクワクするベンチャー企業と関わることができるVCの仕事はさらにワクワクするのでは?と感じるようになりました。

VCはインターンどころか新卒を募集しているところもほとんどないような業界で、なかなかインターンをするのは厳しいのかと考えていました。しかし当時参加していた大学のゼミのTAとして弊社アソシエイトの八尾が参加していることに気づき、ダメもとで連絡してみたところ、無事インターン生1号として働くことが決まりました。

一見新卒やインターン生を募集していないように見える企業でも、ダメもとでアプローチしにいく姿勢が大切だと思いますし、これは学生の特権のような気がします。

Angel Bridgeのカルチャー

日本にはいろいろな母体のVCがありますが、Angel Bridgeは外資系投資銀行・PEファンド出身の河西が2015年に設立したVCです。

Angel Bridgeのキャピタリストは私が加入した当初3名しかおらず、同世代のメンバーももちろんいなかったため内心びくびくしていましたが、勤務初日から1週間かけてとても濃密なオリエンテーションをしていただき、その面倒見の良さにとても驚きました。VCの業務の説明から始まり、1社1社投資先の紹介までしていただいたので、VCについて知識がなかった私にとってはとてもありがたかったです。

また、仕事外でもゴルフに行ったり、宮古島でアウティングをしたりと、とてもアクティブに楽しんでいます(笑)

インターンを通しての学び

それでは本題に入りますが、半年間どのような業務をVCで行ってきたのか、それにより得られた学びについていくつか紹介していきたいと思います。

ソーシング・目利き

まずはベンチャーのソーシング・目利きについてです。ソーシングとは投資先となるベンチャー企業を探すことを指し、その後投資決定に至るまでの検討過程を目利きやデューデリジェンスと言います。

私が働き始めてからはずっとコロナ禍で、オフラインのイベントなどに参加してソーシングをするような機会はなかなかなかったため、リストを使ったソーシングが主でした。具体的には、INITIALのようなデータベースを使って、事業内容や過去調達歴などのテーマで絞りソーシングをしました。

ソーシング活動を経て学べたことは沢山ありますが、その一部をご紹介していきます。

1. 起業家から見えている世界
VCでインターンを始めてまず、日本にはこんなに沢山の起業家がいるんだ!と大変驚きました。起業家の方々は何か強く信じているものや、成し遂げたいことがあって起業されていますし、ソーシングを通した対話の中で大変刺激を受けました。
身の周りに実際に起業している人がいないとなかなか起業のイメージが湧かないと思いますが、VCで働いていると起業をより身近に感じることができます。私自身起業を勧められることはあっても具体的に起業という選択肢を考えたことはありませんでしたが、実際に何人もの起業家の方とお話をすることで、初めて起業という選択肢をリアルにイメージできるようになりました。
また、起業は確かにリスクを伴うかもしれませんが、それ以上に、無事上場しさらに会社を成長させていく時やその過程で得られるもの、見える世界は素晴らしく、リスクを取るに値するのだと起業家へのインタビューなどを通じて感じました。
例えば、自分が作ったものが世に出ていき誰かのためになる瞬間はきっとかけがえのないものですし、同じ志を持ったメンバーがどんどん集まって組織が大きくなっていく感覚や、一緒に多くの困難を乗り越える経験は、やはり実際に起業することでしか得られないのだと思います。
2. ビジネスの本質を見抜く感覚
起業家にコンタクトをとるか否かを決める際の判断基準として、自分の中でいくつか最低限チェックするポイントを決めています。この判断基準はソーシングを重ねるにつれてブラッシュアップされていきましたし、それにつれて判断の精度も上がっていったと思います。
ビジネスの本質を見抜く感覚
また、実際に起業家と初めて話した後投資に至るまでには更にデューデリジェンスをする必要があります。こちらの記事に詳しくまとめていますが、ビジネスモデル・市場環境・競合などのビジネス面と、経営陣の経歴・人柄に至るまで様々な点を短期間で検討します。特にシード段階だとこの中でより経営陣の比重が大きいと思います。
誰しも人生で一度は自分のアイデアをピッチする機会があると思うので、そのビジネスが将来成功するかを現状の情報だけで判断するためにどういったポイントを見られているのか、もしくは見るべきなのか学ぶことができるのは、かなり今後のキャリアに生きてくると思います。
3. ニーズを的確につかみ取り、正しくアピールすること
近年国内のVCが着々とファンドレイズを進めており、起業家にとってはより一層資金調達がしやすい環境になってきていると思います。そのため我々が投資したいと思うベンチャーを見つけたとしても、そのベンチャーにも我々から投資を受けたいと思っていただき選ばれなければいけません。
起業家との対話の中で、彼らがどういったサポートを必要としているのか、また我々がVCとしてどんなバリューを出していけるのかを探っていくことも重要だと学びました。
バリューアップ

投資後のバリューアップの仕方はVCそれぞれだと思いますが、Angel Bridgeは投資先を絞っており、投資後もニーズがあれば積極的に支援ができる体制を整えています。私は以下の図の中でも特に(事業)についてお手伝いをしてきました。

ニーズを的確につかみ取り、正しくアピールすること

4. 自分の立場だからこそ出せるバリューについて試行錯誤すること
VCの立場から支援できることは限られていますが、ずっと同じ事業をやっていると意外と気づきにくいポイントなどを外部の視点から見つけ、起業家とディスカッションするのは非常にやりがいがありました。外部からの視点だからこそ出せるバリューは何なのかを試行錯誤することは、例えばコンサルティングファームで将来活躍したい方などには特に生きてくるかもしれません。
マーケティング
5. ベンチマークとの差異を可視化し、社内で意識を揃えること
VC自体の業務は以上が主ですが、Angel Bridge自体もまだまだメンバーが少なくベンチャー的な側面があるので、より多くの起業家に知ってもらうためのマーケティングが必要でした。起業家の友人にVCのどういった点を見ているかなどをヒアリングし、Angel Bridgeに足りないものを可視化することで、マーケティングを強化するにあたって社内の意識を揃えることができました。
ここでは私が入社してから行ったマーケティング活動についてご紹介します。
・HPの改訂
まずはHPを大きくリニューアルしました。私が入社した頃はまだ秘密組織的にやっており、HPに詳しい情報をあまり載せていませんでした。そのため、会社のMissionからメンバーのページまで全て一から作り直しました。
HPをリニューアルしたことで起業家の方々とのアポイントメントが取りやすくなりましたし、事前にAngel Bridgeについて知っていただいてからお話しすることが可能になりました。
・記事作成
HPの改訂が終わってから、記事の作成も始めました。Angel Bridgeメンバー・投資先メンバーへのインタビュー、投資先の業界研究記事などを中心に書いています。特に、VCが投資意思決定にいたるまでにどういったことを考慮しているかを紹介した記事はかなり閲覧数がつきました。起業家がどんなコンテンツを必要としているのかを探っていくのもとても面白いです。
・Twitterアカウントの始動
今ではほとんどのVCのキャピタリストがTwitterをやっていますし、有力なソーシングルートになってきていると思います。最初はTwiterをやることに少しためらいがあったAngel Bridgeメンバーも、今では積極的にツイートしてくれています(笑)
こういったマーケティング活動を通して、Angel Bridge知ってます!とか、記事読みました!と言ってもらえる瞬間が増えたことは私にとって何よりの喜びでした。社会を良くするために活動している人がどんどん世に出ていくこと、そして組織が大きくなっていく瞬間に、私はやりがいを感じるなとつくづく実感しています。

少人数の組織で働く際に大切な2つの習慣

最後に、少人数の組織で働く際に気をつけるべきであると私が感じた点についてご紹介します。これはシード期のベンチャー等にも当てはまると思いますが、VCはたいてい少ないメンバーでやりくりしていることが多いので、VCでのインターンにも当てはまる重要なポイントだと思います。

6. 細かな目標設定と振り返りを怠らないこと
メンバーが少ないと、共に高めあう同期のような存在はいないですし、上のポジションも年齢が開いていることが多いので、ベンチマークを見失ったり、自分が成長しているか実感しづらかったりすると思います。
このような状況を回避するために、私はインターン初期に自分のリソースのアロケーションと年間達成目標を設定し、さらに月に1回アソシエイトの八尾に1 on 1をしてもらい目標達成度の振り返りや次の1か月の達成目標を設定するようにしていました。客観的な視点からの評価は必ず成長に繋がると思いますし、これを怠るとだんだんだれていってしまうと思います。
少人数の組織でのインターンは裁量権を多く持ちやすい分、色々なことがあいまいになりがちなので、こういった心掛けが非常に大切です。
7. 自分から仕事を見つけにいく姿勢
メンバーが少ないと尚更、待っていれば上司から仕事が降ってくるというような環境は非常に稀だと思います。そのため、常にファンド全体のステータスを把握しておく心構えが必要です。今ここのリソースが足りていなさそう、そろそろこのタスクに着手した方が良さそうといった、自分から常に動きにいく姿勢がかなり重要だと思います。
「なんだかやることなくなったな」という状態は発生するはずがなく、そこには無限にタスクがあるはずです。上司の仕事を奪いにいくぐらいの姿勢でいることがベストです。

最後に

今までAngel Bridgeで半年間働いてきた中で、VCでのインターンは本当に色々なことが学べる最強の環境だと感じました。この半年間は本当に手探りの状態でしたが、これからはさらに自分で試行錯誤しながら学びを深められるのではないかと強く感じています。

ここまでの長文を読んでいただきありがとうございました。VCのインターンに興味を持たれた方は、ぜひAngel Bridgeのインターンに応募してみてください!

2021.08.17 COLUMN

今回は、起業後に検討することになる資金調達の考え方についてVC目線で解説したいと思います。

設立直後の資本政策はどのように立てるべきか?

資本政策は取り返しがつかないと言われることがあります。株主構成を後から変更することは困難であり、創業初期から計画を立てておくことが必要です。事業の進捗に合わせていつどのようなタイミングでどれくらいの規模の資金調達を行うか、だれに株主になってもらうかを考えます。事業を推進するのに必要な資金とサポートを得ながらも、複数回の資金調達による希薄化を考慮しても経営陣が十分な持ち株比率を維持し、スムーズに会社運営を行える状態を保つことができるような計画を立てましょう。

資金調達の方法は?

ベンチャー企業の資金調達方法には大きく分けて2種類あります。デット調達とエクイティ調達です。まずはこれらの違いについて確認していきます。

Debt vs. Equity Financing: Which One Benefits Your Business the Most
(https://www.fastcapital360.com/blog/debt-vs-equity-financing/)
デット調達
借入による調達のことで、一般的には銀行から事業資金を借りることを指します。デット調達は株式の希薄化をさせずに調達できる点で優れていますが、返済義務がある点はデメリットです。また、特に創業初期においては銀行借入が難しいということも事実です。銀行はお金を貸して、利息を付けて返してもらうことで利益を得ているため、お金を返す能力がある会社にしかお金を貸しません。したがって、どれだけお金を返す能力があるかによってデットで調達できる金額が決まります。創業当初は当然のことながら返済能力を示すことが非常に難しく、借入ができないケースも多いのです。
通常の借り入れとは別枠で、日本政策金融公庫などが運営する創業支援に特化した融資制度もありますので、こちらに応募してみることもオススメです。
エクイティ調達
投資家に株式を新たに発行 する形で行う資金調達で、VCや事業会社やエンジェル投資家が資金の出し手となります。エクイティ調達は返済義務のない資金が得られることや創業初期でもまとまった資金が得られることがメリットですが、株式の希薄化が起こる点がデメリットです。また、上述の通り株主構成は非常に重要かつ取り返しのつかない事項なので、計画性を持って慎重に調達を行うことが必要です。経験のある信頼できる人に相談することがオススメです
INITIAL 2020年 Japan Startup Finance〜国内スタートアップ資金調達動向決定版〜 (https://initial.inc/enterprise/resources/startupfinance2020)
エクイティ調達による調達額は年々増加傾向にありますが、その中でも最もスタンダードなVCからの調達について見ていきます。

VCから資金調達をすることの意味は?

VCから資金調達をすることにはメリットもデメリットも存在します。両方をよく理解したうえでVCから資金調達すべきかどうかを検討することが重要です。

VCから資金調達をすることのメリット
(1) 無担保で返済義務のない成長資金を得ることができる

事業成長に必要な資金を得られることが1つ目の大きなメリットです。創業初期は事業が赤字で、成長資金の融資を金融機関から得ることは困難です。一方で優秀な人を採用し、オフィスを借りて、サーバーを借りて・・・と先行して多くの費用が必要になります。事業は常に競争環境にあり資金調達をして一気に事業成長をさせることは時として成功の必須条件となります。このギャップを埋める資金こそがベンチャー企業の成長性に期待して投資を行うVCマネーです。事業の成長性を訴求することができれば融資では得られない金額の資金を得て、事業を加速させることができます。

(2) 事業成長のサポートを得られる

成長資金を得るだけでなく、その後の事業成長に対して様々な面からサポートを受けられることが2つ目の大きなメリットです。株主となったVCは経営陣と同じ船に乗っています。投資先企業の成功がVCの成功であるため、様々な面で投資先企業のサポートを行います。

VCから資金調達をすることのデメリット
(1) 自由度が失われる

VCが株主となることによって、事業方針の自由度が制限されることはデメリットとして想定されます。例えば急に全く違うビジネスに転換する、事業を辞める、副業を始めるなどはVCに反対されるケースもあります。経営上の大きな意思決定については事前承諾事項として契約書に記載されるケースも多く、VCの株式持ち分比率が低くても起業家が自由に意思決定できない場合があります。気になる場合にはあらかじめ相談しておきましょう。

(2) 情報共有の手間がかかる

VCはファンドに出資しているLP投資家の資金を預かって投資している立場であるため、投資先の状況を把握する責任があります。VCからタイムリーに様々な情報開示が求められるシーンが出てきます。人数が少なく体制が整っていない段階では負担が大きいこともあります。ここについても事前に相談しておくことで負担を軽減できる可能性があります。

これらを理解したうえで適切なタイミングでVCからの調達を受けるのがよいでしょう。創業期の調達手段としては他に金融公庫からの創業融資やエンジェル投資家からの出資が想定されます。創業融資は金額に上限がありますが受けられるものは受けると良いでしょう。エンジェル投資家はもちろん人にもよりますが基本的には良くも悪くも関与は比較的少なく、上記のVCのメリットもデメリットも薄まったようなイメージです。ただし、株主に入る方の風評も含めたバックグラウンドチェックは必須です。

具体的な資本政策の事例

最後に、より具体的にイメージを掴んで不安を払拭していただくために、Angel Bridge投資先のベンチャーがどのような資金調達を行ってきたかを見ていきます。

設立当初は創業融資での調達
3社とも設立当初は創業融資による資金調達を行っています。創業融資にはいくつかの利点があります。借入でありながら返済期間が比較的長期であり利率も低く、期間中は利息のみの支払いで済みます。株式の希薄化も生じず経営の意思決定にも影響がありません。このような点で多くのベンチャー企業が設立時に創業融資を活用しています。使わない手はないと思います。
シード期ではエンジェル投資家やシードVCから調達
初回の資金調達ではエンジェル投資家やシードVCから調達している企業が多いです。これはエンジェル投資家やシードVCがシードベンチャーにしっかりネットワークを張っていることに起因する部分もあります。シード期のベンチャーにとってはアプローチしやすい存在です。
※Angel Bridgeもシード期から投資を行っています。
シード調達のタイミング
シード調達のバリュエーション初回の投資を受ける際の事業ステージとしては最低限機能するプロダクトがあり、既にいくらかのユーザーが存在することが目安です。有料ユーザーを獲得していれば素晴らしいですが、PoC中の無料ユーザーであっても獲得しているかで大きく違います。この状態まで実現してから調達することで、バリュエーションを上げ、起業家の株式希薄化を抑えることができます。
シード調達のバリュエーション
適切なバリュエーションは様々な状況にもよるので一概には言えませんが、目安としてPre1億円から3億円のケースが多いです。A社は社長が戦略コンサル出身で非常に実績があったことと元IT大手のスターエンジニアとの共同創業でPre4億円です。よほど優れた経営陣や、既にユーザーを捉えているというケースであれば3億円を超えるバリュエーションも想定されます。最近はシリアルアントレプレナーの方がいきなり数十億円のバリュエーションで大型の資金調達をされるケースもありますが、多くの方にとってはイレギュラーと捉えたほうが良いでしょう。また、バリュエーションは高ければ高いほど良いと思われがちですが必ずしもそうではありません。一度高いバリュエーションを付けると、その後バリュエーションを下げることはなかなか難しいのが現実です。ダウンラウンドのバリュエーションでの調達となると、それだけで事業がうまくいっていない、資金調達が難航しているというメッセージを外部に出すことになってしまいます。次回以降の資金調達でもしっかりバリュエーションを上げて投資が得られるかどうかも考慮し、高すぎず安すぎず適切なバリュエーションで調達することを目指しましょう。

まとめ

資金調達は事業を成功に導く有効な手段ではありますが、やり直しが難しいため計画的に実行することが重要です。このあたりは特に初回は分からないことも多いと思います。自分で勉強して基礎知識を付けたうえで、経験豊富で信頼できる方に相談することが有効です。VCも相談に乗ってくれます。Angel Bridgeでももちろんサポートいたしますので、ぜひ積極的にオフィスアワーやContact、チームメンバーのSNSからご連絡ください!

