2021.09.27 INTERVIEW

海外での移動の不安を取り除きたい

SmartRydeはどのような事業を行っているのですか?

木村:SmartRydeは空港送迎に特化したマーケットプレイスです。地元のタクシー事業者と、オンライン上で取引を行う旅行事業者であるOTA(Online Travel Agency)をマッチングするビジネスを展開しています。

SmartRyde

旅行客のどのようなペインを解決しているのですか?

木村:オンラインで旅行を手配する人は世界的に年々増えており、OTAもそれに伴い増えています。しかし、航空券やホテルなどを別々で予約するのは非効率で手間がかかります。そこで、一つのサイトで航空券・ホテル・現地での移動までセットで予約するという世界観が広がってきており、我々はこの中で現地での移動サービスを提供しています。

Uberなどの事業者ではこのペインは解決できないのでしょうか?

木村:OTAは世界中の旅行商品を扱っていますが、Uberが実際にオペレーションできている国は限定的です。そのなかで、世界中の空港送迎を航空券やホテルとまとめて予約できるというのは、非常にエンドユーザーに対する付加価値が高いと思います。

なぜベンチャー企業であるSmartRydeが世界トップクラスのOTAと提携できるようになったのでしょうか?

木村:一番大きなターニングポイントとなったのは、2018年に中国の大手OTAであるCTripと接点を持ち提携に至ったことです。CTripはグローバルでも非常に名前の通ったOTAですが、そういったOTAとベンチャーが提携しているという実績がトラックレコードになり、ExpediaやBooking.comといった大手OTAとも連携できるようになりました。

どれくらいの数の空港をカバーしているのですか?

木村:現在は700の空港をカバーしています。しかし世界中には約3,500の空港がありまだまだ20%くらいしかカバーできていないので、さらに広げていく予定です。

創業した当初はCOOの朝川が旅行業界でのキャリアを通して培った現地の会社とのネットワークを頼りにしていましたが、去年からビジネスデベロップメントのチームを各国に作り、各地域の担当者が新規の空港・タクシー会社の開拓、そしてリレーションシップの構築もしています。

起業家シェアハウスで生まれた繋がり

なぜSmartRydeを設立しようと思ったのですか?

木村:もともと起業にずっと興味があり、大学2年生の時に大学の近くに起業家のシェアハウスができたというニュースを見て、そこに住むことを決めました。1年ぐらい住んでいたのですが、周りが新しいことにどんどんチャレンジしていくのを見て、自分も何かやりたいと思い起業を決めました。

SmartRyde

なぜこの事業をやろうと思ったのですか?

木村:まず元から旅行が非常に好きで、大学1年目に東南アジアに行きました。その時航空券やホテルはOTAで予約したのですが、空港からの移動はその場で手配し、タクシーに乗りました。しかし、ぼったくられたり全然違うところに連れていかれるなどハプニングが大変多く、こういった現地での移動もユーザーのペインとしてあるのだなと痛感しました。そこで、空港からの移動のハードルをまず下げたいと思い、この事業で起業をするに至りました。

起業時はどんなメンバー構成だったのですか?

木村:元々1人で起業し、そこから人を集めていきました。COOの朝川はシェアハウスで出会ったのですが、25年以上の旅行業界経験を持つこの分野のプロフェッショナルで、ハイヤー会社に強いネットワークがありました。

CFOの池田は外資系の証券会社に勤めていましたが、彼もシェアハウスで出会い、CFOとして参画してもらうことになりました。いろんな経験のあるメンバーにサポートしてもらえる環境がシェアハウスを通じて出来ていたことに気づきました。

現在は他にどんなメンバーが集まっているのですか?

