2021.03.14 COLUMN

こんにちは、Angel Bridgeの八尾です。「不動産テック」というワード、最近ニュースやメディアで目にすることも多いのではないでしょうか。

引越しの際などに実際に不動産情報サイトで家探しをしたことがある方も多いと思いますが、実際住む家を決めるとなると、ネットの情報だけではなかなか物件の様子が分からなかったり、おとり物件に惑わされたりなど、苦労した経験もあると思います。このように、不動産業界にはまだまだ課題が多いのが現状です。

そこで今注目されているのが“不動産×テクノロジー”の「不動産テック」という分野です。Angel Bridgeも不動産テック領域の株式会社カナリーに2020年に出資し、ハンズオン支援を行なっています。

私たちがなぜカナリーに投資したのか、その背景をこの記事ではお話ししていきます。

不動産テックがなぜ今アツいのか?

不動産テック(Prop Tech、Real Estate Techとも呼ぶ)は、不動産テック協会の定義から、「不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」だと解釈できます。

Angel Bridgeがこの不動産テックに注目している理由は3つあります。それは、市場規模が大きいこと、ペインが深いこと、そしてそれを解決する難度が高いことです。

不動産業界の市場が大きいことは自明でしょう。それにも関わらず旧態依然としている部分がまだ多くあり、ユーザーにとっても企業側にとってもペインの多い構造となっています。背景には昔ながらの業界慣習が根強く残っていることもあり、各ステークホルダーとうまく関係を作っていかないと新規参入プレーヤーが冷遇されるような難しい環境でもあります。

Angel Bridgeは、社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。

不動産賃貸業界のステークホルダー

不動産テックと一言で言っても領域がかなり幅広いので、今回は不動産テックの中でも賃貸業界に絞って解像度を上げてみます。

不動産賃貸業界には、①物件オーナー ②管理会社 ③仲介会社 ④プラットフォーマーなどの多くのステークホルダーが存在しており、その中でもプラットフォーマーの収益性は高く、スケールするスピードが速いことが特徴です(図1)。

不動産賃貸業界のステークホルダー

既にSUUMOをはじめ、いくつかのプラットフォーマーが存在しており、ユーザーと仲介会社をつなげることで急激に成長してきました(図2)。

不動産業界マップ

プラットフォーマー市場では圧倒的にSUUMOがリードしていますが、スモッカなど後発でも急速に成長しているサービスが存在し、新サービスが一定のシェアを獲得する余地はあると考えられます。

既存プラットフォームのペイン

市場からの評価も高い既存プラットフォーマーですが、実はまだまだたくさんのペインが存在しています。

利用ユーザー視点

利用ユーザー視点では、掲載物件の約半数を占めるおとり物件や、複数の仲介会社との必要以上のやり取りの手間によりユーザー体験は下がっています。これらは一度は体験したことのある方が多いのではないでしょうか(図3)。

既存プラットフォームのペイン 利用ユーザー視点
仲介会社視点

また、これらは仲介会社にとっても非効率な部分が多く、入稿作業による長時間労働や反響取り合いによる低成約率など、労働環境の悪化や低収益化につながっています。

既存サービスとカナリーのビジネスモデルの違い

ここで、Angel Bridgeの投資先であるカナリーが提供するプラットフォーム「CANARY」のビジネスモデルを説明します。

従来のプラットフォーマーはリアルな機能を持たず、ユーザーと不動産仲介会社をつなぐ広告型のビジネスモデルです。このモデルはインターネット上で完結できるためインターネット創世期に立ち上がり一気に事業拡大しました。一方でカナリーのモデルは、プラットフォーマーがリアルと一体となって、ユーザーと不動産物件を直接つなぐビジネスモデルです(図4)。このモデルはリアルの立ち上げが必要な分、事業の拡大には時間がかかります。ただし、一度このモデルを築き上げれば高いサービスレベルが強固な競争優位性を生みます。

CANARYのビジネスモデル

この違いはわかりやすく例えると、楽天とAmazonに似ています。

楽天は在庫を保有せずメーカーや小売業者に出店場所を提供しているだけですが、Amazonは自身が在庫や物流機能を保有し、販売しています。短期勝負なら一気に出品数を増やすことができ、物流等のオペレーションも担わない楽天のような広告型モデルが強いですが、長期目線ではAmazonモデルの方が提供価値が高いと考えています。