2021.08.09 COLUMN

「Angel Bridge投資の舞台裏#1」ではVCが投資判断をするにあたって検討する点についてミツモアを例に紹介しましたが、今回はSmartRydeを例にとって解説したいと思います。
「Angel Bridge投資の舞台裏#1」

SmartRydeは空港とホテルを結ぶハイヤーサービスの予約プラットフォームを運営しています。Angel Bridgeは2019年10月にSmartRydeに投資していますが、その後新型コロナウイルスの影響を受けグローバル全体で観光業が落ち込み、SmartRydeも大打撃を受けました。しかし、アメリカの一部地域では往来が自由になったり、ワクチン接種の普及により観光が回復している国が増えてきたことから、SmartRydeの売上も順調に回復してきています。

それでは、今回はAngel BridgeがSmartRydeに投資する前にどのような点を検討したかについて説明します。

サービス概要

まずSmartRydeのサービス内容について説明します。

海外旅行で見知らぬ空港に着いてまずホテルまで行くとき、どこにバスや電車の乗り場があるかわからない、といった経験をされたことのある方は多いのではないでしょうか。バスや電車の次に選択肢となるのはタクシーですが、料金を多く請求されたり、あまり言葉が通じないといったこともありますし、そもそも夜ならタクシーが空港にいないかもしれないという不安があります。そのためホテルを予約したときにハイヤーサービスを予約したいという人は一定数いるでしょう。これは家族旅行だけでなく、ビジネストリップでも需要があります。

SmartRydeでは、こういった空港送迎のハイヤーサービスを簡単に予約できるプラットフォームを運営しています。OTA (Online Travel Agency) で航空券とホテルを予約すると、最後にポップアップとしてハイヤーサービスがレコメンドされ、SmartRydeのハイヤーサービスを予約できるのです。

サービス概要

また、マーケットプレイスとしてはハイヤーのユーザー以外にも、OTA (Online Travel Agency) ・タクシー/ハイヤー事業者それぞれに関しても以下のようなペインを解消することが可能です。

サービス概要

ビジネスモデル

ビジネスモデルは以下の図の通りです。SmartRydeが間に立ち、OTAとハイヤー会社をマッチングしています。売上の70%をハイヤー会社、残りの15%ずつをOTAと 、SmartRydeが収入として得ています。

ビジネスモデル ※2019年投資時点

実はSmartRydeは少し変わったタイプのプラットフォーマーです。典型的なのはTo Cのユーザーと何かを繋ぐプラットフォームですが、SmartRydeはユーザーではなくOTAとハイヤー会社をマッチングします。いずれにしてもプラットフォーマーがマッチングする双方を多数囲い込んでいれば、参入障壁が高くなります。

SmartRydeはCtrip (中国最大のOTA)、Expedia、booking.comなどのグローバルでトップ3に入るOTAを含め、かなりの数のOTAと既に繋がっており、それによりかなりの流入数を獲得しています。また、ハイヤー会社650社と契約しており、さらに現在は世界中で700以上の空港をカバーしています。いわゆるC to Cよりはネットワークエフェクトは弱くなりますが、それでもこれだけのプレイヤーを巻き込めていることで、同様のプラットフォームの他社による再現性は低いと考えています。

利用実績

SmartRydeは既にグローバルなベンチャーです。従業員の半分以上が海外国籍ですし、全体の75%は海外の利用者であり、特に東アジアへの旅行者にリーチできています。利用都市はタイ・バンコクが一番多く、傾向としては特にホノルルやカンクンなどのリゾート地でのニーズが高くなっています。日本発でここまで海外進出しているベンチャーはなかなかいないのではないでしょうか。

利用実績 ※2019年投資時点

競合

次にSmartRydeの競合についてです。

まずライドシェアとの違いについてですが、Uberのようなライドシェアサービスを使いこなせるようなユーザーはSmartRydeのコアターゲットではないと考えています。例えば日本からアメリカやタイに行くような、現地のライドシェアアプリをダウンロードしていないため事前にハイヤーを予約しておきたいという層がSmartRydeのターゲットとなります。また、そもそもハイヤーとライドシェアでは以下のように利用できる空港周りのエリアや、利用するシチュエーションに違いがあるため、直接的な競合ではないでしょう。

競合

他にも中国や欧州などにハイヤー予約サービスは存在しますが、現地限定で展開しており、SmartRydeのように世界横断でサービス提供できているプレイヤーはいません。
旅行のモビリティ領域には、主に中国市場で展開している皇包車などの企業群、欧州市場で展開しているBlacklane、Talixo等が挙げられますが、SmartRydeは移動コンテンツ拡充/事業者向けプロダクトを強化して競合との差別化を図っています。

競合

経営陣

Angel BridgeがSmartRydeに投資するにあたり、経営する皆様への理解を深めました。

まず代表の木村氏は立命館大学卒の学生起業家で、学生時代にSmartRydeを立ち上げています。木村氏はサッカーで全国高校サッカー選手権メンバー入りで達成しており、やり切り力や根性の強さ、フットワークの軽さがかなりある方だと感じました。実際にこれだけの数のOTAを巻き込めたのも、木村氏の胆力と行動力故でしょう。

経営陣

またCOOの朝川氏は25年以上の旅行業界経験を持つこの分野のプロフェッショナルで、ハイヤー会社に強いネットワークがあり、オペレーションをよく理解していました。

このような旅行業界に長いネットワークのある人と、強いやり切り力のある起業家という稀有なコンビネーションは相互補完性があり非常に価値が高いと感じました。

おわりに 〜空港送迎プラットフォームのアップサイド〜

最後に、SmartRydeのビジネスのアップサイドについて我々が想定していることについてお話しします。

このハイヤービジネスが進んでいくと、空港からホテルまでのトラフィックをある程度獲得することができます。つまり、その区間の走行データが蓄積されていくのです。そういったデータは自動運転プレイヤーにとって非常に魅力的に映るでしょう。

また自動運転を最初に導入する際に、いきなり都市圏のあちこちで導入するよりまず空港からホテルまでの決まった区間で運用してみようという話は出てくるはずです。実際にアメリカでも最初はエリアを決めて自動運転が導入されています。このような自動運転の流れから見ても、SmartRydeはとても戦略的価値のある存在になるのではないかというアップサイドを見込んでいます。

例えば米グーグルの親会社アルファベットの自動運転車部門ウェイモは、自動運転による配車サービス「Waymo One」をアリゾナ州フェニックスで数年前から提供開始しておりますし、ウォルトマートやショッピングモール運営のDDRと連携し、自動運転ミニバンで両社の店舗に顧客を送迎する試験サービスも開始しています。このように将来的にSmartRydeが自動運転技術やAI技術を保有するプレーヤーと協業し、将来的に大きな価値を生む可能性は大いにあると考えています。

おわりに 〜空港送迎プラットフォームのアップサイド〜

また、ソフトバンクやトヨタのような大企業が近年多数のライドシェアに投資しているように、将来的にはSmartRydeが大企業からの出資をいただき、日本発のグローバルなハイヤーサービスプラットフォームベンチャーとして成長していく可能性もあると考えています。実際に中国のハイヤービジネスを行うベンチャーもセコイアから投資してもらうというような流れも起こっているので、この実現可能性を追求していきたいと思っております。

このように、SmartRydeにはメガベンチャーになる可能性が十分にあると考え投資をしました。日本発で海外まで攻めていけるようなベンチャーを今後もAngel Bridgeとして支援していきたいと考えています。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2021.07.07 INTERVIEW

自分でハンドルを握るということ

Heartseedはどのような事業を行っているのですか?

安井:iPS細胞を使って質の高い心筋細胞を大量に製造し、心臓が悪くなった患者さんの心臓に移植することで、心機能の回復と生命予後の延長を目指しています。
心不全はどんどん進行してしまう疾患で、ステージが進んでしまうと有効な治療法が心臓移植しかありません。しかし心臓移植はドナーが全然足りず、ほとんどの人に対して有効な治療法がない状態です。そのため、有効な治療法を届けるべく再生医療という手法を使って新しい治療法を開発していくこと、そして将来的にはHeartseedが製薬企業のような自前のバリューチェーンを構築して革新的な製品を患者さんに届けることを目標としています。

安井さんはHeartseedに入社するまでどのようなキャリアを歩んでいたのですか?

Heartseed COO安井× Angel Bridge河西

安井:中小企業で働く父親のもとで育ったため、学生時代は不況に強い業界に入社したいと考えていました。鉄道、電力系などが不況に強いですが、製薬業界も不況に強いと思い薬学部に進学しました。また、就活の頃に製薬業界について自分で調べ、またセミナーなどで話を聞くうちに、製薬はグローバルな市場競争で、ほぼ日本人だけの日本の製薬企業は将来的に厳しく、このままでは世界で勝てないのではと思いました。また製薬企業はM&Aが有効なビジネスモデルで、それをコンサルティングファームが支援をしているのを聞いて、コンサルティングファームに入社してから製薬企業に転職したほうが早く経営層に到達できるのではないかと思い、大学院を卒業した後Bain&Companyという米系の戦略コンサルティングファームに入社しました。

その後4年ほど経ってからヤンセンというJ&Jグループの製薬企業に入社し、そして1年後にアッヴィ(当時アボット)という米系の製薬企業に転職しました。アッヴィでは周りの人がすごく優秀で、例えば当時の外国人上司は今Biogenという時価総額5兆円強の製薬企業の日本の社長をしています。同僚も事業開発に必要な主要な企業・薬の売上やMR訪問数などの情報が全部頭に入っていて、病理学の知識もあり英語もペラペラの人ばかりでしたね。休みの日も出社して過去の資料を読み漁るなどして、1年で何とかついていけるようになりました。

どういった経緯でHeartseedに入社したのですか?

安井:2010年に本社のシカゴに出張したとき、たまたま就活同期だった河西さんがシカゴ大のMBAに留学中だったのでキャンパス見学後に食事をしながら色々話をしました。その後、2016年に河西さんと渋谷で食事をしたんです。当時河西さんはAngel Bridgeを設立したばかりで、「バイオベンチャーの経営者とかどう?」とお誘いを受けたのですが、当時はバイオベンチャーの社長として何をやっていいかわからないし、自分にはない、最短のパスで薬の承認を取るための薬事的なスキル・経験がいるのではないか?と思い、転職には至りませんでした。

そしてそのままアッヴィで働いているうちに、大学のサークルの先輩が事故で亡くなったというニュースを見て、大きなショックを受けました。その時、人間はいつ死ぬかわからないし、やりたいことは今やらないといけないと思ったんです。河西さんのVCや日本発のバイオベンチャー育成の話は頭のどこかにいつかやりたいこととして残っていました。そんな時に偶然河西さんからHeartseedの話を聞いたんです。ヘルステックなどではなく自分が一番やりたかった革新的な治療法を開発していて、製薬企業の主要な部門の経験を持つ自分が役に立てそうだと感じました。その後CEOの福田と会って丁寧な説明と想いを聞き、これは凄いなと驚きました。そしてこれは何としても世に出したい、と思いました。

ただ当時の私はリスクをどんどん取って世界に挑戦するというマインドセットではなかったことを未だに覚えています。何か前例、ベストプラクティスを調べるというのが染みついてしまっていたんです。1回目に福田の壮大な話を聞いた後でも、ストーリーは素晴らしいが、あれとかこれどうやるんだろう?ということに頭が向いていました。そこで私は「PMDA(医薬品医療機器総合機構)との相談資料を見たい」と言ったんです。すると福田も、どうぞ見てくれと机の上に分厚い資料を何束も出してくれました。

その時私の中に電流が走りました。普通は入社するかわからない人に見せるわけがない資料ですが、福田のその行動は、やっぱり自分の研究に自信があり、課題があったとしてもこれから何とかするぞという決意だと私は感じ取りました。PMDAの議事録に書いてあることが全部ではないですし、議事録を見てから入る、なんてことは聞いたことがありません。私はつまらないことを言ってしまった、ベンチャーであれば課題があってもそれを一緒に解決するのが仕事ではないかと思いました。自分を変える意味でも、何があっても揺るがない強い信念を持っている福田と是非一緒にやりたいなと思い、入社を決めました。

他にもHeartseedに入社しようと思ったきっかけはありますか?

安井:私はずっと外資系の製薬企業で働いていましたが、日本の相対的なシェアが下がるにつれ、日本法人の発言権は小さくなり、全体の意思決定から遠ざかっているように感じました。自分の力不足もありますが、自分で意思決定が出来ずにやった抗がん剤の最終治験、私はそれに当時全身全霊をかけていましたが、それが失敗するといったこともありました。グローバル経営陣は超優秀でアッヴィは順調に成長していますが、日本での仕事はトラクターの後ろにいて、引っ張ってもらっているように感じていました。日本企業をあきらめた学生のころと違って日本がグローバル本社として、自分でドライバーズシートに座ってハンドルを握って仕事がしたいと思うようになっていました。

世界トップクラスの製薬企業へのライセンスアウト

Heartseed

今回のライセンスアウトはどのような概要なのでしょうか?

安井:ノボノルディスクファーマという、糖尿病に強くデンマークに本社がある世界トップクラスの製薬企業と、Heartseed の主要開発品であるHS-001の開発・製造・販売に関する全世界での独占的技術提携・ライセンス契約を締結しました。日本は共同で事業化します。

ライセンスアウト先としては、時価総額10兆円以上で、TOP20くらいの海外の製薬企業をターゲットに考えていて、そのうちの1つがノボノルディスクでした。ノボノルディスクはいろんなアカデミアのシーズを導入し、自分たちのパワーで早く世界に出せるよう育てていくというビジネスモデルを取っていました。そして、幹細胞(ステムセル)は今後伸ばしていきたい領域なので予算を確保していると話しており、賢い会社だなと思いました。

また、株価の上昇と配当を両方合わせた株主リターンが企業の成績指標として見られていますが、ノボノルディスクはアッヴィと並んでその指標で世界トップでした。キャッシュが豊富で経営陣も優秀で、糖尿病領域だけで終わることはないだろうなと思いました。

その後、2020年1月にサンフランシスコで開催されたJPモルガンのヘルスケアカンファレンスでノボノルディスクの方々と会うことができ、その時のリアクションから「ここにはライセンスアウトできそうだな」と感じました。1年以上にわたる討議を重ねて、今はもう同じチームのような関係になっていますね。

どのようなフローでライセンスアウトを進めていったのですか?

安井:何度も欧米の学会に参加して、メガファーマの凄さは痛感していたので、海外は開発から販売まで全てのバリューチェーンをメガファーマにお任せするというのを前提で計画を立てていました。そのため、とにかく自分たちの開発品に興味を持ってくれて、最終的に承認を取るまでリソースを投入し、その後も売上を最大化するためにマーケティングや営業を頑張ってくれる会社を見つけないといけなかったんです。何社か興味をもってくれる会社が見つかったら、契約のストラクチャー、すなわちどの製品を対象に、どういう地域、バリューチェーンごとの役割分担で契約するか大枠を固めていきました。それと並行し、当社の技術、データに対するデューデリジェンス(DD)を受けました。

DDにおいては、他のどこにも出ていない最先端の技術やデータについて話すので、とにかく欧米人にわかりやすいように、しっかりしたフレームワークに落とし込み、ロジカルに分かりやすく伝えることにしました。また、製薬企業は特許によって競合の参入が防がれていることで、特許が有効な期間に利益を得ています。そのため、特許で守られている技術にのみ高いお金を払ってくれますが、アカデミアでそこまでの特許網を構築するのは非常に難しいんです。医薬品であれば化合物として物質特許が獲得できますが、再生医療だと心筋細胞は体内にあるものなので物質特許は獲得できません。そのため我々は周辺の技術を含め複合的に特許を取得して固めているのですが、その説明をするのも大変でしたし、そもそもまだ人に投与していない、ある意味形がないものを売るのはチャレンジングでした。

Heartseed COO安井× Angel Bridge河西

今回のライセンスアウトはHeartseedにとってどのような意味合いがあるのでしょうか?

安井:まず、我々は常に規格外の会社でありたいと考えています。最近でいえば大谷翔平選手のような。2015年に設立と若い会社ですが、それまでの福田の技術の蓄積は凄いですし、そもそもCEOが慶應医学部の教授というのも異質です。その異質さ、オリジナリティを追求したいところもある一方で、普通の人にわかりやすいような、スタンダードに寄せていくために、例えば今回のような典型的なライセンスアウトをすることも必要だと思っています。
ノボノルディスクほどの大企業にライセンスアウトができたというのは、相当入念なチェックがされたということであり技術面の強力なお墨付きになるので、その後の資金調達やIPOの際にもプラスになるでしょう。

また、患者さんにとっての意味合いももちろんあります。心不全に関しては新しい治療法を探している人が多く、Heartseedもそのような患者さんから電話やメールを沢山いただくので、新しい治療法を待っている患者さんに早く治療を届けないといけないと常に感じています。そのためにも、海外の製薬企業を巻き込んだ方が色々な人の目で見てもらってさらに良いプランで進められるので成功確率が上がりますし、海外のマーケットは現地の人のほうが詳しいので、海外に展開していく成功確率もがっつり上がったと思います。

ライセンスアウトのコツは何だと思いますか?

安井:まずはライセンスアウト候補先を絞り、相手をよく知り、相手に合わせることだと思います。私たちの場合は時価総額10兆円以上の大手製薬企業です。その上で、相手のいろんな立場の人がどう考えるか、大手製薬のいろんな部署の本社メンバーと一緒に仕事をしてきた経験を生かして考えました。またバイオベンチャーは型にはまらない飛び抜けたことをやっているので、相手が理解しやすいフレームワーク、かつ刺さる形に作り上げるのが大切ですね。

また、質疑応答は分担することが多いと思いますが、私は一人に絞るのが良いと思っています。私は海外本社との付き合いの経験が多いので、大体何を聞いてくるか、最初の数単語を聞くだけで分かりました。分担すると、誰がどこまで答えるか顔を見合わせてしまいがちです。よっぽどの専門的なもの以外は答える人を一人に絞って、その人がコントロールする方が確実で、プロフェッショナルに見えると思います。あとは自分たちの交渉力をよくわきまえること、そして当たり前ですが自分たちの提供する資料等には一切妥協せず、言い分には常に正当な理屈を用意することでしょうか。

Angel Bridgeとはどのような関わり方をしてきたのでしょうか?

安井:私はコンサルティングファームを経た後事業会社も経験しましたが、COOはもちろんやったことがありませんでした。資金調達をするとなると、どういったストーリーでどのようなメッセージを伝えるかや、どの順番で投資家にアプローチするかなど重要なポイントが沢山ありましたが、その戦略作りについてかなりアドバイスを貰っていました。
また会社の経営に関しても、河西さんとは経営のPDCAサイクルをしっかり回すということをいつも話していましたし、作りこむところから一緒にやっていました。株主総会や取締役会など他にもやることが沢山ありましたが、論点整理だけでなく細かな進行なども含めて沢山フィードバックして貰いました。河西さんは社外取締役として何社もの取締役会に出ていますし、塩梅がわからないところなども丁寧に教えてくれて本当に助かりましたね。

Heartseed COO安井× Angel Bridge河西

ライセンスアウトにおいては、Angel Bridgeとどのような関わり方をしていたのでしょうか?

安井:河西さんに言われるまでは考えていませんでしたが、ディールハンドリングが重要という点でライセンスアウトもM&Aと似ているなと感じました。相手に嫌われない程度に自己主張し、自分たちの考えを伝えるも、常にあなたたちと一緒にやりたいんだ、という感じの良さを残すのかという点をよく河西さんと議論していました。ライセンスアウトについてはわかっているつもりでしたが、M&Aの経験者からすると違う視点があるのだなと感じましたね。

また、これを出来るのは日本では河西さんくらいしかいないと思いますが、私の作成した資料に目を通して、急所について常に相手の製薬企業目線でフィードバックしてしてくれます。相手目線で作るのが重要と分かっていても、一人で作っているとどうしても相手目線が弱まり、ツルっと飲み込んでもらいにくくなってしまうことがあるのですが、そういうときは河西さんからもれなく指摘が飛んできて大変助かりました。これができるVCが増えると、日本のベンチャー経営のレベルが上がると思います。

河西:本当に戦友ですよね。就活同期として本当に切磋琢磨してきたなとつくづく感じます。

天才的なFounderを全力で支援する

Heartseed COO安井

後輩のコンサル出身者に対しアドバイスはありますか?

安井:アイデアを持っていればCEOになればいいと思いますが、凡人にはCOOが適していると思います(笑)。発想力があり、優れた良いアイデアを出すCEOのアイデアをどう落とし込むかが大事ですね。漫画家と編集者の関係も近いのかもしれません。

BCG出身の北野唯我さんの本に、「天才、秀才、凡人」というフレーズが出てきて、天才は凡人が好きで、凡人は秀才が好きで、秀才は天才が好きというサイクルについて書かれています。コンサルタントは天才的なFounderを支援する方が向いているかもしれないですね。CEOの福田はまさに天才的な発想力、本質を一瞬で理解するセンス、事業感を持っていますので、それを横で支援するのはとてもやりがいのある仕事だと思います。

安井さんはこれ以上ないくらいCOOとして適切な人だと思いますが、なぜここまで至れたのでしょうか?