木村:今はカンボジアやタイなど海外にもオフィスを展開しており、ビジネスデベロップメントは基本的に海外オフィスで行っています。海外のメンバーにはまずオペレーション業務からスタートしてもらい、2年ほど経験を積んだ後、営業やマネージャーの部署などよりバリューがある部署に異動し活躍してもらえるような設計にしています。またエンジニアも最近オーストラリア人を採用したりなど、国籍を問わず優秀な人は採用するという方針をもっています。

例えばヨーロッパの人は日本人が行かないような地域にたくさん行きますが、そういった地域は朝川のように海外での経験が長いメンバーや、海外に住んでいるメンバーに聞かないと情報がすぐ入ってきません。SmartRydeにはベネズエラ、インド、アフリカに住んでいるようなメンバーもいるので、そういった情報がスピーディーに手に入り、それをもとにすぐサプライヤーの開拓をしたりOTAを広げることができているのが我々の強みだと思います。

海外に進出するという大きな絵を共に描くこと

Angel Bridgeとはどのように出会ったのですか?

木村:CFOの池田の繋がりでAngel Bridgeを紹介してもらい、オフィスに伺いました。そして最初の河西さんとのミーティングでかなりの質問攻めにあったのを覚えています(笑)。ホワイトボードにビジネスモデルの図を書き、どういうふうに空港を広げていくのかとか、1回目とは思えないくらい白熱した議論をしました。こちらも一生懸命力を出し尽くして、最初のミーティングを終えました。

林:河西は真理の探究がライフワークなので、ビジネスでも真理をとことん探求してしまうんですよね(笑)。

SmartRyde

木村:初めてのミーティングであそこまでの質問攻めにあったことがなく、だいたい初回は簡単に会社紹介をしてその後質問シートをもらうケースがほとんどだったので、とてもびっくりしました。しかし、我々も本質的なご質問をいただくことでビジネスモデルについて深く考える機会になりましたし、投資検討の段階から伴走しているような感覚を勝手に持っていました。

なぜAngel Bridgeから投資を受けようと思ったのですか?

木村:まずキャピタリストの方々皆さんがとても魅力的でした。事務所にお伺いするだけではなく食事にも行ってパーソナルな話もさせてもらいましたが、投資前に食事に行ったのは初めてだったのでとても印象に残っています。親身になって伴走してくれるのではないかというのが当時期待としてありました。

シードアーリーの段階ではリソースがまだ足りていないので、経営者として色々なことをやりながらも困ることが多いです。例えばタイの現地法人をどう展開していくのかが分からず林さんに相談した際は、タイでの経験に長けている方を紹介いただいたりもしました。あらゆる点でご支援いただけることは、Angel Bridgeの良いところだなと思っています。

今でも経営戦略についてアソシエイトの八尾さんにフィードバックをもらったり一緒にディスカッションできているのは非常にありがたいです。

なぜSmartRydeに投資しようと思ったのですか?

林:経営者の木村さんから、凄まじいやり切り力やエネルギーを感じたからです。木村さんがこんなに大きなエンジンをどこに積んでいるんだろうという動機の確認にとても時間がかかりました(笑)。しかしお話ししていくうちに元々スケールの大きな方なのだと分かり、大きな絵を描いているというのを確認し、投資させていただくに至りました。

また、当初から木村さんより年上のメンバーが沢山いらっしゃって、特にCOOの朝川さんのような経歴のある方が木村さんのようなお若い方と組んでやっているのが非常に印象的でした。話していくにつれて、朝川さんは旅行業界でのビジネス経験が長く、その経歴を木村さんとSmartRydeに惜しみなく提供したいと思っている非常に純粋な方だということが分かり、お二人を中心としたチームを心強く思いました。

コロナ禍でもできることを積み上げていく

新型コロナはSmartRydeにとってかなりの逆境だったと思いますが、どう立ち向かったのですか?

