2021.04.27 TEAM

トップファームで培ったバリューアップ支援

トップファームで培ったバリューアップ支援
八尾さんは毎日どのようなタイムスケジュールで過ごしているのですか?

案件の検討状況によって流動的ですが、新しい投資先を探してくるソーシングと投資するかどうかの目利きに50%、既存の投資先の支援に30%の時間を使っています。またAngel Bridgeもベンチャーのようなものなので、残りの20%は会社の価値向上のためのマーケティング活動などに使っていますね。

Angel Bridge入社前はどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?

東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻で統計学などを勉強した後、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーという戦略コンサルティング会社に入社し、3年ほど働いたのちにAngel Bridgeに転職しました。

なぜ新卒でマッキンゼーに入社しようと思ったのですか?

当時は日本の大企業が倒産しかけているという話がいくつか上がってきた時代で、そんな中で大企業に入っても何の保証にもならないと思いました。それよりも個人として力をつけることが必要だなと強く感じました。早く力を付けたかったので、年功序列ではなくもっと早い段階で責任を持てる環境がいいと思い、外資系企業に絞っていました。
また、大学院の俯瞰経営塾という授業がとても楽しかった事がコンサルを選んだ理由の1つです。この授業は毎週徹夜でグループワークをしてプレゼンするというのを10週間ほど続けるのですが、単位は出ないのにみんなそれに一番熱量を注いでいました(笑)。そのグループワークの中で、議論をつきつめることであったり、人にプレゼンするというのが非常に楽しいなと思い、適性があるのではないかと感じました。
また、環境は自分にとって非常に大事であると考えていて、周りが優秀だと自分も自然と頑張れると思い、面接やインターンシップを通して社員が非常に優秀で尊敬できると思ったマッキンゼーに入社を決めました。

入社後はジャンルを絞らず多様な産業に関わっていましたが、営業の組織改革やファイナンス系のプロジェクトに入ることが多かったですね。

マッキンゼーでの経験はVCの業務にどう生きていますか?

ストレートにVCの業務に生きていると思うのは、やはり投資先のバリューアップ支援ですね。
マッキンゼーは大企業を相手に課題解決をしますが、ベンチャー企業においても課題解決のステップは一緒だと思っています。スピード感、規模感は違いますが、課題を特定してソリューションを出し実行するという進め方は、共通するところがあると思います。

マッキンゼーを経験して良かったと思うことはありますか?

想定していた通りですが、優秀で尊敬できる人が沢山集まっていて、高度で汎用的なビジネススキルを身につける環境として非常に良かったと思います。
また、クライアントに感謝された瞬間にはとてもやりがいを感じましたね。一つ印象的で思い出に残っているのは、3か月ほど常駐していたプロジェクトが終わった時の事です。クライアントに表彰式のようなものを開催していただき、社長や専務、カウンターパートだった部長から花束や表彰状を頂いたんです。そのような場面において、非常にそのプロジェクトをやってよかったと思いましたし、企業を支援して感謝されるということに自分はやりがいを感じる人間なんだなと分かりました。これはVCの業務にも繋がってきますね。

マッキンゼー出身の人はどういったセカンドキャリアを選ぶことが多いのでしょうか?

ベンチャー企業に行く人が多い印象がありますね。アーリーステージのベンチャーからレイトステージのベンチャーまで様々です。他には実際に起業したりする人もいますし、PEファンドやVCを選ぶ人も増えている印象です。

八尾さんはなぜVCに転職しようと思ったのですか?

スタートアップに強い関心があったというのが大きな理由です。自分自身も起業したいと思ったことが過去にあるので、自分でリスクを取って起業している起業家の方々は本当に素晴らしいと思いますし、尊敬の念を持っています。そういった人たちと働くことができる環境が自分にとって魅力的だなと思いました。
また、新しいことにチャレンジして成長したいという想いも強かったです。マッキンゼーでは既にある程度完成したビジネスをさらに良くすることを学んでいましたが、今度はゼロイチのような、何もない状態からスタートするといったステージで学びたいと考えていました。

修羅場の数だけ成長できる

修羅場の数だけ成長できる
なぜ数あるVCの中からAngel Bridgeに決めたのですか?

