2022.12.22 COLUMN

Angel Bridgeでインターンとして勤務している黒田です。現在京都大学医学部医学科5年生に在籍していますが、2022年1月から1年間休学し、週5日間フルタイムで働いてきました。インターンを卒業するこのタイミングで振り返りも兼ねて、記事を書くことにしました。Angel Bridgeのインターンではどのような業務をするのか、どのようなことを学べるのかについて書いていきたいと思います。VCインターンに興味がある学生の方々の参考になれば幸いです。前任の河野もインターン業務紹介記事を書いているのでそちらも併せてお読みください。Angel Bridgeジュニアアソシエイトの業務紹介|インターンの立場から学べること


Angel Bridgeインターンに応募した経緯

もともと私はスタートアップや起業、VCについて特に関心をもっていたわけではありません。しかし、2021年9月にPayPalがPaidyを3,000億円で買収したというニュースを目にして「0からこんなに価値あるものを作ることができるんだ!」と、驚きました。そして、よくよく調べていくと、スタートアップを興す起業家が社会に大きな価値をもたらしていること、そして彼らを支える投資家が存在することを知りました(もちろん成功した暁には彼らが莫大な利益を得ていることも)。

そして、自分も起業したいと思ったと同時に、将来的な資金調達も見据えた時に投資家の観点でのスタートアップの評価方法も知りたいという気持ちが芽生えました。そこでインターン募集をかけているVCを探したところ、Angel Bridgeを見つけました。Angel Bridgeは少人数組織で密なコミュニケーションが期待でき、またバイオベンチャーに投資している点も医学部生の自分には魅力的でした。早速Twitterで応募したところ、インターンとして働くことが決まりました。

医学部は閉鎖的な世界になりがちで、自ら飛び込まない限り、なかなか外の世界を知ることができません。一方で、思い切って知らない世界に飛び込んでみると思ったより面白い経験ができるもので、興味を持ったことについては深く調べてやってみようと挑戦する姿勢が大切だと思います。

Angel Bridgeでの業務内容

Angel Bridgeで1年間行ってきた業務とそこから学べたことについてソーシング、投資検討、ハンズオン支援、イベント参加の4つに分けてご紹介します。

①ソーシング
ソーシングとは投資案件を発掘する業務です。インターン生はスタートアップのデータベースを用いてリストを作成し、そこから気になった企業と面談のアポを取ります。また、海外で成長しているスタートアップを調査し、それに類似した国内スタートアップを探してみたりもしていました。
ソーシング (実際に使用したデータベースINITIAL: https://initial.inc/
膨大な数の会社を見ることができるので、世の中に存在する様々な市場や事業モデル、最先端の技術を知ることができたり、成功している会社にはどのような共通点があるのかを考察したりと、学べることはたくさんありました。
ソーシングはインターン生でもバリューを発揮しやすい領域だと思います。私は医学部生としてヘルスケア領域のスタートアップに関しては意識的に自分の意見を出すようにし、面談の際はできるだけ的を射た質問をしようと心がけていました。まずは自分の好きな領域、得意な領域からバリューを出そうとする姿勢が大切だと思います。
②投資検討
投資検討に入ると様々な項目について検証を進めます。ビジネスモデル・プロダクトの質・市場環境や経営者の実績・人柄が挙げられます。
こちらの記事で詳しく解説しています)
スタートアップアカデミー#3|VCが投資検討する際に重要視するベンチャー企業のポイントとは?
ここでもインターン生が担当できる業務があります。
具体的には、いただいた経営データの分析や市場/競合調査などを行います。また、顧客インタビューや専門家インタビューにも出席させてもらい議事録を取ったりもしました。
投資検討の過程でどのような項目を検証すべきか、そしてそれらの項目をどのように検証するかを学ぶことができました。これは将来自分が起業する際にも、市場分析や投資家への事業説明など様々なタイミングで必ず活きてくるだろうと考えています。
③ハンズオン支援
Angel Bridgeは投資したスタートアップをハンズオン支援することが特徴のVCです。ヒト・モノ・カネ・経営のPDCAサイクルという4つのカテゴリでハンズオン支援を行っているのですが、私は特にモノ(事業)のところで投資先の企業の意思決定をお手伝いさせていただきました。具体的には、投資先のSaaS企業の経営データの整理・分析や、バイオベンチャーの新規参入のための市場調査をコンサルのプロジェクトのような形で行いました。
ハンズオン支援
ここでは起業家や経営陣の方と一緒にプロジェクトを進めるという経験ができました。その中で、最終的なアウトプットをイメージし作り上げていくプロセスや、社外関係者とコミュニケーションをとる方法、タイムマネジメントなど非常に多くの学びがありました。
④イベント参加
Angel Bridgeでは、投資先の社長、経営陣の方々を交えたBBQやフットサルなどのイベントを開催しています。様々なバックグラウンドを持った社長さん方に直接お話を聞ける機会をいただけたのは、非常によい経験でした。起業しようと思ったきっかけや、会社経営において重要だと考えているポイント、大変だったエピソードなど興味深い話を沢山聞くことができました。
イベント参加 (投資先の社長、経営陣の方々を交えたBBQ)
また、スタートアップのピッチイベントにも参加しました。ここでは様々なスタートアップの話を聞いたり、インターンしている学生と繋がることができたりと、ソーシングとネットワーク構築という両面で役に立ちました。

このようにAngel Bridgeのインターンでは様々な業務を行ってきました。インターンだからとリサーチや資料作成に終始するのではなく、実際に投資検討の議論やハンズオンの現場に入らせてもらったことで、学生ではなかなかできない経験ができたと思います。

インターンでの学び

Angel Bridgeで学んだインターンとして働く上で意識すべき2つのことをご紹介します。どちらも完璧にこなすことは非常に困難で、私自身もっとこうすべきだったと反省する点が山ほどあります。これから社会に出て働く上で意識したいポイントでもあります。

①自分のアウトプットに責任を持ち、コンプリートワークを意識する
インターン生は基本的にキャピタリストから仕事を依頼され、アウトプットを出すことが仕事の中心となります。その際にミスをなくし100%の状態にしようという意識が大切です。もしミスがあるとなると、仕事の依頼者に確認の作業が発生し、全体のタイムマネジメント計画が崩れてしまいます。また、インターン生自身の作業時間も無駄になってしまいます。このようなことが起こらないようにコンプリートワークを意識して繰り返すことで、依頼者からの信頼が蓄積し、より難しく面白い仕事を依頼されるようになります。これがひいてはインターン生自身の成長にもつながります。
しかし、実際に実行するのは難しく、ふと気が抜けると確認を怠って中途半端なアウトプットを出してしまうことがありました。まだまだ無意識でできるレベルには程遠いですが、この意識を持つことが大切だと学べたことは非常に良い経験だったと思います。
②相手の求めていることを想像して、その期待を超えることを意識する
仕事を依頼された際には、依頼者の目的を推察し、それを達成しやすいように工夫してアウトプットを出す必要があります。ここで頭を使わずに指示されたことだけをやっているとただの作業屋になってしまいます。依頼者が細かく指示を出さなくてもよいように、想像力を働かせることで相手の求めていることに応える、もしくは期待を超えようとする意識が大切です。
これもなかなか実行が難しかったです。タスクがたまっていたり、少し工数のかかる依頼になったりするとクオリティが落ちてしまうことがよくありました。今後どのような仕事をするにしても、この意識を持っておきたいと考えています。

他にも仕事をする上で意識すべきことをプロフェッショナルファーム出身のキャピタリストの方々に教えてもらいました。Angel Bridgeメンバーは非常に面倒見がよく、オリエンテーションから仕事のフィードバック、キャリアの相談まで丁寧にコミュニケーションを取ってもらえてとても感謝しています。VCでインターンをしてみたいという学生にとっては最高の環境ではないでしょうか。

また、ここまで真面目な話をしてきましたが、Angel Bridgeでは合宿やゴルフ、飲み会やBBQなど仕事以外でも楽しいイベントがあります(笑)とても和気あいあいとした雰囲気でイベントが行われていることが少しでも伝わりますと幸いです。

インターンでの学び (合宿)
インターンでの学び (ゴルフ)
インターンでの学び (お寿司に連れて行ってもらいました笑)

最後に

この1年を振り返ると、Angel BridgeのVCインターンでは本当にいろいろな経験をさせてもらいました。このインターンで学んだことは今後のキャリアの中でも必ず役に立つだろうと確信しています。

最後に、この記事がVCでのインターンに挑戦しようという学生の後押しになれば非常に嬉しいです。

2022.11.24 TEAM

プロフェッショナルファーム経験をVCへ

プロフェッショナルファーム経験をVCへ
小林さんは毎日どのようなタイムスケジュールで過ごしているのですか?

新規案件の発掘と目利きに6~7割、既存の投資先へのご支援が1割、スポットで対応するファンド管理業務が1割ほどあって、残りの1~2割は社内のオペレーション改善などの業務を行っています。

Angel Bridge入社前はどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?

学生時代はロボットを使って人間の知覚を解明する研究に取り組み、卒業後はマッキンゼーに進みました。6年ほど全社事業戦略策定やオペレーション改善、M&Aを支援した後、VCのSTRIVEを経て、2022年10月からはAngel Bridgeで働いています。

なぜ新卒でマッキンゼーに入社しようと思ったのですか?

30年前と現在の世界の時価総額ランキングを見比べると、かつて日本の産業を支えていた日本企業がほとんど入っておらず、もどかしさを感じていました。優れた技術と優秀な人材を数多く抱えているにもかかわらず、そのポテンシャルをうまく活用できていない状況に危機感を覚え、大学院卒業後のキャリアとして戦略コンサルタントの道を選びました。もちろん、事業会社の中から組織やビジネスを変える道も考えましたが、実質的な権限を得るまでには長い時間が必要です。一方、戦略コンサルタントであればひとつの業種に絞ることなく、若いうちからあらゆる企業の変革に携われます。もともと好奇心が旺盛な性格でもありましたし、人一倍成長意欲も強かったので、マッキンゼーへの入社を決めました。

マッキンゼーではどんな仕事を?

主に製造業や消費財、物流業界のクライアントをメインにご支援していました。在任期間中は、全社戦略や新規事業戦略の策定、コスト削減や営業の効率化などのオペレーション改善、M&Aにあたって企業価値の評価やPMI(M&A後の統合支援)に携わることが多かったですね。

マッキンゼー出身の人はどういったセカンドキャリアを選ぶことが多いのでしょうか?

起業、スタートアップへの転職、PEファンドへの転職がメインでしたが、最近目立ってきているのが、私と同じようにVCを選ぶ方々です。経営やビジネス全般に関する知見に加え、分析力や課題解決力など、コンサルタントに求められる資質が生かせますし、投資の大型化や政府によるスタートアップ支援策の拡充などに伴って、スタートアップ業界全体への資金流入が増えている中、黒子的な存在でもあるVCにも注目が集まってきているのだと思います。

小林さんはなぜマッキンゼーからVCのSTRIVEに進んだのでしょうか?

マッキンゼーでは、マネジャーとしてチームを引っ張り、成果物に責任をもって完遂していく経験もできたので、次のステージに進もうと考えました。その中でもVCを選んだのは、スタートアップ業界から各産業を盛り上げたいという気持ちが強かったからです。学生時代に金融メディアを運営するスタートアップでインターンをしていた当時に感じた、改善のサイクルを回すことで成長が加速する、スピード感を味わいたいという思いもありました。もちろんスタートアップへの参画も検討しましたが、むしろこれまでの経験やスキルを生かすのであれば、VCのほうが適切だと判断し、ハンズオン支援が特徴であるVCのSTRIVEに入りました。

マッキンゼーとSTRIVEで得たものは何ですか?

マッキンゼーでは、コンサルティングスキルや業界知識に加え、ビジネスや社会に対する視座の高さや組織の動かし方、人心掌握のポイントを学びました。またSTRIVEでは、ベンチャーキャピタリストとしての考え方や投資に対する経験、そして起業家の皆さんとのつながりが得られました。いずれも私にとってかけがえのない財産です。両社で得たものは、すべて現在の業務にも生きています。

精鋭が集まる小さなチームで自分を試したかった

なぜ数あるVCの中からAngel Bridgeに決めたのですか?
精鋭が集まる小さなチームで自分を試したかった

STRIVEで会社の方針が変わり転職を検討しはじめたころのことです。マッキンゼー時代の後輩であり、いまはAngel Bridgeの八尾と話をする機会がありました。彼の口からAngel Bridgeは、代表パートナーの河西を筆頭にプロフェッショナルファーム出身者が多く働きやすい環境であること、また少数精鋭で個人の裁量も大きく、大学発ベンチャーやディープテックに強みを持つ、など特色ある投資を行っていることなどを聞き、魅力を感じました。Angel BridgeはSTRIVEよりも設立が遅く、規模も小さいのですが、前途有望なスタートアップへの支援に加え、自社の組織作りにも関与できるのはこのステージのVCでなければできないことで、成長の手応えをつかむには絶好の舞台だと思い、入社を決めました。

Angel Bridge入社後は具体的にどういった業務を担っていますか?

ほかのキャピタリスト同様、投資案件の発掘やハンズオン支援、ファンドの管理業務が中心ですが、まだ入社して間もないこともあって、自社のオペレーション改善にも時間を割いています。まだ設立から日が浅く、非効率な業務の見直しや書類の標準化、ITツールの導入などを通じて効率的な職場環境を整備するのは、投資先候補へのアプローチや既存の支援先に対するサービスの質に直結します。Angel BridgeがVCとしてさらに飛躍するための土台作りの一環として取り組んでいます。

Angel Bridgeのパートナー陣は小林さんにとってどのような存在ですか?

代表パートナーの河西にしても、パートナーの林にしてもVC業界の大先輩です。一方で、お二方とも非常にフランクでオープンな性格ということもあり、意思疎通も図りやすく仕事がしやすいですね。河西は投資の目利き力が高く、特にバイオ領域に強みがあります。一方の林は業界を問わない幅広い知見やとても広い人的ネットワークを備えています。こうした人たちのそばで働けるのは、Angel Bridgeに入って良かったことのひとつです。

ほかにAngel Bridgeに入社して良かったと思うことはありますか?

意志決定のスピードが速く、任せるべきことは任せていただけるので、上司の決裁を待つようなこともありません。また社員同士も仲が良く、投資先の皆さんを交えて一緒にフットサルやバーベキューに興じることもあるほど、アットホームな雰囲気も気に入っています。

今後どんな人と一緒に働いていきたいですか?

Angel Bridgeはメンバーを信じてチャレンジさせてくれる会社なので、自発的に動くことが好きな方には合う環境だと思います。既存のメンバーにはない経験やスキルをお持ちであれば、力を発揮できる領域はさらに広がると思います。Angel Bridgeは成長の真っ最中にあり、フロントに立つベンチャーキャピタリストだけでなく、人事や広報支援などミドルオフィス部門にもポジションがあります。多様性のある方々と一緒に働けたら嬉しいですね。現在スタートアップへの投資や支援を通じて、一緒に価値を創造していける仲間を募集中なので、同じような志を持った方にご応募頂ければと思っています。

覚悟を決めて選んだ道。それを正解にするのが信念

覚悟を決めて選んだ道。それを正解にするのが信念
今後Angel Bridgeで働きながらどんなことを叶えていきたいですか?

ソーシングから初回面談を経て投資が実行に至るまでの期間は順調にいっても1年程度はかかります。まずは自分で手掛けたと言いきれる投資案件を1日も早くまとめるのが当面の目標です。中長期的には、冒頭にも申し上げた通り、製造業などの再興に寄与したいという想いを変わらず持ち続けているので、ぜひAngel Bridgeで大企業に刺激を与えられるようなメガベンチャーの創出に寄与したいと思っています。

小林さんが大切にしている信念を教えてください。

不確実性が高く、変化が速い時代です。意志決定に必要な情報が十分に揃っていなくても、決断を強いられる場面は数多く存在します。一度腹を決めて選んだ道が正しかったと思えるよう、努力を惜しまない生き方をしたいですね。正解を選ぶのに汲々とするのではなく、大局を見据えて決断した選択を正解にしていく。多くの起業家が心に秘めているであろう、その覚悟に寄り添えるベンチャーキャピタリストになるのがこれからの目標です。


Angel Bridge キャピタリスト 募集中

現在Angel Bridgeでは、「起業家のサポーター」として、一緒に世界に誇れるメガベンチャーを生み出せる方を求めています。新しい技術や事業に興味があり、高くて熱い志を持った起業家の方々と伴走して、価値を作り出していきたい方は奮ってご応募下さい。

2022.10.26 INTERVIEW

7回のピボットを経て見つけたサービスの可能性

まずはプレカルの事業内容をご紹介いただけますか?

大須賀:端的に申し上げるとプレカルは薬局のDXを支援する企業です。専任の事務スタッフがいない薬局では、多くの場合、薬剤師自身が事務作業を担っています。プレカルが目指すのは、業務効率化を通じて薬剤師にしかできない、調剤業務や患者さんへの服薬指導に専念していただく環境を整えること。現在はその手始めとして、オンラインによる処方箋の入力代行サービス「precal(プレカル)」を提供しています。

7回のピボットを経て見つけたサービスの可能性

処方箋の入力代行とは、具体的にはどのようなサービスなのですか?

大須賀:受付時にスキャンした処方箋データを遠隔地にいるスタッフがオンラインで受け取り、40項目以上ある処方箋情報をわずか数分で入力。薬局のタブレットに送信するサービスです。健康保険組合などへの請求に必要なレセプトコンピュータへの入力、患者さんの薬歴管理、お薬と同時に患者さんにお渡しする書類の印刷まで、一通りの事務作業が自動化できるので、薬局業務の作業効率化にお役立ていただいています。

precalに類似するサービスはあるのでしょうか?

大須賀:OCRと呼ばれる光学式の自動文字認識技術を活用したサービスは複数ありますが、訓練された専任スタッフに比べると、どうしても認識精度が劣るのが現状です。むろんprecalもOCR技術を一部利用し、入力スピードの向上を図っていますが、最終的なチェックは人間の目を通して精度を担保しているため、入力精度とスピードの両立が可能となっています。

大須賀さんは薬剤師資格をお持ちで、薬局を経営されていたそうですね。なぜサービス開発を手掛けようと思われたのですか?

大須賀:もともとは自分たちで使うシステムを作るために、プログラミングを覚えWebシステムの内製化にチャレンジしたのがきっかけではあったのですが、時間が経つにつれ薬局業界を変えるサービスを提供したいという思いが強まり、薬局経営からサービス開発に鞍替えする決断をしました。

最初から処方箋の入力代行サービスの開発に取り組まれたのですか?

大須賀:サービスの方向性を何度も見直して、ようやく見つけたのが現在の処方箋の入力代行サービスです。サービス開発にあたっては、不足していたビジネス知識を補うため、スタートアップアクセラレーターのOpen Network Lab(以下オンラボ)のプログラムに参加したのですが、なかなか事業の方向を定められませんでした。実際、プログラムへの参加から2、3日後には最初のピボット(路線変更)に踏みきり、都合7回の見直しを経て、ようやくいまのサービスに辿り着きました。

最初はどのような事業を想定されていたのでしょう?

大須賀:プログラムに参加したタイミングでは、薬局の比較サービスを作ろうとしていました。同じ薬でも調剤薬局ごとに価格が違うという事実を逆手に取り、より安く薬を処方してくれる薬局の情報を世間に知らしめれば、多くの方に喜んでいただけるだろうと考えたのですが、メンターの方からいただいたもっともなご指摘で諦めました。事業化の根拠としては浅はかだったと悟ったからです。

どんな指摘だったのですか?

大須賀:そもそも薬局によって薬の値段が違うといってもその差はごくわずかに過ぎません。本当に患者はこのサービスを求めているのか、また、すでに価格を抑えて薬を処方している薬局が果たしてサービスに魅力を感じ利用料を支払ってくれるのか、甚だ疑問というご指摘でした。

その指摘を受けてどうされましたか?

大須賀:これまで私たちがどれだけ、自分たちが作りたいもの、作れるものだけに捕らわれていたのだと思い至り反省しました。それ以来、私たちは薬局のスタッフ、患者さんの双方に必要とされるサービスを見つけるため、100店舗以上の薬局を訪ね歩き、アンケートやヒアリングを通して検証を重ねました。自分たちが立てた仮説や課題設定が正しいかどうかは、想定される利用者の声に耳を傾けるまで分からないと痛感したからです。

処方箋の入力代行にした決め手は何だったのですか?

大須賀:私たちを担当してくれたメンターの方から、オンラボ卒業生でもあるSmartHRさんは11回のピボットを経てようやく進むべき道を見つけたと聞きました。その話のなかで、当事者の方々にサービスの内容をお話して、5人連続で「使いたい」「ほしい」と言っていただけるサービスには見込みがあると聞き、愚直に仮説検証を繰り返した結果、唯一この条件をクリアしたのが処方箋の入力代行だったんです。

謙虚になれたからこそ見つけられた提供価値

サービスの立ち上げにあたってはどんな苦労がありましたか?

大須賀:そもそも、オンラボに参加したばかりのころはスタートアップ界隈では当たり前に使われている言葉すら知らない状態からのスタートでしたから、たとえば「ピボット」とか「グロース」とか言われても何のことかさっぱり分かりません。最初のころはメンターや同期の話にもなかなかついていけず戸惑ったのですが、いまにして思えば自分たちの未熟さを痛感させられた経験が、かえって良い結果につながったのではないかと思うことがあります。

なぜそう思われるのですか?

大須賀:自分たちはビジネスの初心者だと謙虚な気持ちになれたからです。私を含め当時のメンバー全員、薬剤師経験者でしたから、薬局の実務はもちろん、薬剤師の悩みも知り尽くしているつもりでした。しかし実際は、個人経営の薬局で働く薬剤師と大手チェーン店で働く薬剤師では働く環境も業務上の悩みも異なります。つまり同じ薬局というカテゴリーのなかでも、事業のセグメントによってフォーカスすべき課題は違うわけです。井の中の蛙のままでいたらサービスを立ち上げることすら難しかったかもしれないと思うと、最初の戸惑いにも意味があったんだなと思わずにはいられません。

Angel Bridgeとの出会いについて教えてください。

大須賀:確か2021年の1月ごろだったと思います。Angel Bridgeさんにはオンラボさん経由でお声がけいただき、お会いしたのが最初でしたね。

林:そうでした。私たちは日々、データベースやメディアなどを通じて有望な事業家を探しています。ここ数年、店舗DXに取り組むスタートアップが増えていますが、薬局をターゲットにしている起業家はまだ多くありません。代表の大須賀さんご自身、薬剤師資格をお持ちできっと業界のペインにも精通していらっしゃるはず。サービスに秘められたポテンシャルにも興味を惹かれたので面会を申し込みました。

謙虚になれたからこそ見つけられた提供価値

初対面の印象を聞かせてください。

林:印象的だったのは、とても精緻にビジネスを組み立てようとされている姿勢でした。資金調達について考える前に、いまはまだサービスのユニットエコノミクス、つまり事業の経済性に目処を付けなければならない段階なので具体的な話は待ってほしいと言われ、事業に対してとても真摯な起業家だと感じたのを覚えています。

大須賀:お声がけいただいた当時は、まだ安定したサービスを届けるための体制作りの真っ最中で、どうすれば作業効率を上げつつ採算が取れるか試行錯誤していたところでしたから、林さんをはじめAngel Bridgeの皆さんからの示唆に富んだアドバイスは、とてもありがたかったです。

林:そう言っていただけるのは、こちらとしても本望です。投資を実行する直前、改めてprecalのデモを見せてもらったのですが、処方箋の入力がわずか1分程度で終わるのを見て、これが全国に6万店舗ある薬局の大部分に導入されたら、どれだけ大きな社会的インパクトを起こせるのだろうかとさらに期待が膨らみました。日本国内で処方箋の年間発行数はおよそ8.4億枚にのぼるそうですね。

大須賀:その通りです。

林:サービスとしてのprecalはもちろん、プレカルを率いる大須賀さんにもこれだけの大きな市場を相手にするだけのポテンシャルを感じるからこそ、ぜひ資金の面からもプレカルさんを応援すべきだと考え、投資させていただいたんです。

課題検証は泥臭くとも丁寧に取り組む。それが未来を拓くカギ

資金調達以降、Angel Bridgeとはどのようなお付き合いをされていますか?