SUUMOは楽天のように多数の不動産仲介会社の物件情報を掲載しています。一方でCANARYはAmazonモデルに近く、BluAgeがデータベースを一元管理しユーザーと物件を直接つなぐビジネスモデルです。これにより効率的で質の高いサービスを実現し、前述したようなユーザーと仲介両者のペインを解消しています(図5)。

テクノロジーとリアルの融合モデル

このように、SUUMOとCANARYのビジネスモデルには楽天とAmazonのような大きい違いがあり、後発であっても十分勝てる余地があると考えました。

VCとして投資するにあたり検討したポイント

Angel BridgeがカナリーにVCとして投資するにあたり、事業・経営陣・バリュエーションの主に3点を検討しました。

事業に関しては、上述のようなビジネスモデルの違いからペインが解消されることの仮説があったので、このモデルが成立するのかどうかという点で検証を行いました。大手プラットフォーマーとの登録物件数の比較や、提携不動産会社の方へのヒアリングを行い各ステークホルダーに受け入れられるビジネスモデルだと判断しました。

また、特にアーリーステージにおいて経営陣は重要です。度重なる困難に素早く打ち勝つだけの地頭の良さ、やり切る力(パッション)、優秀なメンバーを組織できる人間性が必要だと思っています。社長との面談はもちろんですが、共同創業者、本社の主要メンバー、既存投資家とも一人一人面談を行い検証しました。最後にバリュエーションの妥当性についての検証ですが、実際のトラクションに基づいたボトムアップアプローチと、上場時の時価総額から期待リターンを逆算して考えるトップダウンアプローチの両面で考えました。

おわりに

不動産テック業界は注目され続けており、上場しているGA technologiesやSREホールディングスも急速に事業拡大し売上高を伸ばしています。IT重説(*1)は既に容認されており、電子契約も徐々に認められる流れにあります。テクノロジーの活用余地は今後さらに広がっていくと考えています。

また不動産テック以外の業界においても、テクノロジーとリアルを融合したモデルが時間をかけて競合優位性を築いています。インターネット創世期に大きくなったサービス領域は、そこに大きな市場があることが明確でありペインが潜んでいることが多いです。SUUMOに代表されるように、リクルートが昔から取り組む領域にはチャンスがあるのではないでしょうか。テクノロジーとリアルの融合により旧型のIT巨人を打ち崩していくことは非常に面白いチャレンジだと思っています。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にFacebook、TwitterでDMください!良ければフォローもよろしくお願いいたします!

Angel Bridge 八尾にコンタクトしたい方はプロフィールに掲載しているSNSまでご連絡ください。

(*1) IT重説とは、テレビ会議などのITを活用して行う、賃貸借契約における重要事項説明。

2021.03.10 INTERVIEW

遺伝子検査会社が足りない日本の状況をなんとかしたい、という想いからスタートした子宮内フローラ検査事業

遺伝子検査会社が足りない日本の状況をなんとかしたい、という想いからスタートした子宮内フローラ検査事業

Varinosは現在どういった事業を行なっているのですか?

桜庭:創業当初から続いているのは、腟や子宮から採取した検体を用いて子宮内の菌の種類や割合を調べる、子宮内フローラ検査事業です。子宮内フローラとは子宮や膣内に存在する菌の環境のことであり、女性や胎児を感染症から守り、妊娠や着床率と重要な関わりがあります。
また、検査して子宮内フローラの状態が良くない場合は、子宮内フローラの改善効果があるラクトフェリンをサプリとして摂取することができます。こちらは研究段階から始めましたが、子宮内フローラの改善効果がかなり高く、多くの患者さんにご利用いただいています。

子宮内フローラのためのラクトフェリン

また、体外受精や顕微授精後の胚の染色体や遺伝子を着床前に評価可能な着床前ゲノム検査(PGT-A)も昨年から本格的に始めました。
将来的にはもっと色々なゲノム関連技術を開発したいと考えています。

桜庭さんはずっとアカデミアの世界にいたようですが、どういった経緯で起業しようと思ったのですか?