安井:自分ではまだまだだと思っていますが、慣れてきたのは、現場の実務を一通り理解したこと大きいと思います。入社直後は製薬企業の感覚だったので、ベンチャーとして何をどこまでやればいいか分かっていませんでしたが、社員と話していくうちにこれは後回しだな、など分かるようになりました。会社が設立したときまでさかのぼり、契約書も特許も論文も全部読みました。技術的な課題が何か、業界の歴史と動向をしっかり理解すると考える軸ができました。
また、CEOの頭の中がどうなっているのかを理解するのも非常に重要です。CEOの福田のプレゼン、質問への回答を何度も聞き、議論を重ねていくうちに、だんだんCEOはこう考えるだろうなと分かるようになりましたね。

Heartseedをどんな会社にしていきたいですか?

安井:いまHeartseedはいろんな意味で注目してもらっていると思います。規格外の会社として、メンバー全員がやる気を高く持ち、若さを保ちながらしっかり目標に向かっていきたいです。また、なにかモノを届けるということに妥協は許されないと思っています。これからメンバーが増えていっても、オリジナルさを追求し、患者さんにベストなものを届けていく会社になりたいですね。

2021.07.02 COLUMN

今回は、起業するにあたり一番初めに考えるであろう市場選定の方法と、共同創業メンバーの探しかたについてのポイントをVC目線で解説したいと思います。

起業する際の市場選定方法

まず起業を考えるとき、どんな領域でビジネスをするかを考えると思います。市場を選定する際に大事なのは市場規模と、起業家と事業領域とのフィットです。

巨大市場
ユニコーンベンチャーを目指すうえで市場規模がある程度大きいことは非常に重要です。市場が大きければ少ないシェアでも大きな売上を作ることができます。一方で市場が大きければ当然狙っている競合も多く競争環境が激しいことがほとんどです。このような市場で勝ち抜くことができればユニコーンを目指すことができます。市場規模の調べ方としては市場規模マップというサイトや業界地図、各種市場レポートが役立ちます。ただし闇雲に大きな市場を目掛けていくのは無謀です。TAM/SAM/SOMの概念についても意識したうえで、まずはアプローチして獲得できる具体的なセグメントを目掛けてプロダクトを作りこみ、Step by stepで対象市場を拡大していくことが正攻法です。

  • *TAM(Total Addressable Market): ある市場の中で獲得できる可能性のある最大の市場規模
  • *SAM(Serviceable Available Market): TAMの中で実際にその製品がアプローチできる市場規模
  • *SOM(Serviceable Obtainable Market): 実際に商品・サービスをもって市場に参入した時に、実際に獲得できる市場規模
狙うべき大きな市場について1つ例を挙げるとすると、インターネット創世記に大きくなったサービス領域に挑んでいくことは面白いと思っています。2000年頃に数多くのインターネットサービスが立ち上がりましたが、当時は最速で事業を立ち上げユーザーを囲い込むことを主眼に置いたビジネスモデルが広がりました。しかしそのようなモデルはユーザー起点で見たときには必ずしも最適な形ではないことが多いのです。構築するのに時間はかかるが本質的にはユーザーにとってより高い価値を提供できるモデルが後発でシェアを巻き取っているのが昨今の状況ではないでしょうか。
ECサイトにおける楽天vsAmazonは分かりやすい好事例だと思います。楽天はモール出店型であり、プラットフォーマーとして出店者に場所を提供しているという構図なので、一気に取扱商品数を増やすことができました。代償としてフォーマットが統一されていないためユーザー視点で商品を探しづらいというペインが存在します。同一商品が様々なショップで異なる説明、異なる価格で売られています。配送料や配送手段もバラバラで比較が困難であると感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。思った以上に配送に時間がかかり、なかなか商品が到着しないケースもあります。
これに対しAmazonは1商品につき1つのページを用意し、自社倉庫や自社配送網のオペレーションを構築することで翌日配送含め購入者と出品者双方の高いUXを実現しています。このサービス構築には時間も工数もかかります。実際にAmazonは日本市場では2000年に本のジャンルのみでオープンしてから2010年までかけてジャンルごとに段階的にオープンしています。時間をかけてでもこれをやり切ったことで今の地位を築いています。同じような理屈で、既に巨大サービスがあるがペインが存在する領域を狙っていくとユニコーンを目指すことができるのではないでしょうか。リクルートが取り組む各サービス領域など、第一世代のITサービスは狙い目かもしれません。
例えばAngel Bridge投資先のBluAgeはSUUMOに迫る不動産賃貸仲介プラットフォームに取り組んでいます。まさにSUUMOは楽天型で地場の不動産仲介会社が情報を掲載する広告モデルなのに対し、BluAgeはAmazon型で自社でデータを一括管理するモデルをとることによってユーザーの利便性を高めると同時に不動産仲介会社の工数も大幅に削減しています。このようなビジネスモデルの違いによって後発でありながら着実にシェアを伸ばしています。
BluAge業界研究記事
起業家と事業領域のフィット
市場選定においてもう1つの大事な要素は、起業家と事業領域のフィットです。ここには2つの観点があります。1つは業界に対するパッションです。これは起業家がやり切れるかどうかに影響しますし、その後のあらゆる場面においてビジョンを語れるかどうかにも関わる重要な点と考えています。ビジョンを語れることは優秀な人材を惹きつける重要な要素です。
CB Insinghts: “The Top 20 Reasons Startups Fail”
もう1つは起業家の知識や能力、人脈と業界とのフィットです。特に業界におけるペインの理解、業界構造の理解は重要です。ベンチャーが失敗する理由として最も多いのが、マーケットニーズがないことだと言われています。ペインを理解してそれを解消するサービスを作り上げられるかどうかが成否を分ける重要な要素となります。B向けサービスであれば前職の事業領域に関する課題へアプローチをする、C向けサービスであれば自分が1ユーザーとして体験して感じた課題へアプローチするなどが該当します。
例えばAngel Bridge投資先のミツモアの石川CEOは事業領域の選定について「私のやりたい事と一致するかというのと同時に、自分がバリューを生み出せそうな分野か、海外の成功事例の中で日本でも成功しそうかという3つの観点で、色々なビジネスをデューディリジェンスしていきました。 その中でも特に泥臭いビジネスの方がバリューが出ると思い、数多くあるサービスの中で見積もりを取るという極端に泥臭いところを選びました。」と述べています。このように石川CEOは自分がパッションを持てる領域かつ自分が価値を発揮できる領域を選択して起業しており、それが今のミツモアの人材獲得力やプロダクトのクオリティの高さに大きく寄与していると考えています。
石川CEOインタビュー記事

どんなメンバーで起業すると成功しやすいか?

Startup Genome Report “A new framework for understanding why startups succeed”(2012年)
2-3名の共同創業の成功確率が高い
まず、単独で創業すべきか誰かと共同創業すべきかという論点があります。この点については共同創業すべきというのが統計的な答えです。共同創業のほうが成功確率は高く、投資も受けやすいからです。上図の調査によると単独創業より2人の共同創業のほうが拡大フェーズに至るまでの期間が3分の1以下で済んでいます。共同創業者は相互の能力を補完し精神的な支えにもなります。事実ほとんどの成功スタートアップには共同創業者がいます。共同創業者がいないことはその起業家の人を巻き込む力や人脈に疑問符が付き、ネガティブな印象を与えてしまう可能性もあります。一方でスタートアップの失敗の原因として上位に上がるのが経営陣内部の課題であるということも事実です。共同創業者は誰でも良いわけではなく、妥協せずに選ぶことは当然のことながら非常に大切です。
Startup Genome Report “A new framework for understanding why startups succeed”(2012年)
共同創業者も多ければよいというものではありません。船頭多くして船山に上るという格言があるように、人数が多ければ意思決定に複雑性が増します。上図のように1人創業だとPivotが難しく、共同創業者が4人以上になるとPivot回数が多くなります。2-3人程度が粘り強く事業を推進するのと柔軟にPivotを検討することのバランスが取れる適切な人数と言えそうです。
ビジネス系とエンジニア系のコンビネーションは最も資金調達できている
また、成功しやすいのはビジネス系とエンジニア系のコンビネーションであると言われています。実際に共同創業者のタイプ別にみた際に、ビジネス系とエンジニア系のコンビネーションはそれ以外の組み合わせより30%程度多くの金額を調達しています。
既に知っている人の中から同じ船に乗れる人を見つけるのが理想的
長期的に同じ船に乗れるかという点において、ストレス環境下で経験を共にしたことがあることも重要です。親しい友人や一緒に仕事をした経験のある人であれば交流会で知り合った程度の人よりも安心して事業を前に進めることができるのではないでしょうか。
共同創業者との関係性は?リーダーは一人がいい
共同創業者とはしっかり役割分担をすることが大切です。特に早い段階で最終的な意思決定者/責任者を一人にしておくことは重要です。アップルのスティーブ・ジョブズとウォズニアック、Microsoftのビル・ゲイツとポール・アレン、Googleのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンもどちらがCEO(または最終意思決定者)であるかを明確に分けていました。これができないと些末なことでもなかなか意思決定ができず、スタートアップにおいて欠かせない迅速な行動が阻害されるリスクがあります。どちらがCEOとして最終意思決定者/責任者となるのか、議論を先延ばしせずにしっかり腹を割って話して決めておくことが必要です。株式の持ち分比率もそれに合わせて差をつけておくことも考慮すべきでしょう。

起業前に検証を進めておくこともオススメ

起業前にもできることはたくさんあります。1つはニーズの検証を行うことです。市場調査や関係者へのヒアリングを行うことで、取り組む事業のニーズがどれほど強いかを確かめたり、アイデアのブラッシュアップをすることができます。もう1つはVCと壁打ちをしてみることです。ベンチャーキャピタリストは数多くのベンチャーを見ています。Angel Bridgeでも年間数百社の話を聞いています。メガベンチャーを目指すのに何が必要か、どんな要素があると成功しやすいか、何を検証すべきかなど少なからずヒントを得ることができるはずです。具体的な創業資金の提供や、次回の資金調達にもつながる可能性もあるので非常におすすめです。

Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすメガベンチャーを創出する志ある起業家を応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にFacebookTwitterでDMください!良ければフォローもよろしくお願いいたします!

2021.06.14 COLUMN

大学発ベンチャーとは、大学の教員、研究者、学生が開発した技術を事業化した企業のことを指す場合が多く、経済産業省は大学発ベンチャーを①研究成果ベンチャー、②共同研究ベンチャー、③技術移転ベンチャー、④学生ベンチャー、⑤関連ベンチャーのいずれかに該当する企業と定義しています。

大学発ベンチャー企業の定義 出典: 令和元年度大学発ベンチャー 実態等調査結果概要- 経済産業省

2014年以来大学発ベンチャーの企業数は毎年増加傾向にあり、特に近年は高い伸び率で推移しています。このように日本で盛り上がりつつある大学発ベンチャーですが、成功するとユニコーンベンチャーになる高い可能性を秘めている一方、経営陣のビジネス面での経験不足や、技術の産業化まで膨大な資金と時間がかかることから、成功まで到達することが非常に難しい分野です。

Angel Bridgeはいくつもの大学発ベンチャーにアーリーステージで投資をし、ハンズオンで支援を行ってきました。今回はこのような大学発ベンチャーと伴走してきた経験から導ける、技術力のある大学発ベンチャーの成功パターンについて解説していきます。

大学発ベンチャー支援事例

技術系/大学発ベンチャーはAngel Bridgeの重点領域であり、全投資先16社のうち技術系ベンチャーに6社(うち大学発ベンチャーに3社)投資を行っています。経験・知見の蓄積により強力なサポートが可能です。
いずれの技術系ベンチャーにも創業初期やシード期から投資をしており、最も困難な立ち上げフェーズをサポートしています。

Heartseed株式会社
慶應義塾大学医学部発。iPS細胞を用いた心筋再生医療による、重症心不全の根本的治療法の技術開発を行う。
バイオス株式会社
慈恵医科大学発。腎臓再生医療の研究開発を行う。
テオリアサイエンス株式会社
東京医科大学発。エクソソームを用いた早期がん診断サービスの提供およびがん治療研究開発を行う。
福島SiC応用技研株式会社
SiC半導体による超小型中性子発生源を用いたがん治療装置開発を行う。
Varinos株式会社
次世代シーケンサーを活用した最先端の遺伝子検査の開発・提供を行う。

※GeneTechはイクジット済みのため省略

Angel Bridgeの投資先カテゴリー

大学発ベンチャー成功のための4つのエッセンス

ここでは今まで大学発ベンチャーの支援を行ってきた経験から考える、大学発ベンチャー成功のための4つのエッセンスについてご紹介します。
一般的に大学発ベンチャーの成功は難易度が高いと考えられていますが、創業期から下記の重要な点を意識して丁寧に作りこんでいくことで飛躍的に成功確率が上がると考えています。

①サイエンスの深み
まず一番大事なのは、技術力がグローバルでトップクラスであることです。
技術系ベンチャーで散見されるのはアカデミアでの十分な実績がなく起業するパターンで、コアとなっているテクノロジーの深みが足りなかったり、単一技術だけの場合は競合優位性を保つことができず、後発企業に追い越されてしまうこともあります。
そのため、成功パターンとしてはアカデミアの論文ベースでトップジャーナルに掲載されていることは大前提ですし、1つのコア技術に加えていくつかの周辺技術含め保有していることが重要になってきます。また、技術の厚みを増すためにも研究開発者である教授を巻き込むことがとても重要です。
②バランスの取れたチーム体制
大学発バイオベンチャーの例を挙げると、創業期は経営陣が教授のみでビジネス人材が足りなかったり、在籍している産学連携本部の大手製薬企業出身者などは臨床開発の知見はあっても、ベンチャーや企業経営への知見が足りないといったことが良くあります。
そのため、早いタイミングでサイエンス(研究者)・臨床開発(製薬会社出身者)・ビジネス(コンサル・投資銀行出身者など)の3タイプの人を巻き込むことが重要です。そのためには創業社長が人間としてバランスが良く、良人材を吸引する巻き込み力があることも必要になってきます。
③研究者のリーダーシップ/コミットメント
大学発ベンチャーの良くあるパターンとして、大学教授が複数持っているシーズ技術の1つを切り出して、外部から社長を呼んできてベンチャーを作るという事例があります。しかしこういった場合は教授のコミットメントが明らかに低く、失敗することが多いです。そのため、社長だけでなく創業者である教授などアカデミアの技術力を持つ人自身が本技術の社会実装に向けてしっかりコミットすることが重要です。
④資金調達力
最後にファイナンス面についてです。
あまり理解せずにステージに見合わない高額なバリュエーションで調達してしまうというケースがありますが、その後の資金が得られず事業が継続できなかったり、次のラウンドで結局ダウンバリュエーションをしないといけないというリスクがあります。そのため、各ステージに合った適切なバリュエーションでの資金調達をすることが重要です。
また技術開発のため多額の資金が必要なわけですが、一度で大きな額を集めようとすると株式の希薄化が進んでしまいますし、そもそもとして大きな金額を集められないのでファイナンスラウンドを細かく分けて資金調達することが望ましいです。例えばHeartseedは設立当初のシード・アーリーステージにおいては1~1.5年おきに調達していますし、徐々に体力がついてきたら1.5~2年ごとに調達するくらいのペースが良いでしょう。
また、政策・薬事承認・社会的な注目などマクロの追い風があることでさらに資金が集まりやすい場合もあるので、その点もしっかり見ておく必要があると思います。
大学発ベンチャー成功のための4つのエッセンス

大学発ベンチャーの成功に対するVCの提供価値

ここまでで大学発ベンチャーの成功の秘訣を語ってきましたが、実際にこれらの四つのエッセンス全てが創業時から揃っていることはほぼないでしょう。そのため、VCがハンズオンで支援し大学発ベンチャーを成功パターンにいち早く持っていくことが必要であると考えています。

①サイエンスの深み、③研究者のリーダーシップ/コミットメントについてはVCが支援することはなかなか難しい部分もありますが、②バランスの取れたチーム体制と④資金調達力はVCが十分価値を出せる部分だと思います。
実際にAngel Bridgeでも投資先の大学発ベンチャーに対しハンズオン支援を行っていますが、特に②バランスの取れたチーム体制と④資金調達力を中心として、経営陣の要望を聞きながら多岐にわたる支援を行っています。
そこで今回は例として、②バランスの取れたチーム体制と④資金調達力についてVCがどういった支援をできるか簡単にご紹介します。

②バランスの取れたチーム体制
前述のように、大学発ベンチャーがスケールしていくためには組織における重要ポジションを採用していくことが必要です。そこでAngel Bridgeでは組織における重要ポジションを独自のネットワークを活用して幅広くご紹介しています。事業ステージに応じて投資先の経営陣と必要な人材像についてディスカッションをした後、候補人材のソーシング、初回スクリーニングとしての面接まで行っています。
以下は過去にAngel Bridgeが投資先に紹介したメンバーの一例です。錚々たるメンバーをご紹介できていると思います。
バランスの取れたチーム体制

 

④資金調達力
大学発ベンチャーは上場までに多額の資金調達が必要になるため、投資実行以降の資金調達ラウンドも強力に支援し、他VCと事業会社から大型の資金調達を実施しています。
例えばiPS細胞を使った心筋再生医療の開発を行うHeartseedは合計82億円、次世代ガン治療装置の開発を行う福島SiCは合計41億円の資金調達を行っており、これらの資金調達を支援しました。
そこで、ここでは資金調達支援のポイントをいくつかご紹介します。
1. 正確に事業の魅力を伝える
まずは言わずもがなですが、どのような事業をやっているかを投資家に分かりやすく正確に伝え、そのうえでアップサイドも含めて魅力的なエクイティストーリーを具体的に描いていくことが必要です。
2. 最適なバリュエーションを設定する
バリュエーションは他類似案件をしっかり調べることで最適値に設定していきます。Heartseedの場合は以下のような業界各社のミドル/レーターステージファイナンスを比較してバリュエーションを設定しました。
最適なバリュエーションを設定する また、想定されるExit時のバリュエーションから時間軸を考慮して逆算し、投資家から見たときに必要とされるリスクに見合ったリターンが出せそうか、バリエーションをダブルチェックすることも忘れてはなりません。
3. ラウンドに適した投資先から資金調達をする
多額の資金が必要になるため、追加増資をしてくれるようなディープポケットの投資家を巻き込むことが必要です。そのためにも、投資家の過去のファイナンス事例を徹底的に調べ上げ、順番にリードになりそうな人から声をかけていきます。この際にどのルートでアクセスするかも重要です。
また、大学発ベンチャーに関わらずですが創業初期は企業としての信頼性に欠ける部分があるので、事業シナジーを訴求することで知名度のある大企業を巻き込み、信頼性を高めて次のラウンドにつなげることもポイントです。
例えばHeartseedではシリーズAでAngel Bridgeが4.5億円増資したのに加え、アステラス製薬のCVCや、メディパル、伊藤忠などの大企業を巻き込んでいます。また、シリーズBで投資頂いたディープポケットのSBI・ニッセイキャピタル・SMBCは、シリーズCでも追加出資を決断し会社を支えてくれました。 ラウンドに適した投資先から資金調達をする

おわりに

日本のアカデミアには世界に通用する優秀な研究者がたくさんいます。研究者の絶え間ない努力によって生み出された最先端技術をここで述べたようなプロセスで正しく社会実装していくことで、グローバルに勝負できる事業体を作っていくことが可能です。
しかしこういった技術を社会実装するのにはかなりの時間と資金を必要としますし、大学教授が経営者として取り組んでいくには困難な面も沢山あります。
そこでAngel Bridgeはそういった最先端技術に積極的に投資をし、大学発ベンチャー支援における豊富な経験と深い知見を基に伴走することで、世の中を大きく変えるイノベーションを起こしていきたいと考えています。
事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2021.06.09 INTERVIEW

部屋探しをワクワクする体験にしたい

カナリーはどのような事業を行っているのですか?