大須賀:定例ミーティング以外では、Angel Bridgeさんの投資先が集まる異業種勉強会を通じて、先輩起業家の皆さんにお引き合わせいただいたり、正しい経営数字のまとめ方や経営資料作りのイロハをご指導いただいたりするなど、きめ細やかなご支援をいただいています。最近はフットサルやゴルフにお誘いいただくこともあるので、文字通り公私にわたるお付き合いをさせていただいています。

林:大須賀さんは新しいこと、未知の事柄に対しても柔軟に対応してくださいます。打てば響くと言うと僭越ですが、実際、優れた経営者の素養をお持ちの方だと感じるので、こちらとしても提案やお誘いしがいがあるんです。

大須賀:私自身、経営者としてはまだまだだと思っているので、多岐にわたるご支援にはとても感謝しています。おかげさまで、ここ数カ月、定例会の場で以前より議論に集中できるようになったのも林さんをはじめAngel Bridgeさんのサポートがあったからこそ。日々学ばせていただいています。

Angel Bridgeは今後、プレカルにどのような支援を提供されていきますか?

林:引き続き経営面、事業面でのご支援を続けながら今後はドラッグストアチェーンのご紹介など、営業面からも積極的な支援ができたらと思っています。

大須賀:ありがとうございます。ドラッグストアチェーンと接点をお持ちのベンチャーキャピタルは非常に貴重です。いまちょうどプロダクトの大幅なアップデートに取り組んでいるところなので、それに目処が付き次第、改めて営業に力を入れていくつもりです。改めてご支援のほどよろしくお願いします。

林:もちろんです。一緒に頑張って参りましょう。

大須賀さんは、これからプレカルをどんな会社にしていきたいですか?

大須賀:薬局で行われている事務作業は処方箋入力だけではありません。保険請求業務や薬品の在庫管理、スタッフの雇用回りを含めると膨大な数にのぼります。ゆくゆくはこうした煩雑で時間を要する事務作業から薬局を解放したいですし、将来的には薬局内に蓄積されたままになっている処方箋データを活用した新サービスを立ち上げ、社会に還元できたらと思っています。

現時点では、どんな新サービスを構想されているのですか?

大須賀:たとえば薬の処方データと製薬会社が持つデータを掛け合わせれば、これまで有効な治療薬がなかった希少疾患向けの創薬に弾みを付けられるかもしれません。少し先の話になりますが、患者さんに近い立場にある薬局を起点としたデータビジネスの創出を視野に入れつつ、当面はprecalの普及に努めていくつもりです。

林:少子高齢化で勢いの衰えばかりが目立つ日本ですが、そんな時代だからこそプレカルさんのようなスタートアップが求められるのだとつくづく感じます。Angel Bridgeの理想は、資金提供だけでなくハンズオン支援を通じて世界に誇れるメガベンチャーを生み出すこと。プレカルさんとは今後も一緒に夢の実現に向けて頑張っていきたいですね。

課題検証は泥臭くとも丁寧に取り組む。それが未来を拓くカギ

大須賀さん、最後に後進の起業家にメッセージをお願いします。

大須賀:自分たちが成し遂げようとしているビジネスが、本当に世の中の役に立つかどうかは、客観的な事実を積み重ねた先にしかありません。視点を変えながら想定されるユーザーに何度もインタビューしたり、アンケートを取ったりしてようやくその片鱗が見えてくるものだからです。実際、私自身の経験からも検証してみなければ気付けなかったことが少なくありませんでした。価値あるサービスを作りたければ、課題検証は丁寧に取り組む。こればかりは避けられないプロセスだというのが正直な実感です。もちろん林さんのように、ビジネスに精通した投資家や先達の起業家の力を借りるのも有効な手立てなのは間違いありません。ビジネスに優れた知見を持つ方と知り合えたら好機と思い、恐れず自分の考えをぶつけてみるのもお勧めです。泥臭い検証作業を厭わず、有識者からの助言に耳を傾ける気持ち、そして変化を恐れず行動する勇気さえあればきっと道は開ける。私はそう思います。

2022.10.17 COLUMN

前回のスタートアップアカデミー#3では、VCが投資検討時にベンチャーをどのような視点で見ているのかをご紹介しました。スタートアップアカデミー#3

今回はステージを大きく前に進めて、ベンチャー企業がIPOに向けて準備すべきこと、またその際に陥りがちな落とし穴について解説します。

起業家にとってIPOは初めての経験であることが多いのに対して、多くのVCは投資先のIPOを経験しています。そのため、起業家は経験のあるVCに頼ることで比較的スムーズにIPO準備を進めることができます。Angel Bridgeも投資先ベンチャー企業のIPO準備の際には多方面で手厚い支援を行っています。

まずは全体のプロセスの理解から始めましょう。IPO準備は大きく社内業務と社外業務に分けることができます。社内業務には「IPO準備チームの立ち上げ」「ガバナンス体制の構築」「事業計画構築」「エクイティストーリー構築」が挙げられます。社外業務には「監査法人の選定」「主幹事証券の選定」が挙げられます。IPO準備の期間にはそれぞれの業務を同時並行的に進めていかなければなりません。

スタートアップアカデミー#4 ※Angel Bridge作成

時間軸はIPO申請期をN期として、そこから1期さかのぼるごとにN-1期、N-2期…と数えます。N-1期は直前期と呼ばれ、上場企業と同程度のコーポレート・ガバナンスでの企業運営が求められます。N-2期はN-1期のための準備期間です。この間に内部管理体制を整備し、N-1期に備えなければなりません。そしてそのための体制の土台づくりをN-3期で行います。

では、それぞれの業務についてどのような流れで進めていくのか、そしてその際に陥りがちな落とし穴について解説していきます。
IPO準備チームの立ち上げ
IPO準備にかかる業務は多岐にわたるため、N-3期には「IPO準備チーム」の立ち上げが必要になります。通常はCFOが最高責任者となり、IPOに関する業務の舵取りを行います。IPOにおけるCFOと管理部長の役割は異なっており、求められるスキルは異なります。Angel Bridgeとしてはそれぞれの役職に異なる人物を採用することをお勧めしています。
どちらの選任も非常に重要で、ここでの失敗はIPOの落とし穴となります。適切な人材を選任できなければ、IPOに大きな影響が出てしまいます。多くのベンチャー企業では、最初からCFOや管理部長がいることはないため、新たに採用する必要があります。どちらの役職も非常に専門性が高く、経験豊富なことが不可欠です。それぞれの役職の特性について解説します。
CFO

CFOの役割は社外業務が主となります。証券会社・監査法人とのコミュニケーションや開示資料の作成、資金調達を行います。メガベンチャーを目指すのであれば、CFOを採用するにあたって望ましい経歴として外資系証券会社の投資銀行部門・プライベートエクイティファンドが挙げられます。投資銀行は企業の株式や証券、債券の発行やM&Aの際に支援やアドバイスをすることが主な業務です。企業の資金調達を支援するという点でCFOの業務と深く関連しています。プライベートエクイティファンドでは企業に投資し、さらに投資先企業に入り込んで企業価値を上げるべく支援します。彼ら自身、投資家としての経験があるので、ベンチャー企業に入ってCFOとして資金調達を行う際も投資家の立場を理解して動くことができます。

管理部長

一方の管理部長は社内業務が主となります。IPOに向けて実際に社内の体制を整えていくのが管理部長の役割で、内部統制の整備やガバナンス体制の構築、監査業務を主に行います。監査法人出身で監査業務に精通する人物を採用するのがベストです。

繰り返しになりますが、資金調達、IPOを行うベンチャー企業にとってCFO・管理部長の採用はとても重要です。そのためAngel BridgeではIPO支援の一環として、CFO・管理部長の採用支援を行っています。
ガバナンス体制の構築
IPOするためにはガバナンス体制の構築が必須です。ガバナンス体制は「規程類の整備」「機関設計」「内部監査の実施」の3つに分けられます。今回は「規程類の整備」の中でも特に落とし穴となりやすい「労務規程」と「反社会勢力規程」について触れたいと思います。IPO上問題となる労務リスクの中でも特に未払い残業問題は最重要です。もし、ここで問題が発生した場合は精算までIPO審査が止まってしまいます。次に反社checkですが、経営陣、株主、取引先に至るまで反社会勢力との関係を一切絶たなければなりません。Angel BridgeとしてはIPO準備前から、株主や取引先について反社checkを行う体制を整えておくことをおすすめします。
事業計画構築/予実管理
IPOの際は3~5年先を見据えた中期事業計画が審査の対象となります。この事業計画が信頼されるに足ると証明するためには、適切な予実管理が必須になります。上場企業は決算において予算計画と実績の乖離が大きい場合は、その内容の開示が求められますが、IPO準備企業においてもそれと同等の水準が求められます。ここも落とし穴になりがちで、もし予実対比が大きくかけ離れてしまうと、投資家や市場に悪影響を与える可能性があると考えられ、上場できなくなってしまいます。自社のビジネスモデルや市場、リスクを考えたうえでの適切な予実管理が必要です。
Angel Bridgeは普段から投資先企業と定例会を行い、会社の羅針盤となるKPIの設計や、それを活用してPDCAサイクルを回す体制構築の支援をしています。これは正しく会社の経営をするために必要なことであると同時に、IPO準備の観点でも取締役会の運営や予実管理に結び付いています。
エクイティストーリーの構築
エクイティストーリーとは、投資家に向けて企業の強みや成長戦略をわかりやすく伝えるためのストーリーです。東京証券取引所のグロース市場では以下のような項目の開示が求められます。

エクイティストーリーの構築 出典:経済産業省「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」
優れたエクイティストーリーとは

優れたエクイティストーリーとは、投資家が期待して出資したくなるように事業を魅力的に伝えながら、実現できる説得力を持ったものです。説得力のあるエクイティストーリーを構築することが投資家からの高評価、ひいては高いvaluationにつながります。また、そのようなエクイティストーリーを構築することは経営者自身が自社の強みを自覚し、中長期の成長戦略を考える上でも重要です。

優れたエクイティストーリー構築における重要なポイント

企業によって事業を魅力的に伝えるために強調するポイントは異なりますが、今回は不可欠な3点を挙げたいと思います。一つ目は「参入市場(TAM)が大きいこと」ということ、二つ目は「足元で安定した成長をしている」ということ、そして三つめは「将来的に事業が急成長・グロースする可能性がある」ということです。この3点をはっきり示すことで、投資家も投資しやすくなります。わかりやすい図を用いることも説得力を高めるために必要になります。今回は、実際にAngel BridgeがIPO支援を行った株式会社オンデックを例にとって解説します。オンデックは2020年12月にIPOを果たした、国内中小企業を対象としたM&A仲介事業を行う企業です。Angel BridgeはIPOの約2年前に投資しています。IPO準備時にはエクイティストーリーのブラッシュアップを支援しました。

以下の図ではオンデックの参入する国内M&A市場が大きいこと、そしてそれが将来的に拡張していくことをわかりやすく伝えています。

エクイティストーリーの構築 出典:新株式発行並びに株式売出届出目論見書の訂正事項分 株式会社オンデック

また、中長期の成長戦略として、「大阪ではすでにM&A仲介業者として地位を築いており、堅調な成長をしている」という足元の安定した成長性を示しつつ、「東京やその他全国の国内企業へのターゲットの拡大」と「開発中のM&Aプラットフォーム構築による潜在顧客の獲得」という2点で事業のグロースの可能性を示しました。

エクイティストーリーの構築 出典:株式会社オンデック 2020年11月期決算説明資料

監査法人の選定
IPOには監査法人による監査証明が必須となっています。そしてそれはN-1期(直前期)だけではなくN-2期も必要です。そのためには、N-3期までに監査法人に接触してショートレビューを受けなければいけません。
金融庁の2020年の資料によると、現在IPOを希望する企業は増加傾向にあるのに対して、監査法人の数はそれほど増えていません。このため監査法人側が監査対象とするベンチャーを選定する立場にあり、「IPOを目指したいのに監査法人が見つからない」といういわゆる監査法人難民企業が増えています。このため、IPOを希望する経営者は監査法人へ適切な時期に適切なルートで適切にコミュニケーションすることが大切です。
主幹事証券会社の選定
幹事証券会社はIPOの際に企業が発行する株式を投資家に販売する役割を担います。複数ある証券会社の中でリーダーを務めるのが主幹事証券会社です。主幹事証券会社は投資家への株式の販売だけでなく、IPOスケジュールの策定やIPO申請書類の作成支援、また事業面でのサポートも積極的に行います。原則的には、N-2期に主幹事証券会社を選定します。
選定する際のポイント

一度主幹事証券会社を決めてしまうと簡単には変更できません。Angel Bridgeでは複数の証券会社に提案書をプレゼンしてもらい、それらを比較したうえで決定することをおすすめしています。提案書の見るべきポイントとしては、「アサインされたチーム」と「エクイティストーリー」です。

アサインされたチームの質が良いかどうか、上の役職の人を巻き込めているかなどで証券会社の本気度がわかります。本気度によっては、ファイナンス面だけでなく事業面でのシナジーあるサポートを期待することができ、自社の事業成長にもつなげることができます。

提案されたエクイティストーリーに説得力があるかどうかで、証券会社の事業への理解度がわかります。自社の事業をよく理解している証券会社に、事業内容と成長戦略を適切に投資家に伝えてもらうことは、投資家から高い評価を受ける上で重要です。また、事業への理解度が高い証券会社の方がIPO後のIRやファイナンス支援もより質の高いものを期待できます。

共同主幹事

主幹事を複数の証券会社に引き受けてもらうことを共同主幹事といいます。共同主幹事でのIPOは、IPO準備企業側にとってのメリットが大きく、IPO時の想定時価総額にもよりますが可能であれば共同主幹事にしたほうが良いとAngel Bridgeは考えています。メリットとしては「複数の証券会社の強みを活かすことができる」「複数の証券会社が競い合い、投資家により高く株式を売ろうというインセンティブが働く」という2点が挙げられます。一方でCFOは両社とのやり取りが発生するため業務負担が大きくなってしまうというデメリットもあります。

今回は企業がIPOする際にやるべきことと、その際に陥りがちな落とし穴について解説しました。冒頭でも述べましたが起業家の皆さんにとっては、IPO準備が初めての経験であることが多く、経験が豊富なVCに頼ることが大切です。

Angel BridgeはIPO人材の採用、監査法人の選定、主幹事証券会社の選定、エクイティストーリーの構築など投資先ベンチャー企業のIPOを強力にサポートしています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

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2022.08.29 COLUMN

前回の「スタートアップアカデミー#2|独立系VCが考える、起業家がVCを選ぶ上で絶対に押さえておくべきはこれだ!」では、起業家が資金調達時にVCをどのような視点で見ればよいのかをご紹介しました。

スタートアップアカデミー#2|独立系VCが考える、起業家がVCを選ぶ上で絶対に押さえておくべきはこれだ!

今回は、VC側の視点に立ち、ベンチャー企業への投資を決定するまでにどのようなポイントをVCが検討しているのかをご紹介します。

まず前提として、検討対象とするベンチャーのステージによって、検討する項目やそれらの比重が大きく異なります。
例えば、シードのベンチャーでは経営陣を特に重要視します。プロダクトが未完成の場合が多く、ピボットの可能性もあり、経営陣の力が事業を大きく左右するからです。
アーリーステージでは経営陣に加えて、PMF (Product Market Fit) の検証など事業面の比重が高くなります。

スタートアップアカデミー#3 (出所)SPEEDA「ベンチャー企業の資金調達とVC」~一般的な国内VB(ベンチャー企業)の成長スピードとイメージ~

では、具体的にはどのようなポイントを見ているのでしょうか。
ここでは経営陣、業界、事業内容、バリュエーションの4つの観点に分けてご紹介します。

経営陣

経営陣、特にCEOは会社の顔であり、意思決定権を握っているため、レイターステージに至るまで最も重要視されることの多い項目です。

優秀なメンバーを集めてくる能力があるか
経営者とはいえ、会社を成長させていく中でCEO一人でできることには限界があります。そのため、いかに優秀な人を巻き込み、チームを形成することができるかが重要です。さらにIPOを目指すのであれば百人規模の組織をマネージする必要があります。人間としての魅力度やリーダーシップ、そしてそれを裏付ける実績があると説得力が増します。
困難を乗り越えられる論理的思考力があるか
大半のベンチャー企業は事業を拡大していく中でメンバーの離脱や方向性の変更のような様々な壁を乗り越えなくてはなりません。問題が発生したときに柔軟に代替案を施行するなど、改善のサイクルを回すことができる論理的思考力があるかも重要なポイントです。
本事業に強いパッション、コミットメントを持っているか
事業を継続して成長させるには困難が数多く生じるため、経営陣に事業への強い思いがなければ挫折してしまう恐れがあります。困難な状況に直面しても簡単にはあきらめない粘り強さや根性、そしてそれらを裏付けるパッションやコミットメントも重要視されます。
またVCの投資先としてIPOを目指すベンチャーが多く、CEOのIPOへの熱意も重要です。スモールイグジットを前提とする場合は投資決定が難しいと判断するケースも多いです。

上記3つの要素は相互に関連し合う要素ですが、いずれも非常に大切です。Angel Bridgeでは、経営陣に対して個別に話を聞いたり、CEOの前職の同期や既存投資家などにインタビューを行うことで、以上に挙げた事項について理解を深めています。

業界

VCは投資検討しているベンチャー企業が参入する市場をしっかりと把握する必要があります。経営陣や事業が魅力的でも参入市場が魅力的でなければ、会社の成長のアップサイドには限界があります。

市場規模が十分に大きいか
TAM (Total Addressable Market) の大きさが重要です。これはベンチャーが提供するサービスを使ってリーチできるターゲット層の最大の大きさ、つまり需要の大きさを表します。市場が十分に大きければ、成功した時の爆発力が見込めるだけでなく、競合がいても棲み分けて共存できる可能性があると言えます。
Angel Bridgeの投資先のミツモアを例としてご紹介します。ミツモアはローカルサービスを必要とする依頼者とローカルサービス事業者間のマッチングプラットフォームを提供しています。対象とする事業カテゴリが広範囲にわたっているため、集客手数料だけでも3兆円以上の巨大な市場となっています。

(参照:Angel Bridge投資の舞台裏#1 スタートアップアカデミー#2

市場が拡大しているか
市場自体が拡大している場合は、新規参入してシェアを奪えるチャンスがあります。
Angel Bridge投資先のLISUTOを例としてご紹介します。LISUTOはEC事業者向けに自動タグ付けツール「AIタッガー」を提供する会社です。コロナ禍における消費者行動の変化を背景にEC市場は急激に成長しており、今後もさらに拡大していくことが予想されています。BNPL (Buy Now Pay Later) をはじめとしたEC周辺領域はグローバルで見ても注目度が高く、数多くのメガベンチャーが誕生しています。非常に多くの資金が集まっているため様々な業態のサービスが生まれており、LISUTOにとって市場の拡大は大きな追い風となっています。

(参照:Angel Bridge投資の舞台裏#4

世間から注目されており政策等の追い風を受けている業界であるか
注目度の高い業界は資金が集まりやすく、マーケティングもしやすい傾向があります。特に医療系の事業では国が政策等で後押ししてくれることで大きな追い風を受ける場合が多いです。
例として、Angel Bridge投資先のVarinosは産婦人科領域の遺伝子分析サービスを提供しています。昨今ゲノム解析市場は盛り上がっていて、世界でメガベンチャーが多数生まれていますが、日本国内ではまだプレーヤーが少ないです。特に産婦人科領域は市場が大きく、世界的に見ても競合が少ない領域であるため、魅力的な市場となっています。国や自治体が不妊治療に助成金を提供したり、保険適用を開始していることが大きな後押しとなっています。
ベンチャーが取り組むべき領域であるか
市場を獲得するための大きな資金力や大型の設備投資が必要な事業は、ベンチャー企業にとって取り組むことが難しいです。市場を理解し、適切な領域を選択できているかが重要なポイントです。

特に 「1.市場規模が十分に大きいか」 で挙げた「市場規模が十分に大きいか」は重要です。市場規模が大きければ戦い方の選択肢も多く、社会に与えるインパクトも大きいため、メガベンチャーが産まれやすいと言えます。TAMの広がりだけでなく、コアターゲットとして現実的に捉えられるSOMの大きさをしっかり伝えることが必要です。

事業内容

特にアーリーステージでは事業開発がある程度進んでいる段階なので、その事業内容が優れているかどうかも重要視されます。

ペインが深く、適切にアプローチできているか
着目しているペインが深いことと、それを解決するための適切なアプローチが取れていることが非常に重要です。たとえ経営陣が強いパッションを持っていたとしても、取り組むペインが浅かったり、ニーズに応えることができていなかったりすれば、事業を拡大させることは難しいです。
競争優位性のコアが価値のあるものであるか
数多くの企業が生まれている中で市場を勝ち取り、リードする存在となるためには独自性や強みが必要です。競合他社と比較してサービスの優位性が十分にあるかという点や、参入障壁が大きく、他社が簡単に真似できない事業であるかという点を検討します。特にミドルからレイトステージのベンチャーにおいては重要視しています。
例えば、プラットフォームサービスは参入障壁を作りやすい領域と考えています。プラットフォームは事業者が集まれば集まるほどサービスの価値が上がり、ネットワーク効果が期待できるためです。
技術力が十分であるか
ディープテック等の技術系ベンチャーは技術の革新性や技術力の高さが必要とされます。実際にどのステージまでPoCが出来ているのか、技術がどのくらい独自性を持ち、稀有なものなのか等を検討します。そのためには特許や論文で実績が証明されていることが重要です。技術開発を中心とする大学発ベンチャーを成功に導くための秘訣をAngel Bridge業界研究#2にまとめているので、ぜひチェックしてみてください。

スタートアップアカデミー#2

事業内容の中でも特に 「1.ペインが深く、適切にアプローチできているか」 で挙げたペインをしっかり捉えているかどうかが非常に重要です。誰のどんな課題を解決するサービスなのか、その課題がどれほど深刻なものなのかを明確にすることが重要です。Angel Bridgeではサービスのユーザーや業界の知見者にインタビューを行い、実際に利用に至った背景や利用後の満足度、業界におけるニーズの有無を調査しています。

バリュエーション

最後にバリュエーションについてです。類似企業の平均的な企業価値を元に事業計画の蓋然性を考慮してIPO時の価値を算出し、逆算して現在の価値を求めるケースが多いです。この値を元にリスクリターンのバランスが適切であるか検討します。希薄化や次のラウンド以降の設計も考慮し、高すぎず、安すぎないフェアバリューであることが重要です。

Angel Bridgeは「リターンに見合ったリスクは積極的にとる」というValueを掲げています。独自のRisk-Returnプロファイルに基づいて、爆発力のある案件に積極的に投資を行っています。メガベンチャーの可能性がある企業であれば成功確率が10%でも投資をし、成功率を高めるのが我々の役目でもあると考えています。

多くの企業の成長にコミットしてきた経験をもとに、全力でサポート致しますので事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!
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2022.08.20 INTERVIEW

目指すは食品業界のサプライチェーン改革

Goalsの事業内容を教えてください。

佐崎:飲食店向け業務改善クラウドサービス「HANZO」シリーズの開発を手掛けています。現在は、過去の売上実績、季節や天候を踏まえ、AIが来客数やメニューの注文数を予測し、必要となる食材を自動的に算出する「HANZO 自動発注」や、45日間先まで売上予測を算出し、アルバイトのシフト作成を補助する「HANZO 売上予測」などのサービスを提供中です。在庫チェックや発注作業に伴う時間短縮、食材の廃棄ロスの削減、無駄な人件費を大幅に削減できることに加え、既に構築済みの管理システムとも簡単に連携できることから、外食チェーンを運営するお客様を中心にご利用が進んでいます。

目指すは食品業界のサプライチェーン改革

起業のきっかけは?

佐崎:前職のワークスアプリケーションズで基幹業務システムの開発やプロダクトマネジメントに携わるなかで、原材料を仕入れ、商品を製造、販売するというサプライチェーンの最適化こそが、企業の命運を左右する核心だと気づいたことが起業のきっかけです。せっかく会社を興すなら、社会に貢献するビジネスに取り組みたいという思いもあり、あえて難易度が高い「サプライチェーンの最適化」を事業のテーマに選びました。

なぜ外食業界を対象にしようと思われたのですか?

佐崎:私たちが目指すのは、メーカーや流通業、卸業、飲食店を巻き込んだ食品業界全体の最適化です。この大きな目標を達成するには、まず消費者に一番近い、外食業界の最適化から始め、需要データを得ることが重要と考え、飲食チェーン向けのサービスから取り組み始めました。しかし、最初から食品業界全体の最適化を志していたわけではないんです。

と言いますと?