最初はあまりVCは転職先として検討していなかったのですが、Angel Bridgeの代表パートナーである河西と話して非常に面白いと思い、他のVCはあまり検討せず決めました。
何が良かったかというと、まずメンバーが非常に魅力的でした。一緒に働く人はとても大事だと思いますが、まず代表の河西は一度話して凄く優秀だと思いましたし、面倒見もとても良く、私自身の成長にもコミットしてくれるような印象を持ちました。また、共同創業者の林の包容力・人間力もとてもバランスがとれていたので、この組織で働きたいと強く思いましたね。
さらに、Angel Bridgeが真の意味でスタートアップの支援をしているVCだと思えたことも大きいです。河西と話すなかで、例えば会社を創業する段階から一緒にやるだとか、投資後もかなり時間を割き一つ一つの会社に対しオーダーメイドで支援を提供するというのが、非常にやりがいがあると感じました。ソーシングをして投資をしたら後はあまり関与しないというスタイルのVCもある中で、投資後も一つ一つの会社と伴走し、その結果として社会に価値を見出すというサイクルを大事にしたかったので、そういった想いをもったVCであるということが決定要因として大きかったです。
また、Angel BridgeはVCですがまだまだ少人数なこともあってベンチャー気質であり、色々とやりたいことにチャレンジできるというのも良かったですね。

Angel Bridge入社後は具体的にどういった支援をしましたか?

例えば見積もりプラットフォームを提供しているミツモアを例にとってみると、最初はとあるカテゴリーで成約率が低迷しているという課題があり、成約率を向上させるための施策を考えてほしいというお題をいただきました。その後成約率のデータをexcelでもらい分析し、どういったケースで成約率が低いのかを見ていく中で施策をいくつか出し、CEOの石川さんとディスカッションをして優先順位をつけ、実際にその施策をやってみるという一連のサイクルをお手伝いさせていただきました。
その後も新しいカテゴリーをローンチするときの事業モデルの構築であったり、既存カテゴリーの価格改定のプライシングについて、ミツモア利用者に沢山電話をかけて情報を集めて提案するといった支援も定期的に行っていますね。
また、不動産DXに取り組むBluAgeでは、営業の組織改革を支援していました。これはマッキンゼーでやっていた領域に近かったので経験が活きましたね。
当時BluAgeは不動産の賃貸仲介をする営業員の組織を急激に拡大していたので、人によって売上高がばらついたり離職率が高いなど色々な組織の歪みが生じてしまっていたんです。こういった問題がBluAgeの従業員と話す中で見えてきたので、Angel Bridge側から問題提起をしました。
そこで、私が実際に各営業拠点に足を運び、営業員ひとりひとりと面談し、どういった課題意識を持っているのか、どういうところで悩んでいるのかを丁寧にヒアリングしました。すると沢山課題が見えてきたので、それらを全部取りまとめて施策を20~30個作り、CEOの佐々木さんに提案し、適切な人をアサインして最後まで実行するということを行いました。その結果1人当たりの売上高が20%程度改善しました、組織拡大に耐えられるようなマネジメントの仕組みや、今の組織の根幹となるようなチーム制の組織体制を構築することができたのは非常に良かったなと今振り返ってみて思います。

Angel Bridgeのパートナー陣は八尾さんにとってどのような存在ですか?

まず代表の河西は、ベンチャーキャピタリストとしての師匠だと思っています。
投資家はよくサポーターなどと言われますが、投資家と起業家の間には上下関係はないですし、実に難しい関係性だと思います。そういった関係性の中で、言いづらいことだとしても、会社のためを思って自分が正しいと思うことをしっかり伝えるという姿勢は、見習いたいと常に思っています。
林に関してはもっと広く人生の師匠だと思っています。一番学んでいるのは人間力ですね。VCに転職してからずっと感じていますが、ベンチャーキャピタリストとして人と人とのつながりはとても大切であり、林はその点に関して非常に長けていると思います。
厚い人望があって、例えば林会を開くと100人以上が集まる。そういったところの根幹にあるのはやはり人間力だと思うんですよね。それは林の普段の振る舞いだとかコミュニケーションによるものだと思うのですが、そういったところはベンチャーキャピタリストとしても人間としてもすごく大事なことだと思っていて、いつも学ばせてもらっています。

Angel Bridgeに入社して良かったと思うことはありますか?