木村:新型コロナはSmartRydeにとってすごく影響があり、当時月次で1,400万円くらいだった売り上げがほぼ無くなるというのを2020年4月に経験しました。最初は中国だけだと思っていましたが、それが4月になるとほぼすべての国に旅行者が入国できなくなり、衝撃を受けました。

それからは売上をすぐに伸ばすというよりは、生き残るべく今どういった対策をできるのかを全て洗い出しました。当時進めていたけれども一旦ストップした施策もありますし、コストダウンしたところもありました。あとはどういったタイミングで事業を回復させるかを試行錯誤していきました。

コロナ禍でも毎月Angel Bridgeと定例会をさせてもらい、今の状況は報告しながらも、こういうことをトライしてみたら?など一緒にディスカッションし、心理的にとても助かりました。報告することも少なかったのですが、やっぱり報告や相談が大事だということで定例会を続け、その時にいろんなコミュニケーションをとるなかで、やっぱり親身に支援してもらっているなとつくづく感じました。

SmartRyde

林:一度応援させていただくと決めたら最後までずっと応援しますよ。

木村:起業家としてはこれ以上ないありがたいことだと去年痛感しました。

林:旅行業界は10年に1回鳥インフルエンザなど大変なことが起こる、だからいろんな国にリスクを分散し展開するのだと昔朝川さんがおっしゃっていました。でも今回の新型コロナはリスクの分散を超えてしまった。これは難しい例ですね。

木村:50年以上旅行業界に携わっている人に聞いても、新型コロナはいままでの天変地異とは規模が違うと言われました。だいたいどこかがストップしてもどこかは動いているというのがこれまでの旅行業界でしたが、今回の新型コロナでは全世界がストップしました。だれも経験したことがないことを去年経験したと思っています。

その後に少しずつ希望の光が見えてきたのは去年の秋ぐらいからです。それまでの期間は事業を止めず、広げられるところは今広げるのがいいだろうということで提携しているOTAとタクシー会社を2倍以上に増やしていましたが、こういった強化の取り組みが秋ごろから成果として出てくるようになりました。

林:コロナの中でもできることを積み上げていきましたね。

一番初めに回復の可能性を感じたのはカリブ海です。メキシコのカンクンやドミニカ共和国のプンタカナなどがまず伸び始めました。初めて聞いた地名でしたが、アメリカ人がよく行くリゾート地だと知りました。このエリアは観光産業で成り立っているので、1年以上ストップすると経営が立ち行かなくなり、そこにアメリカ人の入国が緩和されたことで、観光客が増えていました。そのトレンドが掴めたので、カリブ海のニーズをしっかり取ろうと集中的に事業開発をしたことで数字が回復しました。

この経験から、日本人の感覚でビジネスを考えてはいけないなと強く感じました。日本では移動がまだまだストップしていましたが、アメリカ人はアクティブでした。広い視野で物事を考えるのが大事だと痛感しましたね。

今回はコロナ禍での資金調達でしたが、どのように押し進めたのですか?

木村:今回のラウンドでは、リードのAngel Bridge以外にも、金融系やコーポレート、海外のVCにも出資をいただきました。

まずシリーズAの調達をするというタイミングで、Angel Bridgeに調達をやりたいですとご相談したのが去年の12月の定例のミーティングでした。その時にまず事業計画書を作って見せて欲しいと年末年始の宿題を出され、頑張って作りました(笑)。すぐに提出しアドバイスをいただき、ある程度きちんとした資料ができたところで投資家回りをスタートしました。

一番初めは私が以前からお付き合いがあったVCにアプローチしその反応を見てから、優先順位まで細かく分析したVCのリストをAngel Bridgeからいただきました。次のラウンドでどんなVCにアプローチすればいいのかもなかなか分からなかったので、非常に助かりました。また直接色々なVCの紹介もいただき、投資実行まで至ったVCもあったので、Angel Bridgeのご支援があってのシリーズAの調達だったなと振り返ってみて思います。

まだまだ旅行に対しては逆風ですが、SmartRydeの予約が増えているという数字によって旅行業界が回復してきているというのをお示しすることができたのと、アメリカのようにある程度ワクチンが普及すれば旅行が戻るというエビデンスも出てきていたので、外部環境が良くなってきたのは追い風でした。

本気で取り組めるビジネスで起業する

SmartRyde

後輩起業家に伝えたい、起業するにあたって気を付けるべきポイントはありますか?