佐崎:実は、起業してしばらくは、どの業界に参入すべきか判断するため、可能性がありそうだと思える業界をリストアップし、上から順にプロトタイプを試作しては、関係者にお見せしていた時期があるんです。そこで出会った皆さんからのご意見をうかがう過程で、食品業界全体のサプライチェーン改革に取り組む決意を固め、その手始めとして飲食業界向けのサービス開発に着手しました。

河西:ある程度、決め打ちでプロダクト開発に着手するスタートアップが多いなか、候補業界ごとにプロトタイプを作り、参入すべき業界を探られたのは改めて凄いことだと思います。外食業界以外にどんな業界を検討されたのですか?

佐崎:社会に貢献するためにはある程度、市場規模が見込める分野であり、外から見ても業務効率化の余地が広そうな業界に狙いを定めていたので、流通小売業やアパレル業、機械系製造業なども検討しました。

河西:本当に幅広い業界のなかから飲食に絞り込まれたんですね。

佐崎:はい。私も共同創業者でCTOの多田(裕介氏)もソフトウェアエンジニア出身です。手を動かすことには慣れていましたし得意でもあったので、プロトタイプを作っては見せてご意見をうかがう方法が採れました。

河西:私の知る限り、最初からここまで手堅くファクトを積み重ねてサービスを作り込んでいるスタートアップは多くありません。外食業界でいこうと決めるまでに、どのくらい時間をかけましたか?

佐崎:1年弱はかけたと思います。この間、いくつもの企業に足を運びプレゼンやデモを繰り返し、一番手応えがあったのが、外食チェーン店の経営陣でした。

河西:ほかの業界の経営陣とどんな点が違ったのですか?

佐崎:「リスクを負っても試してみたい。一緒にやりましょう」とおっしゃる方がとても多かったんです。飲食業界は一定の市場規模があり、IT化の余地が広く効率化へのニーズが高いことが参入の決め手と申しましたが、でも、それだけでこの領域を選んだわけではありません。数多くの創業経営者の皆さんにお会いし、現状に対する危機感や変革に対する熱い意欲に触れたことが、飲食産業に参入する決め手になりました。それに加え、私の祖父が食品製造業を経営していたり、共同創業者の多田の家族が飲食店を経営していたりと、ふたりの創業者ともにこの業界に縁があり、貢献したいという思いもありました。

河西:なるほど。そういう背景があったんですね。

佐崎:はい。飲食業は生活になくてはならないエッセンシャル業界のひとつであるにもかかわらず、低い利益率のなかで、ギリギリの経営を強いられている企業が少なくありません。人手不足も顕著ですし、最近ではコロナ禍で業界全体が厳しい状況にあります。そんな苦境にあえぐ飲食業で大幅なコスト削減を実現できたら、きっと喜んでいただける。そう確信し参入しました。

初回面談から約1年半後に投資が成就

Angel Bridgeとの出会いについて教えてください。

河西:私どもからお声がけしました。スタートアップが集まるデータベースを検索しているときに、数あるSaaS企業のなかでもドメインの選び方がユニークだと思い、面会を申し出たのが最初でした。

初回面談から約1年半後に投資が成就

佐崎さんにお会いになって、どのような印象を持たれましたか?

河西:2020年11月に初めてお会いしたときの佐崎さんの印象は、事業説明資料やプレゼン内容も万全で、お話振りも非常にロジカルで明快。すべてにおいて準備に手抜かりがなく、細かい数字も正確に押さえていらっしゃっていたので「信頼のおける経営者」というものでした。サービスについての話を聞き終わるころには「きっとこの会社は来る」と確信したのをよく覚えています。

佐崎:それは光栄です(笑)。当時は2回に分けて実施したプレシリーズAの1回目を終えたくらいのタイミングで、資金需要も落ち着いていたのですが、ファイナンスについてはまだまだわからないことだらけ。そこで後学のためにと思いお会いしたのですが、すぐにお会いして良かったと思いましたね。私たちの事業の将来性をとても前向きに評価してくださるだけでなく、今後の事業展開の面で示唆に富んだ提案もいただけたからです。とても有意義な時間を過ごせました。

河西:こちらからも何か価値のある情報をお渡ししないと釣り合わないと感じてしまうほど、素晴らしいプレゼンでしたし、飲食業が抱えているペインをよく理解していると思いました。

佐崎:ありがとうございます。現実の在庫数とAIが弾き出した予測在庫数の乖離を調整するため、お付き合いのある店舗に足繁く通い、何時間も棚卸しをしながら予測モデルを調整していたので、飲食業の大変さが身に染みていたからかもしれません(笑)。研究開発にはかなり力を注ぎましたし、その努力をお客様にも評価していただいていたので、自信を持ってお伝えできたのだと思います。

実際にAngel Bridgeから投資を受けたのはいつですか?

河西:最初にお会いしてから1年ちょっと経った2022年2月のことです。それまでの間、数カ月に1度のペースで情報交換する機会を設けていただいていたので、お声がけいただいたタイミングで迷わず手を挙げました。

佐崎:改めて最新のプロダクトを見ていただいたり、お客様へのインタビューをしていただいたりと、手際よく検討を進めていただいたので、こちらとしても本当に助かりました。この対応の早さは、きっと期待の裏返しに違いないと思い、身の引き締まる思いで契約書にサインしたのを思い出します。シリーズAで託していただいた資金は、引き続き研究開発やお客様と接する部門の拡充に使い、HANZOの拡販に努めていく考えです。

投資後は営業先の紹介と戦略立案の面から貢献

現在、Angel Bridgeとはどのようなお付き合いを?

佐崎:引き続き、経営に関する課題についてご助言いただいているのに加えて、食品業界に豊富な人脈を持っていらっしゃる、パートナーの林さんのご助力で、大手外食チェーンの経営陣にお引き合わせいただくなど、とくに営業支援の面で多大な支援をいただいています。

河西:林からはお客様候補をご紹介させていただき、私からは共有いただいた経営指標をもとにした数値分析や業界分析など、主に経営や営業戦略の面からサポートさせてもらっています。経営のPDCAサイクルを回す上で必要な支援は可能な限り行うというのが私たちの方針です。

佐崎:毎回、大所高所に立った視点でアドバイスしていただけるので、発見や気づきが多く、いつもディスカッションの時間が楽しみです。おかげさまで、当初は和食チェーンを運営するお客様が1社のみという状況でしたが、現在は上場企業を中心に20社ほどのお客様にご利用いただくまでになりました。Angel Bridgeさんのご支援にはとても感謝しています。

お客様の反応はいかがですか?

佐崎:これまで営業時間を終えてから多ければ1時間以上費やしていた発注業務がたった5分で終わるようになった、また入社間もない若手にアルバイトのシフト管理を任せられるようになったなど、うれしい声を耳にする機会が増えています。飲食店は製造業にたとえると、販売店舗内で部品を組み立てるような特殊性をはらんだ業態です。高度な技術、優れた予測モデルが必要な一方、10代の若者から70代の高齢者まで、どなたでも簡単に使える必要もあります。考えるべき要素も多く、すべてを満たす難しさを感じる局面もありますが、それだけに「効果が出た」「導入して良かった」というお声を聞くたびに、飲食領域を選んで良かったと感じます。

河西:飲食業界向けに限ったことではなく、ここまで劇的な効果が出るSaaSサービスはそうはありません。本当に素晴らしいことだと思います。

佐崎:ありがとうございます。

今後の展開を教えてください。

佐崎:まずは外食産業においてHANZOを採用していただく店舗を増やし、それを突破口に「食品業界のサプライチェーンを最適化する」というミッションを実現できるように全力を傾けて取り組む覚悟です。究極の目標は、高度な技術と膨大なデータを最大限に活用した食品産業のサプライチェーン最適化により、Goals を「日本のGDPを0.5%以上押し上げる」くらいの影響力を持つ会社に育てること。一生をかけてでも、取り組む価値がある仕事だと信じています。

河西:Goalsさんには、ぜひ食品業界におけるサプライチェーン改革の旗印になっていただき、1日も早く時価総額1,000億円を超えるユニコーン企業に名乗りを上げていただきたいですね。Angel Bridgeもその実現に向けてできる限り応援をするつもりです。

佐崎:河西さんのご期待に応えられるようがんばります。

投資後は営業先の紹介と戦略立案の面から貢献

最後に次代を担う若手起業家にメッセージをお願いします。

佐崎:未知の分野にチャレンジするのは怖いものですし、不安がつきまといます。しかし、少子高齢化による国力の衰退が既定路線といわれるなかで、いまほど新しいチャレンジが必要なタイミングはありません。もしチャレンジが実を結ばなかったとしても、諦めなければ挽回するチャンスはきっといつか巡ってきます。もし本気で取り組んでみたいこと、実現したいことがあるなら恐れずチャレンジしてほしいですね。そんな人たちがもっと増えてくれたら私たちも心強いですし、一緒に日本を元気にできたらこれほどうれしいことはありません。

聞き手・構成 武田敏則(グレタケ)

2022.07.04 INTERVIEW

透明性の高い金融商品を広めたい

Siiibo証券はどんな事業を行っていますか?

小村:社債に特化したネット証券です。社債の取得勧誘方法には公募と私募があり、現在一般的である公募社債は発行額が数百億円以上という大規模な資金調達に用いられる場合がほとんどです。一方、私募社債は募集対象・方法によってプロ向けの「プロ私募」と少人数に限定した「少人数私募」に分けられます。特にSiiibo証券で取り扱う「少人数私募社債」は、これまで一般に知人や取引先等から資金調達する所謂「縁故債」として利用される等、シンプルで手間も少ないため、中小企業が利用しやすいというメリットがあります。私たちはこの発行・購入の場をウェブ上でプラットフォーム化して提供しています。
社債発行の裾野を拡げて、小規模の企業に対して新たな調達手段を提供することに取り組んでいるのは、社債特化のネット証券という点では弊社のみです。

参入障壁はあるのでしょうか?

小村:少人数私募社債は原則無格付けとなるため、大手企業が自社で参入するハードルは高いと考えており、協業の可能性を模索しております。
ベンチャー企業に関しては第一種金融商品取引業者(証券会社)の登録とその準備のハードルが相当に高いと考えます。実際、私たちも登録までに2年ほどかかりました。システムの仕様・文言等細かな確認が必要ですし、新しい形態なので論点が多かったです。

透明性の高い金融商品を広めたい

小村さんはなぜ起業しようと思ったのですか?

小村:起業自体は大学の学部生時代から行っておりました。当時からグルメサイトの運用等の個人事業をしながら、自分で事業を営むことの難しさと楽しさを感じていました。
債券の領域に着目したのは、新卒で入社したドイツ証券でクレジット商品を扱っていた頃からです。インカムゲインの投資家需要は強くある一方で、供給側となる社債マーケットが日本は小規模で、一定利率が出るよう組成された複雑な仕組債にニーズが集まる等しておりました。お客様が果たして十分に理解をされた上でリスクを取っていただいているのか不明瞭である状況に大きな課題を感じました。
当時から少人数私募社債の仕組みを研究していて、これをウェブ上で提供することでスケールする可能性が高いのではないかと考えプロトタイプを作成する等様々な検証を始めました。しかし、第一種金融商品取引業者の取得は非常にハードルが高いため、フルコミットする必要性を感じ、起業を決めました。

信頼するチームと共に

大学院の同じ研究室出身の宮崎COO、松澤CTOとは、どのような経緯で一緒に事業を進めることになったのですか?

小村:2人とも大学院を出た後も定期的に会って、事業について話した記憶もあります。
松澤はエンジニアとして優秀であるのは勿論、組織づくりや人間性を考えて、起業するならCTOを松澤にしたいと考えていたので、すぐに声を掛けました。
COOの宮崎は総合的に業務全体を統括できるマルチプレーヤを探していた時に、当時マッキンゼーで働いていて、松澤とともに研究室の同期であったこともあってお声がけしました。タイミングもよく、二人とも積極的に参加してくれました。

Angel Bridgeとの出会いを教えてください。

小村:シリーズBの資金調達に向けて動いていた際に、Angel Bridgeの投資先のCEOが社会人時代からの友人で、興味を持ったので紹介してもらいました。とにかく早く検討していただき、迅速に意思決定をしてくださったことが印象的で、起業家フレンドリーだと感じました。

河西:ありがとうございます。偶然、私たちもデータベースを用いたソーシングをしている中で、Siiibo証券にお声がけしようと決めていたんです。ちょうど1週間後くらいにご紹介の連絡があったときは驚きました。

信頼するチームと共に

なぜAngel Bridgeから投資を受けようと思ったのですか?

小村:面談を重ねる中でAngel Bridgeの体制や社員の皆さんから学べることが多く、ぜひ今後もアドバイスをいただきたいと思ったからです。カルチャーフィットも感じていて、感覚や細かな仕事の進め方、コミュニケーションの方法等が合っていると思います。

なぜSiiibo証券へ投資しようと思ったのですか?

河西:もともと私は金融機関出身で私募債への理解はあったのですが、それをネット上で簡単に発行できるという事業がイノベーティブで面白いなと思いました。ニーズという面でも、ローン等ではなく社債の発行によって資金を調達したいというケースが多くあることはベンチャーキャピタルとして日々実感していますし、マーケティング要素のニーズもあると思いました。
さらに、経営チームがバランス含め非常に魅力的だったことも大きな決め手です。個別にインタビューを行う中で信頼できる方々という印象でしたので、ぜひ応援したいと思いました。我々としてもカルチャーフィットを感じていましたね(笑)。

大切なのはプロダクトへの強い思い

河西さんから見て小村さんはどんな起業家だと思いますか?

河西:小村さんは大志が大きい起業家だと思います。社債を世の中に広めていくということに対してのパッションが大きいですし、真面目に取り組んでいる印象ですね。事業を進めていく上で非常に重要な、プロダクトへの強い思いをいつも感じています。

大切なのはプロダクトへの強い思い

資金調達後、Angel Bridgeからはどのような支援を受けましたか?

小村:アーリーから上場に向けて体制を整える中で、河西さんには会議体の運営や事前準備、リクルーティングに関する知見をいただいています。社内に上場まで会社を牽引した経験を持つ人がいないので、とてもありがたいです。
おかげさまで、シリーズBで投資をしていただいてから、さらにしっかりと体制を整えることができていると感じています。

後輩起業家にアドバイスがあれば教えてください?

小村:プロダクトへの思いや自分の作りたい世界観をしっかり持つべきだと思います。
会社を経営していく中で本当に苦しいと感じることもありますし、周囲の起業家の方々からもそういったお話はよく伺います。逆境を乗り切って最後までやりきるためには、やはりCEOの事業に対する強い思いが必要だと感じています。

Siiibo証券の事業を通して、今後どのようなことを実現していきたいですか?

小村:シンプルなものに投資ができる世の中にしたいです。現状、シンプルな商品は株式が中心で投資家様のポートフォリオにおける債券の割合はまだまだ小さいです。私たちは、投資家様に適合した商品をお届けしていくことで、社債という選択肢をより多くの方々に広めていきたいです。
さらに、ベンチャーデットが盛り上がりを見せる中で、発行企業側の市場も開拓していきたいと考えています。今後拡大が予想される、地方の有力な中小企業が外部資本を入れるニーズ等につなげていきたいです。

2022.06.29 COLUMN

今回は、Angel Bridgeが飲食店向けの発注業務自動化サービスを提供する、株式会社Goalsへ投資した理由を解説します。

GoalsはAIで需要予測し自動発注を行う、クラウド型サービス「HANZO 自動発注」を提供しています。スマホ画面等で必要な食材が一目でわかる仕組みで、これまで手作業で行われていた飲食店舗での発注業務を自動化します。発注にかかわる時間や食材棚卸に要する時間の削減、結果として人材不足を補い、食材原価率も大幅に改善することができます。
Angel Bridge投資の舞台裏#8
昨今、新型コロナウイルス感染症流行の影響で急速なオンライン化や労働力不足が問題となり、多くの企業で積極的に店舗DX化(デジタルテクノロジーの導入)が進められています。特に飲食店の効率化ニーズは高く、今後市場ポテンシャルはさらに拡大していくことが想定されます。そのような状況の中で、店舗のオペレーションに沿った高い品質のプロダクトを提供するGoalsに可能性を感じ、投資に至りました。

では、Angel Bridgeが具体的にどのような検討を行ったかについてご紹介します。

飲食店の発注業務における課題

まず飲食店の発注業務がどのように行われているのかご説明します。

発注業務には大きく分けて4つのプロセスがあります。

需要予測
過去データなどを基に今後数日間の各メニューの販売数、必要な各食材量を予測し、適正在庫を計算します。
在庫確認
冷蔵庫やストックスペースの食材を全てカウントし、適正在庫と比較して在庫の過多や過小なものがないか、食材の品質が大丈夫か、期限切れを起こしているものがないかなどを確認します。
卸会社ごとの発注量決定
食材ごとに卸先が異なるため、それぞれの発注条件を確認します。例えば、発注から納品までのリードタイムを把握する作業や1個単位なのか10個単位なのか、もしくはグラム単位なのかといった発注単位の確認作業があります。
発注システム入力
決定した発注量を食材ごとにシステムに入力します。

これらの作業は欠品を起こさず適正な食材原価率を維持するために、非常に重要な作業であり、飲食店では毎日多ければ1時間以上かけて実施されていますが、全てアナログな手作業で行われており、需要予測については店長など発注担当者の勘に委ねられている場合が多い現状があります。

そのため発注業務は作業負荷が大きくミスが生じやすいうえ、人材確保の面でも店舗拡大のボトルネックとなっています。
具体的には下図のように、過剰発注により食材の原価率が悪化してしまうことや、店長など熟練者のスキルに一任しているため人材確保が困難であることが大きな課題となっています。
飲食店の発注業務における課題
GoalsではAIによる需要予測と在庫量計算や発注表作成の自動化により、これらのペインを解消するサービスを提供しています。

サービス概要

では、Goalsの提供するサービス内容をご紹介します。

Goalsは自動発注システムHANZOを開発しています。
これまでの発注作業とHANZOでの大きな違いは、人間が手作業で行っていた業務を極限まで自動化し、最終確認のみ人の目で行うという点です。
サービス概要
在庫確認、売上・消費食材の需要予測はすべてAIが行い、メニューの提供数やロスの情報から、残存している在庫量と必要在庫量を自動計算します。卸会社ごとに発注表の案を自動で生成でき、必要に応じて微調整するだけで発注作業が完了するという仕組みです。

これにより、店舗側では発注時間の大幅な削減や発注担当者の労働環境の改善が実現したうえ、会社としても利益率改善や人材不足問題の解消による事業拡大につながっています。実際に多くのユーザーからは予測精度の高さ、他システムとの連携といった点で高い評価を得ています。

さらにHANZOは飲食店の店舗オペレーションに即した細やかな機能開発を行うことで、現場の使い勝手の良いサービスを作り上げています。

①売上予測の自動化
売上予測・消費量予測表の作成
②適正発注案の自動作成
在庫量・売上予測を計算し、発注表を自動作成
確定情報を発注システムに連携
③異常値アラート
過剰・過小発注、発注漏れなどのアラート
④ロス等報告機能
ロス・在庫切れ・小口購買を店舗スタッフが入力報告できる機能(より高い発注精度にも繋がる)
⑤売上予測手修正機能
店舗の現場しか知り得ない需要変動要素も加味し、手修正が可能
⑥納品スケジュール自動計算
仕入れ先の休業日や納品リードタイムを全て加味し最適な納品スケジュールを算出

競合

Goalsの競合についてです。

飲食向け自動発注システムには、自社のネットワーク内で利用するオンプレミス型と、インターネット接続ができる環境であればどこでも利用できるクラウド型の2種類あります。

オンプレミス型の自動発注は多数存在しますが、クラウド型はGoalsが唯一です。オンプレミス型は自社サーバー内でのシステム構築を行うため、導入コストが高いのに比べ、クラウド型は低コストで導入でき、使い勝手が良いというメリットがあります。

さらに需要予測を組み込んだ高度な仕組みは、システムに数億円の投資を行う一部のトップ企業でしか実現できていませんでしたが、Goalsのサービス利用者に最新の機能を提供できるため競争優位であると考えています。

実際に業界を牽引する大手飲食チェーン店での導入実績が多数あり、プロダクトの信頼性が伺えます。

経営陣

投資するにあたり、経営陣の皆様への理解も深めました。

  • 佐崎傑 Goals代表取締役CEO
  • 佐崎傑代表取締役CEOワークスアプリケーションズに新卒入社し、ソフトウェアエンジニア・事業責任者を経験。 同社で各業界リーディングカンパニーのバックエンド業務の改善に携わる中で、企業の仕入・製造・販売を司るサプライチェーン領域の課題解決が日本社会を大きく成長させる可能性を感じ、2018年7月にGoalsを創業。
  • 多田裕介 Goals共同創業者、 CTO
  • 多田裕介Goals共同創業者、 CTOサム・ヒューストン州立大学にてコンピュータサイエンスを専攻。ワークスアプリケーションズからフリークアウト転職後、複数の新規事業立ち上げに参画。2018年7月に、CEO佐崎とGoalsを共同創業し、CTOとしてプロダクト開発全般と新規プロダクトの立ち上げを担当する。

代表取締役の佐崎氏は元々ワークスアプリケーションズ社でエンジニアとして活躍し、最年少のDivision Managerとして数百名の組織を統括したエース社員でした。「産業に深く関わり、明確な価値を提供できるプロダクトを作りたい」という思いから創業しました。
面談を重ねていく中で、ロジカルな思考と強力なやりきり力でチームからの尊敬も熱く、強いリーダーシップの持ち主であることが感じられました。

共同創業の多田CTOは大学時代にコンピューターサイエンスを専攻しており、佐崎氏とは前職から一緒に働いていました。周囲からは「2人には阿吽の呼吸を感じる」といった声も挙がるほどで、強いチームを作っています。

おわりに

最後に、今後の展望ついてご紹介します。

現在は自動発注以外にも、45日先の売上予測や従業員の必要時間を算出する「HANZO 売上予測」など人件費や原価の最適化を実現するさまざまなラインアップを備えています。
ここからより外食企業の商流全体の課題解決を目指すため、原価・人件費・販売の最適化へ向けてプロダクトの強化を図ります。

中長期展開としては、外食企業の食材需要データを用いて食品流通の在庫・物流計画の最適化、食品製造の生産計画の最適化などに対応するプロダクト開発を進め、食品産業全体の生産性向上に貢献できると考えています。

以上のようなプロダクト戦略によって、Goalsがメガベンチャーになる可能性はさらに高くなると考えられます。

これまでGoalsへの投資に至った理由を説明してきましたが、このように社会に大きなインパクトをもたらすために、難しい領域に果敢に取り組むベンチャーをAngel Bridgeは全力で応援していきます!事業や資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.06.28 COLUMN

こんにちは!Angel Bridgeインターンの山田と申します。

前々回の「Angel Bridge USベンチャー研究#8」は、EC上で返品された商品の検品・保管を行い、最高値で販売可能なチャネルに出品するOptoroについて紹介しました。
Angel Bridge USベンチャー研究#8

今回は、ECサイト内に高性能な検索アルゴリズムをAPIとして提供することでCVRを向上させるalgoliaについて紹介します。

Angel Bridge USベンチャー研究#9 (参考:EC×APIサービスの全体像)
algolia概要

algoliaは2012年に自然言語処理のエンジニアであったNicolas Dessaigneによって設立されました。2022年までに合計9回の資金調達を行っており、合計調達金額は$334M、評価額は$2.2Bです。

algoliaは「1つ1つのECサイト内にGoogleのような検索アルゴリズムを搭載する」ことをコンセプトに事業を展開しています。

algolia概要

続いて、algoliaのビジネスモデルについて紹介します。

algoliaはEC企業に対して、検索アルゴリズム (algolia SEARCH) とレコメンドアルゴリズム (algolia RECOMMEND) をAPIの形で提供します。

algolia概要

マネタイズはAPIの月額使用料で行っており、料金体系は基本料金+使用量に応じた従量課金となっています。

algolia概要 (参考:algolia料金体系)
解決しているペイン

ECサイト内の検索アルゴリズムの質が低いと、消費者がサイトに立ち寄っても欲しい商品が見つけられず離脱につながってしまうため、検索アルゴリズムの質はCVRに直結する重要な要素です。
しかし、一部の大企業を除いてほとんどのEC事業者には、自社サイト内に高度な検索アルゴリズムを構築できる優秀なエンジニアを雇う余裕がありません。
また、近年はShopifyなどのパッケージを利用してサイトを立ち上げるEC事業者が増加していますが、そうしたパッケージに最初から実装されている検索アルゴリズムも性能が高いとは言えません。

このようにEC事業者にとって、自社サイト内に高度な検索アルゴリズムを手軽に構築できないことは大きなペインとなっていました。

サービス内容

algoliaはわずか5分で実装可能な検索アルゴリズムである「algolia SEARCH」をAPIの形で提供することで、上記の課題を解決します。

また、検索アルゴリズムと連動した商品レコメンドエンジンである「algolia RECOMMEND」もAPIとして提供しており、相乗効果でCVRの向上を実現します。