佐々木:不動産領域のDXに取り組んでいます。具体的には賃貸及び売買物件を掲載しているCANARY(カナリー)という部屋探しアプリを運営しながら、不動産仲介会社向けにSaaSのプロダクトも提供しています。
部屋探しをワクワクする体験にしたいという想いから、UXをとにかく追及するようにしています。またそのために不動産業務のDXにも進出し、最終的にユーザーの体験を良くしたいと考えています。

お部屋探しといえばSUUMO(スーモ)のようなサービスが強いですが、CANARYは何が違うのでしょうか?

佐々木:他の部屋探しプラットフォームでは仲介会社が広告として物件情報を載せているのですが、その過程でデータベースを手動で更新しているために情報が古かったり間違っていたりすることが多いんです。また、プラットフォームとしてもSEO強化のためにとにかく物件情報を増やすインセンティブがあり、おとり物件や重複物件などはなかなか削除されず、そのまま掲載されてしまっています。
カナリーは自社でデータベースの管理をしているので、鮮度の高い情報を参照することで最新の情報を掲載できているのが大きな違いになります。

佐々木さんはカナリーを起業するまでどのようなキャリアを歩んでいたのですか?

佐々木:東大の経済学部を卒業した後、ファイナンスに興味があったのでメリルリンチの投資銀行部門で国内外のM&Aや資金調達に2年ほど従事していました。その後ボストンコンサルティンググループに転職した後、起業しました。

なぜ起業しようと思ったのですか?

佐々木:大学の時からいずれ起業したいなと思っていましたし、ボストンコンサルティンググループで働いていた時にやっぱり何か大きいことを早く成し遂げたいと思い、そろそろ起業してもいいかなと思って大学のクラスが同じだったCTOの穐元と共同創業しました。

佐々木拓輝

そろそろ起業しても良いと思ったきっかけは何だったのですか?

佐々木:投資銀行とコンサルは業務の共通する部分もあり、ラーニングカーブがゆるやかになっていく中で、反比例して起業したい熱が高まっていたことが大きいかもしれません。また、まだまだ成長途中ではあったものの、起業してからの方が学ぶことも多いだろうと思い、起業を決めました。

なぜ不動産領域で起業しようと思ったのですか?

佐々木:最初から不動産領域で起業しようと思っていたわけではなく、いろんな事業を見てから決めようと思っていたのですが、調べていくうちに最初に見た不動産が一番面白そうだなと思ったんです。
私も引っ越しを何回か経験したなかで一人のユーザーとして不動産業界はペインが大きそうだなと思っていたので最初に業界を見始めたのですが、どんなマーケットか調べてみると市場規模はすごく大きいですし、なんとなく競合が強く競争が激しく感じますが、仲介会社のヒアリングをするうちに改善余地がたくさんあることが分かりました。競合は広告掲載モデルなので自社でデータを持つことはできず、カナリーが考えているようなビジネスモデルを取ることはできません。さらに今ユーザーのチャネルがwebからアプリに推移していることや、電子契約の解禁などといった法改正も後押しして仲介業務のアナログなオペレーションがデジタル化するという大きな変化が起き始めていたので、これはチャンスなのではと思い不動産業界に決めました。

巨大な競合に立ち向かう

事業を押し進めていく中で逆境はありましたか?

佐々木:営業組織を30人規模まで急速に拡大したときに、パフォーマンスのばらつきやモチベーション低下などの問題が起こりました。その際の営業側の組織改革にはかなり八尾さん(Angel Bridgeアソシエイト)に入ってもらいましたね。営業人員一人一人にヒアリングして何が課題かを見つけるというのは自分でやろうとするとどうしても手間がかかりますし、外部からどう見えるかは大事な視点なので、非常に助かりました。
その後のプロジェクトも一緒に進めていただき、営業の組織体制・昇進制度の改革やマインド作りを手伝ってもらうことでこの課題を解決できました。

カナリーがここまで到達できた秘訣は一言で何だと思いますか?

佐々木:振り返ってみると特別なことをやったというよりは、目の前のやるべきことを淡々とやってきたような気がします。振り返ると上手くいっていたというような感じですね。中長期的な目標は持ちつつも、目先のことをしっかりやる。初めて経験することばかりでしたが、ここについては順応性の高い性格がうまく寄与した気がします。

河西:私はカナリーがSaaSを始めた当初、プラットフォーマーとして賃貸仲介をまずものにしてからでないと、SaaSに手を出すべきではないと思っていました。でも話を聞くうちに、あえて早めにSaaSをやることで既存事業にもつながる部分があるということが分かり始め、佐々木さんはすごく全体が見えているなと思ったんです。
具体的に言うと、賃貸会社向けのSaaSはニーズがあるのでCANARYからの送客も含めて売り込んだら確実にはまるでしょうし、また管理会社のSaaSはCANARYが独自物件を手に入れるためにも必要で、それはまさにこの事業の本質であるCANARYのデータベースを強化することにも繋がります。ここがすごく考えられていて素晴らしいなと思ったんです。
でもこれは創業時に見えていたはずはなくて、事業をやりながら気づいたのだと思うのですが、どういったプロセスでここに行きついたのですか?

BluAge代表佐々木 x Angel Bridge河西

佐々木:視野としては、幅広く業界全体を見ることを意識していました。そして中長期的なあるべき姿を考えていくと、いろんな事業が絡み合って出る付加価値が非常にあるなと思ったんです。またデジタル化という文脈でも、今まで情報が分断されていたものを繋げて境界を無くすことで、競争力になります。
具体的に掘り下げていくと、仲介側へのSaaSは普及するでしょうし、そこに自分たちが進出したらどんな連携ができそうか、また管理側にも進出した時にどんな連携ができそうか、そういった思考実験をしていくとさらに繋がりが見えてきて、リソース的にはきついけれどもどういったタイムラインで進めるのがベストかを考えると、欲張りに早く進めていった方がいいなと思ったんです。

河西:佐々木さんはロジカルに積み上げていくだけでなく、動物的な勘もありますよね。

佐々木:日々の出来事からも発展させて、色々な可能性を考えるようにしています。また事業が順調であっても、危機感を持っていろんなシナリオを想定していますね。
そのせいか筋トレ中もあまり集中できず、ずっと仕事のことを考えているような節もあります(笑)。

佐々木拓輝

なぜAngel Bridgeから投資を受けようと思ったのですか?

佐々木:当初はメンバーのプロファイル的にいかついな、ゴリゴリだなと構えていました(笑)。最初にお話しした数日後にはもう業界に関するディープな質問をいただいて、議論もどんどん進んでいくのでかなりスピード感があるなという印象でした。
我々は会社としてスピード感をすごく大事にしているのですが、その後の意思決定もとても速くポジティブでした。議論の内容も非常に建設的で、様々なテーマにおけるベストプラクティスを知っていることも魅力に感じました。
ディナーもすごく盛り上がりましたね(笑)。会う前の印象よりも人間味がある方々で、投資先に対する支援の姿勢なども心強いなと思い、Angel Bridgeから出資を受けることを決めました。

なぜカナリーに投資しようと思ったのですか?

佐々木拓輝

河西:不動産業界にはSUUMOのような巨大なプラットフォーマーが存在していますが、広告掲載モデルの構造上、おとり物件や重複物件が多いというペインが生まれていました。これに対し、佐々木さんのようにやる気や基礎能力があり、決して叩いても倒れないようなメンツで立ち向かっていくというのが非常に面白いと思いましたね。巨大な競合に対しても、自社のデータベースを綺麗にして提供する、という広告掲載モデルと違う立ち位置でやれば、構造上ある一定のシェアが取れると思いました。
競合に完全に勝てるとは言い切れませんが、おとり物件がないほうがユーザーにとって絶対いいですし、自社でデータベースを持つことでサイトに自社で撮影した綺麗な写真を載せていくといったことは、競合はイノベーションのジレンマで絶対真似できません。こういったことを地道にやっていけば必ずや構造的に競合ができない差が生まれますし、確信を持って成功するなと思いました。
実際に売上は何倍にも成長して結果が出ているので、シリーズBもリードで出資しようと思いましたね。

新しいことを恐れない

河西さんから見て佐々木さんはどんな起業家だと思いますか?

河西:まず佐々木さんは、冷静に周りの人の声を聞いて柔軟に学習を進めることがうまいですよね。投資家に詰められても間をおいてしっかり考えて意思決定ができ、さらにそのジャッジが正しいという、社長として重要な点を抑えられているのが印象的でした。
また佐々木さんのしぶとさや生存力はデューデリジェンスの中でも見えていましたし、ある種の戦友として一緒に戦えると思いましたね。

後輩起業家に伝えたい、起業するにあたって気を付けるべきポイントはありますか?

佐々木:起業すると新しいことに毎日沢山直面します。例えば、私は営業の組織作りやプロダクト開発などの知識はありませんでしたし、やりながら学んでいったことが多いです。起業する時点でいかに物事を知っているかよりも、新しいことが起こったときにしっかり順応できるかどうかが大事だと思いました。

カナリーの事業を通して何を社会に届けたいですか?

佐々木:まずは不動産業界全体を変えるぐらいのインパクトを出したいですね。最近はto Bの業務にも深く入って動きだしていますし、不動産業界に関わる人すべての働き方を変えて、その先の結果としてユーザーのお部屋探し体験もワクワクするものに変わるような、そういった変化に主体的に関わっていきたいです。
また、もちろんベンチャー起業家として誇れるような巨大なIPOを目指したいと思っています。カナリーが会社として大きくなることが不動産業界全体のペインを解消することに繋がると思いますし、まずは目の前の事業から真面目に取り組んでいきたいです。
Angel Bridgeを代表する案件になれるよう頑張ります!

2021.05.31 COLUMN

今回は、VCが投資判断をするにあたってどういった点を検討するのかについて、ミツモアを例にとって解説したいと思います。

近年、サービス提供者と利用者をマッチングするスキルシェアサービス提供企業の上場が増えてきており、例えばスキルシェアプラットフォームを提供するココナラが3月にマザーズ上場、ビザスクは2020年3月、ランサーズは2019年の12月にそれぞれ上場しています。実際にこれらのサービスを利用したことがある方も多いのではないでしょうか。このように、スキルシェアサービスは今後もリモートワークや流動的なワークスタイルの広まりによって、さらなる成長が期待できるでしょう。

Angel Bridgeもローカルサービスに特化したマッチングサービスを提供する株式会社ミツモアに2019年に出資し、ハンズオン支援を行っています。上記のようなスキルシェアサービスはマッチングする主体がフリーランスなので副業目的の人が多いですが、ミツモアはそれらとはマッチングする主体が違い、事業者が本業として利用するパターンが多いです。さらに目的が見積もりなので、スキルシェアサービスとは似て非なるということで非常に面白いと思い、検討をしました。

ローカルサービス市場

スキルシェアとは、個人が保有するスキルを資産として捉えて、特定のスキルを必要とする顧客と、そのスキルを保有する提供者をつなぐサービスのことです。上場企業ではビザスク、ランサーズ、クラウドワークス、ココナラなどが当てはまります。この中でもミツモアは特にローカルサービスのマッチングに特化しています。

Angel Bridgeがこのローカルサービスのマッチング市場に注目した理由は、ターゲット市場がかなり大きいことです。
ローカルサービスは集客手数料だけでも3兆円以上の巨大市場であり、取り扱う業種を拡大していくことでさらに収益を上げることができます。実際にこの領域にはいくつものベンチャーが参入しています。

一方で、日本ではローカルサービスは数十兆円規模の市場であるにも関わらず、集客も事務作業も前時代的な方法で行われており、効率化に苦慮している部分が多くあります。こういった旧態依然とした市場環境に関しては、ミツモア代表の石川氏がコンサルタント時代に地方銀行のプロジェクトをやっていたとき、クライアントである中小企業の経営者たちと話す中で深いペインを感じていたそうです。

ベンチャーとしてはもう少しニッチな市場を狙う方が取り掛かりやすいですし定石とされていますが、難しいからこそあえてチャレンジし、この巨大な市場をターゲットとしてプロダクトを磨きこむことで日本へ大きなインパクトを与えたいという石川氏の思いに共感しました。

ビジネスモデル・サービス

それではここでミツモアがどのようなサービスを提供しているのかをご紹介します。

ビジネスモデルとしては、事業者は完全無料で見積もりを出すことができ、提案が成立すれば課金されるような成約課金モデルをとっています。

こういったプラットフォームビジネスは依頼者と事業者双方が増えるに連れてエコシステムが形成されてネットワークエフェクトが効いてくるのが特徴であり、IT系サービスでは一番成功事例の多いモデルです。

先ほども述べた通り、ミツモアはカメラマン/士業のようなローカルサービスの見積もりプラットフォームを提供しています。特にカメラマン/税理士向けが強みですが、カバー領域はハウスクリーニング/リフォーム/庭の手入れなど20以上に及びます。

サイトイメージは以下の通りです。カメラマンからの見積もり事例ですが、撮影場所や予算などの必要情報を入力すると、最短3分で見積もりを受け取ることができ、最短翌日にプロが来ます。最大5名の事業者からの見積もりを比較することが可能です。

投資検討を始めた時期には、以上のカテゴリーの中で既にカメラマン・税理士のカテゴリーが立ち上がり売上も出ていました。このように少なくとも二つのカテゴリーが立ち上がっており、さらにカメラマンと税理士という全然違うタイプだったので、今後も順調に他のカテゴリーも立ち上がっていくだろうと想像できました。

競合

それでは競合について検討したことをご紹介します。
ローカルサービスのマッチング領域においてはオペレーター型のプレーヤーが複数存在し、市場が形成されていることから既にニーズがあるのは分かっていましたし、そのアナログな部分がITに置き換わり便利になっていくというシフトは必ず起こると思いました。例えばよくある引越しの見積もりサイトだと、登録するといろんな業者から電話がかかってきて、ヒアリングをされて見積もりが出てくるという、まだまだアナログなやり方が行われています。

プラットフォーム型にも競合が存在しており、どちらかというとB向けのサービスがミツモアで、他の競合は主婦層をターゲットとしている、といったように色の違いはあります。これらは今後事業領域の境目がなくなっていくと予想されますが、市場も巨大で拡大しているため、ミツモアを含めた何社かはメガプラットフォーマーとして共存ができるのではないかと考えました。

経営陣

Angel BridgeがシリーズAでミツモアに投資するにあたり、経営陣についても理解を深めました。

特にアーリーステージにおいて経営陣は重要です。代表の石川氏は稀に見るハイスペック創業者(桜蔭→東大法学部→ベインアンドカンパニー(5年)→Wharton MBA→米国ITベンチャー)で、MBA時代に起業を強く意識し、国内の中堅事業者の非効率性を打開したいとの想いでミツモアを起業しています。ハイスペック創業者だから必ず成功するとは限りませんが、少なくとも自分でやると決めたことに関しては結果を出してきた人だと言えると思いました。

さらに、共同創業者のCTO柄澤氏も業界トップレベルのエンジニア(東大理学系院→ヤフオク担当/最速で昇格/社内受賞多数)です。創業直後に入社したCXO吉村氏(京大法学部→McKinsey)も良いバランサーであり、その他優秀なWeb/SEOのエンジニアなどを複数巻き込んでいることから、優秀な人材を惹きつける魅力が石川氏にはあるのだと感じました。

さらに、石川氏はVCから調達を受ける前に、著名なエンジェル投資家を何名も巻き込んでいました。これだけエンジェル投資家を集めることができたということは、こういった人たちを巻き込み、かつ継続サポートしてもらえる魅力があるということの証明になりポシティブです。

また社長との面談はもちろんですが、共同創業者、本社の主要メンバーとも一人一人面談を行いました。

このように、代表の石川氏は度重なる困難に素早く打ち勝つだけの地頭の良さ、やり切り力(パッション)、優秀なメンバーを組織できる人間性を持ち合わせているとひしひしと感じ、心から応援していきたいと思い投資を決めました。

おわりに

ローカルサービスの市場規模は30兆円以上と非常に大きいにもかかわらず、いまだにオペレーター型のようにユーザー側にとっても事業者側にとっても生産性の低いモデルが主流となっています。

ベンチャーはニッチな領域から攻めるパターンが多い中で、あえてこういった旧態依然としている巨大市場にチャレンジしていくことは非常に意義深いですし、プロダクトを磨きこんでいくことで社会に大きな価値を見出せると思っています。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2021.05.26 INTERVIEW

日本を明日に希望が持てる国へ

ミツモアはどのような事業を行っているのですか?

石川:ミツモアという、見積もりが簡単にとれるプラットフォームを運営しています。ユーザーがミツモアのサイトに訪問して質問に答えていくと、それに対して事業者さんからの見積もりがすぐに最大5件届きます。
事業者側からすると、一度設定を行うだけでその後の見積もり業務が自動化されるので、ミツモア経由のお客様の引き合いに対して、事業者は何の手間もなく受注活動ができて非常に効率的です。

他にも見積もりを行っている競合はありそうですが、どういった点がミツモアの競合優位性なのでしょうか?

石川:まず、弊社ほど全領域をカバーしているプラットフォームはありません。特にカメラマン/税理士向けが強みですが、カバー領域はハウスクリーニング/リフォーム/庭の手入れなど20以上に及びます。

カテゴリ

また、見積りプラットフォームのプロセスをここまで自動化できているサービスは他にはないでしょう。例えばよくある税理士の見積もりサイトだと、登録するといろんな業者から電話がかかってきて、ヒアリングをされて見積もりが出てくるという、まだまだアナログなやり方が行われています。

それに対しミツモアでは、リクエストの内容に基づいて計算をすることで、ベストな選択肢を自動で提案することができます。事業者の全てのデータを持っていて、この人がベストだというのが分かるので、最適な選択肢をお届けできるのです。この点がユーザーにとっての体験の差に繋がっていると思いますし、事業者からすると非常に効率的に営業活動ができることが強みだと思います。

ミツモアを起業するまではどういったキャリアを歩んでいたのですか?

石川:新卒でベイン・アンド・カンパニーという戦略コンサルティング会社に入社した後、自分で将来起業したいなと思い、アメリカでMBAを取りその後シリコンバレーのZazzleというスタートアップで働いていました。

なぜ起業しようと思ったのですか?

石川:日本の将来の見通しの暗さをずっと感じており、どうやったら日本が明るい世界になるのかとコンサル時代からずっと考えていました。特に私は海外で暮らした経験もあったため、海外では給料が上がっていくのが当然で労働生産性も高いですが、日本はG7の中でも最低の労働生産性で平均賃金も伸びていないという状況を見てきました。

自分自身のことだけを考えれば日本経済の中でニッチに戦って満足するという生き方もありましたが、そうではなくマスに対して働きかけその人たちの労働生産性を改善させることで、日本の明るい未来が思い描けるようになりたかったというのが起業のきっかけです。

なぜ起業する前にアメリカに行こうと思ったのですか?

石川:アメリカは起業先進国で、プロダクトを作るときの考え方が洗練されています。そのため日本の基準でモノ作りをするよりは、世界の標準がどこにあるのかを理解してから作った方が、良いものを世の中に提供できると思ったからです。

そこまで石川さんを突き動かすパッションの原動力はどこにあるのでしょうか?