木村:起業する時、どんなビジネスを立ち上げるか色々考えると思います。その際、考慮することの中で例えばマーケットや市場規模なども大事です。しかしそれ以上に、本当に自分がやりたいことなのかはもっと大事だと思っています。ビジネスをしていると、大なり小なり壁に当たります。その時に、本当にやりたいことであれば、困難な状況でも前を向いてやり切れると思います。起業では継続力こそ一番大事なんじゃないかと思っています。

SmartRydeをどんな会社にしていきたいですか?

木村:グローバルな会社にしていきたいと思っています。それは、サービスやプロダクトに限らずに人材や文化なども含めた真のグローバルな会社です。空港送迎は二ッチなマーケットですが、グローバルでの展開が可能です。さらに、将来的にビジネスを周辺領域に広げていけて、TAMの拡大余地が高いなと感じています。グローバルなビジネス展開をすることで、日本に限らず世界中の優秀な人材がSmartRydeに流れてくる組織を目指していきたいです。

SmartRydeの事業を通して何を社会に届けたいですか?

木村:私たちのミッションは「移動を通じて地域社会の持続的発展に貢献する」です。私たちは、地元の交通事業者が軸の会社です。現在注力をしている空港送迎は、特に観光地のタクシー、ハイヤー、バス事業者にとっては大きな稼ぎ頭になっています。今後私たちのプロダクトを通じて、地元の交通事業者にとってなくてはならない存在になっていきたいと思っています。その先に、移動を通じて地域社会の安心安全な生活や旅を実現することで、地域社会の持続的発展に貢献していきたいと思います。

2021.09.27 INVESTMENT

今回は、AI技術を活用してソフトウェアテストを自動化するクラウドサービス「Magic Pod」を開発・運営している、株式会社MagicPodへの投資に至った背景について解説したいと思います。

ノーコード/ローコードとは、アプリケーションなどの開発やテストを行う際にコードを書かない、もしくは少ないコードでも開発ができるというものです。ノーコード領域はグローバルで注目度が高く、またソフトウェアテストの自動化ニーズも急速に顕在化してきており、今後市場が拡大することが予想されています。

Webブラウザ向けテストは比較的容易に実現可能であり多くのプレイヤーが存在していますが、一方でモバイルアプリのノーコードテスト自動化ツールは高い技術力を必要とし、世界でも成熟したソリューションとして製品化できているプレイヤーはTRIDENT以外に存在していません。こういった背景から、非常に可能性のある領域だと考え、投資に至りました。

それでは今回はAngel BridgeがTRIDENTに投資する際にどのような点を検討したかについて、ご紹介します。

サービス概要

まずTRIDENTのサービス内容について説明します。

エンジニアでない方には馴染みがないかもしれませんが、ソフトウェアテストは開発工程の30%を占める重要な工程であり、その中でTRIDENTが取り組むのはE2E(End to End)テスト領域です。

サービス概要

E2Eテストとはシステム全体が正しく動作することを確認するもので、アプリやWebサービスをバージョンアップした際にはリリース前に必ず実機でのテストをします。具体的には利用者による画面操作により、想定通りの動作となっていることを確認します。特にE2Eテストは多くの場合エンジニアがいちいちスマホやタブレットを何個も用意して手動でリリース前に動作確認しているため、ミスも起こりますし時間もかかります。またローンチ前に毎回手動でテストを行うため、ローンチサイクルを早める上でボトルネックとなります。