まずは、当初必要条件としていた成長環境は思った通りでしたね。
マッキンゼーで働いていた時も思いましたが、人間は修羅場の数だけ成長できると思っています。スタートアップという存在自体が常に修羅場というのもありますし、VCとして複数の投資先を見ているなかで、必ずどこかしらで修羅場があります。常にそういったハードな課題に挑めることがモチベーションになっています。
そしてやはり尊敬している起業家の方々と仕事ができるというのが本当に刺激的ですね。
また、自分がいかに井の中の蛙だったかを認識することができたことも良かったです。今振り返ると、東大もマッキンゼーも同質な人間の集まりだったなと思っていて、家庭環境をとっても思考をとっても、近い人しかいなかったんですね。ですが、VCで働いていると色々なバックグラウンドや想いを持った起業家と話すことができ、世の中にいかに人間の多様性があるのかを認識できたのは非常に良い経験でした。

今後どんな人と一緒に働いていきたいですか?

ベンチャーキャピタル業務を楽しんでできる人ですね。どういう人が楽しめるかというと、色々な起業家と話すというのが業務の大半なので、知的好奇心があって、沢山の人と話すことが得意な人が向いている職業だと思います。

投資から社会への価値創造までやり遂げるということ

投資から社会への価値創造までやり遂げるということ
今後Angel Bridgeで働きながらどんなことを叶えていきたいですか?

まず自分自身としては、一人前のベンチャーキャピタリストになりたいと考えています。そのためにも、自分が信じた起業家に投資して、一緒に伴走して、結果として社会に大きな価値をもたらすという一連の流れを、しっかりやり遂げたいなと思いますね。
Angel Bridgeの投資先は社会に対して価値があるベンチャーばかりなので、世に認知されてプロダクトが広まることに非常に大きな意義があると思っています。
またアメリカと比べると日本のVCはまだまだ黎明期で、未成熟だと思っています。今まさに盛り上がりつつあると思うのですが、自分自身が日本を代表するようなベンチャーキャピタリストとなって、業界全体を牽引するような存在になりたいと考えています。

八尾さんが大切にしている信念についてお伺いしたいです。

私の人生哲学として、「易きになじまず難きにつく」という言葉があります。
大学時代に俯瞰経営塾でAGCの企業研究をする機会があったのですが、そのAGCを創業した岩崎 俊弥氏が作った言葉です。この言葉の通り、簡単な現状に満足して楽な道を歩むよりも、困難で険しい道を敢えて選んで歩んでいくことがとても大事だと思っています。
ともすると楽な方に逃げてなんとなく過ごしてしまいがちですが、あえて険しい道を選んで成長し、チャレンジし続けることで自分自身は成長してきたと思いますし、これからもこのチャレンジ精神を忘れずに、更に世にバリューを産み出していきたいと考えています。

2021.04.22 INTERVIEW

M&Aを通じて、日本の製造業が再度世界を牽引する一役を担いたい

東証マザーズ上場、おめでとうございます!オンデックの事業内容を教えてもらえますか?

久保:端的に言うと、主に中小企業を顧客として、M&Aに関する仲介、アドバイザリーサービスを提供しています。

M&Aセンターなど他にもM&A仲介・アドバイザリーを行う企業はあると思いますが、オンデックにはどういった強みがあるのでしょうか?

久保:まず中小企業向けのM&Aの仲介・アドバイザリーのマーケットには、3つのタイプのプレイヤーが存在すると考えています。①相手を見つけることにリソースの多くをつぎ込むマッチング重視型、②マッチングをweb上で行うことに特化しているデジタル・プラットフォーム型、③M&Aのプロとして事業・税務・法務等のあらゆる観点からのアドバイザリーを重視するコンサルファーム型です。
この中で我々は③のコンサルファーム型に分類されると思っていますが、このタイプは業界ではマイノリティです。マッチングのみを重視し、とにかく案件の数をこなす・早く決めることにリソースを集中した方が、収益はあげやすいので、仲介・アドバイザリーのマーケット全体において、そちらが主流になりつつあるのが現状です。しかし我々としては、マーケットの健全な発展のためには、M&Aのプロとしてのサービスクオリティの向上が必要だと考えており、それを牽引すべく、当社はコンサルティング・クオリティを重視したコンサルファーム型にこだわっています。結果として、これが当社の強みになっていると思っています。
例えば、当社はコンサルタントの約40%が、弁護士や税理士などの専門性の高いメンバーで構成されています。マッチング機能だけでなく、よりクオリティの高いストラクチャ提案等に拘る中で、結果としてそうしたメンバー構成になっていました。

オンデック上場日 (2020/12/29 オンデック上場日)

久保さんはどういった経緯で起業しようと思ったのですか?