石川:元来負けず嫌いな性格なので、日本が経済的に負けていることが嫌なんだと思います。

幼少期を日本と中国で過ごしたのですが、小さい頃日本は世界中の尊敬を集めていたのに対し、だんだんと後退していっているのを感じていました。
ベインで働いていた頃にもいろんな国を見ていましたが、経済が伸びている国の明るい雰囲気に対し、日本は諦めてしまっている雰囲気を感じました。そうではなく、明日のほうがいい暮らしができると思えた方が幸せだよね、と思ったんです。

より多くの人に影響を与えるビジネスがしたい

起業するにあたって躊躇することはありましたか?

石川:ミツモアの事業をやろうと決めた後は全く躊躇はありませんでした。どちらかと言えば最初はすごく孤独でしたね。3ヶ月間共同創業者が見つからず誰とも話さない時期があり、図書館からの帰り道に強めの音楽を聴いて自分を奮い立たせたりしました(笑)。

どうやってミツモアの事業アイデアに行き着いたのですか?

石川:いわゆる大企業向けの事業ではなく、より多くの人の労働生産性を上げることができるというのを一番のテーマに考えていました。そういった私のやりたい事と一致するかというのと同時に、自分がバリューを生み出せそうな分野か、海外の成功事例の中で日本でも成功しそうかという3つの観点で、色々なビジネスをデューディリジェンスしていきました。
その中でも特に泥臭いビジネスの方がバリューが出ると思い、数多くあるサービスの中で見積もりを取るという極端に泥臭いところを選びました。

どういったメンバーで創業したのですか?

石川:最初はCTOの柄澤と共同で創業しました。柄澤はヤフー出身で、知り合いのエンジニアに最も優秀でやる気があるエンジニアを紹介してくれと頼んで紹介してもらいました。その人はハッカーズバーというエンジニア向けのバーに勤めている人で、そのバーに週2-3回通って「紹介してくれないと帰りません!」と言って遂に紹介してもらったのを覚えています(笑)。柄澤はマスに対してのバリューを追い求めるという考え方が一致していて、彼とだったらこの先もすれ違うことなくやっていけると思いました。
またCXOの吉村は、私のMBA同期から起業したがっているMcKinseyの後輩がいるということで紹介してもらいました。
現在はパートタイムも含め120名ほどまでメンバーを拡大しています。

どうしてここまで魅力的なメンバーを惹きつけることができたのでしょうか?

石川:やはり一番大きいのは、ミツモアが目指している世界観への共感だと思います。

起業当初に色々なベンチャーキャピタル(以下、VC)と話す中で、ニッチを狙ったほうがやりやすいしベンチャーの定石だよと指摘されたり、ベンチャーなのに野望を抱きすぎだということも散々言われていました。私自身としてももう少しニッチなところを攻めたほうがこんなに苦しまなかったと思いますし、成長も早かったと思います。しかし、だからこそプロダクトを磨きこむことで日本へ大きなインパクトを与えられるだろうし、難しいからこそチャレンジしてみたいというメンバーが集まってきたんだと思います。

起業当初何人もの著名なエンジェルからの投資を受けたようですが、なぜそこまでの支援を受けることができたのでしょうか?

石川:著名なエンジェル投資家の方々のインナーサークルがあり、一人から投資を受けると他にも色々な投資家の方に繋いでいただけたというのはありますね。

最初に投資してくれた方は、「石川だったら諦めないし本気でやるだろうから」ということで投資してくれました。起業するとやはり苦しいことが多いので、諦めないかどうかが一番大事だと思います。

また事業への共感もあったと思います。当時AI領域が流行っていたので、AIを選べば簡単に成長できると思うが何故AIに行かないのかと聞かれ、「マスに対して大きいことをしたいんです」ということを説明したら、とてもいいねと共感してもらえました。

なぜAngel Bridgeから投資を受けようと思ったのですか?

石川:もともとシリーズAは2社から投資を受けようと決めていました。1社だけだと万が一上手くいかなかった時のことを思うと不安ですし、逆にあまり増やすとコミュニケーションコストが上がり、事業成長がスローダウンすると思ったからです。

プロダクトを作るときに海外を意識して作っていたので、1社は海外にもプロダクトにも強いという軸でWiLを選びました。

もう1社は本当に辛いときにもそばにいてくれる、一緒に乗り越えてくれる、心理的繋がりが持てるようなVCが良いと思い、それが圧倒的に感じられたAngel Bridgeに決めました。

また、寄り添ってくれるという点の他にも、ファイナンス面での知識が豊富であることもAngel Bridgeを選んだポイントでした。多くの起業家はファイナンスをしたいから起業しているわけではなく、モノづくりをしたくて起業しているのでファイナンスのことはよくわかりません。当時河西さんは投資先の調達のために自分もVC回りをしていると言っていて、私自身調達する時に事業が止まってしまうことがすごく心苦しかったので、次の調達を考えたときに非常に魅力的だと感じました。

寄り添ってくれると感じたのは具体的にはどのような部分でしたか?

石川:まず投資検討のプロセスの進め方が非常に起業家フレンドリーでした。スピードが早いのもそうですし、他のVCとの交渉方法までアドバイスしてくれたので、ここまで寄り添ってくれるVCはなかなかいないなと驚きました。自分自身がVCなのにVCとの交渉の仕方を教えてくれるというのは驚きですよね。

また、次のラウンドはこういう設計でやるといいかもしれないねとか、次のラウンドを見据えて今回の調達はこういう形が良いよねとか将来を見越したアドバイスまでくれて、非常に起業家目線だったことが大きいですね。

河西さんはなぜミツモアに投資を決めたのですか?

河西:まず石川さんをリーダーとしたマネジメントチームが魅力的でしたね。レジュメの見た目だけでなく、メンバー全員にインタビューした時に感じた泥臭くやり切るというパッションに感銘を受けました。

あとはビジネスモデル的な面でいうと、スケールが担保できればネットワークエフェクトが効いてくる典型的なプラットフォームビジネスなのでそこの守りの部分は安心かなと思いました。また、攻めの部分で言うと一つのミツモアブランドで全ての見積もり市場を取りに行くという点が素晴らしいなと思いました。我々はメガベンチャーの創出をモットーに掲げているのでニッチを攻めずにそこにチャレンジしているというのが何よりも共感を持てました。

最後に当時カメラマンと税理士の2つの領域で既にサービスが立ち上がっていたので、今後他領域への展開も順調にできると思えたのも大きかったと思います。

色々他に検討しようと思えばいくらでも出来ましたが、これらのポイントだけを確認して実質的には1週間ほどで投資を決定しましたね。

シリーズAの資金調達後に逆境はありましたか?

石川:プロダクトマーケットフィットしたと思っていたのに、実は完璧にはしていなかったということがありました。イノベーターと一部のアーリーアダプターで止まっていて、マスへの壁を乗り越えられていなかったんです。永遠に越えられない壁を感じ、一番苦しかったですね。

それを乗り越えるために、課金体系を成功報酬型にするなどビジネスモデルやプロダクトを変えてもがき続け、今のモデルにたどり着きようやくマスに受け入れられるようになりました。

資金調達後はAngel Bridgeからどういった支援を受けましたか?

石川:ファイナンス面だけでなく事業面でも沢山ご支援をいただいており、本当にありがたいなと感じています。新しいカテゴリーをやるときは、ほぼ必ずMckinsey出身の八尾さん(Angel Bridgeアソシエイト)にお声がけをしています(笑)。

というのも、カテゴリーが多いので尋常ではない数の市場を理解しないといけないからです。例えば自動車整備業界を1週間で理解するとなるとかなりコンサル的なワークが必要になるので、McKinsey的に客観的に分析できることが非常に助けになります。

日本全体のGDP向上に向けて

ミツモアの事業を通じて今後どのようなことを実現していきたいですか?

石川:ミツモアのゴールは日本の労働生産性が上がってGDPが増えたときだと思っています。ミツモアを使っている会社って他の会社に比べて労働生産性が高いよねという状態が実現され、そうなった時にみんながミツモアを使っていて、それにより日本全体のGDPが向上しているような世界を実現したいです。

今はミツモアというプラットフォームで、集客・見積り自動化・発注したら一瞬でベストチョイスが見つかるというモデルで勝負していますが、将来的にはこれを越えて真に人々の生活に食い込んでいけるようなサービスを作り続けたいと思っています。

2021.05.21 INTERVIEW

治療法が未だ確立されていない心不全に挑む

Heartseedはどのような事業を行っているのですか?

福田:iPS細胞から高純度の心筋細胞を作製し、独自開発した移植デバイスを用いて心臓に移植する重症心不全の全く新しい治療法の技術開発に取り組んでいます。

なぜ心筋再生医療の研究を始めたのですか?

福田:心不全は現在心臓移植が主流な治療法ですが、移植にはドナーが必要ですし、補助人工心臓という機械を入れる治療法も、血栓ができたり感染症が起きるので数年ほどしか入れておくことはできません。本当の意味での病気を治す方法はなく、死と直結しているんです。

そういった背景から心不全の病気を治したいという想いはずっとあったのですが、私が大学を卒業した頃はまだ心不全の領域では遺伝子レベルの研究はされておらず、患者の病態を理解するための研究が中心でした。しかしそのような研究を一生懸命やってもなかなか患者を根本的に治療することはできません。そこで、根本的治療に直結するような遺伝子レベルの研究をしたいと思い、その頃既に遺伝子レベルの研究が行われていたがん領域で一旦研究を進めることに決めました。その後ハーバード大学、ミシガン大学への留学を経て、心不全を心臓移植以外で治療する方法を探すための研究を日本で始めました。

どうやって現在の技術に辿り着いたのですか?

福田:最初は骨髄の細胞を使って研究しました。骨髄の中には、骨を作ったり、軟骨を作るような細胞が存在することがわかっていて、これを用いて研究できるのではないかと思ったんですね。そして4年間かかって論文ができ、骨髄の細胞を使って心臓の細胞を作れることが世界で初めて報告できたんです。
世界各国から関心を集め、沢山の国で臨床研究がすぐ始まってしまいましたが、私は骨髄の細胞から心筋を大量に作るのは難しいと気づき、他の治療法を見つけなければいけないと思いました。

それと同時期にES細胞(受精卵の胚の内部細胞塊を用いてつくられた幹細胞)という、神経細胞や血球細胞など様々な種類の細胞に分化でき、かつほとんど無限に増殖できる細胞が初めて報告されました。そこで私はヒトの ES 細胞を使って心筋を作る試みを始め、5年かかってES細胞でも心筋を作れるようになったのです。

またその頃山中伸弥先生の iPS 細胞(特定の遺伝子を導入することで人工的につくられた多能性幹細胞)に関する研究が世界で初めて報告されたため、iPS 細胞を使って心筋細胞を作るチャレンジもしようと思い再度研究を始め、心筋細胞を効率的に作れるようになったんです。しかしiPS細胞はまだ医療応用されていません。なぜかというと、iPS 細胞から心筋を作ると心筋以外の細胞も沢山残ってしまうというハードルがあったからです。

一番の問題はiPS細胞自体がかなり残ってしまうことで、これを移植すると、iPS細胞は増殖能が強く色々な細胞に分化するので骨や軟骨や脂肪組織ができて腫瘍化してしまうんです。そのため世界中の大企業は iPS 細胞に興味を持ちながらもまだ医療応用できていません。そこで我々は、iPS 細胞・ES 細胞とそれ以外の細胞の違いをはっきりさせることで心筋だけを選別できないかと考えました。

こういった背景があるので、Heartseed が所持している最も優れた特許は、残存するiPS細胞を除去して心筋細胞だけを純化精製できる特許なのです。この論文の引用件数はかなり多く、これはすなわち世界のどこでもこの技術が再現できるということなので、世界的にも高く評価されていて科学的にも間違いがないということの証明になっていると思います。

どうやって心筋細胞だけを精製するのですか?

福田:iPS細胞・ES細胞と心筋細胞の大きな違いとして、iPS細胞・ES細胞はブドウ糖がないと生きていけませんが、心筋はブドウ糖がなくても乳酸があれば生きていけるというエネルギー代謝の違いがあります。そこでブドウ糖を除き乳酸を加えた培養液を作って研究をすると、思った通り心筋細胞だけを生き残らせることに成功したんです。

その後、味の素社と共同開発を進め無事成功し、心筋細胞は安全に作れるだろうということでAMEDという国立の研究開発法人から毎年約2億円の研究費用をいただくようになりました。再生医療の産業化のための研究を続け、産業化のめどが立ったので2015年に Heartseed を立ち上げました。

大手の製薬会社と共同研究を行うという選択肢もありましたが、やはり製薬会社だとどうしても会社の利益も考慮しないといけないので、患者本位の治療を追い求めるならベンチャーが最適だろうと思い、バイオベンチャーを立ち上げるという選択肢を選びました。

創業から共に歩んだ軌跡

河西とどういった経緯で創業することになったのですか?

福田:当時河西さんは Angel Bridge を創業したばかりで、大学発ベンチャーのアーリーステージに投資をしていました。研究室のメンバーと河西さんが同級生だったという繋がりで知り合い、一緒に会社を設立することになりました。

それ以来も河西さんには社外取締役としてサポートをいただきながら、シリーズ AからシリーズCまで順調に資金調達を行い、シリーズBまでで41億円、シリーズ Cでも大きな資金調達をしようと考えています。会社としても順調に成長しており、治験をするための体制づくりを継続して行っています。

どんなメンバーが集まっているのですか?

福田:COOの安井は河西さんの同級生ということもあり2019年にジョインしてくれました。東大薬学部を卒業後、ベイン・アンド・カンパニー、外資系製薬企業を経ています。CMO の金子は慶應の医学部を卒業し4年間臨床を経験した後、外資系製薬企業、さらにサンバイオというバイオベンチャーを経た臨床開発のプロです。他にも製薬会社・メーカー・商社・会計士など様々なバックグラウンドの人が共感してジョインしてくれており現在では40名近い組織となっております。

河西とHeartseedを創業してみてどうでしたか?

福田:まず河西さんの投資ビジネスに関する目利きは非常に優れていると思いましたね。アーリーステージの会社の目利きは外れることが多く、さらにバイオ領域は一般的に成功確率0.5%と言われていて、非常に投資判断が難しい領域です。しかし河西さんだけは、今までやってきた研究の可能性に非常に早い段階から気づいてくれて、そこに累計5.5億円もの多額の投資をしてくれたんです。そこから一気に事業が加速した結果として、今のHeartseedがあるのだと思います。

また資金調達の際の投資家回りの戦略については非常に頼りになりました。様々なVCに対する理解があり、資金調達の際にどういった投資家を株主にすればいいのか、そのために株主のバランスをどうするか等的確なアドバイスをくれます。資金調達に関しては卓越した知識とセンスをもっていらっしゃると思いますね

真の大学発ベンチャーの先駆者へ

今後どういった世界を実現していきたいですか?

福田:今まで心不全の患者に対しては症状を和らげる対症療法しかできず根本的な治療はありませんでしたが、今後心筋細胞を移植することができるようになれば、根本的な治療ができるようになり心不全の患者は激減すると思います。

また今後の世界への展開にむけては、世界中の皆さんを治療できるような細胞を作ることが重要だと考えています。今は山中先生が作った日本人に最適なiPS 細胞を使っていますが、それは必ずしもグローバルでベストな細胞ではありませんし、将来海外展開する際はテーラーメイドの iPS 細胞での治療も提供することが必要です。

例えば車を例にとれば、だれもが購入できる大衆車もあれば、オーダーメイドの高級車もあるでしょう。医療でも同じく、決まった細胞からiPS細胞を作る場合もあれば、患者さん自身の細胞から iPS 細胞を作るというビジネスもあります。そしてそのための技術基盤は既に揃っているのです。

私自身様々なバックグラウンドがあるので、細胞の製造から投与のデバイス作成、戦略作成といった全てに携わることができます。また、血液から iPS 細胞を作る特許や高品質の iPS 細胞をつくる特許も持っているので、あらゆることに対応できるのです。特注のiPS 細胞を作ることができれば、免疫抑制剤を使わなくて良いというのが一番のメリットでしょう。そういったビジネスも併せて両方展開することを目指しています。

そしてこれをいち早く世界中の患者さんに届けるためにも、海外の大手プレイヤーと組むことが非常に重要であると考えており、そちらも着々と準備を進めています。

また、日本の医薬品・医療機器産業がグローバルでかなり遅れをとっていることはあまり知られていないのではないでしょうか。日本は医療先進国だと思われがちですが、実は医薬品医療機器を年間4兆円も国費で輸入している医療後進国なのです。大規模臨床試験までたどりつける製薬企業はとても少なくなっていますし、心不全の薬一つをとっても、全部外資に負けてしまっているんです。

このように日本の医療が危機的な状態の中で、Heartseed が日本発の治療を世界に打ち出して、日本の黒字化に貢献しないといけないと思っています。

そのためにも大学発ベンチャーが増えていくことも必要でしょうか?

福田:そうですね。現状では医学部発のベンチャーで、さらにここまで医学部の教授が直接深く関わっている事例は少ないと思います。

河西:大学に眠る技術を世の中に出していくことは大学のためにも日本のためにもなると思うので、その先陣を切りたいですね。Heartseed が成功事例となることでどんどん他の先生たちも自分たちが起業しようとなってくると効果100倍だなと思っています。

よくあるパターンとして、技術力のあるところにビジネスマンが入ってきて一緒に起業して、先生は研究だけするというのがありますよね。でもそうではなく、研究室の先生が自分の技術を自分で主導して世の中に届けるというのが、本当の意味での大学発ベンチャーだと思っております。

(Heartseed株式会社 取締役/監査役メンバー)

2021.04.27 TEAM

トップファームで培ったバリューアップ支援

トップファームで培ったバリューアップ支援
八尾さんは毎日どのようなタイムスケジュールで過ごしているのですか?

案件の検討状況によって流動的ですが、新しい投資先を探してくるソーシングと投資するかどうかの目利きに50%、既存の投資先の支援に30%の時間を使っています。またAngel Bridgeもベンチャーのようなものなので、残りの20%は会社の価値向上のためのマーケティング活動などに使っていますね。

Angel Bridge入社前はどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?

東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻で統計学などを勉強した後、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーという戦略コンサルティング会社に入社し、3年ほど働いたのちにAngel Bridgeに転職しました。

なぜ新卒でマッキンゼーに入社しようと思ったのですか?

当時は日本の大企業が倒産しかけているという話がいくつか上がってきた時代で、そんな中で大企業に入っても何の保証にもならないと思いました。それよりも個人として力をつけることが必要だなと強く感じました。早く力を付けたかったので、年功序列ではなくもっと早い段階で責任を持てる環境がいいと思い、外資系企業に絞っていました。
また、大学院の俯瞰経営塾という授業がとても楽しかった事がコンサルを選んだ理由の1つです。この授業は毎週徹夜でグループワークをしてプレゼンするというのを10週間ほど続けるのですが、単位は出ないのにみんなそれに一番熱量を注いでいました(笑)。そのグループワークの中で、議論をつきつめることであったり、人にプレゼンするというのが非常に楽しいなと思い、適性があるのではないかと感じました。
また、環境は自分にとって非常に大事であると考えていて、周りが優秀だと自分も自然と頑張れると思い、面接やインターンシップを通して社員が非常に優秀で尊敬できると思ったマッキンゼーに入社を決めました。

入社後はジャンルを絞らず多様な産業に関わっていましたが、営業の組織改革やファイナンス系のプロジェクトに入ることが多かったですね。

マッキンゼーでの経験はVCの業務にどう生きていますか?