E2Eテストを自動でできるエンジニアもいますが数は多くなく、そういったエンジニアを雇っていたとしても、バージョンアップのたびに動作しなくなるためコードのメンテナンスが必要で工数が割かれてしまいます。こういったテスト工数の削減は大きな課題でした。

手動テストはこのように時間も工数もかかり品質面でも問題がありますが、一方でプログラムを書いて自動テストを行うハードルが高く、未だに多くの企業で手動テストが行われています。そういったペインを解消しているのが、TRIDENTが開発している「Magic Pod」でした。

Magic Pod

Magic Podでは、UI変更やiOS⁄AndroidのアップデートにもAIが自動対応しており、ノーコードで専門知識がなくても比較的容易にテストプログラムを構築できます。月々数万円で導入できるため、かなりのコスト削減になります。

テスト作成手順

Magic Podを活用したテスト作成手順は以下の通りです。

AIエンジンがアプリケーションの画面から項目を自動検出するので、ノーコードで非エンジニアでも簡単に自動テストを実装可能です。

テスト作成手順

またテスト対象アプリケーションのUIに変更があった時には、AIが自動でスクリプトを修正しテストスクリプトのメンテナンスの手間を大幅に削減します。

競合

次にTRIDENTの競合についてです。まずソフトウェアテストには、「Webブラウザ向けテスト」と「モバイルアプリ向けテスト」があります。

Webブラウザは更新ペースが比較的遅く、端末による挙動の違いを考慮する必要もないことから、比較的容易に実現可能です。また市場規模もモバイルアプリ向けテストより大きく、そのため多くのプレイヤーが存在しています。

一方で、モバイルアプリのテストはWebと比較して圧倒的に実現が困難です。まず、iOS⁄Androidの更新ペースが速いため、頻繁にテストを実施する必要があります。また、様々なモバイル端末で動作確認する必要性があり、ミスも多くコストもかかります。さらに、ベース技術となるソフトウェア(Appium)が開発されてから歴史が浅く、トラブルが多く安定性に欠けていることも課題です。

また、手元端末では接続状況などの環境要因が不安定で動作が重すぎるという課題が存在し、さらに手元端末へのインストール作業が複雑であることから、クラウド仮想端末の開発も必要になってきます。こういった難易度の高さに加え、市場はWebブラウザに比べると少ないことから、世界でもTRIDENT以外に成熟したノーコードのサービスを提供できているプレイヤーは存在しません。

競合

このような市場環境の中で、TRIDENTはモバイルアプリとWeb両方に対応した、ノーコードで非エンジニアでも扱えるツールというユニークなポジションを確立しています。日本でもトップクラスのエンジニアが複数結集してチームを組成していることから、こういった難易度の高い技術を提供できています。

Magic Podは実際に技術力のある大手IT企業での導入実績も多数あり、投資検討をするにあたり実際に複数の導入企業にインタビューを行いました。その結果、優秀なエンジニアを抱えるベンチャー企業でもテスト自動化のニーズは強く、Magic Podは競合比較でも高い評価を得ていることがわかりました。

導入実績

経営陣

Angel BridgeがTRIDENTに投資するにあたり、経営する皆様への理解を深めました。

まず代表の伊藤氏は、本の執筆やコミュニティでリーダーを務めるなど、テスト自動化領域では名の通った日本でも屈指の技術力を持つ人物です。AIと組み合わせることで自動化ツールを実現できるという発想を得たことから、本領域で本格的な事業拡大を開始しています。また、チーフエンジニアの玉川氏は東京大学情報理工出身のエンジニアで、ソフトウェアテスト自動化領域において著書や講演実績もある著名な人物です。

経営陣

テスト自動化のプロフェッショナルである伊藤氏のもとに日本屈指の技術力を持つエンジニアが結集しており、このようなテクノロジーにエッジを持つ経営陣が結集してチームを組成していることで、こういった難しい領域でも勝っていけるのではないかと感じました。