以下、それぞれのサービスについて見ていきます。

① algolia SEARCH

algolia SEARCHは、あらゆるウェブサイトやアプリケーションにわずか5分で実装可能な高性能の検索アルゴリズムです。

以下、代表的な機能を紹介します。

A. 業界最速の検索処理スピードと自動インデックス作成機能
algolia SEARCHによる一件当たりの検索処理スピードは1~20ミリ秒であり、これは競合他社の200倍のスピードです。
また、API接続をした瞬間から1秒当たり約数千のインデックスを自動で作成する機能を有しており、開発者がインデックスを作成する必要がありません。
インデックス:検索エンジンが使用するデータが保存される場所のこと。ゼロから検索アルゴリズムを構築する場合、自社ECサイト内の全ての商品のインデックスを開発者が作成する必要がある。
B. AIによる同義語の設定機能
サイト内集まった様々な消費者の検索履歴をもとに、AIによって自動で同義語を設定することが可能です。まずは下の画像をご覧ください。
サービス内容(参考:同義語生成のイメージ)
このように、消費者は同じ商品を見つけるために様々な言語や語彙を用いて検索をしますが、すべての消費者のニーズに応えられるように同義語を人の手で設定しておくことはほぼ不可能です。
しかし、algolia SEARCHに搭載されているAIは検索履歴が溜まれば溜まるほど新たな同義語を設定することが可能です。
また英語・日本語・中国語・ドイツ語などあらゆる言語にalgolia SEARCHは対応しているため、「日本語+英語」の並びにも対応することが可能です。
この機能によって、消費者のサイト初回訪問時のCVRを向上させることが可能です。
C. AIによるパーソナライズ機能
algolia SEARCHのAIはパーソナライズ機能も有しています。
下のイメージのように、消費者のサイト内での行動履歴に基づいて、商品を検索した際の表示結果をパーソナライズすることが可能です。この機能によって、消費者の2回目以降のサイト訪問時のCVRを向上させることが可能です。
サービス内容 サービス内容
(参考:パーソナライズの例)
D. レポート機能
algolia SEARCHはサイト内の検索結果を自動でレポートにまとめることが可能です。
サービス内容
サービス内容
(参考:レポート機能)
E. ビジュアルエディタ機能
上記のレポート機能をもとに、簡単なドラッグアンドドロップインターフェイスで商品の表示結果を手動で変更することが可能です。
そして、変更されたことによる売上の変動は上記で紹介したレポート機能で確認することが可能です。
サービス内容
(参考:ドラッグアンドドロップインターフェイスでのサイト編集)
サービス内容
(参考:検索結果のうち関係のないものを手動で非表示にする機能)

以上、algolia SEARCHの代表的な機能をまとめました。この他にも下記のような機能があります。

サービス内容 サービス内容 サービス内容

② algolia RECOMMEND

algolia RECOMMENDはalgolia SEARCHと連携することが可能です。
それによって、個々の消費者のサイト内での行動履歴に基づいて、関連商品やよく一緒に購入される商品のレコメンドを行うことが可能です。

サービス内容 (参考:algolia RECOMMEND)
トラクション

代表的な顧客にはDiorLVMHグループなどの有名ファッションブランドや、オフィス機器を扱うStaplesなどが並びます。

トラクション (参考:algoliaの主要顧客)

実際の導入効果の一例として、LACOSTEではサイト内の商品検索からの売上が150%上昇し、CVRも37%上昇しました。

トラクション (参考:LACOSTEの導入効果)

また、API接続可能なプラットフォームにはShopifyをはじめ以下のものがあります。

トラクション
日本市場

日本でもEC事業者に検索アルゴリズムを提供している企業は既に存在しています。
しかしながら、algoliaのようなユニコーンは存在していません。

この理由は大きく2つ考えられます。
第1の理由として、algoliaはEC事業者に対してだけでなく、SlackやStripeなどのSaaSサービスや様々なメディアサービスに対しても検索アルゴリズムを提供しているのに対して、日本企業のサービスはEC事業者のみを対象としているので、市場の大きさが異なることが挙げられます。
この市場の違いは、algoliaの検索アルゴリズムがECサイトだけでなく、あらゆるサイトやアプリ内で機能するように設計されているという、algoliaの技術力の高さに起因しており、日本企業が簡単に模倣できるものではないと思われます。
続いて第2の理由として、日本におけるEC消費は、検索アルゴリズムをAPI連携することができないAmazonや楽天などのモール型ECに集中していることが挙げられます。
そのため、日本のEC事業者は「検索アルゴリズム自体を高性能にすることで自社の商品を探しやすくする」という戦略ではなく、「自社の商品をいかにしてモールの検索アルゴリズムに最適化するか」というSEO対策を中心に行なっており、algoliaのようなサービスを提供する企業の需要はアメリカほど大きくないと思われます。

以上2つの理由により、日本ではalgoliaのようなEC事業者に検索アルゴリズムを提供するユニコーンは存在していませんが、モール型ECのSEO対策のサービスなど、日本のEC市場に特化した検索アルゴリズムサービスを提供する企業が生まれるのではないかと期待しています。

おわりに

今回はEC領域特化SaaS紹介の第四弾として、EC事業者に高性能な検索アルゴリズムをAPIの形で提供するalgoliaについて紹介しました。
サイト内の検索アルゴリズムの違いによって、CVRが大きく変化するというのは非常に面白いと思いました。
また、日本とアメリカのEC市場の違いから、日本独自のサービスが生まれる可能性もあるため、ECの検索アルゴリズム領域には今後も注目していきたいと思います。

最後になりましたが、Angel BridgeはCVR向上を目的としたEC周辺サービスにも積極的に投資しています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.06.07 COLUMN

昨今ベンチャーキャピタル (VC) の数は増加傾向にあり、インターネット上には様々な情報が散乱しています。起業家の皆さんも、どのようにVCを選べばいいのか分からないと感じているのではないでしょうか。良いVCを見つけても、具体的にどのようにアプローチすればよいか分からないこともあると思います。

そこで、前回のスタートアップアカデミー#1|シードベンチャーの資金調達の考え方とは? では資金調達の考え方を解説しましたが、今回は実際にVCを選ぶ過程で必ず押さえておくべきポイントをご紹介していきたいと思います。

資金調達における7つのステップ

まず、資金調達を行う際のプロセスを簡単にご紹介します。

資金調達には大きく分けて以下の7つのステップがあります。

資金調達における7つのステップ

一見とても大変そうですが、あらかじめセオリーを抑えてしまえばほとんどの工程はスムーズに進めることができます。今回フォーカスする「④投資家へのコンタクト」については会社の属性によって取るべき対応が異なります。数多くのVCから自分の事業に合ったところを選択するには、資金以外の面でVCに何を求めるかをまず考えましょう。求めるものは事業内容・ラウンドによっても異なるため、それらに応じて当然お声がけすべきVCも異なります。

国内のVCにはいろいろな属性がある

では、実際に日本にはどのようなVCがあるのでしょうか。

国内のVC・投資家は以下の図のように、投資先の企業のステージや出資母体の違いにより棲み分けされていて、シード特化、独立系、CVC、金融系、グロース系、外資系、機関投資家系等に分類されています。

国内のVCにはいろいろな属性がある

それぞれのVCの特徴をご紹介しましょう。

シード特化VC
シードラウンドにのみ投資を行うVC。投資先が多く、ネットワークが充実しているため、投資を受けることで他の起業家との接点を持つことができます。シードベンチャーとの付き合い方に非常に慣れており、適度な距離間でサポートを得られること、デューデリジェンス(意思決定)も短時間で実施してもらえることなどのメリットがあります。一方でデメリットとしては、投資件数が多いので手厚いハンズオン支援は期待できないこと、次ラウンドで追加の投資が得られない可能性が高いことが挙げられます。
独立系リードVC
リードで投資を行い、ハンズオン支援を行うケースが多いVC。アーリーステージからミドルステージまで連続的に投資を行うことが多く、長期的なお付き合いが期待できます。ちなみにAngel Bridgeはここに分類されます。
シナジーのあるCVC (Corporate Venture Capital)
事業会社が自己資金で運営するVC。投資の際には事業上の提携を前提として求めることが多いです。資金だけでなく自社のリソースを提供してもらえるというメリットがあります。ミドルステージ以降で投資を行い、フォローで投資を行うケースがよく見受けられます。
金融系サイレントVC
銀行、保険会社、証券会社が自己資金で運営するVC。フィンテックなどに多く投資をしており、CVC的な側面もありますが、CVCほど協業を求めておらず基本的に投資後はサイレントになります。リードを取るケースは少ないですが、次のラウンドでの追加投資も期待できます。
グロースVC
ミドル/レイターステージに特化して投資を行うVC。ファンドサイズが大きく、最低ロットが10億円などと決まっていることが多いです。1-3年でIPOを目指すベンチャーが主な対象となります。
外資VC/外資PE/上場株機関投資家系VC
最近はこれらのプレーヤーも日本市場でベンチャー投資を積極化しています。ファンドサイズが非常に大きく、IPO前に大型資金調達を行う際には頼るべき存在です。

以下の図はこれらのVCの属性別投資額割合を表したものです。
投資額で見ると、独立系VCが全体のおよそ3割を占めています。また、2019年から2020年にかけては金融系VCの割合が大きく減少し、CVCが増えていることが分かります。CVCについては、事業会社側の新たな成長ドライバー発掘のニーズの高まりから、年々設立件数・投資額ともに増加が見られ、今後も規模の拡大が見込まれています。

国内のVCにはいろいろな属性がある

VCからの資金調達、どう始める?

いよいよ個々の投資家を検討していきますが、まずは資金調達するVCの構成を決めるところから始めましょう。
調達先は1社に限定せず、2-3社から調達することをお勧めします。1社に絞ってしまうと、そのVCの持つ決定権が大きく、方針が合わない際に継続が困難になってしまいます。逆にVCが多すぎても各種手続きに時間がかかりすぎてしまいます。
それぞれ異なる強みの支援を受けることができるうえ、追加出資が受けられないというリスクを減らすことができるという点で2-3社から投資を受けるのが適切と考えています。

複数の投資家から資金調達する際には、リード投資家、フォロー投資家という概念を理解する必要があります。
リード投資家は基本的に各資金調達ラウンドで最大の投資額を出す投資家のことを指します。投資時にはそのラウンドの投資家を代表して投資条件の交渉や契約書の作成の取りまとめを行います。投資後は投資先との接点も最も多く持ち、株主を代表して最大限支援を行う存在となります。
一方で、フォロー投資家はリード投資家をフォローするという立場で、必要に応じて支援を行います。
リード投資家をまず決定し、そこで合意した条件でフォロー投資家を決めるという流れで調達を進めます。

このようにリード投資家は起業家にとって、パートナーとも呼ぶべき関係性となり、重要な役割を持ちます。リード投資家の選択はとても大きな決断と捉えて、慎重に行うことをお勧めします。

VCのどこを見るべき?

では実際に投資家を選ぶ際に、どのようなポイントを見たらいいのでしょうか。
我々が数々のスタートアップに投資を行ってきた中で、特に抑えておくべきだと感じる4点をご紹介します。

支援の手厚さ
投資家が支援をしてくれるかどうか、見極める必要があります。
投資後に受けることができる支援の内容はどのようなものであるか、きちんと確認しましょう。投資家の話す内容だけでは本当に実行されているか分からないこともあるため、過去の投資先に対してどの程度の支援実績があるのかや、チームの構成については調べておくと参考になると思います。
出資スタイル
投資家との面談の際には、投資金額の目安だけでなく、次のラウンドでの追加出資の意向も聞きましょう。VCによって投資対象のステージが異なるので、次回は出資しない場合や、出資は受けられない代わりに他のVCにつないでもらえる場合など様々なケースが考えられます。ただ、継続的に出資を受けている方が対外的に評価が上がることがある上、新たに資金調達を行う際にかかる時間を短縮し、事業に集中できるなどメリットが大きいのも事実です。長期的に見て自分に合った出資スタイルの投資家を選びましょう。
意思決定のスピード感
実際に投資を受けるまでにどういった手順で、どのくらいの期間がかかるのかはVCによってそれぞれです。スピード感をもって進めたい事業であれば、意思決定の速さは、その後ラウンドを進めていく中でも重要な事項になるので、確認するべきでしょう。
ブランド力
VCのブランドも判断材料になる場合があります。特に海外ではSequoia Capital(セコイアキャピタル)などのネームの良いVCから出資を受けることで、注目度が上がり、他のVCからも投資を受けやすくなることもあります。
相性
投資を受けたVCは株主となり、基本的に上場までの長い期間を共に歩んでいくことになります。経営者のパートナーとして信頼関係を築けることが重要です。ミーティングの場の印象だけでなく、食事をしたり、リファレンスを取ったりすることも相性を確かめるために有効です。

以上を踏まえて、調達ステージ毎の資金調達の意味とどういったVCから調達するべきかをセットで考えると、自分に合ったVCに出会えるのではないかと思います。

まずはそれぞれのVCを知ることが大切です。最近ではどのVCもSNSやブログ記事、イベントなどで積極的に情報発信しているので、簡単にチェックすることができます。投資先の評判を聞いたり、知人のつてを使ったりして情報収集を行いましょう。
アプローチ方法としてはツイッターアカウントへのDM・オフィスアワーへの申し込み・HPへの問い合わせ・人づての紹介・イベントへの参加などたくさん考えられます。後悔のない資金調達ができるよう、最大限活用していきましょう。

Angel Bridgeでは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーを応援していきたいです。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!
ツイッターアカウントではお役立ち記事やイベントの情報発信を行っています。気になる方は、ぜひチェックしてみてください!

2022.05.27 COLUMN

こんにちは!Angel Bridgeインターンの黒田です!

アメリカの未上場Fintech企業についての調査結果をシリーズ化して発信しています。

今回は第8弾として、スマホ投資アプリを提供するpublic.comを紹介します。

public.com

public.com概要

public.comは2019年に連続起業家のLeif Abrahamとフィンテックについて深い知識があるJannick Mallingの二人によって設立されました。2021年までに5回の資金調達を行っており、最新のラウンドでは$1.2Bの評価額で$220Mを調達しています。ユーザー数が300万人を超え、トラクションが順調に伸びていることからfintechの中でも注目すべき企業となっています。

public.com概要

public.comはミッションとして「株式取引の民主化」を掲げています。サービスとしては投資アプリを提供しており、特徴として以下の4つが挙げられます。

  1. ①手数料無料
  2. ②少額から取引可能
  3. ③SNS機能の搭載
  4. ④教育コンテンツの充実

これらは全て投資をよりポップにする機能であり、さらにUI/UXをシンプルにすることでこれまで投資に関わったことのない人でも使いやすいアプリとなっています。

サービス内容

①手数料無料
public.comでは株式の取引手数料だけでなく、銀行出金や入金にかかる手数料も無料で、入金しなければならない最低残高要件もありません。つまり、完全無料でアプリを利用することができます。
では、実際どのように収益を得ているのでしょうか。
public.comは以下の内容を公開しています。
https://public.com/learn/how-does-public-make-money
ここでは、取引の際に支払われる選択制のチップや投資されていない現金残高の利子、証券貸付から収益を得ていること、また今後有料のプレミアム機能を追加することで、サブスクリプションとして課金される可能性があることが書かれています。選択制のチップとはその名の通りで、取引の際にチップを支払うかどうか、またその額を選択することができるシステムになっています。
②少額から取引可能
public.comでは株価に関わらず、「slicing stocks」と呼ばれる任意の金額の株を購入することができます。これまで、本来は全ての人に開かれていたはずの株式市場でも購入単価の高い株は一般の人々には手が出せないという状況でした。しかしpublic.comでは、一株$1,000の株であっても$10分だけ購入するということが可能です。この機能があることで、資金をあまり持たない人でも高価な株を購入できます。
③SNS機能の搭載
public.comではSNS機能が搭載されており、ユーザーがポートフォリオを公開してお互いにフォローしたり、意見を交換したりできます。他人がなぜその株式やETF、暗号通貨を取引しているかを学べることや、興味を持っているテーマ(自動運転やフェムテック、環境問題など)が同じ人のポートフォリオを真似できることが、投資初心者にとって魅力的な機能となっています。
また、フォローしている企業や投資家の動向、IPO情報をすばやく検索確認できる機能もあります。
SNS機能の搭載 SNS機能の搭載
④教育コンテンツの充実
public.comのサイトには投資や株式に関する情報がたくさん載っています。またアプリにも教育機能が盛り込まれており、専門用語をタップすると定義が見られる、株価がなぜそのように動いているか解説してくれる、などの機能があります。
教育コンテンツの充実
教育コンテンツの充実

トラクション

CEOへのインタビューによると2021年2月時点でユーザー数は100万人を突破し、現在は300万人に到達しています。さらに、ユーザー全体の40%が女性で、90%のユーザーがpublic.comで初めて投資を行ったとされています。「株式取引の民主化」をミッションに掲げているpublic.comが、従来の投資家とは異なる層の獲得に注力していることがわかります。

競合

最も大きな競合として挙げられるのはRobinhoodです。2021年7月に時価総額$29Bで上場した企業で、ユーザー数は現在約2,000万人です。public.comと同じく手数料無料のスマホ投資アプリを提供しています。また、少額から始められる点もpublic.comと同様です。

競合

しかし、Robinhoodは投資の手軽さを強調しすぎたあまりに、若者や新規投資家が投資リスクを過少に扱って大きなレバレッジをかけてしまったり、個人投資家による株式市場操作が行われたりするなど問題を起こしてきました。

有名なものでは「GameStop事件」があります。これはヘッジファンドが空売りをしかけていたGameStop社の株に個人投資家が買い注文を殺到させ値を吊り上げることで、ヘッジファンドに莫大な損失を出させた事件です。この買い注文は主にRobinhood上で行われました。この時RobinhoodはGameStop株の購入を制限し、結果として株価の下落によって個人投資家の多くは損失を出しました。これはヘッジファンドが自由に取引できる一方で、個人投資家の株式購入を妨げる措置だとして、ユーザーだけでなく政治家からも批判が殺到しました。

また、Robinhoodは収益の大部分をPFOF (payment for order flow) と呼ばれる仕組みで得ています。これは証券会社(Robinhood)が個人投資家からの注文情報を機関投資家に回し、報酬を受け取るという仕組みです。機関投資家はその情報を分析することで市場での取引精度を上げ、利益を増やします。しかし、この行為が個人投資家に損失を出させているのではないかという批判があり、問題となっています。

一方でpublic.comはこれらの問題が起きないための対策を行っています。顧客には長期的なポートフォリオの構築を推奨しており、実際に90%のユーザーは「自分は主に長期投資を行っている」と回答しています。また、取引できる市場をNYSEやNASDAQなどの主要な取引所に制限し、オプション取引や信用取引口座のような複雑な取引商品を提供しないことで、個人投資家をリスクの高い投資から保護しています。

さらにpublic.comは収益モデルを透明化させるために、ビジネスモデルからPFOFを排除しています。代わりに選択制のチップ制度を導入することでこの問題を解決しています。

日本市場

日本では株式会社スマートプラスの「Stream」、マネックス証券の「ferci」が類似サービスといえるでしょう。どちらも取引の手数料は無料であるうえ、アプリ内でコミュニティを作り、ユーザー同士が交流できます。ほかにもベンチャー企業が出てきており、「投資 x SNS」領域は盛り上がっています。

日本市場日本市場

これには人々が資産形成に興味を持ち始めていることや、コロナ禍での株価の下落により投資機会が増えたことが原因として考えられます。日経新聞の調査によると、資産形成・資産運用の必要性を感じている人は増えています。20代の38%がコロナ禍による株価の下落を「利益を増やすチャンスだと思った」と回答しており、実際に20代の33.1%が「投資総額を増やした」と回答しています。あまり資金をもたない若者が手軽にスマホで投資を始められる手段として、これらのサービスが刺さっているのだと考えられます。

日本市場
日本市場

おわりに

今回の記事ではpublic.comを紹介しました。手軽に投資を始められ、ユーザーがお互いに交流できるサービスが海外だけでなく日本でも盛り上がっていることがわかりました。

最後になりましたが、Angel Bridgeは世の中を大きく変えるフィンテック企業に積極的に投資しています。 事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.05.27 COLUMN

今回は、Angel Bridgeが処方箋入力代行SaaSを提供する株式会社プレカルへ投資した理由を解説します。

プレカルは薬局向けに、オンライン事務員による処方箋入力代行サービス「プレカル」を提供しています。

Angel Bridge投資の舞台裏#7

処方箋入力は薬局最大の事務作業であり、「処方箋の複雑さ」や「ソフトの難解な操作性」によって薬局の大きな負担になっています。その処方箋入力をなくすため、送信された処方箋の画像を元に遠隔でAIと人力を組み合わせた入力代行を行うプロダクトを開発しています(プレカルホームページより引用)。

労働人口の減少を背景に、店舗運営効率化や利益率向上のための店舗型ビジネスDX化の流れが到来している中、日本に6万店舗存在する薬局における最大の業務課題をAI搭載のOCRとクラウドワーカーの二重チェック体制の構築という新たな方法で解決に導くプレカルに大きな可能性を感じ、投資に至りました。

では、Angel Bridgeが具体的にどのような検討を行ったかについてご紹介します。

薬局業務における課題

薬局業務は
①受付→ ②処方箋入力→ ③薬の準備→ ④薬のお渡し→ ⑤薬歴
という流れで行われます。
中でも処方箋入力は薬局業務において最も時間のかかる事務作業ですが、処方箋の年間発行枚数は8.4億枚と推定されていて、年間1,100億円もの人件費が割かれているのが現状です。

処方箋入力作業は、処方箋をレセプトコンピューターという「レセプト(診療報酬証明書)」を作成するコンピューターシステムに打ち込む作業で、調剤報酬点数の計算に必要です。この点数に応じて薬局が市町村から貰える補助金の金額が決まるため、薬局運営には必要不可欠な作業であり、患者に渡すための、薬の説明が記載された紙の発行にも必要です。

薬局業務における課題

しかし、薬剤師や事務員が処方箋1枚につき40項目ほどを手作業で打ち込まなくてはならないため、1日あたり約4時間もの時間を割かれていることが大きな課題となっています。

サービス概要

では、プレカルのサービス概要をご紹介します。

プレカルは処方箋入力を代行するサービス「プレカル」を提供しています。
従来の処方箋入力代行サービスは、手書きや印刷された文字をイメージスキャナやデジタルカメラによって読み取り、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換するOCRという技術を用いて行われてきました。

処方箋には40以上の入力項目があり、フォーマットも病院ごとに異なるため、OCRのみを使った入力代行では精度が90%程度と低いことが課題で、薬剤師が入力内容をチェック、修正する必要があるため、結果として業務負担はあまり改善されませんでした。

一方でプレカルはOCRに加えて、大量のクラウドワーカーによる二重チェック体制を構築することで99%以上の精度での処方箋入力代行を実現しています。

プレカルを活用した実際の処方箋入力フローはこのようになります。

サービス概要

  1. 患者がプレカル受付システムに問診票やお薬手帳の内容を入力
  2. 患者が処方箋をスキャン
  3. OCRとクラウドワーカーの2重チェックによるドラフト作成
  4. RPAを用いたレセコンへの自動入力
  5. 処方箋入力情報や薬の説明書の印刷

患者の来店から処方箋のレセコンへの入力、印刷までの一連の作業において、薬剤師や事務員の業務負担を大幅に軽減することが可能です。

競合

次に競合についてです。

処方箋の入力代行には多くのプレーヤーが存在していますが、それらはOCR技術のみを使ったサービスを提供していて、ご紹介してきた通り精度が低く、十分なペインの解決には至っていません。

競合

一方でOCRとクラウドワーカーによる2重チェック体制を構築しているプレーヤーはプレカルのみとなっています。

1~3分程度の入力時間で99%以上の精度を実現するうえ、クラウドワーカーに訂正されるにつれてAIが学習し、精度が向上するという特長を持つため、実用性が高くニーズは非常に強くなります。
また大量のクラウドワーカーによる素早いチェック体制の構築が必要であり、学習が可能なAIの開発も行わなくてはならないため、参入障壁は高いと考えています。

経営陣

投資を検討するにあたって、経営陣への理解も深めました。

経営陣

代表の大須賀氏は北里大学薬学部卒業後、薬剤師としての勤務経験や薬局設立経験があり、業界に深い知見を持っています。
Angel Bridgeとの一年間に及ぶ定期的なミーティングの中では、大須賀氏の誠実さや事業にひたむきな姿が印象的で、自身で開発から営業までこなせる行動力に富んだ人物であることが分かりました。また周囲へのインタビューでは人望の厚さや、投資家やチームからの信頼も確認することが出来ました。

おわりに

最後に、プレカルの今後の展望について説明します。

処方箋に含まれる情報は患者の健康状態の評価や背景を把握するための大きな価値があるものの、現状では薬局の店舗内でしか管理できておらず、有効活用の大きな余地があります。

プレカルが多数の薬局に普及することで処方箋のデータ数が集まれば、医療ビックデータプラットフォームを構築することが可能になるため、処方箋入力SaaSに留まらない成長可能性が存在すると考えられます。特にプレカルではOCRで処方箋を読み込む際に同時並行でAIによって構造化を行なっているため、薬局ではできない処方箋情報の構造化が可能です。構造化されたデータによって医療機関における薬の需要予測が可能になるため、製薬会社にとって大きな需要が存在するでしょう。

処方箋に含まれる情報は患者の健康状態の評価や背景を把握するための大きな価値があるものの、現状では薬局の店舗内でしか管理できておらず、有効活用の大きな余地があります。

プレカルが多数の薬局に普及することで処方箋のデータ数が集まれば、医療ビックデータプラットフォームを構築することが可能になるため、処方箋入力SaaSに留まらない成長可能性が存在すると考えられます。特にプレカルではOCRで処方箋を読み込む際に同時並行でAIによって構造化を行なっているため、薬局ではできない処方箋情報の構造化が可能です。構造化されたデータによって医療機関における薬の需要予測が可能になるため、製薬会社にとって大きな需要が存在するでしょう。

おわりに

医療ビッグデータ市場は日本の高齢化や医療現場の逼迫などの背景から、毎年平均で11.7%の成長を続けており、2025年には約8,300億円に到達する見込みの巨大市場です。
プレカルは取得できる情報の種類が他社と比べて多いため、アップサイドが狙えるのではないかと考えています。

これまでプレカルへの投資に至った理由を説明してきましたが、このように社会に大きなインパクトをもたらすために、難しい領域に果敢に取り組むベンチャーをAngel Bridgeは全力で応援していきます!事業や資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.05.23 INTERVIEW

KYC、コンプライアンスチェックの効率化

事業内容をご説明いただけますか?