久保:私は小学校から大学まで野球にどっぷり浸かっていて、自分が社会人になった時にどのような方向に進むべきかを、あまりイメージしていませんでした。その頃は漠然とソーシャルワーク的な仕事がしたいと思っていたのですが、あまりに無知であったこともあり、ひとまずはいわゆる一般の事業会社に就職をしようと、新卒ではジェーシービーに就職しました。そこで社会人としての基礎を学びつつ、将来について、初めて真剣にいろんなことを考えたのです。
「ソーシャルワーク的なことがしたい」という自分の考えが、どういう思考から来ているのかを掘り下げると、その根源には「機会不平等を正したい」という想いがあることに気が付きました。
世の中には、基礎的な能力が高いにも関わらず、生まれた環境などによって十分な成長の機会や、チャレンジの機会を与えられていない人達がいる。そうした機会の不平等を少しでも無くしていきたい、という欲求が、自分の根底的な動機なのだと理解できたわけです。
しかし、自分なりに調べていくと、海外ではソーシャルワーカーはひとつの職業として確立されていますが、日本ではそれを職業としつつ、十分な生計を立てていくことはなかなか難しいという実態が分かってきました。心理学を学んだり、カウンセリングの資格を取得したり、一時的には警察官になったりもしました(笑)
色々なことにチャレンジしながら、色々な立場・職業の方々の意見を聞いて回り、自分はこの先、どう生きるかを模索していました。そのような時、たまたまご縁があった経済界の重鎮から、「お前は起業しろ」と言われたのです。
「日本は経済立国なので、何をするにも、ビジネスの世界で成功した人が、発言力・実行力を持つことになる。最終的な目標がビジネス以外の何かであったとしても、それを実現するためのお金やネットワークを手に入れることができる。だから、自分が正しいと思うこと、こうあるべきと思うソーシャルワークの理想像があるならば、まずビジネスの世界で成功して、それを実現する力を得た後にやればいい。その方が、社会課題に対してその本質的な解決にアプローチできる可能性が高まるのではないか」そう言われました。それまで起業という考えは皆無であったため、目から鱗でした。なるほど、そういう考え方、選択の方向性があるか、と。
その助言を契機に、「起業する」という方向が明確に固まりました。

共同創業者の舩戸さんとはどういった出会いだったのですか?

久保:私も舩戸も、大学では体育会野球部に所属していました。彼とは別の大学だったものの、リーグが一緒だったので、その頃から顔見知りではありました。とはいえ、知っている、という程度で特別親しいわけではなかったのですが、その後偶然にも、ジェーシービーに同期入社したのです。同期として接点が増え、彼を知るほどにそのキャラクターであったり、人間性がとても信用できたので、ある時、自分が起業する考えであることを伝え、一緒にやるか?と声をかけました。思い切りのいいやつなので、すぐOKしてくれましたね。

なぜM&A仲介の事業をやろうと思ったのですか?

久保:先にお話しした通り、あくまで「起業しよう」という意思決定が先でしたから、具体的にこのビジネスがやりたい、というプランがあったわけではありませんでした。そこで、起業ありきの中で、まずは思いつくままにビジネスプランを考え、舩戸と意見交換する日々が3年ほど続きました。自分たちなりに有望と思えるプランが、5つほどありましたね。最終的に、どのプランを実行に移すかの「選択基準」を決めて、それらの基準に最も合致したM&A事業を選択しました。
「選択基準」は複数ありました。具体的には、「これから伸びていく市場に位置しているか」「あらゆる業種・業界に関われるサービスであるか」「経営陣と直接やりとりできるサービスであるか」などがその選択基準でした。
あくまで「起業」が目的として先にあったので、盲目的に「これをやりたい」というプランがあったわけではなかったことで、客観性を持ってビジネスプランを分析できたことが、ある意味では良かったのかもしれませんね。

100年続く会社へ―オンデック秘話

オンデックの事業を通して何か課題解決したいという気持ちは創業時からあったのですか?