桜庭:おっしゃる通りもともと私はアカデミアの人間でして、博士課程修了後アメリカで基礎研究を行っていたのですが、その中で自分の人生について考える機会がありました。当時プリスクールに通っていた娘が、「コミュニティヘルパーの格好をして学校にきてください」という宿題をもらってきたんです。
コミュニティヘルパーというのは医師や消防士など地域の人々を助ける職業の人のことなのですが、その時ふと、僕はコミュニティヘルパーじゃないなと思って。基礎研究をしていても誰かが助かるわけではない。一度きりの人生だから、もっと人々に貢献ができる仕事をしたいと思うようになりました。
それならば、日本に帰ったら違うことをしよう、ビジネスサイドでやろうと思い、GeneTechという臨床検査会社にジョインしました。
その後イルミナというゲノム解析技術の会社に転職したのですが、そこで共同創業者の長井さんと出会い、2人で創業することになりました。長井さんと私は2人とも、遺伝子検査会社が足りないこの日本の状況をなんとかしたいという気持ちを抱いていたからです。

Varinos株式会社

次世代シークエンサーというゲノム解析技術は15年ほど前に誕生し、最初は研究用途のみでしたが、この10年で医療応用されてきました。イルミナもがんや遺伝病には力を入れてきましたが、アメリカ、ヨーロッパ、中国などに比べて日本はまだまだ実績が足りておらず、悔しい気持ちをずっと抱いていたんです。
そういった背景があり、自分たちでゲノム検査会社を作るべきではないか?やろうと思えばできるのでは?という話が出てきて、起業するに至りました。

なぜゲノム検査の中でも生殖医療の領域に注力されたのですか?

桜庭:理由は2つあります。1つ目は、前々職で生殖医療に近い領域で仕事をしていたからです。新型出生前診断(NIPT)を日本に導入するプロジェクトをやっていたので、産科の分野や先生方とのネットワークがありました。産科は妊娠した後の話で、生殖医療は妊娠する前の話ですが、ここもゲノムが活躍できる分野で、グローバルでは生殖医療の分野でもゲノム検査が大活躍していました。
しかし、着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)は海外では一般的に行われている検査なのに、なかなか日本では実施されていませんでした。患者さんや産科の先生方も含め、やりたいのにできない現状をなんとかしたいという思いから、生殖医療がVarinosとしてのスタート地点になったのです。
2つ目の理由として、ゲノム医療は保険診療との相性が悪いという背景があります。がんなどの領域でのゲノム医療は既に取りざたされていますが、標準治療が終わっている人しか保険診療として受けられないんです。しかし標準治療が終わっているとかなりがんが進行しているので、あまり恩恵がありません。保険診療が絡んでくる領域だとなかなか技術を届けたいところに届けられないんです。しかし産科や生殖医療はほとんど自費診療なので、タイムリーに患者さんに最新技術を届けることができます。
こういった背景から、私たちのようなベンチャーが最新の技術を使って医療領域で勝負するなら生殖医療だろうと思うに至り、ここにまず注力することを決めました。
また我々は生殖医療を軸にしているように見えますが、実はこれはまだまだ第一歩で、ゲノム検査を柱にこれから様々な領域で開発・提供していきたいと考えています。

色々な不妊治療が日本にも存在しますが、Varinosの強みはどこにあるのでしょうか?

桜庭:分かりやすいように車で例えてみると、車を運転できる会社はたくさんありますが、我々は車体さえも作れる、需要があるフィールドで走れる車を自分たちでカスタマイズして作れるのが強みであると考えています。
Varinosは子宮内フローラのように、全く世の中になかった検査を作って、それを提供することができます。ただ単にキットや機械を買って運用しているだけの会社はいくつもありますが、自分達で方法を考えて開発して、検査を実行できる会社は国内にはほとんどありません。
そこが海であれば、海でも走れる車を作るし、凸凹な道であれば、タイヤの大きい車を作る。市販車では行けないようなところに行けるのがVarinosの強みであると考えています。

常に投資先と伴走し最適なタイミングで意思決定をする、Angel Bridgeのハンズオン支援のあり方

常に投資先と伴走し最適なタイミングで意思決定をする、Angel Bridgeのハンズオン支援のあり方

なぜシリーズAでAngel Brigeから資金調達を受けようと思ったのですか?