ストレートにVCの業務に生きていると思うのは、やはり投資先のバリューアップ支援ですね。
マッキンゼーは大企業を相手に課題解決をしますが、ベンチャー企業においても課題解決のステップは一緒だと思っています。スピード感、規模感は違いますが、課題を特定してソリューションを出し実行するという進め方は、共通するところがあると思います。

マッキンゼーを経験して良かったと思うことはありますか?

想定していた通りですが、優秀で尊敬できる人が沢山集まっていて、高度で汎用的なビジネススキルを身につける環境として非常に良かったと思います。
また、クライアントに感謝された瞬間にはとてもやりがいを感じましたね。一つ印象的で思い出に残っているのは、3か月ほど常駐していたプロジェクトが終わった時の事です。クライアントに表彰式のようなものを開催していただき、社長や専務、カウンターパートだった部長から花束や表彰状を頂いたんです。そのような場面において、非常にそのプロジェクトをやってよかったと思いましたし、企業を支援して感謝されるということに自分はやりがいを感じる人間なんだなと分かりました。これはVCの業務にも繋がってきますね。

マッキンゼー出身の人はどういったセカンドキャリアを選ぶことが多いのでしょうか?

ベンチャー企業に行く人が多い印象がありますね。アーリーステージのベンチャーからレイトステージのベンチャーまで様々です。他には実際に起業したりする人もいますし、PEファンドやVCを選ぶ人も増えている印象です。

八尾さんはなぜVCに転職しようと思ったのですか?

スタートアップに強い関心があったというのが大きな理由です。自分自身も起業したいと思ったことが過去にあるので、自分でリスクを取って起業している起業家の方々は本当に素晴らしいと思いますし、尊敬の念を持っています。そういった人たちと働くことができる環境が自分にとって魅力的だなと思いました。
また、新しいことにチャレンジして成長したいという想いも強かったです。マッキンゼーでは既にある程度完成したビジネスをさらに良くすることを学んでいましたが、今度はゼロイチのような、何もない状態からスタートするといったステージで学びたいと考えていました。

修羅場の数だけ成長できる

修羅場の数だけ成長できる
なぜ数あるVCの中からAngel Bridgeに決めたのですか?

最初はあまりVCは転職先として検討していなかったのですが、Angel Bridgeの代表パートナーである河西と話して非常に面白いと思い、他のVCはあまり検討せず決めました。
何が良かったかというと、まずメンバーが非常に魅力的でした。一緒に働く人はとても大事だと思いますが、まず代表の河西は一度話して凄く優秀だと思いましたし、面倒見もとても良く、私自身の成長にもコミットしてくれるような印象を持ちました。また、共同創業者の林の包容力・人間力もとてもバランスがとれていたので、この組織で働きたいと強く思いましたね。
さらに、Angel Bridgeが真の意味でスタートアップの支援をしているVCだと思えたことも大きいです。河西と話すなかで、例えば会社を創業する段階から一緒にやるだとか、投資後もかなり時間を割き一つ一つの会社に対しオーダーメイドで支援を提供するというのが、非常にやりがいがあると感じました。ソーシングをして投資をしたら後はあまり関与しないというスタイルのVCもある中で、投資後も一つ一つの会社と伴走し、その結果として社会に価値を見出すというサイクルを大事にしたかったので、そういった想いをもったVCであるということが決定要因として大きかったです。
また、Angel BridgeはVCですがまだまだ少人数なこともあってベンチャー気質であり、色々とやりたいことにチャレンジできるというのも良かったですね。

Angel Bridge入社後は具体的にどういった支援をしましたか?

例えば見積もりプラットフォームを提供しているミツモアを例にとってみると、最初はとあるカテゴリーで成約率が低迷しているという課題があり、成約率を向上させるための施策を考えてほしいというお題をいただきました。その後成約率のデータをexcelでもらい分析し、どういったケースで成約率が低いのかを見ていく中で施策をいくつか出し、CEOの石川さんとディスカッションをして優先順位をつけ、実際にその施策をやってみるという一連のサイクルをお手伝いさせていただきました。
その後も新しいカテゴリーをローンチするときの事業モデルの構築であったり、既存カテゴリーの価格改定のプライシングについて、ミツモア利用者に沢山電話をかけて情報を集めて提案するといった支援も定期的に行っていますね。
また、不動産DXに取り組むBluAgeでは、営業の組織改革を支援していました。これはマッキンゼーでやっていた領域に近かったので経験が活きましたね。
当時BluAgeは不動産の賃貸仲介をする営業員の組織を急激に拡大していたので、人によって売上高がばらついたり離職率が高いなど色々な組織の歪みが生じてしまっていたんです。こういった問題がBluAgeの従業員と話す中で見えてきたので、Angel Bridge側から問題提起をしました。
そこで、私が実際に各営業拠点に足を運び、営業員ひとりひとりと面談し、どういった課題意識を持っているのか、どういうところで悩んでいるのかを丁寧にヒアリングしました。すると沢山課題が見えてきたので、それらを全部取りまとめて施策を20~30個作り、CEOの佐々木さんに提案し、適切な人をアサインして最後まで実行するということを行いました。その結果1人当たりの売上高が20%程度改善しました、組織拡大に耐えられるようなマネジメントの仕組みや、今の組織の根幹となるようなチーム制の組織体制を構築することができたのは非常に良かったなと今振り返ってみて思います。

Angel Bridgeのパートナー陣は八尾さんにとってどのような存在ですか?

まず代表の河西は、ベンチャーキャピタリストとしての師匠だと思っています。
投資家はよくサポーターなどと言われますが、投資家と起業家の間には上下関係はないですし、実に難しい関係性だと思います。そういった関係性の中で、言いづらいことだとしても、会社のためを思って自分が正しいと思うことをしっかり伝えるという姿勢は、見習いたいと常に思っています。
林に関してはもっと広く人生の師匠だと思っています。一番学んでいるのは人間力ですね。VCに転職してからずっと感じていますが、ベンチャーキャピタリストとして人と人とのつながりはとても大切であり、林はその点に関して非常に長けていると思います。
厚い人望があって、例えば林会を開くと100人以上が集まる。そういったところの根幹にあるのはやはり人間力だと思うんですよね。それは林の普段の振る舞いだとかコミュニケーションによるものだと思うのですが、そういったところはベンチャーキャピタリストとしても人間としてもすごく大事なことだと思っていて、いつも学ばせてもらっています。

Angel Bridgeに入社して良かったと思うことはありますか?

まずは、当初必要条件としていた成長環境は思った通りでしたね。
マッキンゼーで働いていた時も思いましたが、人間は修羅場の数だけ成長できると思っています。スタートアップという存在自体が常に修羅場というのもありますし、VCとして複数の投資先を見ているなかで、必ずどこかしらで修羅場があります。常にそういったハードな課題に挑めることがモチベーションになっています。
そしてやはり尊敬している起業家の方々と仕事ができるというのが本当に刺激的ですね。
また、自分がいかに井の中の蛙だったかを認識することができたことも良かったです。今振り返ると、東大もマッキンゼーも同質な人間の集まりだったなと思っていて、家庭環境をとっても思考をとっても、近い人しかいなかったんですね。ですが、VCで働いていると色々なバックグラウンドや想いを持った起業家と話すことができ、世の中にいかに人間の多様性があるのかを認識できたのは非常に良い経験でした。

今後どんな人と一緒に働いていきたいですか?

ベンチャーキャピタル業務を楽しんでできる人ですね。どういう人が楽しめるかというと、色々な起業家と話すというのが業務の大半なので、知的好奇心があって、沢山の人と話すことが得意な人が向いている職業だと思います。

投資から社会への価値創造までやり遂げるということ

投資から社会への価値創造までやり遂げるということ
今後Angel Bridgeで働きながらどんなことを叶えていきたいですか?

まず自分自身としては、一人前のベンチャーキャピタリストになりたいと考えています。そのためにも、自分が信じた起業家に投資して、一緒に伴走して、結果として社会に大きな価値をもたらすという一連の流れを、しっかりやり遂げたいなと思いますね。
Angel Bridgeの投資先は社会に対して価値があるベンチャーばかりなので、世に認知されてプロダクトが広まることに非常に大きな意義があると思っています。
またアメリカと比べると日本のVCはまだまだ黎明期で、未成熟だと思っています。今まさに盛り上がりつつあると思うのですが、自分自身が日本を代表するようなベンチャーキャピタリストとなって、業界全体を牽引するような存在になりたいと考えています。

八尾さんが大切にしている信念についてお伺いしたいです。

私の人生哲学として、「易きになじまず難きにつく」という言葉があります。
大学時代に俯瞰経営塾でAGCの企業研究をする機会があったのですが、そのAGCを創業した岩崎 俊弥氏が作った言葉です。この言葉の通り、簡単な現状に満足して楽な道を歩むよりも、困難で険しい道を敢えて選んで歩んでいくことがとても大事だと思っています。
ともすると楽な方に逃げてなんとなく過ごしてしまいがちですが、あえて険しい道を選んで成長し、チャレンジし続けることで自分自身は成長してきたと思いますし、これからもこのチャレンジ精神を忘れずに、更に世にバリューを産み出していきたいと考えています。

2021.04.22 INTERVIEW

M&Aを通じて、日本の製造業が再度世界を牽引する一役を担いたい

東証マザーズ上場、おめでとうございます!オンデックの事業内容を教えてもらえますか?

久保:端的に言うと、主に中小企業を顧客として、M&Aに関する仲介、アドバイザリーサービスを提供しています。

M&Aセンターなど他にもM&A仲介・アドバイザリーを行う企業はあると思いますが、オンデックにはどういった強みがあるのでしょうか?

久保:まず中小企業向けのM&Aの仲介・アドバイザリーのマーケットには、3つのタイプのプレイヤーが存在すると考えています。①相手を見つけることにリソースの多くをつぎ込むマッチング重視型、②マッチングをweb上で行うことに特化しているデジタル・プラットフォーム型、③M&Aのプロとして事業・税務・法務等のあらゆる観点からのアドバイザリーを重視するコンサルファーム型です。
この中で我々は③のコンサルファーム型に分類されると思っていますが、このタイプは業界ではマイノリティです。マッチングのみを重視し、とにかく案件の数をこなす・早く決めることにリソースを集中した方が、収益はあげやすいので、仲介・アドバイザリーのマーケット全体において、そちらが主流になりつつあるのが現状です。しかし我々としては、マーケットの健全な発展のためには、M&Aのプロとしてのサービスクオリティの向上が必要だと考えており、それを牽引すべく、当社はコンサルティング・クオリティを重視したコンサルファーム型にこだわっています。結果として、これが当社の強みになっていると思っています。
例えば、当社はコンサルタントの約40%が、弁護士や税理士などの専門性の高いメンバーで構成されています。マッチング機能だけでなく、よりクオリティの高いストラクチャ提案等に拘る中で、結果としてそうしたメンバー構成になっていました。

オンデック上場日 (2020/12/29 オンデック上場日)

久保さんはどういった経緯で起業しようと思ったのですか?

久保:私は小学校から大学まで野球にどっぷり浸かっていて、自分が社会人になった時にどのような方向に進むべきかを、あまりイメージしていませんでした。その頃は漠然とソーシャルワーク的な仕事がしたいと思っていたのですが、あまりに無知であったこともあり、ひとまずはいわゆる一般の事業会社に就職をしようと、新卒ではジェーシービーに就職しました。そこで社会人としての基礎を学びつつ、将来について、初めて真剣にいろんなことを考えたのです。
「ソーシャルワーク的なことがしたい」という自分の考えが、どういう思考から来ているのかを掘り下げると、その根源には「機会不平等を正したい」という想いがあることに気が付きました。
世の中には、基礎的な能力が高いにも関わらず、生まれた環境などによって十分な成長の機会や、チャレンジの機会を与えられていない人達がいる。そうした機会の不平等を少しでも無くしていきたい、という欲求が、自分の根底的な動機なのだと理解できたわけです。
しかし、自分なりに調べていくと、海外ではソーシャルワーカーはひとつの職業として確立されていますが、日本ではそれを職業としつつ、十分な生計を立てていくことはなかなか難しいという実態が分かってきました。心理学を学んだり、カウンセリングの資格を取得したり、一時的には警察官になったりもしました(笑)
色々なことにチャレンジしながら、色々な立場・職業の方々の意見を聞いて回り、自分はこの先、どう生きるかを模索していました。そのような時、たまたまご縁があった経済界の重鎮から、「お前は起業しろ」と言われたのです。
「日本は経済立国なので、何をするにも、ビジネスの世界で成功した人が、発言力・実行力を持つことになる。最終的な目標がビジネス以外の何かであったとしても、それを実現するためのお金やネットワークを手に入れることができる。だから、自分が正しいと思うこと、こうあるべきと思うソーシャルワークの理想像があるならば、まずビジネスの世界で成功して、それを実現する力を得た後にやればいい。その方が、社会課題に対してその本質的な解決にアプローチできる可能性が高まるのではないか」そう言われました。それまで起業という考えは皆無であったため、目から鱗でした。なるほど、そういう考え方、選択の方向性があるか、と。
その助言を契機に、「起業する」という方向が明確に固まりました。

共同創業者の舩戸さんとはどういった出会いだったのですか?

久保:私も舩戸も、大学では体育会野球部に所属していました。彼とは別の大学だったものの、リーグが一緒だったので、その頃から顔見知りではありました。とはいえ、知っている、という程度で特別親しいわけではなかったのですが、その後偶然にも、ジェーシービーに同期入社したのです。同期として接点が増え、彼を知るほどにそのキャラクターであったり、人間性がとても信用できたので、ある時、自分が起業する考えであることを伝え、一緒にやるか?と声をかけました。思い切りのいいやつなので、すぐOKしてくれましたね。

なぜM&A仲介の事業をやろうと思ったのですか?

久保:先にお話しした通り、あくまで「起業しよう」という意思決定が先でしたから、具体的にこのビジネスがやりたい、というプランがあったわけではありませんでした。そこで、起業ありきの中で、まずは思いつくままにビジネスプランを考え、舩戸と意見交換する日々が3年ほど続きました。自分たちなりに有望と思えるプランが、5つほどありましたね。最終的に、どのプランを実行に移すかの「選択基準」を決めて、それらの基準に最も合致したM&A事業を選択しました。
「選択基準」は複数ありました。具体的には、「これから伸びていく市場に位置しているか」「あらゆる業種・業界に関われるサービスであるか」「経営陣と直接やりとりできるサービスであるか」などがその選択基準でした。
あくまで「起業」が目的として先にあったので、盲目的に「これをやりたい」というプランがあったわけではなかったことで、客観性を持ってビジネスプランを分析できたことが、ある意味では良かったのかもしれませんね。

100年続く会社へ―オンデック秘話

オンデックの事業を通して何か課題解決したいという気持ちは創業時からあったのですか?

久保:オンデック創業前に商社で働いていた時、日本という国の経済は「ゆっくりと沈んでいっている」と感じることがとても多かったのです。
日本人はとても真面目で勤勉で、そして馬鹿正直で、「モノを作る」ことは上手いものの、金融・投資・プロモーション・収益モデル構築のような要素は不得手。そして良いモノを作るだけでは、現代社会では、いとも簡単に技術は盗まれてしまう。なんせ海外ではビジネスは戦争、みたいな感覚がありますからね。技術を盗むなんて道義にもとる、なんて言っている日本人の感覚は、高尚ではありますがマイノリティであり、あまりに無防備だと思います。
せっかく真面目にいいものを作っても日本は衰退していっている、それをM&Aを通じて、あるいは投資事業を通じてその変革を生む触媒となりたい。これは、創業時から具体化されていた考えではありませんが、M&A事業を通じた様々な経験の中で、明確になってきたビジョンです。近い将来、日本の製造業が再度世界を牽引するようになる一役を担いたいと考えています。

TDBグループとの資本提携、そしてAngel Bridgeと併走して実現した、2年半での上場

なぜ設立から10年以上たって外部資金を入れようと思ったのですか?

久保:創業からしばらくして10人ほどの規模になってきた時に、一定の成長スピードがないと社会に大きなインパクトは与えられない、そしてそもそも組織は生き残れないなと痛感し始めたのです。
我々はコンサルファーム型を志向し、提案力の向上とエグゼキューションのクオリティを追求してやってきましたが、成長スピードを上げるためには、案件を獲得するためのオリジネーション業務の強化が必要になってきました。
そこでまず、日本最大の企業データベースを持つ企業信用調査会社である、帝国データバンクとの関係の構築を目論み、同グループから出資を得るに至りました。

林とはどういった出会いだったのですか?

久保:共通の知人から紹介してもらいました。当時資金の需要はありませんでしたが、一度お会いして情報交換しただけであったにも拘わらず、その後数日で「貴社に出資させてもらいたい」という話があり、その意思決定のスピード感にかなり驚いたことを鮮明に覚えています。

林:久保さんと将来上場したいねという話をしながら、麻布十番のモノマネバーに行ったのが懐かしいですね(笑)。

なぜ上場を目指そうと思ったのですか?

久保:同時期に同業者の上場が相次いだことが大きいですね。我々は、クオリティにこだわってひたすらスキルを磨いてきたことから、M&A検討企業が委託先を決める際のコンペの勝率には、かなりの自信があります。しかし、同業の上場企業が増加するに従って、そもそもコンペのテーブルに乗れないケースが増えていきました。提案やサービスのクオリティにどんなに自信があっても、それを発揮する機会自体が失われてしまえば、何の意味もありません。今はマーケット全体が伸びているから我々も牛歩ながら伸びているけれど、上場の信用力を梃に競合企業がどんどん成長していけば、我々は次第に駆逐されてしまうかもしれない。そうなると、将来ビジョンに到達する前に、マーケットから退場させられてしまうかもしれないと、強い危機感を持つようになりました。これが上場を目指すことを決めた、最も端的な理由です。

なぜAngel Brigeから資金調達を受けようと思ったのですか?

久保:もともと資金を提供するだけのVCを入れる気は全くありませんでした。資金には困っていませんでしたので。ですので、Angel BridgeがいわゆるVCだったとしたら、まったく検討することもなく、お申し出を断っていたと思います。
ただ、メンバーのご経歴をみると、皆さんのご出身がバイアウトファンドであったり投資銀行であったり、これは持っているノウハウが、他のVCとは全然違うなと思いました。我々は将来的に投資事業をやりたいと思っていたので、投資事業の知見があるチームならば組む意味があると思いました。熟慮の末、「上場まで限りの、単なるVC出資ではなく、将来にわたっての資本業務提携という側面を持っていただけるならば受け容れる」と伝えたところ、これまた即決のスピード回答で「OK」ということでしたので、Angel Bridgeから投資を受けることを決めました。

100年続く会社へ―オンデック秘話

オンデックへの投資の決め手は何だったのでしょうか?