飛内:主にKYC(本人確認)とコンプライアンスチェックに関わるデータの提供とコンサルティングサービスを行っています。反社会的勢力等の団体に所属していないか、過去に犯罪や不祥事への関与などがないかなど、主に属性を見てアドバイスを提供しています。
具体的な方法としては、公知情報というインターネット上のメディアや風評などの情報をシステムで定期的に取得して、ノイズを消去し、顧客に必要な情報だけを自動で抽出、整形、解析します。公知情報の取得は30分に1回のペースで24時間、365日行っています。

同様の事業を行っている企業は他にありますか?

飛内:いくつかありますね。一方でKYCやコンプライアンスチェックに関わる情報を提供している企業は、これまで労働集約型で人の手で行うことが中心でしたが、弊社はそれをシステムに置き換えて自動化しています。ヒューマンエラーやチェックスキルといった属人的な作業を均一化でき、さらにコストが格段に下がるといったメリットがあります。

世の中の不幸を減らしたい

世の中の不幸を減らしたい

なぜKYCコンサルティングを創業しようと思ったのですか?

飛内:私は20年以上の間、危機管理会社で企業のリスクマネジメントを行っていました。その中で企業不祥事・事件・事故を数多く見て、このようなことが起きてほしくないと思ったのがきっかけです。
また、これまで労働集約型で行われていたKYCやコンプライアンスチェックに対し、新しい金融サービスであるフィンテックやDX目線を取り入れながら効率化、コストダウンを行う必要性があると感じたため、思い切って新しく会社を立ち上げました。

飛内さんの他にはどのようなメンバーが集まっていますか?

飛内:顧問には伊藤忠の元常務である木村とジャスダック証券取引所の元常務である徳原がいるほか、営業では金融機関出身者やインターネット風評に関わっていた方がいます。
私はブロックチェーン推進協会のリスク管理部会で会長を行っているので、そこで知り合って加入したエンジニアもいます。

Angel Bridgeとの出会いを教えてください。

飛内:2019年に生損保会社のコンサルタントの方に林さんをご紹介していただき、まずお人柄が素敵だと思いました。私は起業したばかりで右も左も分からない状態でしたので、ハンズオンで経営のノウハウを指導してもらえると伺って、さらに魅力を感じました。
特に、アイデアをビジネスとしてどう具現化するかを教えてもらえたところがありがたかったです。当時はシード期でまだまだビジネスが成り立っていないタイミングでしたので、リスクを取っていただいたのではないかと思います。

なぜKYCCに投資しようと思いましたか?

林:社会の非効率化を解消する中で、手続きの電子化という流れが来ると感じていて、リスクを予知する取り組みも電子化されるのであれば、あらゆる場面でサービスが使われるだろうと思いました。また飛内さんのご経験と工夫を電子データベース化すれば、他に類のない高度な仕組みができると思いました。

世の中の不幸を減らしたい

資金調達までにどういったことを検討しましたか?

林:サービスが有用であることは確かでしたので、個人情報保護という課題について飛内さんの取り組みを確認しました。また、グレーヘアのスタートアップなので体力・精神的に大丈夫かという心配はありましたが、飛内さんの十分な覚悟を確認できたので投資に至りました。

資金調達後の歩み

資金調達後、Angel Bridgeからはどんな支援がありましたか?

飛内:定例会を月1回開催していただき、前月や中長期での取り組みについての報告と、それに対するアドバイスをいただいています。不定期でお客さんの紹介・経営上のアドバイスなどもしていただいています。

林:今後は人材紹介も強化していきたいです。

後輩起業家に向けて、起業にあたってアドバイスがあれば教えてください?

飛内:以前、外国人の集まりでピッチをしたことがあるのですが、その時に「日本にもシニアアントレプレナー(起業家)がいることを海外へ知らしめてください!」と言われました。海外にはシニアが経営する企業が日本より多いのですよね。日本は少ないとはいえチャンスはいくらでもあるはずなので、失敗を恐れず、諦めなければ成功するのではないかと思います。

林:人生一回ですから、やりたいことをやるのは大切ですね。

真面目に働く人々に光を当てる

今後どのような会社にしていきたいですか?

飛内:私たちは「KYCを社会インフラ化すること」をミッションとして掲げています。KYCは企業にとって重要なプロセスの一つですから、これまで資金が潤沢な中規模以上の企業でないと利用できなかったのを、小規模の会社まで広げていきたいですね。

真面目に働く人々に光を当てる

また、悪い人って世の中に1割もいなくて、9割以上の方々が家族や社会のために真面目に働いています。私たちは、表向きは悪い人を健全な経済取引から排除するという取り組みを行っていますが、本当に光を当てたいのはこの9割以上の方々で、彼らに社会的受益を得てもらうには何が必要なのかを考えています。具体的には格付けなど、情報に対して新しい価値を付けることが大事だと考えています。SNSでの発信やボランティアとかなども個人の重要な情報の一つです。個人の多面的な評価を日本にも根付かせたいです。

事業を通して社会に届けたいことはありますか?

飛内:企業の事件・事故・不祥事や、そこから生じる二次被害といった不幸ができる限り起こらない社会を作りたいです。
KYCは海外ではポピュラーで、大きなコストをかけて行われており、水準で言うと日本はまだまだ低いです。今後、日本企業がグローバルに進出するためには、海外のKYC先進国と同様の水準が必要です。そのため、私たちはKYCを広く日本社会に根付かせ、より健全な取引を行うことができる環境を構築していきたいと考えています。

2022.04.27 INTERVIEW

ソフトウェアの開発をもっと効率的に

まずMagicPodの事業内容を教えてください。

伊藤:私たちはノーコードでソフトウェアテストを自動化するプラットフォームを作っています。ウェブサイトやモバイルアプリを作る時には、作ったものがきちんと動くかテストをする必要があって、これをソフトウェアテストといいます。ボタンを押してみてエラーが出ないかなど、画面操作により想定通りの動作となっていることを確認していく作業があります。それらの作業はほとんどエンジニアの手作業や目視で行われていて、すごく手間がかかるので、MagicPodではこれを自動化するサービスを開発しています。
私たちが扱うE2E(End to End)テストはシステム全体を通して行うテストで、ユーザーと同じように操作を行って、きちんと動くかを見るものです。テストの中でも一番重要で、ニーズが高いものを自動化することに取り組んでいます。

ノーコードでの自動化ということですが、ノーコードとはどういうものなのですか?

伊藤:これまでソフトウェアの自動化をするには、それぞれの手順についてプログラムを書かなければいけなかったので、専門のスキルを持った自動化エンジニアが必要でした。しかし、ノーコードサービスを使えばプログラムを書かなくても、画面上で項目を選んでいくだけで簡単にテストができます。
世界的にエンジニアが足りない一方でITの需要が増えていて、「プログラムを書かない人でもシステムを作れるようにしよう」というトレンドが来ているので、私たちのサービスにちょうどマッチしているなと感じています。

同じような事業を行っている企業はあるんでしょうか?

伊藤:ノーコードでの同様なシステムを提供している会社は国内、海外にいくつかありますが、これらの会社はウェブサイトでのテストを主に扱っています。一方でMagicPodはウェブサイトとモバイルアプリの両方で使うことができ、その点は他社と比べて非常に大きな強みですね。モバイルアプリは歴史が浅くてノウハウがない上に、変化も多いので、技術としては圧倒的に難しいのです。

伊藤さんはどのような経緯で起業したのですか?

ソフトウェアの開発をもっと効率的に

伊藤:私はもともとワークスアプリケーションズという、会計のERPソフトを作る会社でエンジニアをしていました。エンジニアとして働く中で、ソフトウェアの品質管理がスピード感のある開発をする上で、大きなボトルネックになっていることに気付きました。テストをより効率化して、時間がなくてもシステムの品質を担保できるようにすることが重要だと思って、そこから社内向けのテストツールを作り始めました。ベースのエンジンから自分で設計をして、ひたすら試行錯誤の日々でした。結果、会社全体がそのツールを使うようになって、業務が大きく改善されたんです。この功績を評価していただき、その年は約3,000人の会社で3名ほどしかもらうことができない、社長賞をもらうことができました。
その時に自動化という技術に魅力を感じて、社内だけでなく世界中で使われるような製品を作りたいと思い起業しました。

起業してからはどのように取り組んでいきましたか?

伊藤:日本でテスト自動化というもの自体があまり普及していなかったので、まずは無料で使えるオープンソースのツールについてまとめた本を書きました。市場がそもそもなかったので、作るところから始めました。
普及活動の一環としてコミュニティを作ったり、イベントを企画したりもしましたが、それらのノウハウがなかったのでとても苦労しましたね。頑張って企画した第一回の勉強会のゲストが直前で来られなくなってしまうというアクシデントなんかもありました(笑)。

理想的なツールの作成に挑む

市場を開拓するとなると、大きな壁もたくさんあったと思います。その中で伊藤さんを突き動かしていたのはどういった思いでしたか?

伊藤:世の中には良い技術もテスト自動化の需要もあるのに、なかなかユーザーには使ってもらえないというギャップを埋めたい気持ちが大きかったです。ソフトウェアの品質の問題はみんなが困っていたのですが、なかなか良い解決策がなくて諦めていたんです。自動テストというものもありましたが、もっと使いやすくしないと世界中に使ってもらえるものにはならないと感じていました。
最初は既存のツールを普及しようと考えましたが、やはりノーコードで誰でも簡単に扱えるものでないと取り入れてもらうのが難しく、理想的なツールを自分たちで作りたいと思って「MagicPod」という製品を作り始めましたね。

伊藤さんのほかには、どのようなメンバーがいらっしゃるのですか?

伊藤:会社や製品の方針などについてはテックリードの玉川と主に2人で考えています。玉川はもともと東大の情報学研究科で機械学習の研究をしていて、卒業後は自動化や開発効率化、自動テスト技術の普及活動を行っていました。
運営していた自動テストのコミュニティに顔を出してくれていたのがきっかけで、当時からとても優秀な方だと感じていました。お誘いして最初は断られちゃいましたが、その後無事に加わってくれました。よくぞ来てくれたなと、うれしく思っています。

AngelBridgeとはどのように出会いましたか?

伊藤:もともとシードラウンドではIncubate Fundから出資してもらっていました。当時は製品の出来が悪く、ユーザーもつかず、投資を受けるまでに苦労したのを覚えています。シリーズAの調達のときにパートナーの河西さんがFacebookでメッセージをくださったのがAngel Bridgeとの出会いでしたね。お話するうちに、私たちに足りないファイナンスやビジネスサイドを補完してもらえそうだと感じました。これからラウンドを進めていく中でもスピード感を持って進めていけそうだなと思って、投資を受けることを決めました。

理想的なツールの作成に挑む

河西さんはなぜMagicPodに出資をしようと思ったのですか?

河西:まず伊藤さんの技術力の高さですね。チーム全体を見ても、類い稀な優れた技術を持っているところに惹かれました。特にモバイルアプリでのテストを自動化する技術は、誰に聞いても非常に難しいと言っていて、このチームの技術は相当なものなのだと確信しましたね。
また伊藤さんとお話していく中で、ソフトウェアの品質テストというものが長期にわたってエンジニアの方々にとっての大きなペインであったことが分かって、そこを解決に導いていることにも感銘を受けました。

投資検討を進めていく中でよく覚えているエピソードはありますか?

河西:伊藤さんは京都大学の数学科出身とスーパー優秀な印象だったので、投資するにあったって唯一の心配事として、もしかしたら技術を磨きこむことができれば満足してしまうのではないかと思っていたんです。そこで一度、「IPOへのこだわりはありますか?」と質問したことがあるんですよ。そのときに伊藤さんが、「私は学生時代、ノーベル賞を目指して研究をしていました。今、ベンチャーを始めたからには同じくらいのパッションをもって事業を成功させたいですし、同様にIPOを目指したいです。」とおっしゃっていたのがすごく印象的です。伊藤さんから、技術開発だけでなくベンチャー企業としての成功を追及していきたいという強い気持ちを感じました。起業をするうえで、そういった気持ちはとても大事だと思うんですよね。

伊藤:私もその会話はよく覚えています。お寿司を一緒に食べていたときでしたよね(笑)これまでエンジニアとしては、本や海外での講演、社長賞など、一般的に見るとトップレベルとされる成果を出しました。ただ自分の中ではこれらにあまり満足していなくて、やはり達成感を得るには事業として成功させるしかないなと、起業してからずっと思っていますね。

河西:伊藤さんには秘めたる闘志をいつも感じますね。毎月定例会議を行っていても毎回着実に進歩していますし、ひとつひとつ地道にくじけずにやっていくところがすごいなと思います。

伊藤:私は得意じゃないことをするのが得意なのかもしれないですね(笑)。元来、営業やプレゼンテーション、イベント企画などは一番苦手な分野なんですが、会社のために必要であれば何でも頑張ろうと思っています。

投資実行後、Angel Bridgeからはどんな支援がありましたか?

伊藤:まず月一の定例会では毎回アドバイスをいただいていますね。プロファーム出身のエキスパートからコンサルティングを受けられる機会はとてもありがたく思っています。担当の八尾さんは、実際のお客さんの声を集めて製品に足りないところをフィードバックしてくれるなど、親身にご支援いただいています。最近ではストックオプションの設計を始めているのですが、そこについてもとても良いアドバイスをいただきました。

Angel BridgeはどんなVCだと思いますか?

伊藤:投資を受けてみて感じたのは、とても勢いのあるVCだなと思っています。優秀な方々でありつつ、例えばバーべキューを一緒にしたときはとても愉快な方々だと感じました(笑)。
あと、他の投資先を見ていると、VCとしての目利き力が特に優れているなと思いました。キラリと光るベンチャーを見つけてきて伸ばすのが上手いんじゃないかと思います。

最終的には銀行を目指していく

世界に愛されるプロダクトを

後輩起業家に向けて、起業にあたってアドバイスはありますか?

伊藤:最近は昔と比べて資金調達の選択肢も増えていますし、スタートアップのビジネスをするハードルがかなり下がってきているように感じています。日本でもベンチャービジネスに流れる資金が増え始めていますし、今後数年間は起業のチャンス期間になるかもしれないですね。例えば、会社で10人の部下がいるっていうことは、ある意味10人ぐらいのベンチャーを経営できるノウハウがあるってことだと思うんです。そういったビジネススキルがある人は、ぜひチャレンジしてみるといいんじゃないかなと思います。

MagicPodをどのような会社にしていきたいですか?

伊藤:「MagicPod」を世界中の人が使うサービスにしていきたいですね。特にエンジニア向けのサービスは法律や文化にあまり依存しないので、日本の市場から海外に持っていくのはあまり難しくないんです。そういう面で私たちのサービスは日本のスタートアップの中でもかなりグローバル進出しやすい領域だと思っています。
会社としての在り方でいうと、やっぱりユーザーさんに愛されるようなプロダクトを作る会社であり続けたいと思います。ユーザーの声はすごく大事にしていて、「これ欲しい!」みたいなリクエストをいただいた際はかなり注力して、積極的に機能追加をしています。今後会社が大きくなっても、そういった心を失わないようにしたいですね。

社会に届けたいことはありますか?

伊藤:会社の新しいミッションとして、「ソフトウェア開発の常識を一変させる」ということを掲げたいと考えています。ソフトウェアの開発もテストもですが、本当は面倒くさいなと思いながら我慢してやっていることがたくさんあると思います。私たちはそういう、みんなが当たり前だと思って我慢していることを、自動化やAIといったテクノロジーを使ってどんどん変えていきたいです。ソフトウェア開発というプロセスの中から、楽しくないものをなくして、本当に楽しいことだけをやっていられるような環境にしていきたいと思っています。ソフトウェアに携わる全ての人たちが幸せに、より楽しく開発できるように、技術革新を進めていきたいです。

2022.04.21 COLUMN

こんにちは!Angel Bridgeインターンの山田です。

前々回はアメリカのEC領域特化SaaS紹介の第2弾として、ECでの返品業務を効率化するReturnlyについて紹介しました。

今回は、同じくECの返品領域において、返品された商品の検品・保管から再販までを効率化するOptoroについて紹介します。

参考:EC×APIサービスの全体像

Optoro

Optoro概要

Optoroは2010年に、eBayの出品代行サービスであるE-Spotの元創業者、Tobin Mooreによって設立されました。2021年までに合計10回の資金調達を行っており、合計調達額は$270M、評価額は約$1Bです。

Optoroの最大の特徴は、「返品された商品を検品・保管し、最も高値で売れる二次流通チャネルで再販する」という、返品におけるEC事業者の業務のほぼ全てを効率化するソリューションを展開していることです。

Optoro概要

続いてOptoroのビジネスモデルについて紹介します。

OptoroはEC事業者と提携し、返品された商品の検品・在庫管理と、最高値で売れるチャネルの特定・再販を行います。

Optoro概要

マネタイズは在庫管理の月額費用と、再販の手数料として売上の一部をもらうことで行なっています。

また、前回紹介したReturnlyなどの返品効率化SaaSと連携することで、返品における消費者とのやりとりも効率化することが可能です。

参考:ReturnlyとOptoroの返品における業務範囲イメージ

Optoro概要

解決しているペイン

アメリカのEC小売業の返品率は25% ~ 40%で、2020年の返品額は$500B(約60兆円)にものぼります。加えて、返品された商品のうち毎年約26億kgもの商品が廃棄されており、大きな環境問題となっています。

一部の大企業では、返品された商品を中古商品として再販することで廃棄を減らすという取り組みが行われていますが、ほとんどの中小規模のEC企業は、商品の管理コストや輸送コストの背景から再販しても利益が出ないため、再販を行うことができないというペインを抱えていました。

Optoroのサービス内容

Optoroは自社で倉庫と再販用の二次流通マーケットの両方を抱えることで在庫管理と流通のコストを抑え、中小規模のEC企業でも再販から利益を得られるようにします。

以下、在庫管理と再販のそれぞれの機能について紹介します。

①在庫管理
返品された商品が契約企業から全米にあるOptoroの倉庫に運ばれると、画像認識AI搭載のスキャンシステムによって、返品された商品を瞬時に検品しデータベース化します。
参考:検品を行うスキャナー
Optoroのサービス内容
そして、再販商品として出荷されるまではSmartRTV®テクノロジーによって効率的に在庫管理されます。SmartRTV®はAPIでクライアントの在庫管理システムと連携することも可能です。
参考:Smart RTV®テクノロジーによる在庫のデータベース化
Optoroのサービス内容
②再販
SmartDisposition®テクノロジーによって、倉庫に管理されている商品がどのチャネルで最も高く販売できるかを瞬時に割り出します。
再販される主なチャネルは、Optoroが運営している二次流通マーケットである「BLINQ(BtoC向け)」と「BULQ(BtoB向け)」の二つのチャネルの他、AmazonやeBayなどが挙げられます。
参考:SmartDisposition®テクノロジーによる収益予想と、BULQのイメージ
Optoroのサービス内容 Optoroのサービス内容
また、SmartDisposition®テクノロジーによって再販できないと判断された場合も、廃棄に回すのではなく慈善団体へ寄付を行うことで、できる限り廃棄を減らす取り組みを行なっています。
この場合は再販による利益を得ることができませんが、それでもEC事業者にとっては商品の管理費用や処分費用が浮くため、非常にニーズの高いサービスとなっています。

Optoroを支える技術

Optoroを支える最大の技術は、前述のSmartDisposition®テクノロジーです。

SmartDisposition®テクノロジーには大量の商品情報を用いて学習させたAIが搭載されており、返品された商品をどのチャネルで販売すれば良いかをわずか数秒で判断することが可能です。

この他にも、倉庫で用いるスキャナーには画像認識AIが搭載されており、検品とデータベース化を同時に行うことができる点など、Optoroはロジスティクス企業でありながら高い技術力を有しています。

実際に、現CTOであるDouglas Bemis氏はUber AI Labs*のCTOを務めていた人物であり、その他にも精鋭エンジニアが多数Optoroに在籍しています。
*Uber AI Labs:Geometric IntelligenceをUberが買収して設立された人工知能の研究部門。自動運転技術の開発などを行う。

トラクション

Optoroの提携企業は、以下のような大規模ブランドから中・小規模のブランドまで多岐に渡ります。

参考:代表的なOptoroの提携ブランド

トラクション

日本市場

日本においても返品領域は盛り上がり始めており、前回の記事で紹介したReturnlyのような返品の受付業務を効率化するSaaS企業は日本でも登場しています。

しかし、Optoroのような在庫管理から再販まで返品の領域全般をカバーする企業はまだ現れていません。

この理由として、アメリカでは以前から返品された商品を取り扱う二次流通マーケットが盛んなのに対し、日本ではまだそういったマーケットが盛り上がっていないことが挙げられます。

というのも、初期のOptoroは最高値で販売できる二次流通マーケットを選定して出品するソリューションのみを手掛けており、そこから自社で倉庫を構えたり、運送業者と提携したりすることで現在のビジネスモデルに至るからです。

よって、日本でもまず初めに、返品された商品の二次流通マーケットを手掛ける企業が現れ、市場が盛り上がった後にOptoroのような企業が現れるのではないかと考えられます。

おわりに

今回はEC領域特化SaaS紹介の第三弾として、返品領域全般をカバーするOptoroを紹介しました。「返品された商品の再販を最適化する」という日本にはまだないコンセプトを持っており、日本の返品市場の今後の展開を考察するうえで重要な企業なのではないかと思いました。日本でもOptoroのような企業が現れるのか、それともアメリカには存在しないビジネスモデルの企業が登場するのか、これからもECの返品領域に注目していきたいです。

最後になりましたが、Angel BridgeはCVR・LTV向上を目的としたEC周辺サービスにも積極的に投資しています。 事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.04.09 COLUMN

Siiibo証券は社債に特化した唯一のネット証券会社です。企業情報の閲覧から社債の購入・管理まですべてオンラインで完結するプラットフォーム「Siiibo」を運営しています。
社債は決まった期間で一定の利息が入る金融商品で、企業が投資家から直接資金調達するための手段です。従来社債の発行には高いハードルがあり、実際に活用できる企業は限られていましたが、Siiibo証券は私募の仕組みを利用することでそのハードルを下げ、未上場企業を含む多くの企業が社債を発行できる環境を作り上げています。
では、Angel BridgeがSiiibo証券に投資する前にどのような検討を行ったかについてご紹介します。