久保:オンデック創業前に商社で働いていた時、日本という国の経済は「ゆっくりと沈んでいっている」と感じることがとても多かったのです。
日本人はとても真面目で勤勉で、そして馬鹿正直で、「モノを作る」ことは上手いものの、金融・投資・プロモーション・収益モデル構築のような要素は不得手。そして良いモノを作るだけでは、現代社会では、いとも簡単に技術は盗まれてしまう。なんせ海外ではビジネスは戦争、みたいな感覚がありますからね。技術を盗むなんて道義にもとる、なんて言っている日本人の感覚は、高尚ではありますがマイノリティであり、あまりに無防備だと思います。
せっかく真面目にいいものを作っても日本は衰退していっている、それをM&Aを通じて、あるいは投資事業を通じてその変革を生む触媒となりたい。これは、創業時から具体化されていた考えではありませんが、M&A事業を通じた様々な経験の中で、明確になってきたビジョンです。近い将来、日本の製造業が再度世界を牽引するようになる一役を担いたいと考えています。

TDBグループとの資本提携、そしてAngel Bridgeと併走して実現した、2年半での上場

なぜ設立から10年以上たって外部資金を入れようと思ったのですか?

久保:創業からしばらくして10人ほどの規模になってきた時に、一定の成長スピードがないと社会に大きなインパクトは与えられない、そしてそもそも組織は生き残れないなと痛感し始めたのです。
我々はコンサルファーム型を志向し、提案力の向上とエグゼキューションのクオリティを追求してやってきましたが、成長スピードを上げるためには、案件を獲得するためのオリジネーション業務の強化が必要になってきました。
そこでまず、日本最大の企業データベースを持つ企業信用調査会社である、帝国データバンクとの関係の構築を目論み、同グループから出資を得るに至りました。

林とはどういった出会いだったのですか?

久保:共通の知人から紹介してもらいました。当時資金の需要はありませんでしたが、一度お会いして情報交換しただけであったにも拘わらず、その後数日で「貴社に出資させてもらいたい」という話があり、その意思決定のスピード感にかなり驚いたことを鮮明に覚えています。

林:久保さんと将来上場したいねという話をしながら、麻布十番のモノマネバーに行ったのが懐かしいですね(笑)。

なぜ上場を目指そうと思ったのですか?

久保:同時期に同業者の上場が相次いだことが大きいですね。我々は、クオリティにこだわってひたすらスキルを磨いてきたことから、M&A検討企業が委託先を決める際のコンペの勝率には、かなりの自信があります。しかし、同業の上場企業が増加するに従って、そもそもコンペのテーブルに乗れないケースが増えていきました。提案やサービスのクオリティにどんなに自信があっても、それを発揮する機会自体が失われてしまえば、何の意味もありません。今はマーケット全体が伸びているから我々も牛歩ながら伸びているけれど、上場の信用力を梃に競合企業がどんどん成長していけば、我々は次第に駆逐されてしまうかもしれない。そうなると、将来ビジョンに到達する前に、マーケットから退場させられてしまうかもしれないと、強い危機感を持つようになりました。これが上場を目指すことを決めた、最も端的な理由です。

なぜAngel Brigeから資金調達を受けようと思ったのですか?

久保:もともと資金を提供するだけのVCを入れる気は全くありませんでした。資金には困っていませんでしたので。ですので、Angel BridgeがいわゆるVCだったとしたら、まったく検討することもなく、お申し出を断っていたと思います。
ただ、メンバーのご経歴をみると、皆さんのご出身がバイアウトファンドであったり投資銀行であったり、これは持っているノウハウが、他のVCとは全然違うなと思いました。我々は将来的に投資事業をやりたいと思っていたので、投資事業の知見があるチームならば組む意味があると思いました。熟慮の末、「上場まで限りの、単なるVC出資ではなく、将来にわたっての資本業務提携という側面を持っていただけるならば受け容れる」と伝えたところ、これまた即決のスピード回答で「OK」ということでしたので、Angel Bridgeから投資を受けることを決めました。

100年続く会社へ―オンデック秘話

オンデックへの投資の決め手は何だったのでしょうか?