林:中小企業で後継者不在の会社がたくさんあることは課題としてずっと感じていました。なので、そういった企業の創業者や従業員の皆さんにとっての最適解を出していく必要があります。オンデックは非常に高度な倫理観をお持ちですし、周りからの評判も良く、人様のために仕事をしていらっしゃるのだなと感じ、そういった企業は必ず伸びる、と思いました。また3年以内に必ず上場します、という久保さんのお言葉も非常に力強かったですね。

久保:実は投資までの意思決定が早すぎて逆に大丈夫かなと疑っていたのですが、提示された契約書が非常に的確で、シンプルな内容であったことで、信用できると確信したことを覚えています。私どものように、日々企業買収や出資の契約に触れていると、その条文から相手の考えや姿勢が透けて見えてきてしまうものです。AngelBridgeさんの契約書は、メンバーの皆さんの誠実な人柄や姿勢が反映されたものでした。

Angel Bridgeから投資をうけてみてどうでしたか?

久保:複雑な投資スキーム等に対する知見・ノウハウのレベルが非常に高く、目論見通り、いや期待以上でしたね。そして案件紹介による売上への大きな直接貢献にもたいへん感謝しています。
また林さんを始めAngel Bridgeのチームは、底抜けに明るい方々の集まりだと思います。特に今回、意思決定からかなり短期間での上場を推し進めました。色々な部分で、急速な変化によるひずみが生まれるのは覚悟の上でしたが、精神的にこたえるタイミングは幾度かありました。そういった時でも、Angel Bridgeの方々はいつも明るく、「いけますよ〜!」とニコニコ笑いかけてくれました。お会いするだけで、勇気付けられることが多々ありました。

林:成約寸前だった大型案件が、金融機関の事情でペンディングになった時もありましたね。業績への影響も小さくなかった。そういったときも我々はオンデックを信じて疑わなかったです。案件を紹介するので一緒にやりましょう、リカバリーしましょうと一緒にチャレンジしました。

久保:もう足を向けては寝れないですね。寝ますけど(笑)。

林:我々が本当にすごいなと思うのは、やはり約束された時期に約束どおり上場されたことですね。我々がその一端でもお力になれていたなら、嬉しいです。

久保:Angel Bridgeがいなかったら、この短期での上場は厳しかったと思います。結局会社経営は、色々な方の支えとパートナーシップの集積だと思っているので、どういったVCや事業会社とご一緒するかはとても大きな要素だと思いますね。

100年続く会社を作りたい

上場してから何か変わったことはありますか?

久保:驚くほどに精神状態は変わらないですが、株主の方など、ステークホルダーはもちろん増えたことに対して、身が引き締まる思いはあります。
結局ビジネスは第三者にどう評価されるかが重要で、どんなにサービスのクオリティを磨いても、評価されないとサービスを利用してもらうことはできませんし、機会そのものをいただけません。より多くの方々に、良い会社だねと言っていただくために、今まで以上に名実ともに成長しないといけないという、良い意味のプレッシャーは感じています。

100年続く会社へ―オンデック秘話

なぜ100年続く会社を作りたいのですか?

久保:真に社会に貢献できるような、大きな影響を社会に提供していこうとするならば、自分一人でやるのは無理だと考えています。もっと言えば、自分の代だけでできることには限りがあると思います。しかし、同じ情熱を持ったチームがあって、その目標や文化が、新たなメンバーや次のチームに脈々と受け継がれていくような組織の素地を作ることができれば、誰かが、我々の夢を、更に大きな形で実現してくれるはずです。100年、というのはあくまでイメージを伝えるための表現ですが、そんな組織を作ることが目標です。

100年後にどんなことが実現されていてほしいですか?

久保:日本に限らず、世界の中で、それぞれの国のそれぞれの得意分野での役割が明確になって、豊かさがフェアにシェアされているといいなと思います。

林:面白いですね。

久保:その時、日本が果たす役割、得意分野は、やはり製造業だと思っています。
ひとくちに「製造業」というと非常に幅広い概念になりますが、中でも特に、「より生産性を高める生産財の生産」は、日本の国民性に合致する、お家芸とも言える分野ではないでしょうか。例えば「燃費のいいエンジン」は、オイルがジャブジャブ採れる産油国では生まれないでしょうし、ファクトリーオートメーションの進化などは、労働力が溢れている国では起こりづらいでしょう。日本ならではの外部環境・内部環境だからこその文化や国民性が、モノづくりにつながっているのだと思うんですよ。日本がそうした分野で世界をリードし、世界における日本の役割が確立していけばいいな、と考えています。
同じように、いろんな国にそれぞれの明確な役割があって、フェアで前向きな相互依存関係ができることが、成熟した社会と言えるのではないかなと思っています。
将来、オンデックが、世界の中の日本のために、何らかの形で力になれれば最高ですね。

2021.03.14 COLUMN

こんにちは、Angel Bridgeの八尾です。「不動産テック」というワード、最近ニュースやメディアで目にすることも多いのではないでしょうか。

引越しの際などに実際に不動産情報サイトで家探しをしたことがある方も多いと思いますが、実際住む家を決めるとなると、ネットの情報だけではなかなか物件の様子が分からなかったり、おとり物件に惑わされたりなど、苦労した経験もあると思います。このように、不動産業界にはまだまだ課題が多いのが現状です。

そこで今注目されているのが“不動産×テクノロジー”の「不動産テック」という分野です。Angel Bridgeも不動産テック領域の株式会社カナリーに2020年に出資し、ハンズオン支援を行なっています。

私たちがなぜカナリーに投資したのか、その背景をこの記事ではお話ししていきます。

不動産テックがなぜ今アツいのか?

不動産テック(Prop Tech、Real Estate Techとも呼ぶ)は、不動産テック協会の定義から、「不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」だと解釈できます。

Angel Bridgeがこの不動産テックに注目している理由は3つあります。それは、市場規模が大きいこと、ペインが深いこと、そしてそれを解決する難度が高いことです。

不動産業界の市場が大きいことは自明でしょう。それにも関わらず旧態依然としている部分がまだ多くあり、ユーザーにとっても企業側にとってもペインの多い構造となっています。背景には昔ながらの業界慣習が根強く残っていることもあり、各ステークホルダーとうまく関係を作っていかないと新規参入プレーヤーが冷遇されるような難しい環境でもあります。

Angel Bridgeは、社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。

不動産賃貸業界のステークホルダー

不動産テックと一言で言っても領域がかなり幅広いので、今回は不動産テックの中でも賃貸業界に絞って解像度を上げてみます。

不動産賃貸業界には、①物件オーナー ②管理会社 ③仲介会社 ④プラットフォーマーなどの多くのステークホルダーが存在しており、その中でもプラットフォーマーの収益性は高く、スケールするスピードが速いことが特徴です(図1)。

不動産賃貸業界のステークホルダー

既にSUUMOをはじめ、いくつかのプラットフォーマーが存在しており、ユーザーと仲介会社をつなげることで急激に成長してきました(図2)。

不動産業界マップ

プラットフォーマー市場では圧倒的にSUUMOがリードしていますが、スモッカなど後発でも急速に成長しているサービスが存在し、新サービスが一定のシェアを獲得する余地はあると考えられます。

既存プラットフォームのペイン

市場からの評価も高い既存プラットフォーマーですが、実はまだまだたくさんのペインが存在しています。

利用ユーザー視点

利用ユーザー視点では、掲載物件の約半数を占めるおとり物件や、複数の仲介会社との必要以上のやり取りの手間によりユーザー体験は下がっています。これらは一度は体験したことのある方が多いのではないでしょうか(図3)。

既存プラットフォームのペイン 利用ユーザー視点
仲介会社視点

また、これらは仲介会社にとっても非効率な部分が多く、入稿作業による長時間労働や反響取り合いによる低成約率など、労働環境の悪化や低収益化につながっています。

既存サービスとカナリーのビジネスモデルの違い

ここで、Angel Bridgeの投資先であるカナリーが提供するプラットフォーム「CANARY」のビジネスモデルを説明します。

従来のプラットフォーマーはリアルな機能を持たず、ユーザーと不動産仲介会社をつなぐ広告型のビジネスモデルです。このモデルはインターネット上で完結できるためインターネット創世期に立ち上がり一気に事業拡大しました。一方でカナリーのモデルは、プラットフォーマーがリアルと一体となって、ユーザーと不動産物件を直接つなぐビジネスモデルです(図4)。このモデルはリアルの立ち上げが必要な分、事業の拡大には時間がかかります。ただし、一度このモデルを築き上げれば高いサービスレベルが強固な競争優位性を生みます。

CANARYのビジネスモデル

この違いはわかりやすく例えると、楽天とAmazonに似ています。

楽天は在庫を保有せずメーカーや小売業者に出店場所を提供しているだけですが、Amazonは自身が在庫や物流機能を保有し、販売しています。短期勝負なら一気に出品数を増やすことができ、物流等のオペレーションも担わない楽天のような広告型モデルが強いですが、長期目線ではAmazonモデルの方が提供価値が高いと考えています。

SUUMOは楽天のように多数の不動産仲介会社の物件情報を掲載しています。一方でCANARYはAmazonモデルに近く、BluAgeがデータベースを一元管理しユーザーと物件を直接つなぐビジネスモデルです。これにより効率的で質の高いサービスを実現し、前述したようなユーザーと仲介両者のペインを解消しています(図5)。

テクノロジーとリアルの融合モデル

このように、SUUMOとCANARYのビジネスモデルには楽天とAmazonのような大きい違いがあり、後発であっても十分勝てる余地があると考えました。

VCとして投資するにあたり検討したポイント

Angel BridgeがカナリーにVCとして投資するにあたり、事業・経営陣・バリュエーションの主に3点を検討しました。

事業に関しては、上述のようなビジネスモデルの違いからペインが解消されることの仮説があったので、このモデルが成立するのかどうかという点で検証を行いました。大手プラットフォーマーとの登録物件数の比較や、提携不動産会社の方へのヒアリングを行い各ステークホルダーに受け入れられるビジネスモデルだと判断しました。

また、特にアーリーステージにおいて経営陣は重要です。度重なる困難に素早く打ち勝つだけの地頭の良さ、やり切る力(パッション)、優秀なメンバーを組織できる人間性が必要だと思っています。社長との面談はもちろんですが、共同創業者、本社の主要メンバー、既存投資家とも一人一人面談を行い検証しました。最後にバリュエーションの妥当性についての検証ですが、実際のトラクションに基づいたボトムアップアプローチと、上場時の時価総額から期待リターンを逆算して考えるトップダウンアプローチの両面で考えました。

おわりに

不動産テック業界は注目され続けており、上場しているGA technologiesやSREホールディングスも急速に事業拡大し売上高を伸ばしています。IT重説(*1)は既に容認されており、電子契約も徐々に認められる流れにあります。テクノロジーの活用余地は今後さらに広がっていくと考えています。

また不動産テック以外の業界においても、テクノロジーとリアルを融合したモデルが時間をかけて競合優位性を築いています。インターネット創世期に大きくなったサービス領域は、そこに大きな市場があることが明確でありペインが潜んでいることが多いです。SUUMOに代表されるように、リクルートが昔から取り組む領域にはチャンスがあるのではないでしょうか。テクノロジーとリアルの融合により旧型のIT巨人を打ち崩していくことは非常に面白いチャレンジだと思っています。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にFacebook、TwitterでDMください!良ければフォローもよろしくお願いいたします!

Angel Bridge 八尾にコンタクトしたい方はプロフィールに掲載しているSNSまでご連絡ください。

(*1) IT重説とは、テレビ会議などのITを活用して行う、賃貸借契約における重要事項説明。

2021.03.10 INTERVIEW

遺伝子検査会社が足りない日本の状況をなんとかしたい、という想いからスタートした子宮内フローラ検査事業

遺伝子検査会社が足りない日本の状況をなんとかしたい、という想いからスタートした子宮内フローラ検査事業

Varinosは現在どういった事業を行なっているのですか?

桜庭:創業当初から続いているのは、腟や子宮から採取した検体を用いて子宮内の菌の種類や割合を調べる、子宮内フローラ検査事業です。子宮内フローラとは子宮や膣内に存在する菌の環境のことであり、女性や胎児を感染症から守り、妊娠や着床率と重要な関わりがあります。
また、検査して子宮内フローラの状態が良くない場合は、子宮内フローラの改善効果があるラクトフェリンをサプリとして摂取することができます。こちらは研究段階から始めましたが、子宮内フローラの改善効果がかなり高く、多くの患者さんにご利用いただいています。

子宮内フローラのためのラクトフェリン

また、体外受精や顕微授精後の胚の染色体や遺伝子を着床前に評価可能な着床前ゲノム検査(PGT-A)も昨年から本格的に始めました。
将来的にはもっと色々なゲノム関連技術を開発したいと考えています。

桜庭さんはずっとアカデミアの世界にいたようですが、どういった経緯で起業しようと思ったのですか?

桜庭:おっしゃる通りもともと私はアカデミアの人間でして、博士課程修了後アメリカで基礎研究を行っていたのですが、その中で自分の人生について考える機会がありました。当時プリスクールに通っていた娘が、「コミュニティヘルパーの格好をして学校にきてください」という宿題をもらってきたんです。
コミュニティヘルパーというのは医師や消防士など地域の人々を助ける職業の人のことなのですが、その時ふと、僕はコミュニティヘルパーじゃないなと思って。基礎研究をしていても誰かが助かるわけではない。一度きりの人生だから、もっと人々に貢献ができる仕事をしたいと思うようになりました。
それならば、日本に帰ったら違うことをしよう、ビジネスサイドでやろうと思い、GeneTechという臨床検査会社にジョインしました。
その後イルミナというゲノム解析技術の会社に転職したのですが、そこで共同創業者の長井さんと出会い、2人で創業することになりました。長井さんと私は2人とも、遺伝子検査会社が足りないこの日本の状況をなんとかしたいという気持ちを抱いていたからです。

Varinos株式会社

次世代シークエンサーというゲノム解析技術は15年ほど前に誕生し、最初は研究用途のみでしたが、この10年で医療応用されてきました。イルミナもがんや遺伝病には力を入れてきましたが、アメリカ、ヨーロッパ、中国などに比べて日本はまだまだ実績が足りておらず、悔しい気持ちをずっと抱いていたんです。
そういった背景があり、自分たちでゲノム検査会社を作るべきではないか?やろうと思えばできるのでは?という話が出てきて、起業するに至りました。

なぜゲノム検査の中でも生殖医療の領域に注力されたのですか?

桜庭:理由は2つあります。1つ目は、前々職で生殖医療に近い領域で仕事をしていたからです。新型出生前診断(NIPT)を日本に導入するプロジェクトをやっていたので、産科の分野や先生方とのネットワークがありました。産科は妊娠した後の話で、生殖医療は妊娠する前の話ですが、ここもゲノムが活躍できる分野で、グローバルでは生殖医療の分野でもゲノム検査が大活躍していました。
しかし、着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)は海外では一般的に行われている検査なのに、なかなか日本では実施されていませんでした。患者さんや産科の先生方も含め、やりたいのにできない現状をなんとかしたいという思いから、生殖医療がVarinosとしてのスタート地点になったのです。
2つ目の理由として、ゲノム医療は保険診療との相性が悪いという背景があります。がんなどの領域でのゲノム医療は既に取りざたされていますが、標準治療が終わっている人しか保険診療として受けられないんです。しかし標準治療が終わっているとかなりがんが進行しているので、あまり恩恵がありません。保険診療が絡んでくる領域だとなかなか技術を届けたいところに届けられないんです。しかし産科や生殖医療はほとんど自費診療なので、タイムリーに患者さんに最新技術を届けることができます。
こういった背景から、私たちのようなベンチャーが最新の技術を使って医療領域で勝負するなら生殖医療だろうと思うに至り、ここにまず注力することを決めました。
また我々は生殖医療を軸にしているように見えますが、実はこれはまだまだ第一歩で、ゲノム検査を柱にこれから様々な領域で開発・提供していきたいと考えています。

色々な不妊治療が日本にも存在しますが、Varinosの強みはどこにあるのでしょうか?

桜庭:分かりやすいように車で例えてみると、車を運転できる会社はたくさんありますが、我々は車体さえも作れる、需要があるフィールドで走れる車を自分たちでカスタマイズして作れるのが強みであると考えています。
Varinosは子宮内フローラのように、全く世の中になかった検査を作って、それを提供することができます。ただ単にキットや機械を買って運用しているだけの会社はいくつもありますが、自分達で方法を考えて開発して、検査を実行できる会社は国内にはほとんどありません。
そこが海であれば、海でも走れる車を作るし、凸凹な道であれば、タイヤの大きい車を作る。市販車では行けないようなところに行けるのがVarinosの強みであると考えています。

常に投資先と伴走し最適なタイミングで意思決定をする、Angel Bridgeのハンズオン支援のあり方

常に投資先と伴走し最適なタイミングで意思決定をする、Angel Bridgeのハンズオン支援のあり方

なぜシリーズAでAngel Brigeから資金調達を受けようと思ったのですか?

桜庭:今となっては事業が立ち上がっていますが、シリーズAの資金調達に向けて動き出した当時は設立から7ヶ月後ぐらいで、やっと検査が始まったばかりでした。
その上僕らは当時ストーリーを語るのが下手で、Varinosの事業の本当の価値を当時のVCに伝えられていませんでした。しかしその中でも河西さんは、Varinosの言語化できていない価値まで理解してくれていました。

河西:Angel Bridgeは桜庭さんの前々職のGenetechに投資しており、その頃から桜庭さんのことは知っていたので、桜庭さんが言っていることはとてもよくわかりましたね。

桜庭:生殖医療はベンチャーこそが活躍できる領域であり、河西さんは我々が持っているポテンシャルが実は他社と全然違うということを、会話しながら自ら気づいてくれていたんです。

Varinosへの投資の決め手は何だったのでしょうか?

河西:サイエンスもビジネスも理解できている人はなかなかいませんので、どちらもカバーできている経営陣が素晴らしいなとまず思いました。桜庭さん、長井さんという違うタイプの二人がとてもいいバランスをとっていましたね。
また事業領域としても、現在の日本の少子高齢化社会において、妊娠率を上げていくサービスはニーズがあるのはわかっていましたし、最先端の次世代シークエンサーを駆使して優れた遺伝子検査プロダクトを出すというのは、とても意義の深いビジネスだと感じました。
それをこの二人がやるというのならば、我々としても全力で支援したいと思い、即決で2億円の投資を決めましたね。

創業後、どのような逆境がありましたか?

桜庭:新型コロナウイルスの影響で、2020年の4月に日本生殖医学会から、人工授精、体外受精・胚移植、生殖外科手術などの治療に関しては、延期が可能なものについては延期を考慮するようにという通達が出てしまい、かなり不安でした。
しかし、子宮内フローラ検査は体外受精の前段階の検査だということにすぐ気づき、逆に準備する時間ができたと考えむしろ多く検査したほうがいいと思い立ちました。
そしてこのメッセージを伝えるために、「新型コロナに負けるなキャンペーン」として子宮内フローラ検査を打ち出し、この逆境を乗り越えることができました。

投資を受けた後、Angel Bridgeからどんな支援がありましたか?

桜庭:Angel Bridgeが我々と伴走してくれているというのは、常に感じています。僕も長井さんも経営の素人ですが、それでもいつもリスペクトしてくださり、きちんと我々の考えを尊重してくれながらも助言をくださるので、暖かいですし、とても頼りになります。
また、採用も資金調達も色々なタイミングがあると思いますが、今の所それらのタイミングは外れていないなと思っています。いつやるべきかは将来のことなのでその時はわかりませんが、後から見れば最適な時期にやっているなと思いますね。
例えば億単位の融資を、まだ資金ショートしていない時期に受けていいのか?と疑心暗鬼になりながらAngel Bridgeと一緒にプロセスを進めましたが、当時融資を受けていたからこそ、コロナの後迅速に融資を受けることができたなと今振り返ってみて思います。
また、このステージだと出会えないようなスペックの経営人材を紹介してもらったりなど、予定より良い方向に前倒しにしてもらっていますね。

シリーズBの資金調達にあたり、Angel Bridgeからどういった支援を受けましたか?