サービス概要

まずSiiibo証券のサービス内容をご紹介します。
Siiibo証券は社債に特化したネット証券会社として、オンラインで簡単に社債を発行・購入できるプラットフォーム「Siiibo」を運営しています。「Siiibo」では発行企業と投資家の間に立ち、IR情報のやり取り、募集、入金、社債発行などを行うサービスを提供中です。 サービス概要 特にSiiibo証券が扱う社債は「少人数私募社債」というもので、広く一般に募集する公募債と異なり、募集先が50人未満に限られます。一方で発行企業、投資家の双方に様々なメリットをもたらします。 サービス概要

発行企業側の主なメリットとして以下の2点があります。

①短期間、低コストでの資金調達が可能
通常の公募社債の発行には格付機関による投資適格の格付けが一般に求められるほか、煩雑なドキュメンテーションが求められます。上場企業で管理部門が整った組織でない限り、現実的には社債を発行することは極めて困難でした。期間としても通常3-4か月程度の準備期間を要します。それに対してSiiibo証券では、私募の仕組みを活用することによって財務諸表の監査意見取得等を含む、数週間~1ヶ月程度の審査を通過すると募集可能となり、格段に低いコスト・業務負担で社債を発行することが可能です。
②調達手段の多角化
これまで社債を検討できなかった未上場企業もSiiibo証券を活用することで調達の手段を多角化することができます。スタートアップがなかなか銀行から融資が引けない中、社債発行というデット性の資金調達手段を得られることの意義は非常に大きいと言えます。
投資家側の主なメリットは以下の5点です

①”社債”という一般的でシンプルな商品
社債はシンプルで透明性の高い商品であるため、ソーシャルレンディングよりも充実した情報開示によって自ら投資判断をすることができます。また未上場企業などの、リスク・リターンの観点から魅力的な案件を見つけることが可能です。
②リターンが分離課税
Siiibo証券で得たリターンはソーシャルレンディングと異なり、総合課税ではなく分離課税になります。確定申告の対象外となり、特に高所得者層からは魅力的なポイントとなっています。
③分散投資に適切
株式はキャピタルゲインを主な目的としているのに対して、社債はインカムゲイン型であるため分散投資先として適しています。ポートフォリオに組み込むことで、より柔軟にリスク・リターンの比率調整が可能です。
④投資家保護の取り組み
Siiibo証券は第一種金融商品取引業者として登録の上、私募社債を取り扱っています。そのため、分別管理や投資者保護基金の加入といった、一種業者に義務付けられる倒産隔離の仕組みが導入されており、投資家を保護する取り組みがなされています。
⑤企業を直接応援できる
自ら社債の発行企業を選び、購入することは直接的にその企業を応援することにつながります。自分が共感する事業に取り組むスタートアップを直接応援できる機会は投資家にとって魅力となります。

これらのメリットが評価され、サービスローンチ以来、実際に株式会社Wells Partners、yup株式会社、五常・アンド・カンパニー株式会社、琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社、株式会社ツクルバ、Siiibo証券株式会社といった上場企業を含む6社の社債を発行しています(2022年3月25日時点)

マーケット

次にマーケットについて説明します。
資産運用サービスは昨今注目を集めていますが、ビジネス環境が整うまでには大きな変遷がありました。

2008年maneoにより、日本で初めてとなるソーシャルレンディングが個人融資を中心として開始され、企業融資への転換を経て、一躍成長ジャンルとして注目を集めました。しかし2014年になり、融資先保護のため借り手の詳細情報を隠す匿名化が義務化されたことで、不透明な資金使途の募集が可能になり、複数の会社が行政処分を受けることになりました。

2019年に融資先の匿名化が解除され、再び借り手の詳細情報を開示できるようになったことで、ソーシャルレンディング市場には融資先・資金使途を開示することを特徴として打ち出す透明性の高いプレーヤーが誕生しました。

資産運用サービス全般についてもビジネス環境が整備され、実際に2015年に会社設立後、一気に預かり資産を拡大して2020年に上場を果たしたWealthNaviをはじめとして数々のメガベンチャーが生まれています。

Siiibo証券の詳細な情報開示と高い透明性を重視した仕組みは以上の流れを汲んでおり、ユーザーのニーズにマッチしたものだと考えています。

競合

Siiibo証券の競合についてです。

最近では人々の資産運用意欲の高まりが明確なトレンドとなり、これまでになかった個人向け資産運用サービスが数々登場しました。これらのサービスは仕組みや投資対象によって以下のような棲み分けがなされています。 競合 新たな個人向け資産運用サービスには株式投資型クラウドファンディングやソーシャルレンディング、ロボアドバイザー等があり、それぞれに多くのプレーヤーが存在しています。一方で、私募社債についてはSiiibo証券が唯一のプレーヤーとなっています。

では、私募社債を扱う上での参入障壁にはどのようなものが挙げられるでしょうか。

私たちが考えた大きな障壁は、私募社債を運用するためのプラットフォームの構築です。
私募社債を扱うためには第一種金融商品取引業者としての登録が必要ですが、これはベンチャー企業にとって大きなハードルになります。その上、煩雑な社債発行手続きを簡便にするための仕組み作りには金融規制等に対する深い理解と工数が必要であるため、大企業であっても簡単には参入できないと予想しています。

さらに今後投資家と発行企業を集めることでプラットフォームバリューが高まり、一層の参入障壁を作ることができるのではないかと考えました。

経営陣

Angel BridgeがSiiibo証券に投資するにあたり、経営する皆様への理解を深めました。 経営陣 まず代表の小村氏は東京大学大学院工学系研究科を卒業後、ドイツ証券やBlackRockで社債の取り扱いを経験。「社債というシンプルな金融商品を世に広めたい」という想いから創業されました。

周囲の方々へのインタビューからは、小村氏が枠にとらわれない独自の発想と強い信念をもって本事業に取り組んでいることが分かりました。優良な人材を巻き込む力も強く、Siiibo証券には金融・コンサルタント・エンジニアの第一線で活躍してきた極めて優秀かつ業界知見のあるメンバーが集結しています。特に小村氏と宮崎COO、松澤CTOは大学院の同じ研究室出身であり、とても結束が強いチームです。

おわりに

最後にSiiibo証券の今後の展開について私たち想定していることをお話します。

ご紹介してきた通り、Siiibo証券は少人数私募に特化したサービスを提供していますが、このビジネスにはプロ私募や自己募集などの、より市場の大きい近接領域にも拡大していくポテンシャルがあると考えています。 おわりに 少人数私募では比較的信用力の高い企業と一般投資家をマッチングするために一定の審査・営業コストが必要ですが、プロ私募や自己募集では企業の信用力等の制限が緩和されるので、それらのコストが大きく軽減されることが見込めます。

Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援していきたいです事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.04.01 COLUMN

こんにちは!Angel Bridgeインターンの黒田です。

アメリカの未上場Fintech企業についての調査結果をシリーズ化して発信しています。

今回は第6弾として、子ども向けのデビットカードを提供し、金融教育を支援するGreenlightを紹介します。

Greenlight概要

Greenlightは2014年に連続起業家のJohnson CookとReachable創業者のTimothy Sheehanによって設立されました。2021年までに5回の資金調達を行っており、直近のシリーズDでは時価総額$2.3Bで$260Mを調達しています。リード投資家にはAndreessen Horowitzが入っており、大注目企業となっています。

Greenlight概要

Greenlightは子ども向けのデビットカード、口座アプリを提供しています。子どもはアプリ上でお金を使う、貯める、稼ぐ、投資することができます。親はこれらの行動を細かく管理できるようになっていて、子どもに家事を割り当ててお小遣いを渡したり、お金を使ったときに通知を受け取ったりすることができます。つまり、このアプリを通じて子どもに金融教育を行うことができるわけです。

サービス内容

アプリ内で子どもはお金を「使う」「貯める」「稼ぐ」「投資する」ことができます。
では、それぞれについて解説していきましょう。

①使う
子どもはデビットカードを用いてお店で商品を購入したり、ATMで現金を引き出したりできます。Apple PayとGoogle Payに支払い機能を追加することも可能です。このとき、使った金額の1%がボーナスとして還元されます。
また、親は子どもがお金を使う店舗や現金を引き出すATMを指定できる上、カードが使用されたときは通知を受け取れるようになっていて、過去の使用履歴もすべて確認することができます。
サービス内容
②稼ぐ
親は子どもに家事を割り当て、それに対する報酬金額を設定、送金できます。1回限りの家事や繰り返される家事など、さまざまな設定にカスタマイズすることが可能です。また、お小遣いを設定すると、毎月または毎週自動で子どものアカウントに送金されるので、親がわざわざATMに行く必要がありません。10代で仕事をしている子どもたちは、給料の受け取りをGreenlightのアカウントに設定することもできます。
サービス内容
③貯める
アプリ内で貯金の目標額を設定し、それに向けて貯金することができます。親は子どもの収益の中から何%を貯金に回すかを設定管理できます。また、貯金に対しての利子を設定し、実際に親のアカウントから子どもへ利子分のお金を送ることが可能です。
サービス内容
④投資する
このサービスは2021年に新しく始まったプラン「Greenlight Max」で利用できます。子どもはまず、アプリ内で投資について勉強し調査します。さらに親が承認すれば、実際に1株から株式を購入でき、その銘柄は4000以上になります。AppleやTesla, Amazonなどの銘柄が人気なようです。
サービス内容

これらの機能を通じて実際にお金を動かすことで、子どもは金融について様々なことを学べます。具体的には、節約して貯金することの大切さ、複利の偉大さ、投資する意義などです。また、アプリ内では金融についての動画やクイズなどの教育コンテンツも充実しており、そこでも金融についての知識を得ることができます。

サービス内容

親が細かく管理できることもGreenlightの特徴のひとつです。すべての機能において親は子どもの動向を細かくチェックできるようになっています。万が一カードを紛失してしまっても、カードを即座に止めたり、ATMの引き出しをブロックできたりするので安全性の面でも安心です。また、オンラインゲームサイトなど、あまり多くの金額を使うことが望ましくない特定のサービスでは、カードの利用を制限することもできます。

トラクション

2017年のサービスローンチ以来、5年間でアカウント数は450万、年間収益は$100M以上と素晴らしい成長速度です。月額料金はベーシックプランで$5/月、投資機能がついたGreenlight Maxプランは$9.98/月です。これは一家族分の料金で、子どもは5人まで使えます。送金や決済に手数料をかけるのではなく、アカウントごとの月額課金制なので収益が安定しています。

2020年10月にはJPモルガンとの提携が発表され「Chase First Banking」という子ども向けの銀行口座サービスがリリースされました。

競合

このようなサービスはうまく普及すれば、一つの世代をまるまる自分の金融プラットフォームに取り込めるため、リターンの大きいビジネスだと考えられます。そのため、アメリカ国内だけでなく各国にも同様のサービスを提供する企業は数多く存在します。アメリカ国内ではCurrent, Step, イギリスではgoHenry, RoosterMoney, Revolut, フランスではVybe, Pixpay, Xaalys, Kard, スペインではMitto, メキシコではMozperがいます。下にカオスマップとしてまとめました。

競合

日本市場

日本では、まだ子ども用に特化したファイナンスサービスはありません。この背景として、日本は子どもへの金融教育が諸外国に比べて遅れており、家庭でのお金の教育に関する意識も高くないことが考えられます。金融広報中央委員会の調査によると、金融教育の経験がある人の割合はアメリカ21%に対して日本は7.2%と1/3の低さとなっていて、金融に関する問題の正答率は30か国中22位と低い順位にあります(2020年調査時)。

日本では「お金=汚い」、「投資=危ない、怖い」というイメージが未だ根付いているために、金利が低い昨今でも預金が増え続け、株式や投資信託による資産は全体の15%に及ばないという状況です。

では、このような金融教育サービスは普及しないのかというとそうではないと考えられます。2019年に金融庁が「高齢社会における資産形成・管理」という報告書の中で「老後資金は2000万円不足する」と発表し、国内で大きな議論を呼びました。金融教育の重要性が認識され始め、2022年度からは高校の新指導要領に「資産形成」が追加されました。このような金融リテラシーが低い現状を打破しようという流れに乗ることができれば、金融教育サービスにもメガベンチャ―誕生の可能性があるのではないでしょうか。

おわりに

今回の記事では子ども用のデビットカードと口座アプリを提供するGreenlightを紹介しました。お金に関するすべての動きを網羅していて、サービスを通じて子どもが金融を学べるという素晴らしいサービスでした。日本と海外では金融教育事情が異なるものの、時代の流れから考えると十分に可能性のあるサービスなのではないかという結論でした。

最後になりましたが、Angel Bridgeは世の中を大きく変えるフィンテック企業に積極的に投資しています。 事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.04.01 COLUMN

今回は、SaaS事業者やEC事業者向けにRevenue Based Financing(以下RBF)を提供する株式会社Fivotへ投資した理由を解説します。

まずRBFとは資金調達を行った企業が投資家に対して、その売上高に応じて返済を行うという資金調達方法です。この手法によって企業は株式を希薄化することなく、またスピード感を持って資金調達を行うことができます。

RBFは先行投資が必要かつ、将来の売上高の見通しが立ちやすいSaaS企業やEC事業者が対象です。これらの企業が成長している現在、RBFの需要もますます大きくなると考えられます。そのような背景から、日本でRBFを提供する数少ないベンチャーの一つであるFivotに可能性を感じ、投資に至りました。

それではAngel BridgeがFivotに投資する際にどのような点を検討したのかについて、ご紹介します。

RBFとは ニーズと市場の成長

RBFとはどのような資金調達方法なのかについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
Angel Bridge USベンチャー研究#3資金調達プラットフォームを提供する「Pipe」の事例

簡単にいうと、RBFとは資金調達した企業が毎月の売上高から一定の割合で返済するという仕組みの資金調達方法です。

RBFとは ニーズと市場の成長

RBFでは従来の資金調達方法でベンチャー企業が感じていたペインを解決することができるため、強いニーズがあります。
(下の表を参照)

RBFとは ニーズと市場の成長

環境の変化もRBF市場の成長を加速させています。

まず、RBFの対象となるSaaS企業やEC事業者は増加しています。これらの企業の成長には先行投資が欠かせません。親和性の高いRBFの需要はこれらの企業の成長と共に今後さらに大きくなると予想されます。

また、RBFの特長のひとつとして資金調達までの速さがありますが、これには審査に必要なデータを取得する環境の整備が寄与しています。SquareやStripe, Shopifyなどの決済サービスの普及により、審査に必要な詳細な取引データやKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の取得が容易になったことでRBFが広がっています。

実際に海外ではRBF市場が大きく成長しています。複数のユニコーンが誕生し、2019年には市場規模は9億ドルでしたが、2027年には423億ドルに到達すると予想されています。

RBFとは ニーズと市場の成長

ビジネスモデル

Fivotはまず、RBFを提供するための原資として銀行からの融資を含めた複数のデットファイナンスに加え、現状はVCなどからエクイティ(株主資本)で調達した資金も原資として活用しています。将来的には、ファシリティファイナンスや債権の流動化を活用し、より大規模な流動性調達の手段を実行していくことを予定しています。

次に、調達した資金を原資として、将来の売上高を見通しやすいSaaS企業やEC企業に対してRBFを提供します。この時のRBFの金利と、Fivotの調達金利の差がFivotの利益となります。

ビジネスモデル

競合

日本でRBFを提供するプレイヤーはFivotのほかには1~2社のみです。この領域に先行する競合は存在しておらず、Fivotが先行優位を築くことができると考えています。

ただし近接領域として、既に発生している売掛債権を買い取ることで資金提供を行うファクタリングサービスが存在し、上場企業やスタートアップがひしめく熾烈な競合環境となっています。将来的にはこの領域のプレイヤーがRBF領域に進出してくることも想定されます。しかし、そもそもRBFの市場が大きいため複数社の共存が可能であり、さらに先行優位を築いておくことで一定のシェアを確保できると考えています。

経営陣

Angel BridgeがFivotに投資するにあたり、経営陣への理解を深めました。

代表の安部氏は一橋大学卒業後、メリルリンチ日本証券で経験を積んでいます。投資銀行部門の中でも金融セクターを担当しており、金融や規制に関する知識は深く、銀行を変革することへのパッションと事業領域との強いフィットを感じました。

CFOである佐保氏もメリルリンチ出身です。両者相互の信頼も厚く、性格的には相互補完的な面もあり、このチームなら最後まで事業をやりきることができるだろうと考えています。

また、その他のチームメンバーへのインタビューからもマネジメントの二人がチームに信頼されていること、マネジメント二人の間の信頼関係が強いことを確認することができました。メリルリンチ時代の同僚へのインタビューでは二人の前職での評価の高さ、コンビネーションの良さを確認できました。

経営陣

トラクション

トラクションとしては、すでに多数のRBF実施実績があり、対象企業にはSaaS, D2C企業が含まれていました。また、RBF利用の具体的な相談を受けている企業のパイプラインが大量に積みあがっており、RBFを提供する原資さえあれば急速に拡大できる状況でした。企業がRBFで借り入れる資金の使い道としては採用、商品の仕入れ、広告などが挙げられます。ベンチャー企業の先行投資資金として、RBFには強いニーズがあると考えられます。

おわりに

海外ではすでにポテンシャルが示されているRBFという事業領域、その事業領域とフィットしている経営陣など、Fivotにはメガベンチャーになる要素が詰まっていると考えています。

Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援していきたいです事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.03.24 INTERVIEW

新しい金融手法、RBF

Fivotはどのような事業を行っているのですか?

安部:Fivotは2つの事業を行っていて、法人向け、特にスタートアップに対してデットファイナンスを提供するFlex Capitalというサービスと、個人に対して積み立てにより欲しかったものを購入できるプリペイドカードを使ったサービス、IDAREを提供しています。

RBF (Revenue Based Financing) はどういったプロダクトなのですか?

安部:RBFは端的に言うと、将来発生する売上から支払いをしてもらうというスタイルです。分かりやすい例としては、手元の請求書を第三者に売却して現金を得る手法であるファクタリングというものがあるのですが、これの将来版と考えてください。

ファクタリングは売上が既に成立しているものを1-2か月前倒しで入金してもらえるサービスである一方、RBFでは、まだ売上が成立しておらず、これから発生するであろう将来債権を買い取るものになっています。過去を見ているファクタリングなのか将来を見ているRBFなのかという大きな違いがあります。

日本にFivotのような事業を行っている企業はありますか?

新しい金融手法、RBF

安部:個別にみると類似のサービスを行っている企業はあります。Flex Capitalについては、広くみるとVCや銀行も類似のサービスになりますし、スタートアップでも僕らと似たコンセプトでサービスを提供しようとしている会社もあります。

ただ、RBFは売上に完全に連動した新しいファイナンス手法になっているので、そこに限定していくとほとんど競合はいないのが現状です。欧州、欧米などではある程度確立されてきた手法なのですが、日本では当社が先駆者としてやっています。

IDAREに関しては、プリペイドカードに関連する事業をやっているところはたくさんありますが、残高を積み立てて「貯めること」にフォーカスしたプリペイドカードサービス、特に残高に対してポイントバックがされるのは日本でも当社だけです。

最終的には銀行を目指していく

安部さんがFivotを起業するまでの経緯を教えてください。

安部:私は元々メリルリンチ日本証券(現BofA証券)の投資銀行部門でM&Aのアドバイザリー業務や株式債券の引受業務をやっていて、特に金融法人グループで銀行や保険会社のお客様にサービス提供をしておりました。欧州だと2016年くらいからチャレンジャーバンクという新しいベンチャーが銀行免許をとって銀行サービスを始めることが流行っていたのですが、日本にはそのような流れが来ておらず、新規参入による業界のアップデートに可能性を感じていました。

既存の銀行ではどうしても過去のアセットやしがらみに縛られてしまう部分があるので、身軽にゼロから金融を考え直してサービスを作ることが出来れば、海外のチャレンジャーバンクに匹敵するような新しい金融サービスが作れるのではないかと考えました。新しい金融サービスを日本で自分の手で作りたいという気持ちで起業を決意しました。

河西:チャレンジャーバンクといえば、NuBankが上場して話題になりましたが、安部さんはどう見ていますか?

安部:すごいです、素晴らしいですよね。一方で、ブラジルだからできる部分も多いと思っています。既存の銀行インフラが日本に比べると整っておらず、金利も高く、マージンが取れる市場に対して、モバイルオンリーで個人が簡単に安く使えるサービスなので、こういうものができたらいいなと思いますが、日本だと同じモデルでは不可能と考えています。日本の銀行インフラは便利で整備も行き届いているので、単にモバイルで便利に使える新しい銀行では魅力が弱いと見ています。マーケットの違いはしっかり考えながらやっていかないといけないと思います。

河西:チャレンジャーバンクは色々な形がありますからね。日本だからこそのチャレンジャーバンクもあると思うので、RBFを皮切りに色々な形に広げていけたらいいですよね。

安部:べンチマークしているところにイギリスのOakNorthというチャレンジャーバンクがあるのですが、主に起業家や中小企業へのローンを提供していて、少し金利は高いですが凄いスピードで融資の意思決定をしています。データ処理にはAIを使っていますが、AIだけでなく優秀な人間の目でも判断していることを同時に売りにしています。我々も同様のモデルだと思うので、機械と人間のかけ合わせをきちんとやっていかないといけないなと思っています。

起業にあたり安部さんを突き動かしたものは何でしたか?

最終的には銀行を目指していく

安部:そうですね。アドバイザリー業務は第三者的な立場なので、「何かもっとできることがあるんじゃないか」と歯がゆさを感じていたんです。自分が意思決定者になって、自分が考える「これがあればもっとよくなる」というものを作れたら面白そうだなという気持ちでした。自分が中心に立ってサービスを作りたいという気持ちですね。

起業するにあたって悩みはなかったですか?

安部:悩みはなかったです。あまりリスクも感じていませんでした。万が一うまくいかなくても、得られた経験や能力を生かして新しいものを生み出せる可能性を考えると、むしろチャレンジしないリスクの方が大きいと思いました。

河西:フィンテックって他の分野に比べて起業するのが大変そうですが、不安にはならなかったですか?

安部:不安には思わなかったですね。起業する時はだれしも自信過剰になっている部分があると思うんです(笑)。今考えると当時の自信は実力に対して過剰であったなと思いますが、その時はそういった根拠のない自信がありました。

創業時はどのようなメンバー構成でしたか?

安部:創業時は私とCFOの佐保の2名でした。佐保は前職が一緒でして、一時期は一緒にFIG案件を担当していました。次のキャリアとして新しく金融を作ることを打ち明けた時に「ぜひ一緒にやりましょう」と言ってくれたんです。

河西:CTOの方と2名で起業というのは良く見かけますが、似たようなバックグラウンドで起業するというケースは珍しいようにも思えます。このような意思決定をしたのはなぜでしょうか?

安部:佐保はバックグラウンドは近いのですが、考え方は結構違いますね。僕はどちらかというと突き進むタイプで、佐保は一歩下がって客観的に物事を見て、冷静に意見をくれることが多いです。僕がアクセル、佐保がブレーキといった感じでうまく釣り合いが取れていて相性がいいと思ったのでこの2名で起業をすることにしました

その後、メンバーはどのように増やしていきましたか?

安部:2人ともプログラマーではないので、まずエンジニアを採用しようということになりました。フィンテックはお金を扱うのでプログラムのミスはあり得ません。システムが肝なんです。人づてなどで適した知見がある人を探していました。

そんな時に、とあるエンジニア向けの雑誌を読んでいると、フィンテックに関連する記事を寄稿しているエンジニアが目に留まりました。記事の書きぶりを見て、この人は信頼できるなと思いました。早速Facebookで名前を検索して、ものすごく長文のメッセージを送りました(笑)。そのとき彼は転職する気はないと言っていたのですが、ランチに誘ってひたすら口説き、無事Fivotにジョインしてくれることになりました。

シードラウンドの出資はどのようなVCから受けましたか?

安部:最初はEast Venturesから出資を受けました。次のラウンドでDeepcore、ANOBAKAに新しく入っていただきました。

Angel Bridgeとはどのように出会いましたか?

安部:初めはお問い合わせフォームからメッセージをいただいたのがきっかけです。当時別のVCをリード候補で進めようとしていたところでしたが、お話させてもらうことにしました。
もともとAngel Bridgeを知っていた訳ではないのですが、非常に仲が良い知人も出資を受けていたことが分かって、信頼できそうだなと感じました。話を重ねていく中で、特に河西さんにはスタートアップ向けのデッドファイナンスの将来性や必要性をすごく理解していただけました。投資までの意思決定もめちゃくちゃ早かったですね。この人たちと一緒だったらスピード感をもって進められそうだと思いましたね。

河西:初めてお話してから意思決定までどれくらいかかりましたっけ? すごく早く意思決定したのを覚えてます(笑)。

安部:2週間ぐらいですよ。本当に早くてびっくりしました(笑)。それだけこの事業に対して将来性を感じてくれているんだなと思って、すごく嬉しかったです。経営陣に対する期待も強く感じ、必ず成功させようと思いました。

河西さんは投資にあたってどのようなことを検討しましたか?