桜庭:今となっては事業が立ち上がっていますが、シリーズAの資金調達に向けて動き出した当時は設立から7ヶ月後ぐらいで、やっと検査が始まったばかりでした。
その上僕らは当時ストーリーを語るのが下手で、Varinosの事業の本当の価値を当時のVCに伝えられていませんでした。しかしその中でも河西さんは、Varinosの言語化できていない価値まで理解してくれていました。

河西:Angel Bridgeは桜庭さんの前々職のGenetechに投資しており、その頃から桜庭さんのことは知っていたので、桜庭さんが言っていることはとてもよくわかりましたね。

桜庭:生殖医療はベンチャーこそが活躍できる領域であり、河西さんは我々が持っているポテンシャルが実は他社と全然違うということを、会話しながら自ら気づいてくれていたんです。

Varinosへの投資の決め手は何だったのでしょうか?

河西:サイエンスもビジネスも理解できている人はなかなかいませんので、どちらもカバーできている経営陣が素晴らしいなとまず思いました。桜庭さん、長井さんという違うタイプの二人がとてもいいバランスをとっていましたね。
また事業領域としても、現在の日本の少子高齢化社会において、妊娠率を上げていくサービスはニーズがあるのはわかっていましたし、最先端の次世代シークエンサーを駆使して優れた遺伝子検査プロダクトを出すというのは、とても意義の深いビジネスだと感じました。
それをこの二人がやるというのならば、我々としても全力で支援したいと思い、即決で2億円の投資を決めましたね。

創業後、どのような逆境がありましたか?

桜庭:新型コロナウイルスの影響で、2020年の4月に日本生殖医学会から、人工授精、体外受精・胚移植、生殖外科手術などの治療に関しては、延期が可能なものについては延期を考慮するようにという通達が出てしまい、かなり不安でした。
しかし、子宮内フローラ検査は体外受精の前段階の検査だということにすぐ気づき、逆に準備する時間ができたと考えむしろ多く検査したほうがいいと思い立ちました。
そしてこのメッセージを伝えるために、「新型コロナに負けるなキャンペーン」として子宮内フローラ検査を打ち出し、この逆境を乗り越えることができました。

投資を受けた後、Angel Bridgeからどんな支援がありましたか?

桜庭:Angel Bridgeが我々と伴走してくれているというのは、常に感じています。僕も長井さんも経営の素人ですが、それでもいつもリスペクトしてくださり、きちんと我々の考えを尊重してくれながらも助言をくださるので、暖かいですし、とても頼りになります。
また、採用も資金調達も色々なタイミングがあると思いますが、今の所それらのタイミングは外れていないなと思っています。いつやるべきかは将来のことなのでその時はわかりませんが、後から見れば最適な時期にやっているなと思いますね。
例えば億単位の融資を、まだ資金ショートしていない時期に受けていいのか?と疑心暗鬼になりながらAngel Bridgeと一緒にプロセスを進めましたが、当時融資を受けていたからこそ、コロナの後迅速に融資を受けることができたなと今振り返ってみて思います。
また、このステージだと出会えないようなスペックの経営人材を紹介してもらったりなど、予定より良い方向に前倒しにしてもらっていますね。

シリーズBの資金調達にあたり、Angel Bridgeからどういった支援を受けましたか?

桜庭:ステージごとにコンタクトすべきVCや順番があると思うのですが、それらも教えてもらわないとわからなかったですし、誰がリードをとるのかなども、大事なことですが我々は何も知らない中でAngel Bridgeから教えてもらっていました。
また当時は焦ってしまう時期もありましたが、焦らずいろんな人の話を聞けばいいんだよと力づけてもらいました。助言がなければ間違った道に行っていたかもしれませんし、本当に心強かったですね。

河西:こう振り返ってみると、結構一緒に歩んできた感はありますよね(笑)。

Varinosを日本一の遺伝子検査会社に

Varinosを日本一の遺伝子検査会社に

桜庭さんはVarinosをどんな会社にしていきたいですか?