桜庭:ステージごとにコンタクトすべきVCや順番があると思うのですが、それらも教えてもらわないとわからなかったですし、誰がリードをとるのかなども、大事なことですが我々は何も知らない中でAngel Bridgeから教えてもらっていました。
また当時は焦ってしまう時期もありましたが、焦らずいろんな人の話を聞けばいいんだよと力づけてもらいました。助言がなければ間違った道に行っていたかもしれませんし、本当に心強かったですね。

河西:こう振り返ってみると、結構一緒に歩んできた感はありますよね(笑)。

Varinosを日本一の遺伝子検査会社に

Varinosを日本一の遺伝子検査会社に

桜庭さんはVarinosをどんな会社にしていきたいですか?

桜庭:最初はM&Aを目指していたのですが、今はIPOを目指す意思決定をしています。
我々の起業当初の目的はゲノム検査を日本に根付かせることでしたが、M&Aなら外資に買われる可能性が高く、ということは日本でこの事業をやりたいという目的とずれてしまう。それならばIPOを目指すしかないよね、というのがここ最近の結論です。
また、IPOをするからには日本で一番の遺伝子検査会社になりたいと思っており、「遺伝子検査といえばVarinosだよね」と言われるようになりたいです。
もちろん海外進出は展開が始まったばかりですが、子宮内フローラ検査だけ切り取って見るともう世界一ですし、グローバルでも日本の検査会社はVarinosだと言ってもらえるよう進化し続けたいと思います。

2021.03.01 TEAM

相手を応援したいという気持ちを大切に

相手を応援したいという気持ちを大切に
林さんは毎日どのようなタイムスケジュールで過ごしているのですか?

Angel Bridgeのパートナーとして、既存投資先への支援、ソーシング活動など、ベンチャーキャピタリストとしての業務を行なっています。

こういったコロナ感染拡大の時期では、直接会うことが叶わない状況がありますよね。

そうですね。以前のように直接会うことは叶わないことが多いですが、ITの恩恵を受けて、いつにも増してたくさんの起業を目指す人たちと会うことができています。

Angel Bridgeが設立されたのは2015年ですが、それ以前は何をされていたのですか?

食品関連の上場企業で取締役を務めたり、エミアル株式会社(emiall)という会社を立ち上げ、個人でいくつかのベンチャー企業にエンジェル投資家として投資を行なっていました。
いつもみんなで笑っているというのが私の究極の目的でして、いつも笑ってニコニコしていようねという意味でこの社名をつけました(笑)。

当時はどういった軸で投資をされていたのですか?

北海道から不退転の決意できた起業家、「人を支える人(介護)」を支える起業家、など、一生懸命事業に打ち込んでいる方に投資をしていました。自分自身が応援したいという気持ちを一番大事にしていましたね。

その中でもRettyは最近上場されたと思いますが、どういった経緯で投資されたのですか?

創業者のお二人にお会いした時に、とても誠実な方々だなと思いました。他にも大手の競合があった中で新しいグルメサイトを作るという強い信念を感じ、すぐに投資を決めました。 誠実で信念を持っている方を応援したいなと、やはりその頃から思っていましたね。2020年の上場を受けて、社会の規範となる経営者、素養のある事業体だなと改めて思いました。そういった想いを私の中に築き上げたのは、大学卒業後20年にわたって勤め上げた、伊藤忠商事での経験だと思っています。

伊藤忠に入社されてからはどういったお仕事をされていたのですか?

鉄鋼貿易部門という部署に所属し日本で4年目を終えた時に、ドイツでの海外駐在の話をいただきました。ドイツではかれこれ9年間働き、鉄鋼貿易、製造業設立・稼働、現地企業買収など様々な業務をやりました。
その後一度日本に戻りましたが、帰国してすぐにまたアメリカに異動届を出しました。やはり海外にいると自分の意思決定の幅が広くとても楽しいので、すぐ戻りたくなってしまって(笑)。
アメリカにいる間にはシカゴ支店長を務めました。とてもダイナミズムのある仕事ができ、かけがえのない経験でした。また、アメリカにいる間に働きながらKellogg経営大学院でMBAも取得しました。考えるより行動するタイプなのであまり深く考えずにMBAに行くことを決めたのですが(笑)、様々な職種や立場の人と関わりを持てたのはとても良い経験でしたね。
私の人生で一番良かった職業の選択は伊藤忠商事に入社したこと、そして二番目に良かった選択は伊藤忠商事を辞めたことだと思っています。こういった非常に躍動感のある事業に参画できているのは、行動力と幅広い視野が求められる伊藤忠での経験があったからこそであり、一方で伊藤忠を辞めたからこそ現在投資に全ての情熱を注げているのだろうなと感じています。

そういった林さんの情熱の根源はどこにあるのですか?

胆力や諦めない心、限界を超えられない自分を直視する厳しさを教えてくれたのは、ハンドボールでした。
中学までは野球をやっていましたが、高校からはハンドボールを始め、大学時代は朝から晩までハンドボールしかない生活でした。相手チームにはオリンピック代表選手も多く、とてもハードワークでしたね(笑)。
試合に出て勝つという喜びや、他のメンバーと気持ちを共有する感動が何ごとにも変えがたく、心身ともに競技に魅了され、時間を費やしていました。

起業家自身が持っている物語を大事にしたい

起業家自身が持っている物語を大事にしたい
なぜ個人で投資を続けるのではなく、VCを創業するという道を選んだのですか?

個人で投資をする際はすべて私の自己責任で行うことができますが、VCの場合は受託者の責任があり、これが自分の規律や行動にも大変強く影響するので、さらに強く責任を全うすることに繋がると思いました。
元々起業家を全力で応援したいという気持ちはずっとありましたが、個人では資力に欠けることを感じる場面も何度かあり、他の方と一緒に投資をするという取り組みの中で河西さんに出会いました。その中で河西さんの知見を元にしたさらに大きな取り組みに賛同し、Angel Bridgeに参画することを決めました。

なぜ河西さんと創業することを決めたのですか?

先ほどの起業家を応援するという話にも繋がりますが、河西さんご自身が非常に誠実で強い信念をお持ちの方だと思っています。この仕事は一心同体で重要なことを決断しなければならないことが多いのですが、一片の迷いもなく共同の決断をできる方です。
また彼がベンチャーを全力で応援する姿勢も非常に素晴らしく、常に見習いたいと思っています。

林さんにとってAngel Bridgeでの仕事は、どのようなものでしょうか?

毎日の取り組みが非常に変化に富んで、刺激的なんですよ。社会や世界を変えていくような起業家の方々と交わることができる、非常に恵まれたポジションだなと思っています。こんなに楽しいことはないですね。
一番、苦手なのは資料を作ることです(笑)。以前、八尾さんのパワーポイントを私が加工して転用したら、「どこかで見た資料ですね」と八尾さんに言われてしまいました(笑)。

お話を聞いていると、林さんは人との繋がりにとてもご興味がありそうですね。

そうなんですよ。コロナ前は2ヶ月に1回の頻度で100人規模の「はやし会」というものを開催していました(笑)。
行動すると何かが広がるなという経験があり、こういった企画をすることでみなさんの中で何か新しいことが始まってくれたらいいなという思いでやっています。

どういう起業家に会った時、応援したいと感じますか?

非常に誠実で、そして自分の考え方を持っている人ですね。たとえば出光佐三氏の創業時から支援している日田重太郎という資産家がいて、その方が3つの条件を出光氏に提示しています。

「信念を曲げないこと、社員を大事にすること、そして自分の支援を他の人に伝えないこと」

我々も起業家を応援する際には、事業そのものはもちろんですが、この人であれば全力で応援したいなど、その人自身が持っている物語を大事にしたいと思っています。
例えば、なかなか投資が難しいと思っていた案件でも、起業家の方がとても熱心で、何度もプレゼンを重ねてくれ、私たちも非常に心を打たれ、投資を決めたベンチャーもありました。そういった経験から本当にたくさんのことを学んでいます。
特に私たちはバイオベンチャーにたくさんの投資をさせていただいていますが、人の人生、命、そして決して会うことのない世界の人たちの健康を願っている、大きなビジョン・使命に答えなければならないと、いつも河西さんと話しています。

起業家にチャレンジングで感動的な人生を

起業家にチャレンジングで感動的な人生を
Angel Bridgeで何を成し遂げたいですか?

Angel Bridgeが投資しているベンチャー企業が、Angel Bridgeとのお付き合いを通じて成長し、そして、それにかかわる全員が幸福で感動的な人生を送って欲しいと思っています。我々はそのような存在でありたいと思っています。
また、河西さんは日本を代表するキャピタリストになる、人格の上に成功される方だと思っているので、それを応援したいと思っています。

林さんが大切にされている信念についてお伺いしたいです。

私の人生哲学として、「人生一寸先は”バラ色”」という言葉があります。何かを途中で諦めたりせずに、形を変えてでも続ければバラ色の世界がきっと来るんですよ。
それが明日かもしれない。たった三年ですごく人の人生は変わるので、もし今日自分の人生がバラ色ではないとしても、努力すればきっとバラ色の人生がすぐ来る。そう信じています。


Angel Bridge 林にコンタクトしたい方はContactこちらからのお問い合わせ、もしくはID)); ?>”>Team に掲載しているSNSまでご連絡ください。

2021.02.01 TEAM

投資家として生きていくという決断

投資家として生きていくという決断
河西さんは毎日どのようなタイムスケジュールで過ごしているのですか?

ソーシング・バリューアップでだいたい半分ずつ時間を使っていますね。コロナ前は投資先に実際に伺ったり出張もしていたりしましたが、今はオンラインで行うことが多いです。

なぜ投資に興味を持つようになったのですか?

もともと両親と祖父が大学の教授でして、アカデミックな環境で育ちました。そのため小学生の頃はノーベル化学賞をとりたいと文集に書いていたほど、真理の探究であったり、物事を深くまで突き詰めたりする世界観が素晴らしいと思っていました。

そういった背景から、バイオテクノロジーで世の中を変えるような研究者になりたかったので、東京大学の農学系研究科に進学し稲の遺伝子組換えの研究をしていました。研究はすごく楽しかったのですが、そういったテクノロジーを世の中に広げること自体への興味が薄い人が多く、だんだん本当に研究者として自分が生きていくべきか、疑問を持つようになりました。

バイオ系のバックグラウンドですが、なぜ投資銀行に入社しようと思ったのですか?

仮説を立て、それを検証するというサイクルが好きだったので、プロフェッショナルファームのように仮説を死ぬほど深掘りして証明していくといったプロセスは、研究対象が稲から会社に変わっただけで思考プロセスは変わっておらず、自分にとても合っているなと思ったからです。

また、自分の本質的な価値をあげたかったので、ゴールドマンサックスのように手に職をつけてどんどんキャリアアップをしていく、組織に根付かない仕事に就きたいと考えていました。

ゴールドマンサックス入社後は、M&AアドバイザリーやIPO・資金調達の支援など様々な業務を経験しましたが、その中でもPEファンドとの仕事が一番面白かったですね。ある会社のある事業部門を買収するべきか、いくらで買うか、といった事をとことん考えるのが好きでした。

なぜその後すぐPE(バイアウトファンド)に転職しようと思ったのですか?

投資銀行はアドバイザーであり意思決定者ではないため、会社を買収するべきか等をとことん突き詰めるPEの方が自分に合っているなと思ったからです。

ゴールドマンサックスで働いていた頃のM&A案件の買い手がベインキャピタルだったので声をかけていただき、入社を決めました。当時はちょうど日本オフィスを開設している段階で7番目のメンバーでしたね。

シカゴ大学MBAに在学中はどのような時間を過ごしたのですか?

もともと学際肌なので、一度海外で勉強したいと思い、金融に強いシカゴ大学のMBAに進学しました。実際行ってみると結構暇でしたので(笑)、自分としての生き方をずっと考えたり、自分が普段どんな点を見て目利きしているのか、どういった会社がいい会社だと考えているかを整理したりすることに時間を費やしていました。

それまでのキャリアを通してずっと投資が楽しいと思っていたので、今後も投資家として生きていこう、そしていつか自分のファンドを作ろうと考えるようになりました。自分の人生と向き合うことができた、非常に貴重な時間だったと思います。

修了後は、PEでの仕事がやはり好きだったのでPEに戻ろうと思いました。江原さんというユニゾンキャピタルの創業者の方がシカゴ大学のMBA出身で、非常に魅力的な方だったのでぜひ一緒に働きたいと思い、ユニゾンキャピタルに入社し4年ほど働きました。

そのような河西さんの経験を通して、現在のAngel Bridgeでの取り組みに生きていることは何でしょうか?

PEのバリューアップをスタンダードにベンチャー企業の支援をすることは、非常に価値があると思っています。

というのも、PEは100%投資先のオーナーであり、かなり会社のバリューアップに時間を割くので、その経験は現在に直接生きており、我々ほど事業に入り込んで、価値向上に命をかけてやる人はなかなかいないのではないでしょうか。

また、PE・上場株投資を経て、VCも経験すると、エクイティ系は全部経験しており企業の成功例や失敗例をたくさん見て来ているので、ステージは違えど目利き力に深みが増すと思っています。そのため、例えその事業が一切周りから評価されていなくても、Angel Bridgeではその事業が良いと思えれば投資できます。

ここまでアクティブなキャリアを歩むことになった、河西さんの情熱の源はどこにあるのでしょうか?

日本に価値貢献をしたいという想いが私の根源にあり、優秀な人ほど日本のために働かないといけないと常に感じています。

優秀な人ほどリスクをとってチャレンジしていくべきだという想いが、こういったキャリアを歩むことに繋がっていると思いますね。

自分の気持ちを100%込めたファンドで勝負したい

自分の気持ちを100%込めたファンドで勝負したい
なぜそれまでのキャリアから一転してVCをやろうと思ったのですか?

PEの仕事は面白いのですが、ある程度出来上がった会社を100から200、場合によっては300にバリューアップするような案件が多いです。

しかし、今の日本においてはそういったバリューアップではなく、ゼロイチをたくさん起こし、未来の日本を作るようなベンチャーを創っていくことこそが必要とされているのではないかと思うようになったからです。

VCを河西さん自身が実際に創業しようと思ったのはなぜですか?

自分の気持ちを100%込めたファンドで勝負したい、テクノロジーで大きな社会課題を解決したいと思ったからです。

創業する前からずっと、大学に眠る技術を切り出してしっかり目利きし、大学の先生と力を合わせて事業化したいという気持ちがありました。日本の大学にはいろんな技術シーズが眠っていますが、ビジネス化に至ることは非常に少ない事を痛感していたからです。

私には今までの経歴からバイオテックの肌感があるので、大学系ベンチャーにリスクマネーを入れ、ハンズオン支援をすることでこれを達成できると思いました。

また現在は大学発ベンチャーだけでなくITベンチャーへの投資も積極的にしております。こういった活動も、大きな社会的課題を解決したいという想いから行なっています。優秀でやる気のある経営チームがリスクを取って新しいものを生み出していこうとする活動こそが今の日本にとって必要であり結果的にGDPへの貢献につながると思っています。

LP投資家はどのような方々なのでしょうか?

創業当初は個人の富裕層からの資金で投資を行っていました。アーリーステージの投資はリスクが高く、グロースするまで時間がかかります。そういった背景から、シード投資の自由度には個人の富裕層の資金が一番フィットすると思ったからです。Angel Bridge自身も徐々にスケールする中で規模感を出すにはやはり機関投資家の資金が必要であると感じるようになり、今では機関投資家からの資金が中心となっております。

共同創業者の林さんとはどういった出会いだったのですか?

林さんは当時エンジェル投資家としてアーリーステージのベンチャーを支援しており、私と同じ目標を持っていたので是非一緒に創業しようということになりました。林さんは人のネットワークにとても長けており、私とタイプが違うので相互補完的に働くと思ったのです。

また林さんと一緒にいると純粋にとても楽しく、今後いろんな山あり谷ありがきっとあるけれども、林さんとなら乗り越えていけると感じました。

自分の気持ちを100%込めたファンドで勝負したい
”Angel Bridge”という社名にはどういった想いが込められているのですか?

エンジェル投資家と起業家の橋渡しをしたい、という思いからこの社名をつけました。

個人の富裕層からお金を預かり、命をかけている起業家に橋渡しをすることは、我々がしっかり事業を目利きすることによって、あるべきところに正しくお金をアロケーションするということであり、それだけでとても大きな価値が生まれると思っています。

またそれだけでなく、投資した資金を有効活用するように起業家と一緒になってバリューアップすることで、最適アロケーションのインパクトを増やせると思っています。

これにより大きな事業がたくさん生まれることは非常に社会的価値がありますし、パッションのある起業家の夢を、私たちは主役ではなくサポーターとして叶えてあげたいと、常に考えています。

河西さんは他にも投資に繋がるような活動をしているのでしょうか?

起業から上場まで経験した12人の東大出身の起業家の方々と、東大創業者の会というファンドを運営しています。東大出身の起業家が増えてきているので、アーリーステージの後輩を支援しようということでファンドを設立しました。現在は10社の東大発ベンチャーに出資・メンタリングを行なっています。

また金融開成会という、開成出身で金融業界に行った人が集まる会の幹事をやっています。マネックスの松本さんや、日銀、金融庁、外資系、ファンド出身者など800人ほどが所属しています。開成に新校舎を作るような真面目な事業の傍、夏に館山に行ってふんどしを巻いて泳いだり、砂浜で騎馬戦をしたり、といった中高生のようなことも未だにやっています(笑)。

“念ずれば花ひらく”、という精神を忘れずに

"念ずれば花ひらく"、という精神を忘れずに
Angel Bridgeの代表を続けるなかで、河西さんが感じている面白みは何ですか?

起業家の方が成長していくのを一緒に見るのが非常に楽しいですね。またそれと同時に、Heartseedのように研究者の方がだんだん夢を叶えて大きくなっていくのを見届けること、そして事業が大きくなっていくのを隣でファンとして見るのも、本当にやりがいがありますね。

今後Angel Bridgeを通して河西さんが成し遂げたい夢はありますか?

投資を通じて日本を豊かにしたい。そのために、独自のテクノロジーで大きな社会課題を解決していくようなユニコーン企業を生み出していきたいですし、そういったパッションのある起業家をこれからも支援したいと思っています。

Angel Bridgeとしては、さらに多くの人を支援し、インパクトを上げるためにファンドサイズは上げていきたいと考えています。

また今後八尾のようなキャピタリストを育て、色々なところでAngel Bridge流のバリューアップが起こると世の中により多くの正のインパクトを出せると考えているので、キャピタリスト育成にも力を入れていきたいです。

河西さんが大切にされている信念についてお伺いしたいです。

私の人生哲学として、「念ずれば花ひらく」という言葉があります。

誰よりも強く念じ、毎日寝る間も惜しんでどうすれば夢が叶えられるかを強く考える。そうすると何かが見えてくるし、やりきるために努力を続けることは馬鹿にならない。

日本再興の切り札はスタートアップにあると私は考えているので、そう思っている起業家の方々を、念ずれば花ひらく精神で支援していきたいと思っています。


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