おわりに

TRIDENTの経営チームは全員がエンジニアで、マーケティングは一切せずにユーザーの声を一生懸命聞いてプロダクトを磨きこんできました。結果としてエンジニアリング力の高いユーザーから高いエンゲージメントを得ています。PMFする前にマーケティングを闇雲に行うのではなく、しっかりユーザーと向き合うことが大事ですし、それが出来ているベンチャーが一番最後に勝つと思います。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2021.09.07 COLUMN

みなさんこんにちは、Angel Bridgeでジュニアアソシエイトとしてインターンをしている河野です。現在東京大学大学院医学系研究科の修士2年に在籍しながら、週5日間フルコミットで働いています。今回は、Angel Bridgeというベンチャーキャピタルで約半年間インターンをして学んだことについて書いています。最近VCでも学生インターンの募集が増えてきたので、VCのインターンってどんなことをするの?と疑問に思っている学生の方々の参考になればと思い、記事を書くことを決めました。文章を読んだだけではイマイチぴんとこない部分も多いかもしれませんが、できるだけイメージしやすいよう書いてみたいと思います!


Angel Bridgeの第1号インターン生となった経緯

それではここで、私がAngel Bridgeでインターンを始めることになった経緯について簡単に紹介します。

私はAngel Bridgeで働く前にもLinc’wellというヘルスケア領域のベンチャー企業で2年ほどインターンをしていました。もともと私は東大に入学したころは研究者志望で、国立の研究所にて長期インターンをしていましたが、段々とビジネスサイドにも関わってみたいと思うようになり思い切って応募してみたのがきっかけで、Linc’wellでもインターン1号として働くことになりました。私がジョインした頃はまだメンバーも少なく、毎日がむしゃらに働いていてとても楽しかったです。

Linc’wellはもの凄いスピードで成長しているベンチャーで、働いている中で資金調達の話題が出たり、既存VCについて考える機会もありました。そして、こんなにワクワクするベンチャー企業と関わることができるVCの仕事はさらにワクワクするのでは?と感じるようになりました。

VCはインターンどころか新卒を募集しているところもほとんどないような業界で、なかなかインターンをするのは厳しいのかと考えていました。しかし当時参加していた大学のゼミのTAとして弊社アソシエイトの八尾が参加していることに気づき、ダメもとで連絡してみたところ、無事インターン生1号として働くことが決まりました。

一見新卒やインターン生を募集していないように見える企業でも、ダメもとでアプローチしにいく姿勢が大切だと思いますし、これは学生の特権のような気がします。

Angel Bridgeのカルチャー

日本にはいろいろな母体のVCがありますが、Angel Bridgeは外資系投資銀行・PEファンド出身の河西が2015年に設立したVCです。

Angel Bridgeのキャピタリストは私が加入した当初3名しかおらず、同世代のメンバーももちろんいなかったため内心びくびくしていましたが、勤務初日から1週間かけてとても濃密なオリエンテーションをしていただき、その面倒見の良さにとても驚きました。VCの業務の説明から始まり、1社1社投資先の紹介までしていただいたので、VCについて知識がなかった私にとってはとてもありがたかったです。

また、仕事外でもゴルフに行ったり、宮古島でアウティングをしたりと、とてもアクティブに楽しんでいます(笑)

インターンを通しての学び

それでは本題に入りますが、半年間どのような業務をVCで行ってきたのか、それにより得られた学びについていくつか紹介していきたいと思います。

ソーシング・目利き

まずはベンチャーのソーシング・目利きについてです。ソーシングとは投資先となるベンチャー企業を探すことを指し、その後投資決定に至るまでの検討過程を目利きやデューデリジェンスと言います。

私が働き始めてからはずっとコロナ禍で、オフラインのイベントなどに参加してソーシングをするような機会はなかなかなかったため、リストを使ったソーシングが主でした。具体的には、INITIALのようなデータベースを使って、事業内容や過去調達歴などのテーマで絞りソーシングをしました。