林:中小企業で後継者不在の会社がたくさんあることは課題としてずっと感じていました。なので、そういった企業の創業者や従業員の皆さんにとっての最適解を出していく必要があります。オンデックは非常に高度な倫理観をお持ちですし、周りからの評判も良く、人様のために仕事をしていらっしゃるのだなと感じ、そういった企業は必ず伸びる、と思いました。また3年以内に必ず上場します、という久保さんのお言葉も非常に力強かったですね。

久保:実は投資までの意思決定が早すぎて逆に大丈夫かなと疑っていたのですが、提示された契約書が非常に的確で、シンプルな内容であったことで、信用できると確信したことを覚えています。私どものように、日々企業買収や出資の契約に触れていると、その条文から相手の考えや姿勢が透けて見えてきてしまうものです。AngelBridgeさんの契約書は、メンバーの皆さんの誠実な人柄や姿勢が反映されたものでした。

Angel Bridgeから投資をうけてみてどうでしたか?

久保:複雑な投資スキーム等に対する知見・ノウハウのレベルが非常に高く、目論見通り、いや期待以上でしたね。そして案件紹介による売上への大きな直接貢献にもたいへん感謝しています。
また林さんを始めAngel Bridgeのチームは、底抜けに明るい方々の集まりだと思います。特に今回、意思決定からかなり短期間での上場を推し進めました。色々な部分で、急速な変化によるひずみが生まれるのは覚悟の上でしたが、精神的にこたえるタイミングは幾度かありました。そういった時でも、Angel Bridgeの方々はいつも明るく、「いけますよ〜!」とニコニコ笑いかけてくれました。お会いするだけで、勇気付けられることが多々ありました。

林:成約寸前だった大型案件が、金融機関の事情でペンディングになった時もありましたね。業績への影響も小さくなかった。そういったときも我々はオンデックを信じて疑わなかったです。案件を紹介するので一緒にやりましょう、リカバリーしましょうと一緒にチャレンジしました。

久保:もう足を向けては寝れないですね。寝ますけど(笑)。

林:我々が本当にすごいなと思うのは、やはり約束された時期に約束どおり上場されたことですね。我々がその一端でもお力になれていたなら、嬉しいです。

久保:Angel Bridgeがいなかったら、この短期での上場は厳しかったと思います。結局会社経営は、色々な方の支えとパートナーシップの集積だと思っているので、どういったVCや事業会社とご一緒するかはとても大きな要素だと思いますね。

100年続く会社を作りたい

上場してから何か変わったことはありますか?

久保:驚くほどに精神状態は変わらないですが、株主の方など、ステークホルダーはもちろん増えたことに対して、身が引き締まる思いはあります。
結局ビジネスは第三者にどう評価されるかが重要で、どんなにサービスのクオリティを磨いても、評価されないとサービスを利用してもらうことはできませんし、機会そのものをいただけません。より多くの方々に、良い会社だねと言っていただくために、今まで以上に名実ともに成長しないといけないという、良い意味のプレッシャーは感じています。

100年続く会社へ―オンデック秘話

なぜ100年続く会社を作りたいのですか?

久保:真に社会に貢献できるような、大きな影響を社会に提供していこうとするならば、自分一人でやるのは無理だと考えています。もっと言えば、自分の代だけでできることには限りがあると思います。しかし、同じ情熱を持ったチームがあって、その目標や文化が、新たなメンバーや次のチームに脈々と受け継がれていくような組織の素地を作ることができれば、誰かが、我々の夢を、更に大きな形で実現してくれるはずです。100年、というのはあくまでイメージを伝えるための表現ですが、そんな組織を作ることが目標です。

100年後にどんなことが実現されていてほしいですか?

久保:日本に限らず、世界の中で、それぞれの国のそれぞれの得意分野での役割が明確になって、豊かさがフェアにシェアされているといいなと思います。

林:面白いですね。

久保:その時、日本が果たす役割、得意分野は、やはり製造業だと思っています。
ひとくちに「製造業」というと非常に幅広い概念になりますが、中でも特に、「より生産性を高める生産財の生産」は、日本の国民性に合致する、お家芸とも言える分野ではないでしょうか。例えば「燃費のいいエンジン」は、オイルがジャブジャブ採れる産油国では生まれないでしょうし、ファクトリーオートメーションの進化などは、労働力が溢れている国では起こりづらいでしょう。日本ならではの外部環境・内部環境だからこその文化や国民性が、モノづくりにつながっているのだと思うんですよ。日本がそうした分野で世界をリードし、世界における日本の役割が確立していけばいいな、と考えています。
同じように、いろんな国にそれぞれの明確な役割があって、フェアで前向きな相互依存関係ができることが、成熟した社会と言えるのではないかなと思っています。
将来、オンデックが、世界の中の日本のために、何らかの形で力になれれば最高ですね。