最終的には銀行を目指していく

河西:まずRBFというプロダクトがすごくいいなと思いました。ベンチャーがデッドを借りづらい状況の中で、将来発生するであろう売掛債権をディスカウントで買うというやり方があるのに驚きました。最近はStripe、Shopify経由など、売上のデータはいろんなやり方で連携できるので、そのデータをみて素早い意思決定ができるというようになって来ています。アメリカでは既に盛り上がっているので金融商品として定着しうるものであるという感覚を持ちました。ほとんどコンセプトと経営チームだけで意思決定しましたね。安部さん、佐保さん、この2人が真面目に命賭けてやるんだったらいっちょ賭けてみるかと!

河西さんが投資検討を進めていく中でよく覚えているエピソードはありますか?

河西:オフィスがベンチャーっぽくて、非常に好感度が高かったですね。外は古くても中がすごくきれいになっていて。

安部:外見はボロボロなんですが、中はリノベしてあったんですよね。ビルの外観だけみると取引先に驚かれることもあります。

Angel Bridgeからはこれまでどんな支援・取り組みがありましたか?

安部:いろいろご支援いただいていまして、継続的なところで言うと月次定例では毎回アドバイスをいただいています。採用面でも優秀な人材を紹介していただき、ありがたかったです。その中で一番プラスになっているのは、富裕層の方をご紹介いただいて、その方から資金面でのバックファイナンスを一部いただいていることですね。これは事業面の直接のインパクトがある支援なので本当にありがたいです。

Angel BridgeはどんなVCだと思いますか?

安部:支援の濃度が特に高いと感じています。VCによってサポートの方法は様々なのですが、Angel Bridgeさんにはゴルフに誘っていただくなどプライベート含めて密度濃くお世話になっていますね。先日のディナーもすごく盛り上がりましたよね(笑)。

河西:若干飲みすぎましたが楽しかったです(笑)。

最終的には銀行を目指していく

お金で未来の経済を救う

後輩起業家に伝えたい、起業にあたって気を付けるポイントはありますか?

安部:そうですね。反省点として挙げられるのは、あれもこれもやってみたいという気持ちがあったので方向性が定まらなかった時期があったことです。結果的には、仮説を持ってやってみたので少しやった段階でダメなことが分かったのは良かったですね。

ただ、もう少し仮説の数は最初から絞れたかなと思っています。一度に打つ仮説の数を思い切って減らした上で、じっくり1つ1つの検証を進めてもよかったかなと。具体的に言いますと、個人に対しての融資サービスやABL(Asset Based Lending:顧客の流動資産を担保として活用する金融手法)などもやっていたのですが、これらについてはプロダクトとしてのシャープネスをもっと磨くべきだったなと思います。構想段階で進めてしまうと労力含め大変でしたね。

結果論ではあると思います。やらないよりは良かったですが、絞り込みの段階でまだできることがあったなと思います。

Fivotをどんな会社にしていきたいですか?

安部:私たちは既存の金融機関では埋められていないスペースを埋めるための新しい金融を目指しています。そのスペースを埋めなければならないと考える理由として、そもそも金融はお金があれば成長できるのにお金が足りなくて成長できないところにお金を融通するためにあると思っています。特にベンチャーについては、現在はGDPに占める割合は微々たるものですが、今後の経済の新陳代謝や構造変化の中でその割合は増えることが予測されるので、今から資金を融通する仕組みを作っていかないと経済が滞ると感じています。
将来的にFivotがいたから経済が促進されて、色々なベンチャーや成長企業が生まれたと思ってもらえたら本望ですね。

何を社会に届けたいですか?

安部:直接的に社会に何を届けるかと言えばお金になると思うのですが、これを必要な企業に届けることで企業が成長して、消費者に付加価値がより大きく届けられるという循環を実現したいですね。社会の成長を助けることにつながるのではないかと思います。

2022.03.17 INTERVIEW

タグの自動登録で商品を発見されやすく

LISUTOはどのような事業を行っているのですか?

プラテック:我々はAIを使って、ECモールにおける消費者の商品の発見しやすさを自動的に大幅に改善できるソリューションを提供しています。商品のテキスト情報はEC事業者がフリーテキストで自由に作っていますが、そこからAIが商品の属性などを自動的に抽出し、サイトの絞り込み検索のためのタグ情報と自動的に紐づけています。

まず商品の検索方法には、キーワードで検索するパターンと、サイト側から提案された商品の絞り込み(カテゴリー、色、サイズなど)に沿って検索する2種類があります。そして、ECでのショッピングの割合がPCからスマホに移行し画面のスペースが狭くなっている中、文字の入力が面倒なので入力は最低限にし、どんどん条件を絞り商品を見つけたいというニーズが高まっています。

一方で、ECモールには必ず絞り込み検索の機能がありますが、例えばTシャツの色/ネックの形/素材/色/サイズをフリーテキストで書いて検索した商品数と、絞り込み検索のタグで絞り込んだ場合の商品数を比べると、実は絞り込み検索ではフリーテキストで検索した場合の約30%しか商品が出てこないのです。要するに、商品情報の中にはちゃんと情報が入っているのにも関わらず、タグ付けをしていないので7割は絞り込み検索では商品が出てこないということです。リアルのショップでいうと、裏の倉庫にモノがあるのに、ディスプレイされていないのでお客さんはその商品がお店にあるのかないのか分からない状態です。これと同じことがECモールの商品の7割に起こっているのです。

タグの自動登録で商品を発見されやすく

ニーズは高いのになぜ3割しかタグ付けがされていないかというと、単純にタグ付けが非常に大変な作業だからです。ECサイトごとに独自の商品の構造やカテゴリーごとの属性の構造があり、それに対して紐づけを手動でやろうとするとかなりの時間と人力が必要です。そのためなかなかタグ付けまで手が回らないというのが現状としてあります。

そこで、私たちはこの問題を解決するためにAIで完全自動でタグ付けができるサービスを開発しています。例えば100時間かかる作業が1分で終わってしまうぐらいのレベルなので、人力の問題が一気に無くなります。非常にインパクトのあるソリューションだと思っています。

他にLISUTOのような自動タグ付け事業を行っている企業はあるのでしょうか?

プラテック:自動タグ付けをどんなサイトでも使えるシステムとして提供している会社は、私が知る限りLISUTOが日本初であり世界初です。ただ、我々は商品のテキスト情報に注目していますが、画像から商品の情報を抽出して絞り込み検索に使えるようにしているサービスはいくつかあります。

画像の情報からタグを付けるのと、テキストの情報からタグを付けるのは何が違うのですか?

プラテック:まず商品情報のほとんどはテキストの情報にあります。サイズや素材など、写真だけ見てもわからない情報が沢山あり、ファッションに限らず電気製品も写真だけだと違いが分かりません。そのためテキストのほうがタグ付けに対応でき、画像よりはるかにマーケットが大きいのです。また画像はデータが重いですし、技術的にもテキストの方が効率よくできます。LISUTOは画像の情報からタグを付ける技術も実は持っていますが、まずはテキスト情報からのタグ付けに注力しています。

テキスト情報からタグを付ける方が難しいのですか?

プラテック:画像は言語関係なく抽出できますが、テキストからタグを付ける場合はまず言語の分析から始まり、言語から単語を抽出し、それをAIでラーニングさせ構造データと紐づけるというプロセスが必要です。この技術は画像の情報からタグを付けるよりもはるかに難しいです。

タグの自動登録で商品を発見されやすく

また、私たちはその中でも難易度の高い日本語からスタートしています。英語やヨーロッパ言語は単語が分かれているのですが、日本語は単語がつながっており漢字とひらがなもあるので、まずテキストを単語ごとに分けていく必要があり更にハードルが高いです。私たちはこの一番難しい日本語からチャレンジしています。

なぜLISUTOはこのような難しい技術を実現できているのでしょうか?

プラテック:LISUTOは日本のベンチャーですが、私たちの開発の舞台はイスラエルにあります。私はもともと国籍がイスラエルですし、共同創業者のパベルはLISUTOのイスラエルオフィスを統括しています。パベルはもともと世界初の価格比較サイトであるShopping.comのカタログを作っていたシニアマネージャーであり、商品の構造のスーパーエキスパートです。その後Shopping.comがeBayに買収され、eBayがイスラエルに商品のカタログセンターを作った時もパベルが一から立ち上げを担っていました。商品の構造の仕組み等について、彼ほど優れた人は世界に数人しかいないと思います。

ではどこにLISUTOのアドバンテージがあるのかと言いますと、ただテキストデータを抽出するだけであれば広い範囲で色々な会社があると思いますが、我々は各サイトの属性の構造を分析し、かつそれをAIとコンビネーションするところに他の会社が真似できないレベルのノウハウの蓄積があり、具体的なコードに対する紐づけまで出来てしまう点が強みだと考えています。

イスラエルのベンチャーエコシステムを日本へ

なぜ起業をしようと思ったのですか?

プラテック:私はもともとエンジェル投資をしており、その後1990年代後半にVCを設立しました。その時に感じたこととしては、投資も面白いですが、創業者は自分の意志が強いので投資家としてアドバイスをしても結局は創業者の想いの方向に事業は進んで行くということでした。そういった背景から、自分のアイデアで自分自身で事業をしたいという想いが高まりました。

ちょうど私が起業した時は世界中にインターネットが普及し、EC市場が大きくなり始めた時期だったので、ECのポテンシャルをとても感じていました。私は元々日本生まれなので日本への想いが強く、またイスラエルのベンチャーエコシステムを見ている中でこれと同じことを日本でもやりたいなと思い、起業家としてECのサービスを日本で作ろうと強く決心しました。

なぜAIタッガーの事業をやろうと思ったのですか?

プラテック:私はイスラエル人ですが、もともと日本でドメスティックなECの事業をやっていました。そんなある日、eBayという海外向けに商品を出品するサービスからのアプローチがありました。その時、自動的に日本語のデータを構造化し多言語に変換することで、日本語で出品したものを海外向けに販売できるようなソリューションを開発したところ、沢山の商品が海外で売れ始めたんですね。そこでこのソリューションをEC事業者の方に提供するのが良さそうだと思い、LISUTOを設立するきっかけとなりました。そこからビジネスを始めたのですが、やっているうちに分かったことが2つあります。

イスラエルのベンチャーエコシステムを日本へ

1つ目としては、EC事業者の方は皆さん越境ECに興味を持ち始めてはいたものの、やはりまずは日本の目の前のモールの販売がすごく重要で、越境ECもやりたいがまだ手を出せていない状態であるということです。既に国内向けに在庫の管理や出品のシステムを導入しているなかで、海外向けの別のシステムを更に連携させるというのが実はすごくハードルが高く、商談がすぐ決まらないということが分かりました。ベンチャーにとって商談がすぐ決まらないというのは非常に辛かったですね。

しかし同時に分かったこととしては、日本のモールではタグ付けに非常に大きなペインがあり、かつ私たちの技術をそのまま応用できるということです。日本のドメスティックなEC事業者の多数がタグ付けに興味を持っていたので、AIタッガーのようなサービスを開発すればすぐに利用してもらえるということに気づきました。また、今はまだ日本国内でのみサービス展開していますが、eBayのような世界中のどのモールでもそのモール中でタグ付けのニーズがあるので、グローバルのどのEC事業者もターゲットになります。そこで越境ECのサービスからPivotし、現在のAIタッガーの事業に行きついたのです。

グローバルで戦うチームとして

シリーズAまでの出資はどのようなVCや事業会社から調達を受けたのですか?

プラテック:LISUTO設立の段階から、銀行系のファンドや物流会社、倉庫会社の方から出資をいただいていました。また去年佐川急便様と業務提携させていただき、一気にお客様を紹介していただく仕組みを作りました。

なぜAngel Bridgeから投資を受けようと思ったのですか?

プラテック:私は海外のVCを経験していますが、Angel Bridgeはメンバーの方々が優秀で、かつ外資系ファーム経験者やバイリンガルの方が多いため、今後グローバル展開した時も海外の投資家とのコミュニケーションが円滑に取れ、また考え方もグローバルなので海外展開における良いパートナーであると感じました。

なぜLISUTOに投資しようと思ったのですか?

河西:まず我々はLISUTOに出資をする前から、BNPLのようなECのCVRを上げるサービスが非常に面白いと思っていました。またその中でもAIタッガーはペインに対してちゃんと答えているなと思いましたし、この経営陣なら日本発かつ世界初のベンチャーとしてグローバルに戦っていけるのではないかと強く感じました。

グローバルで戦うチームとして

また、プラテックさんが日本語ペラペラなのも驚きました(笑)。お話を聞いてみると、日本で生まれて10歳まで日本で育ち、その後イスラエルに帰ったけれども日本が好きだという話があって、そこまでプラテックさんが日本に思い入れがあるというのがすごく嬉しかったですし、日本に拠点を持っているというのもすごく納得感がありました。

資金調達後にAngel Bridgeとどんな取り組みをしましたか?

プラテック:毎月定例の取締会にご参加いただきながらも、それとは関係なく色々と密にミーティングし、会社の課題や方向性に関してディスカッションをさせていただいていて、期待していた通りのコミュニケーションができているなと感じています。また次の資金調達に関しても、一緒にお話しさせていただきながら進めています。

ニーズの強さとハードルの低さ

越境ECのサービスもかなり作りこんでいらっしゃったので、Pivotするにはとても勇気が必要だったと思いますがどのように決断されたのでしょうか?

ニーズの強さとハードルの低さ

プラテック:越境ECのサービスでやっていたこと自体は間違っていなくて、ただ時期が早かったんだと思っています。私は起業家を何回もやっているので、自分のアイデアがマーケットより早かったケースを何度も経験しています。マーケットより早すぎるのは非常にベンチャーにとって危険なのです。今のままの事業を今のままの計画で続けるのか、それとも同じコア技術を使った3倍の速さで伸ばしていける別の商品を開発するかを何回も合理的に考えた結果、後者の方が現在はニーズが強くすぐに売上が伸びるためPivotしたというのが現実です。

河西:現在のAIタッガーの事業をリリースしてみて、ニーズがやはり強かったというのが決め手になったのでしょうか? 実際今は佐川急便さん含め全社的に取り組み売上も順調に伸びているということで、その決断は正しかったのだと思います。

プラテック:1つ目と2つ目の商品の違いは、1つ目はEC事業者の反応がとても良かったとしても契約にはなかなか繋がりませんでしたが、2つ目は商談してから平均2週間で契約がスタートしていたことです。当日契約がスタートする場合もありましたし、やはりニーズが強くてハードルが低いというこの組み合わせが大事なのだと気づきました。

世界のEC事業者が使えるサービスへ

LISUTOをどんな会社にしていきたいですか?

プラテック:個人的には、私の国籍との組み合わせでLISUTOを日本発のグローバルな会社にするというのが一つの夢です。これからグローバル展開をして世界中のEC事業者が使うサービスになる可能性は十分あると思いますので、世界中のECの販売をお手伝いできるようになることを目指したいです。

私がECを始めたときはまだPCしかなかった時代でしたが、そんな時代から今はスマホの時代になって、5Gが出てきて、誰でもECができる時代へとどんどん変わってきました。また今後更にメタバースなどの新しい変化が訪れ、まだまだECは変わっていくと思っています。文字での検索や画像での検索等色々な検索方法がでてきていますが、どんな場合でも商品の情報と構造は変わらないんです。メタバースで商品を買っても商品は商品で、その情報は変わらない。そうなると商品の発見というニーズは必ずあるわけなので、それに対して我々の技術を発展させ、世界ナンバーワンのプレイヤーになりたいと思っています。

LISUTOの事業を通して何を社会に届けたいですか?

プラテック:コロナ禍になって経済や社会を支えてきた一つの分野はやはりECですよね。どんなに状況が悪くて家から出られなくても、食べ物など必要なものをECで家に届けることが世界中でできている。インターネットとECがなかったらこのパンデミックは今の何百倍も大変だったと思います。ECは絶対必要である上で、それを更に簡単に出来るようにすることが皆さんのQOLの向上に繋がっており、社会にも貢献出来ているのかなと思います。

河西:インターネット領域で日本発の技術が世界に進出した例ってあんまりないじゃないですか。LISUTOの技術であればそれを達成できると思っています。

2022.03.11 COLUMN

こんにちは! Angel Bridgeインターンの山田と申します。
前回はアメリカのEC領域特化SaaS紹介の第1弾として延長保証をAPIで提供するExtendについて紹介しました。
今回は第2弾として、EC事業者に対して返品効率化SaaSを提供するReturnlyを紹介します。

EC事業者に対して返品効率化SaaSを提供する「Returnly」の事例 参考:EC×APIサービスの全体像

Returnly概要

Returnlyは2014年にEduardo Vilarによって設立されました。2020年までに3回の資金調達を行なっており、合計調達額は$30Mです。

そして、2021年4月にBNPLのトップ企業であるAffirmによって$300Mで買収されました。

Returnlyの最大の特徴は、返品が完了する前に顧客にストアクレジット(購入ECサイトでのみ使えるポイント)を前払いで提供し、同時に類似商品のレコメンドをすることで、返品を介してEC事業者に追加の収益をもたらすことができる点です。

Returnly概要

続いてReturnlyのビジネスモデルについて説明します。

Returnlyは配送業者と提携し、消費者からの返品申請を処理するプラットフォームをAPIとしてEC事業者に提供します。

Returnly概要

マネタイズはAPIの使用料と、返品される商品の金額に応じた手数料で行なっています。

補足として、消費者がストアクレジットを用いて商品を購入した場合はReturnlyがストアクレジット分の代金をEC事業者に支払います。ストアクレジットを超える分の代金は消費者が支払う必要があります。

返品が注目される背景

①アメリカの返品率の高さ
Forbesの調査によれば、アメリカのEC小売業の返品率は25- 40%が標準となっており2020年の返品額は$500B(約60兆円)に上ると言われています。
日本の平均返品率は5%程度なので、その分アメリカ企業では返品の業務負担が大きくなっており効率化が求められています。
※Forbes「Many Unhappy Returns: E-commerce’s Achilles Heel」より
②LTV・CVR向上のための施策としての返品
アメリカにおいて顧客は頻繁に返品を行うため、快適な返品体験を顧客に提供することができればLTV向上につながります。
また、フェデックスの調査では返送料無料の返品を実施することでECサイトのCVRが平均1%向上するという結果も出ています。
これらの事実より、返品をECにおけるCVR・LTV向上のための施策と捉える企業が増加しています。

解決しているペイン

①EC事業者側のペイン
返品業務は工数が多く、返品完了までに多くの時間・人手がかかってしまいます。
EC事業者側のペイン
②消費者のペイン
上記の返品業務の手間によって、消費者が商品を返品してから商品の代金が支払われるまでに最大で2~3週間もかかってしまいます。

サービス内容

上記の返品業務にまつわる問題を解決し、顧客に快適な返品体験を提供するためにReturnlyは以下のようなサービスを提供しています。

<事業者に対する機能>

先程紹介した返品業務フローのうちReturnlyが効率化する部分は以下のようになります。

サービス内容

以下それぞれの機能を詳しく見ていきます。

A. 返品申請の自動処理
従来はカスタマーサポート部門が顧客から送られてくる返品申請のフォームと自社の返品ポリシーとを照らし合わせ、返品申請を許可または却下するかを決めていました。
しかし、Returnlyは顧客からの返品申請を自動で処理することができるので業務を大きく減らすことができます。
B. 在庫管理(検品・再販以外)
EC事業者の倉庫のデータベースとReturnlyを連携することで、Returnlyを用いて返品された商品のIDや配送ステータス、検品結果などをReturnly上で一括管理することが可能です。尚、返品された商品の検品や再販などはEC事業者側で行う必要があります。
C. 返金の自動処理
返品申請が承認されるとReturnlyが消費者にストアクレジットを付与してくれるため、返金業務の負担が無くなります。

<消費者に対する機能>

①スムーズな返品申請
消費者はECサイト上に埋め込まれたReturnlyの返品ページから返品申請を行うことが可
能です。過去の購入履歴から商品を選択し、返品理由や商品の状態などいくつかの項目を
記載するだけですぐに完了します。
スムーズな返品申請
参考:返品理由を選ぶ画面
②ストアクレジットの即時付与
返品が承認された場合、返品した商品の代金分のストアクレジットが即座に付与されます。ちなみに、返品申請から承認・ストアクレジット付与までは最短24時間以内に完了します。
そして、消費者はストアクレジットを使用してすぐに新しい商品を買うことが可能です。
スムーズな返品申請
参考:返品承認と同時にストアクレジットで新しい商品を注文する場面
③返品・購入した商品の追跡
返品申請が許可されると、Returnlyと提携している配送業社をECサイト内で手配することが可能です。そして、返品した商品及び上記のストアクレジットで購入した商品の配送状況をECサイト内で確認することもできます。

トラクション

2019年時点でのReturnlyの発表によれば、消費者の90%がストアクレジットを受け取った際に同じECサイトで新しい商品を購入しており、購入した商品の金額は返品した商品の金額に比べて23%ほど高い傾向があったとのことです。

また、提携ブランドはD2Cブランドが中心で200社以上と提携しています。

トラクション 参考:代表的な提携ブランド

API接続できるECプラットフォームはShopifyのみで、その他複数の運送会社や3PL(サードパーティー・ロジスティクス)企業と提携して配送の効率化を実現しています。

トラクション 参考:提携運送会社
トラクション 提携3PL企業
荷主企業や運送会社に代わって効率的な物流戦略や物流システムの構築などを提案し、荷主企業のロジスティクス全体を包括的に請け負う企業のこと

日本市場

日本でのECにおける返品率は5%程度でアメリカの25~45%に比べてかなり低くなっています。この数字の低さは日本人の性質というよりも、返品ポリシーが厳しい企業や、そもそもECで購入した商品の返品を受けつけていない企業が多いためだと思われます。

しかし、2016年からAmazonが出品者に対して返品無料を義務付けていることや、ZARAをはじめ返品無料ポリシーを掲げている海外企業が日本に進出していることから、国内企業でも返品を無料化し、快適な返品体験を顧客に提供することでCVR・LTV向上につなげる動きが生まれつつあります。

そうした背景から、日本でも既に数社が返品効率化SaaSを提供しており、今後更に返品領域は盛り上がっていくのではないかと考えられます。

おわりに

今回はEC領域特化SaaS紹介の第二弾として返品効率化SaaSを手がけるReturnlyを紹介しました。返品を効率化することで顧客のLTV向上を目指すことはもちろん、返品完了前に返金を行うことで、返品を通じて追加の収益を発生させることのできる面白いビジネスモデルだと思いました。また、Returnly自身は返品された商品の検品や再販の効率化は行いませんが、Optoroという企業と提携することで検品や再販の効率化も行っています。

ここで登場したOptoroは、返品された商品の在庫管理から再販まで全てを行う、ネクストユニコーンと称される注目企業です。次回の記事はOptoroについて紹介したいと思います。

最後になりましたが、Angel BridgeはCVR・LTV向上を目的としたEC周辺サービスにも積極的に投資しています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.03.04 TEAM

理想の未来に向けて挑戦を続ける

理想の未来に向けて挑戦を続ける

三好さんは毎日どのようなタイムスケジュールで過ごしているのですか?

現在はキャピタリストの仕事の全体感を掴むために、投資検討や既存投資先のハンズオンに大半の時間を使っています。投資検討やハンズオンの経験を通じて、ベンチャー企業経営に対する理解がより一層深まっていると実感しています。他には、Angel Bridgeの体制構築にも時間を使っています。まだ入社間もなくフレッシュな視点を持っていることを生かして、取り入れるべき新しい制度や今後の戦略について提案しています。今後はVCやCVC、起業家の方とのネットワーク構築にも積極的に時間を使っていきたいと考えています。

Angel Bridge入社前はどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?

慶應義塾大学経済学部を卒業後、JR西日本で約4年半、Bain&Companyで約2年、キャリアを積んだ後にAngel Bridgeに入社しました。
JR西日本では、最初の2年間で広島駅員、新卒採用、用地管理等を経験しました。2年目の時に社内事業アイデア公募制度に提案したCVCの立ち上げに関するアイデアが最優秀賞を受賞したことをきっかけに、新規事業創出を行うビジネスプロデュース部に異動しました。その後、JR西日本のCVCであるJR西日本イノベーションズへの出向という形で、創設時初期メンバーとしてソーシングからハンズオンまで担当者として一貫して担当していました。
Bain&Companyでは、金融業界や小売業界、家電業界等の様々な業界に対して、コスト削減、収支構造改革、ビジネスDD、等のプロジェクトを経験しました。毎回異なる業界/テーマのプロジェクトでキャッチアップが大変な部分もありましたが、その分新しい学びがあって常に成長出来る環境でした。

なぜ新卒でJR西日本に入社しようと思ったのですか?