桜庭:最初はM&Aを目指していたのですが、今はIPOを目指す意思決定をしています。
我々の起業当初の目的はゲノム検査を日本に根付かせることでしたが、M&Aなら外資に買われる可能性が高く、ということは日本でこの事業をやりたいという目的とずれてしまう。それならばIPOを目指すしかないよね、というのがここ最近の結論です。
また、IPOをするからには日本で一番の遺伝子検査会社になりたいと思っており、「遺伝子検査といえばVarinosだよね」と言われるようになりたいです。
もちろん海外進出は展開が始まったばかりですが、子宮内フローラ検査だけ切り取って見るともう世界一ですし、グローバルでも日本の検査会社はVarinosだと言ってもらえるよう進化し続けたいと思います。

2021.03.01 TEAM

相手を応援したいという気持ちを大切に

相手を応援したいという気持ちを大切に
林さんは毎日どのようなタイムスケジュールで過ごしているのですか?

Angel Bridgeのパートナーとして、既存投資先への支援、ソーシング活動など、ベンチャーキャピタリストとしての業務を行なっています。

こういったコロナ感染拡大の時期では、直接会うことが叶わない状況がありますよね。

そうですね。以前のように直接会うことは叶わないことが多いですが、ITの恩恵を受けて、いつにも増してたくさんの起業を目指す人たちと会うことができています。

Angel Bridgeが設立されたのは2015年ですが、それ以前は何をされていたのですか?

食品関連の上場企業で取締役を務めたり、エミアル株式会社(emiall)という会社を立ち上げ、個人でいくつかのベンチャー企業にエンジェル投資家として投資を行なっていました。
いつもみんなで笑っているというのが私の究極の目的でして、いつも笑ってニコニコしていようねという意味でこの社名をつけました(笑)。

当時はどういった軸で投資をされていたのですか?

北海道から不退転の決意できた起業家、「人を支える人(介護)」を支える起業家、など、一生懸命事業に打ち込んでいる方に投資をしていました。自分自身が応援したいという気持ちを一番大事にしていましたね。

その中でもRettyは最近上場されたと思いますが、どういった経緯で投資されたのですか?

創業者のお二人にお会いした時に、とても誠実な方々だなと思いました。他にも大手の競合があった中で新しいグルメサイトを作るという強い信念を感じ、すぐに投資を決めました。 誠実で信念を持っている方を応援したいなと、やはりその頃から思っていましたね。2020年の上場を受けて、社会の規範となる経営者、素養のある事業体だなと改めて思いました。そういった想いを私の中に築き上げたのは、大学卒業後20年にわたって勤め上げた、伊藤忠商事での経験だと思っています。

伊藤忠に入社されてからはどういったお仕事をされていたのですか?

鉄鋼貿易部門という部署に所属し日本で4年目を終えた時に、ドイツでの海外駐在の話をいただきました。ドイツではかれこれ9年間働き、鉄鋼貿易、製造業設立・稼働、現地企業買収など様々な業務をやりました。
その後一度日本に戻りましたが、帰国してすぐにまたアメリカに異動届を出しました。やはり海外にいると自分の意思決定の幅が広くとても楽しいので、すぐ戻りたくなってしまって(笑)。
アメリカにいる間にはシカゴ支店長を務めました。とてもダイナミズムのある仕事ができ、かけがえのない経験でした。また、アメリカにいる間に働きながらKellogg経営大学院でMBAも取得しました。考えるより行動するタイプなのであまり深く考えずにMBAに行くことを決めたのですが(笑)、様々な職種や立場の人と関わりを持てたのはとても良い経験でしたね。
私の人生で一番良かった職業の選択は伊藤忠商事に入社したこと、そして二番目に良かった選択は伊藤忠商事を辞めたことだと思っています。こういった非常に躍動感のある事業に参画できているのは、行動力と幅広い視野が求められる伊藤忠での経験があったからこそであり、一方で伊藤忠を辞めたからこそ現在投資に全ての情熱を注げているのだろうなと感じています。

そういった林さんの情熱の根源はどこにあるのですか?