ソーシング活動を経て学べたことは沢山ありますが、その一部をご紹介していきます。

1. 起業家から見えている世界
VCでインターンを始めてまず、日本にはこんなに沢山の起業家がいるんだ!と大変驚きました。起業家の方々は何か強く信じているものや、成し遂げたいことがあって起業されていますし、ソーシングを通した対話の中で大変刺激を受けました。
身の周りに実際に起業している人がいないとなかなか起業のイメージが湧かないと思いますが、VCで働いていると起業をより身近に感じることができます。私自身起業を勧められることはあっても具体的に起業という選択肢を考えたことはありませんでしたが、実際に何人もの起業家の方とお話をすることで、初めて起業という選択肢をリアルにイメージできるようになりました。
また、起業は確かにリスクを伴うかもしれませんが、それ以上に、無事上場しさらに会社を成長させていく時やその過程で得られるもの、見える世界は素晴らしく、リスクを取るに値するのだと起業家へのインタビューなどを通じて感じました。
例えば、自分が作ったものが世に出ていき誰かのためになる瞬間はきっとかけがえのないものですし、同じ志を持ったメンバーがどんどん集まって組織が大きくなっていく感覚や、一緒に多くの困難を乗り越える経験は、やはり実際に起業することでしか得られないのだと思います。
2. ビジネスの本質を見抜く感覚
起業家にコンタクトをとるか否かを決める際の判断基準として、自分の中でいくつか最低限チェックするポイントを決めています。この判断基準はソーシングを重ねるにつれてブラッシュアップされていきましたし、それにつれて判断の精度も上がっていったと思います。
ビジネスの本質を見抜く感覚
また、実際に起業家と初めて話した後投資に至るまでには更にデューデリジェンスをする必要があります。こちらの記事に詳しくまとめていますが、ビジネスモデル・市場環境・競合などのビジネス面と、経営陣の経歴・人柄に至るまで様々な点を短期間で検討します。特にシード段階だとこの中でより経営陣の比重が大きいと思います。
誰しも人生で一度は自分のアイデアをピッチする機会があると思うので、そのビジネスが将来成功するかを現状の情報だけで判断するためにどういったポイントを見られているのか、もしくは見るべきなのか学ぶことができるのは、かなり今後のキャリアに生きてくると思います。
3. ニーズを的確につかみ取り、正しくアピールすること
近年国内のVCが着々とファンドレイズを進めており、起業家にとってはより一層資金調達がしやすい環境になってきていると思います。そのため我々が投資したいと思うベンチャーを見つけたとしても、そのベンチャーにも我々から投資を受けたいと思っていただき選ばれなければいけません。
起業家との対話の中で、彼らがどういったサポートを必要としているのか、また我々がVCとしてどんなバリューを出していけるのかを探っていくことも重要だと学びました。
バリューアップ

投資後のバリューアップの仕方はVCそれぞれだと思いますが、Angel Bridgeは投資先を絞っており、投資後もニーズがあれば積極的に支援ができる体制を整えています。私は以下の図の中でも特に(事業)についてお手伝いをしてきました。