胆力や諦めない心、限界を超えられない自分を直視する厳しさを教えてくれたのは、ハンドボールでした。
中学までは野球をやっていましたが、高校からはハンドボールを始め、大学時代は朝から晩までハンドボールしかない生活でした。相手チームにはオリンピック代表選手も多く、とてもハードワークでしたね(笑)。
試合に出て勝つという喜びや、他のメンバーと気持ちを共有する感動が何ごとにも変えがたく、心身ともに競技に魅了され、時間を費やしていました。

起業家自身が持っている物語を大事にしたい

起業家自身が持っている物語を大事にしたい
なぜ個人で投資を続けるのではなく、VCを創業するという道を選んだのですか?

個人で投資をする際はすべて私の自己責任で行うことができますが、VCの場合は受託者の責任があり、これが自分の規律や行動にも大変強く影響するので、さらに強く責任を全うすることに繋がると思いました。
元々起業家を全力で応援したいという気持ちはずっとありましたが、個人では資力に欠けることを感じる場面も何度かあり、他の方と一緒に投資をするという取り組みの中で河西さんに出会いました。その中で河西さんの知見を元にしたさらに大きな取り組みに賛同し、Angel Bridgeに参画することを決めました。

なぜ河西さんと創業することを決めたのですか?

先ほどの起業家を応援するという話にも繋がりますが、河西さんご自身が非常に誠実で強い信念をお持ちの方だと思っています。この仕事は一心同体で重要なことを決断しなければならないことが多いのですが、一片の迷いもなく共同の決断をできる方です。
また彼がベンチャーを全力で応援する姿勢も非常に素晴らしく、常に見習いたいと思っています。

林さんにとってAngel Bridgeでの仕事は、どのようなものでしょうか?

毎日の取り組みが非常に変化に富んで、刺激的なんですよ。社会や世界を変えていくような起業家の方々と交わることができる、非常に恵まれたポジションだなと思っています。こんなに楽しいことはないですね。
一番、苦手なのは資料を作ることです(笑)。以前、八尾さんのパワーポイントを私が加工して転用したら、「どこかで見た資料ですね」と八尾さんに言われてしまいました(笑)。

お話を聞いていると、林さんは人との繋がりにとてもご興味がありそうですね。

そうなんですよ。コロナ前は2ヶ月に1回の頻度で100人規模の「はやし会」というものを開催していました(笑)。
行動すると何かが広がるなという経験があり、こういった企画をすることでみなさんの中で何か新しいことが始まってくれたらいいなという思いでやっています。

どういう起業家に会った時、応援したいと感じますか?

非常に誠実で、そして自分の考え方を持っている人ですね。たとえば出光佐三氏の創業時から支援している日田重太郎という資産家がいて、その方が3つの条件を出光氏に提示しています。

「信念を曲げないこと、社員を大事にすること、そして自分の支援を他の人に伝えないこと」

我々も起業家を応援する際には、事業そのものはもちろんですが、この人であれば全力で応援したいなど、その人自身が持っている物語を大事にしたいと思っています。
例えば、なかなか投資が難しいと思っていた案件でも、起業家の方がとても熱心で、何度もプレゼンを重ねてくれ、私たちも非常に心を打たれ、投資を決めたベンチャーもありました。そういった経験から本当にたくさんのことを学んでいます。
特に私たちはバイオベンチャーにたくさんの投資をさせていただいていますが、人の人生、命、そして決して会うことのない世界の人たちの健康を願っている、大きなビジョン・使命に答えなければならないと、いつも河西さんと話しています。

起業家にチャレンジングで感動的な人生を

起業家にチャレンジングで感動的な人生を
Angel Bridgeで何を成し遂げたいですか?

Angel Bridgeが投資しているベンチャー企業が、Angel Bridgeとのお付き合いを通じて成長し、そして、それにかかわる全員が幸福で感動的な人生を送って欲しいと思っています。我々はそのような存在でありたいと思っています。
また、河西さんは日本を代表するキャピタリストになる、人格の上に成功される方だと思っているので、それを応援したいと思っています。

林さんが大切にされている信念についてお伺いしたいです。

私の人生哲学として、「人生一寸先は”バラ色”」という言葉があります。何かを途中で諦めたりせずに、形を変えてでも続ければバラ色の世界がきっと来るんですよ。
それが明日かもしれない。たった三年ですごく人の人生は変わるので、もし今日自分の人生がバラ色ではないとしても、努力すればきっとバラ色の人生がすぐ来る。そう信じています。


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