ニーズを的確につかみ取り、正しくアピールすること

4. 自分の立場だからこそ出せるバリューについて試行錯誤すること
VCの立場から支援できることは限られていますが、ずっと同じ事業をやっていると意外と気づきにくいポイントなどを外部の視点から見つけ、起業家とディスカッションするのは非常にやりがいがありました。外部からの視点だからこそ出せるバリューは何なのかを試行錯誤することは、例えばコンサルティングファームで将来活躍したい方などには特に生きてくるかもしれません。
マーケティング
5. ベンチマークとの差異を可視化し、社内で意識を揃えること
VC自体の業務は以上が主ですが、Angel Bridge自体もまだまだメンバーが少なくベンチャー的な側面があるので、より多くの起業家に知ってもらうためのマーケティングが必要でした。起業家の友人にVCのどういった点を見ているかなどをヒアリングし、Angel Bridgeに足りないものを可視化することで、マーケティングを強化するにあたって社内の意識を揃えることができました。
ここでは私が入社してから行ったマーケティング活動についてご紹介します。
・HPの改訂
まずはHPを大きくリニューアルしました。私が入社した頃はまだ秘密組織的にやっており、HPに詳しい情報をあまり載せていませんでした。そのため、会社のMissionからメンバーのページまで全て一から作り直しました。
HPをリニューアルしたことで起業家の方々とのアポイントメントが取りやすくなりましたし、事前にAngel Bridgeについて知っていただいてからお話しすることが可能になりました。
・記事作成
HPの改訂が終わってから、記事の作成も始めました。Angel Bridgeメンバー・投資先メンバーへのインタビュー、投資先の業界研究記事などを中心に書いています。特に、VCが投資意思決定にいたるまでにどういったことを考慮しているかを紹介した記事はかなり閲覧数がつきました。起業家がどんなコンテンツを必要としているのかを探っていくのもとても面白いです。
・Twitterアカウントの始動
今ではほとんどのVCのキャピタリストがTwitterをやっていますし、有力なソーシングルートになってきていると思います。最初はTwiterをやることに少しためらいがあったAngel Bridgeメンバーも、今では積極的にツイートしてくれています(笑)
こういったマーケティング活動を通して、Angel Bridge知ってます!とか、記事読みました!と言ってもらえる瞬間が増えたことは私にとって何よりの喜びでした。社会を良くするために活動している人がどんどん世に出ていくこと、そして組織が大きくなっていく瞬間に、私はやりがいを感じるなとつくづく実感しています。

少人数の組織で働く際に大切な2つの習慣

最後に、少人数の組織で働く際に気をつけるべきであると私が感じた点についてご紹介します。これはシード期のベンチャー等にも当てはまると思いますが、VCはたいてい少ないメンバーでやりくりしていることが多いので、VCでのインターンにも当てはまる重要なポイントだと思います。

6. 細かな目標設定と振り返りを怠らないこと
メンバーが少ないと、共に高めあう同期のような存在はいないですし、上のポジションも年齢が開いていることが多いので、ベンチマークを見失ったり、自分が成長しているか実感しづらかったりすると思います。
このような状況を回避するために、私はインターン初期に自分のリソースのアロケーションと年間達成目標を設定し、さらに月に1回アソシエイトの八尾に1 on 1をしてもらい目標達成度の振り返りや次の1か月の達成目標を設定するようにしていました。客観的な視点からの評価は必ず成長に繋がると思いますし、これを怠るとだんだんだれていってしまうと思います。
少人数の組織でのインターンは裁量権を多く持ちやすい分、色々なことがあいまいになりがちなので、こういった心掛けが非常に大切です。
7. 自分から仕事を見つけにいく姿勢
メンバーが少ないと尚更、待っていれば上司から仕事が降ってくるというような環境は非常に稀だと思います。そのため、常にファンド全体のステータスを把握しておく心構えが必要です。今ここのリソースが足りていなさそう、そろそろこのタスクに着手した方が良さそうといった、自分から常に動きにいく姿勢がかなり重要だと思います。
「なんだかやることなくなったな」という状態は発生するはずがなく、そこには無限にタスクがあるはずです。上司の仕事を奪いにいくぐらいの姿勢でいることがベストです。

最後に

今までAngel Bridgeで半年間働いてきた中で、VCでのインターンは本当に色々なことが学べる最強の環境だと感じました。この半年間は本当に手探りの状態でしたが、これからはさらに自分で試行錯誤しながら学びを深められるのではないかと強く感じています。

ここまでの長文を読んでいただきありがとうございました。VCのインターンに興味を持たれた方は、ぜひAngel Bridgeのインターンに応募してみてください!