JR西日本への入社を決めた理由は大きく2つあります。
1つ目の理由は、日本発のビジネスを創出したかったためです。日本は過疎化や高齢化等の社会課題に他国よりも早く直面している課題先進国ですが、これをチャンスと捉えて、世界に先んじて社会課題を解決するビジネスを創出すれば、世界経済における日本のプレゼンスを向上させることが出来るのではないか、と考えていました。私の入社当時、JR西日本は沿線価値向上や鉄道事業に次ぐ新たな収益源を創出するために新規事業に注力し始めており、意欲さえあれば若手であってもチャンスをつかんで挑戦できる環境がありました。1日当たり500万人の利用客や地域ネットワーク等のJR西日本が持つアセットを有効活用して新規事業を創出したい、という意気込みで入社を決めたことを今でも覚えています。
2つ目の理由は、自分に向いている領域を見つけるのに良い環境であると考えたためです。JR西日本は鉄道事業を主軸にホテルや百貨店、金融等の人々の生活に関わる様々な関連事業に着手していました。まずは、特定の領域に絞らずに自分の視野を広げて興味や適性がある領域を特定していきたいと考えていたため、事業のすそ野が広いJR西日本は魅力的でした。

なぜBain&Companyに転職しようと思ったのですか?

まず、コンサル業界に転職しようと考えた理由は大きく2つあります。
1つ目の理由は、経営課題の解決を通じて企業の成長を支えたいと思ったためです。JR西日本ではグループ会社含めて様々な企業との出会いがありましたが、社会や人々のためになりたいという強い想いや優れた技術/アイデアがあるにも関わらず、思うように成長出来ていない企業がたくさん存在している事を改めて認識しました。経営課題解決のプロフェッショナルとなって、企業が本来持つフルポテンシャルを最大限引き出して成長を支えたいと徐々に思うようになり、コンサルに魅力を感じるようになりました。
2つ目の理由は、コンフォートゾーンから抜け出して成長したいと考えたためです。JR西日本で新規事業開発やハンズオン支援等を行っていましたが、やりたい事とできる事のギャップが大きく、自分のビジネススキルが圧倒的に足りないと感じていました。JR西日本は自分にとって居心地が良い環境だったのですが、それ故に甘えもあると思い、コンサルのような厳しい世界に身を置いて徹底的にマインドセット改革/スキルギャップの解消を行う必要があると考えました。

次に、コンサルの中でもBain&Companyに入社することを選んだ理由は大きく2つあります。
1つ目の理由は、Bain&Companyの価値観や働いている社員に魅力を感じたためです。多彩で優秀な仲間達と根底で価値観を共有しながら働くことが出来るのは理想的な環境だと思いました。
2つ目の理由は、成長環境が整っていると感じたためです。Bain&Companyには、「A Bainie never lets another Bainie fail」という助け合いのカルチャーやPD Chatという制度が確立しており、成長へのコミットメントが高いと感じました。コンサル業界は未経験の中途入社が成果を出すのが難しい世界という話を聞いていたので、なるべくオンボーディングしやすい風土がある会社が良いと考えていました。

Bain&Companyでの経験はVCの業務にどう活きていますか?

投資検討やハンズオン支援等、VCの業務の至る所で活きています。
投資検討における、市場構造や競争環境等のアウトサイドインでの調査、業界知見者へのインタビュー等は、DDのプロジェクトに似ています。また、ハンズオン支援のアプローチはまさしくコンサルティング業務といえると思います。キークエスチョンを特定して、仮説を構築して検証していく、という一連のアプローチはスタートアップに対するハンズオン支援でも共通しています。むしろ限られたリソースの中でスピードが求められるため、スタートアップへの支援は論点をクリアにしてアクションに落としこむことがより一層求められているかと思います。

コンサルを経験して良かったと思うことはありますか?

まず、プロフェッショナルとして働く上での基礎となる土台ができた気がします。ソフト/ハードスキルといったスキル面での学びも大きいですが、特にマインドセットが醸成されたのも大きいですね。マインドセットは机上では学べない要素で、厳しい環境で働くうちに身に刻まれました。
あとは、様々な視点が身についたのも良かったです。あの人だったら何て言うだろう。どこか見落としている部分はないか。等、自分の頭の中に上司が出来た感じです。Angel Bridgeでの仕事でも頭の中の仮想上司に助けられています(笑)。

三好さんはなぜVCに転職しようと思ったのですか?

スタートアップ環境の発展を通じて日本経済の停滞感を打破したいと考えたからです。
平成元年の世界時価総額ランキングでは50位以内に日本企業が32社ランクインしていたのに対して、平成30年の世界時価総額ランキングでは50位以内に日本企業はトヨタ1社のみ。入れ替わってランクインしたのはGAFAをはじめとする企業で、日本が世界経済に遅れを取っていることは明らかです。現在はまだ世界第3位の経済大国に位置していますが、経済成長の勢いは衰えており、中長期的には他国に追い抜かれていくのではないかと危機感を覚えています。
将来の日本経済を牽引していく主役はスタートアップだと考えていますが、現在のスタートアップを取り巻く環境は世界で戦える程の成熟度は持っていません。実際に、世界では1,000社を超える多数のユニコーン企業が生まれていますが、日本のユニコーン企業は数えるほどしか生まれていません。世界と戦えるレベルに日本のスタートアップ環境を発展させていくためのカギとなるのがリスクマネーを提供して、成長支援を行っていくVCだと考えて、転職をすることにしました。

起業家のフルポテンシャルを実現したい

起業家のフルポテンシャルを実現したい

なぜ数あるVCの中からAngel Bridgeに決めたのですか?

最終的に入社を決めた理由は大きく3つあります。
1つ目の理由は、ミッション・ビジョン・バリュー等の企業哲学/文化が自分の価値観と重なったからです。日本からメガベンチャーを生み出すという力強いメッセージに共感しました。実際に全投資メンバーが根底に同じ価値観を持っていて徹底されたカルチャーがあると感じました。
2つ目の理由は、Angel Bridgeがこれから組織を大きくしていく段階で、組織構築という貴重な機会に携わることが出来るためです。JR西日本イノベーションズでも組織立ち上げの際に大きな学びがあり、このタイミングで入社するのはこれ以上ない良い機会だと考えました。
3つ目の理由は、最適な成長環境があると感じたためです。これまで自分が成長できていた環境を振り返ると素晴らしい人達に囲まれる環境がありました。Angel Bridgeはプロフェッショナルバックグラウンドを持ったメンバーで構成されており、切磋琢磨する中で多くのことが学べると考えました。

Angel Bridge入社後は具体的にどういった支援をしましたか?

いくつか支援をさせていただいていますが、具体例としてスキャン・エックス株式会社株式会社BluAgeを挙げて説明します。
スキャン・エックス株式会社には、SaaS事業の新たなサービスプラン設計やプライシングに関する支援を実施しました。他社事例の調査、サーベイ設計/分析等を行って、顧客から求められている機能や顧客の受容価格帯等を分析し、サービスプランやプライシングに関する提案をしました。
株式会社BluAgeには、Canary Cloudの営業体制構築、CS体制構築に関する支援等を実施しました。他社事例調査、営業社員へのインタビュー、顧客データ分析等を通じて課題を特定し、ヘルススコアの設計や営業資料の改定等に関する提案、実行支援をしました。
どちらの支援についてもAngel Bridgeに入社してすぐに取り組んだのですが、コンサルティングでの経験が活きたと思います。

Angel Bridgeのパートナー陣は三好さんにとってどのような存在ですか?

「獅子はわが子を千尋の谷に落とす」ということわざがありますが、お二人(河西)とも親ライオンみたいな感じですね。やってみな、と背中を押しつつ、見守ってもくれる。そんな素晴らしい方ですね。非常に面倒見がよく、リーダーシップに溢れています。
河西と林は強みにしている分野が異なっていて補完関係にあるのも良いですね。河西が事業計画の精査や分析、ファイナンス面の支援を行う一方で、林はネットワークを駆使して業界知見者へのヒアリングや顧客先や提携先のご紹介実行する、といった形で、良いタッグが組めていると思います。お互いをリスペクトしているのがヒシヒシと伝わってくるので、雰囲気も良く一緒に働きやすいです。

Angel Bridgeに入社して良かったと思うことはありますか?

何個も思い浮かんでくるので、難しい質問ですね(笑)。3つに絞って紹介すると、1つ目はアットホームな雰囲気、2つ目は徹底したハンズオン支援、3つ目は成長環境でしょうか。
1つ目について、Angel Bridgeは社内イベントも多く、フラットな関係性が築かれています。合宿へ行ってAngel Bridgeの中長期戦略についてみっちりと議論をしたり、月1-2回程の頻度でランチ会を行ったり、週末にはゴルフに行ったりもしています。最近はゴルフ部が立ち上がり、今後は投資先等も交えて積極的に活動していく予定です。
2つ目について、投資先との信頼関係が構築出来ている理由はひとえにこれまでに徹底したハンズオン支援によって実績を積み重ねてきたためだと考えています。手前味噌にはなりますが、Angel Bridgeほど入り込んでハンズオン支援をする会社は、そこまで多くないのではないでしょうか。投資先がフルポテンシャルを発揮できるように支援するのは、簡単な事ではありませんが、その分達成感や学びも多いです。
3つ目について、先ほど入社理由で話した通り、Angel Bridgeはプロフェッショナルバックグラウンドを持つメンバーで構成されており、学びの多い環境になっています。まだ組織の規模も小さいこともあり、1人1人が行う仕事内容が入社前に想定していた以上に多岐に渡っていて、VCでありながらベンチャー感を感じられる場面が多くあります。

今後どんな人と一緒に働いていきたいですか?

まずは当たり前な部分でもありますが、Angel Bridgeのミッション・ビジョン・バリューに共感する方ですね。少人数の組織ということもあって、同じ方向性を向いて一緒に仕事が出来るかどうかは重要だと思っています。
あとは、素直な心を持った誠実な方ですね。オープンに他の人の意見も取捨選択しながら受け入れられる素直な心を持っている人とは、建設的な議論を通じて一緒に最適解を導き出すことが出来ると考えています。また、キャピタリストはLP投資家からお預かりしたお金をベンチャー企業に投資してリターンを出すことで成り立っている職業で、LP投資家や投資先等のステークホルダーとの信頼関係が不可欠なため、何事にも誠実に向き合うことが出来る人が向いていると考えています。

社会への感謝と恩返しを忘れず、より良い社会を目指して

社会への感謝と恩返しを忘れず、より良い社会を目指して

今後Angel Bridgeで働きながらどんなことを叶えていきたいですか?

ベンチャー企業への投資を通じて、人々のライフスタイルや価値観等が今よりも豊かで自由になる未来を創っていきたいです。特に、夢や熱意を持てるものにまっすぐ向き合い、個性を最大限発揮しながら自分らしく活躍する人を増やしていきたいですね。
あとは、少し壮大に聞こえるかもしれませんが、世界を変える日本発ベンチャーを創出していきたいと考えています。先ほどお話した内容と重複する部分がありますが、世界経済における日本のプレゼンスを向上させていきたいと考えています。
また、自分自身が起業するという道も見えてきました。起業家の話を聞いていると、尊敬の念と同時に自分自身も挑戦したいというやる気が湧いてきます。まだ具体的な起業アイデアを持っていないので当分先かもしれませんが、選択肢としては持ち続けたいと思います。

三好さんが大切にしている信念についてお伺いしたいです。

ノブレス・オブリージュですね。ノブレス・オブリージュはフランス語で「高貴たるものの義務」という意味で、身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会に浸透する基本的な道徳観です。まだまだ本来のノブレス・オブリージュの意味には遠く及んでいませんが、私の中では「自分が受けてきた恩恵を社会に還元する使命」という解釈のもと信念としています。私は幸運にも、自分の努力だけでは到底享受出来ない恩恵を周囲の人や環境から受けてきました。そのため、私には社会を少しでも良くするために自分が受けてきた恩恵を何かしらの形で社会に還元していく使命があると思っています。今後も社会に今まで以上に多くのことを還元していくためにも、更に精進していきたいと思います。

2022.03.03 COLUMN

今回は、EC事業者向けに自動タグ付けツール「AIタッガー」を提供している、LISUTO株式会社への投資に至った背景について解説したいと思います。

タグ付けとは、EC事業者が商品にタグを付けることで、ECモールでの商品検索/絞り込みの際に商品を表示させることが出来るというものです。元々EC市場は成長していましたが、コロナ禍における消費者行動の変化を背景に更に急激に成長しています。またBNPL(Buy Now Pay Later)をはじめとしたEC周辺領域はグローバルで注目度が高く、メガベンチャーが多数生まれています。

画像タグ付けは比較的容易に実現可能であり海外にはいくつかのプレイヤーが存在しています。一方で文章タグ付けは高い技術力を必要とし、世界でも成熟したソリューションとして製品化できているプレイヤーはLISUTO以外に存在していません。こういった背景から、日本発でグローバルに市場を取っていける可能性のある領域だと考え、投資に至りました。

それでは今回はAngel BridgeがLISUTOに投資する際にどのような点を検討したかについて、ご紹介します。

市場

EC周辺領域は、EC化率の上昇/提供API機能の増加を背景に急成長しています。EC周辺サービスを提供するグローバルメガベンチャーも多く誕生し、非常に多くの資金が集まっています。この中でもLISUTOは顧客へのリーチ拡大/コンバージョン率向上に取り組んでいます。

市場

国内にEC店舗は2021年時点で約400万店舗(※)存在し、そのうちLISUTOが対象としているモール店舗数は約4割です。さらにそのうちLISUTOが公認を得ている楽天・Yahooショッピングはモール店舗数の約7割を占め、これらのGMVがモールGMV全体の約4割の約8兆円を占めます。※累計登録店舗数、当社試算

市場

EC化の流れは世界共通であり、日本発でもグローバルメガベンチャーを目指せる領域だと考えています。こういった顕在化した市場ニーズやEC周辺領域への注目の高まりを背景としてLISUTOに注目し、投資検討を進めました。

サービス概要

次にLISUTOのサービス内容について説明します。

ECモールではタグを付けることで商品検索・絞り込みの際に商品を表示させることができるため、タグは売上高向上のために非常に重要な情報です。商品検索の際にはユーザーの9割がキーワード検索をしており、また 7割が色・サイズ等で絞込検索をしていることから、商品の関連キーワード/属性のタグが必要であることが分かります。

サービス概要

一方で出品数に比例してタグ付けには膨大な工数とコストがかかるため、特に出品数が多いEC事業者はタグ付けを諦めていました。

サービス概要

そういったペインを解消しているのが、LISUTOが開発している「AIタッガー」です。

サービス概要

AIタッガーを利用すると、EC事業者は既存の業務フローをほとんど変えることなく、より高速で自動タグ付けが可能になります。

自動タグ付け手順

AIタッガーを活用したタグ付け手順は以下の通りです。

商品CSVを準備し、AIタッガーにアップロードした後ECモールにタグ情報を反映することで、EC事業者は既存の業務フローをほとんど変えることなく自動でタグ付けが可能です。

自動タグ付け手順

LISUTOは2021年4月に佐川急便と資本業務提携を締結し、OEM版を佐川急便の商品として販売しています。その結果サービスインが加速し、契約社数が急増しています。

自動タグ付け手順

また、今後は佐川急便同様の戦略的パートナーモデルで海外にも展開し、各地域のECモール向けにAIタッガーを販売していく予定です。2022年前半にはeBayや、オランダ最大のECモールであるBOLへの導入を開始予定です。

競合

次にLISUTOの競合についてです。まず自動タグ付けには、「画像読み取りタグ付け」と「文章読み取りタグ付け」があります。

画像読み取りタグ付けは商品画像からそのまま分析できるため商品CSVの解析は必要ありません。また機械学習を利用して画像から商品を様々なカテゴリーに分類するためのオープンソースなどが公開されているため、比較的容易に実現可能であり多くのプレイヤーが存在しています。一方で、商品画像の解析だけでは読み取れない生産国やサイズなどのデータが欠落してしまったり、画像を読み取らせるオペレーションは業務フローの改変が必要で導入ハードルが高いなどの理由から十分にペインを解決できておらず、実現性は低いのが現状です。

一方で、文章読み取りタグ付けは画像読み取りタグ付けと比較して圧倒的に実現が困難です。

まず、ECモールのカテゴリーを構造化して処理できるデータベース構築と、常に最新の状態を保つ管理システムが必要であり、更にAIによるフリーテキストの自然言語・多言語処理も必要です。共同創業者のパベル氏はEC業界に対する高い専門性と、技術力の両方を持ち合わせているため、この組み合わせが実現できています。

文章読み取りタグ付けでは商品の詳細情報が載っている商品CSVを解析するため、画像読み取りタグ付けでは抽出できない情報も含めて高精度でタグ付けができます。そのため業務フローも変えずに導入でき、運用負担も軽いです。

こういった難易度の高さから、世界でもLISUTO以外に成熟した文章読み取りタグ付けのサービスを提供できているプレイヤーは存在しませんが、文章読み取りタグ付けの実用性は高く、ニーズは非常に強いです。

競合

このような市場環境の中で、LISUTOは画像読み取りタグ付けと文章読み取りタグ付け両方に対応した、ノーコードで非エンジニアでも扱えるツールというユニークなポジションを確立しています。文章タグ付けは画像タグ付けより高度ですが、LISUTOの高い専門性と技術力を持ったチームで必要な技術ハードルを乗り越えることができています。

AIタッガーはEC事業者への導入実績も多数あり、投資検討をするにあたり実際に複数の導入企業にインタビューを行いました。その結果、「毎週200点の新商品のタグ付けに手作業で3-4日かけていたが、AIタッガーを使うことで15分に短縮できた」「18万件の商品のタグ付けに手作業で6年かかると計算していたが、AIタッガーを使うことにより3日で完了した」といった声が多く上がり、自動タグ付けのニーズは強く、LISUTOは高い評価を得ていることがわかりました。

経営陣

Angel BridgeがLISUTOに投資するにあたり、経営する皆様への理解を深めました。

まず代表のニール氏はEC業界で過去にも1度起業経験があり、EC領域に高い専門性と経営者としての経験を持っています。またテルアビブ育ちで日本語・英語・ヘブライ語のトライリンガルであり、グローバル市場を目指して事業を展開できる稀有な人物です。

また共同創業者のパベル氏はeBay、Shopping.comでの部門責任者・シニアマネージャーとしての経験があり、EC業界に対する高い専門性を持つ人物です。

経営陣

二人のバックグラウンドや起業の想いを聞く中で非常に強い覚悟を感じることができました。また、EC領域での起業歴や海外大手EC企業での開発歴があり、経営陣と事業領域の強いフィットがあるということで、こういった難しい領域でも勝っていけるのではないかと感じました。

おわりに

EC周辺領域はグローバルで注目度が高く、メガベンチャーが多数生まれている領域です。文章読み取りタグ付けは高い技術力が必要ですが、LISUTOの経営チームはEC業界への理解が深く、またグローバルなバックグラウンドを持つメンバーが結集しており、この難易度の高い領域で戦っていけると信じています。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.02.22 COLUMN

こんにちは!Angel Bridgeインターンの黒田です。現在、京都大学医学部の5回生です。

アメリカの未上場Fintech企業についての調査結果をシリーズ化して発信しています。

今回は第4弾として医療費決済サービスを提供するCedarを紹介します。

Cedar概要

Cedarは2016年に元医師であるFlorian Ottoによって創業されました。これまでに4回の資金調達を行なっており、その総調達額は$326Mとなっています。最新の資金調達は2021年3月でその際の評価額は$3.2Bでした。投資家にはAndreesen HorowitzやTiger Global Managementが名を連ねています。

Cedar概要

Cedarのビジネスモデルについて解説します。Cedarは患者と医療機関の間の決済に介入し、双方のペインを解決します。収益は医療機関から手数料としてあげます。

ではCedarは患者と医療機関のどのようなペインを解決しているのでしょうか?

Cedarが解決するペイン

①患者のペイン
患者のペインとしては、支払いがオンラインで行えない、医療費が把握できず支払いプランが立てられない、といったことが挙げられます。
Trends in HealthCare Paymentsのレポートによると、患者の68%はオンラインで医療費を支払いたいと思っているが、実際にそうしている患者は30%にとどまっています。これは医療機関がオンライン決済を提供していない、提供していても使い勝手が悪いということを示しています。
次に医療費を把握できていないという問題です。86%の患者は受診前に費用を知りたいと思っているが、34%の患者は知ることができていないというデータがあります。また、2019年の自己破産の67%が予期しない高額医療費が原因でした。医療費が高くなりがちなアメリカでは医療費の見積もりサービスや支払いプランの提供が求められています。
②医療機関側のペイン
医療機関側のペインとしては、患者への請求をオンラインで行えていない、患者からの集金率が低迷しているといったことが挙げられます。
Trends in HealthCare Paymentsのレポートによると、パンデミックによって遠隔医療の割合が増えてオンライン決済の需要が高まっています。また、請求処理を紙からオンラインにすることで、一回の請求あたり平均$5.4のコストと3分の処理時間が節約できます。
また、アメリカの医療機関では患者からの集金率が低い傾向にあります。年間自己負担額$366Bのうち推定43%が回収できていません。これはパンデミックによって経営にダメージを受けている医療機関にとっては死活問題です。

サービス内容

Cedarのサービスは患者を受診前から受信後までアプリを通してサポートすることでペインを解決します。
受診前には医療費の見積もりを取り、患者に通知します。受診後は患者にオンライン決済を提供し、一括or分割など多様な支払いプランを提示します。また、ライブチャットを使用して患者をリアルタイムサポートします。アプリの操作は非常に直感的で分かりやすくなっています。

それでは医療機関にとってのポイントを解説します。受診前に患者に支払いの見積もりを取り、通知することで医療機関としては患者の来院数増加を見込めます。また、オンライン決済提供で集金率のup、請求コスト削減ができ、更にライブチャットでコールセンターの負担を軽減することができます。

サービス内容

このほかにも医療機関にとって嬉しいサービスがあります。Cedarの決済プラットフォームは既存のすべての電子カルテや決済システムと統合することができます。このため導入コストは少なく済みます。また、決済に関するレポートが作成され、収益サイクルや集金率、チャット履歴などのデータを確認することができます。

トラクション

2020年から21の新しい医療機関と連携を始めており、2021年3月の時点で、その累計は35を超えています。1日にサポートする患者も30万人となっています。

導入医療機関では平均で集金率30%up、患者満足度88%とされています。また、HP上では医療機関のケーススタディが載せられています。Westmed Medical GroupではCedarを導入したところ、集金率が59%から74%に増加し、集金までの平均日数は39日から30日と短くなっています。Cedarのサービスが医療機関のペインをしっかり解決できているのがわかります。

日本とアメリカの市場の違い

日本とアメリカの医療費決済の市場の違いについて解説します。

日本とアメリカの大きな違いは医療保険制度です。

アメリカでは公的医療保険制度は高齢者、障害者、低所得者を対象としたものに限られており、それ以外の人は民間の保険に入ることになります。しかし、その保険料は年々増加しており、無保険者は2018年時点で2,746万人で全体の8.5%となっています。もし無保険者が病気になってしまうと、その自己負担額はとても高額になってしまいます。例えば、一般の初診料は$150~ $300、入院費は1日$2,000~ $3,000です。もし急性虫垂炎になってしまうと$10,000以上の医療費が請求されます。

一方、日本ではアメリカとは違い、国民皆保険制度、高額療養費制度があります。例えば月に100万円の医療費がかかったとしても、日本では国民皆保険によって窓口負担は3割の30万円になります。さらに高額療養費制度によって自己負担額が87,430円まで抑えられるのです。

日本とアメリカの市場の違い 出典: 厚生労働省保健局

この制度があることにより、日本国民は予想外の高額医療費に生活が困窮するという事態がアメリカよりも少なくなります。そのためCedarの提供するような医療費見積もりサービスの需要は少なくなります。

また、年間自己負担額がアメリカ$366Bに対して日本では$45Bと少ないために、日本では集金率がアメリカよりも良くなっています。一人当たり医療費未払い金がアメリカでは一人当たり平均$1,766なのに対して日本では$50~60とかなり少なくなっています。アメリカの医療機関のペインとなっている集金率の低さが日本ではそれほど問題になっていないため、集金率upのためのサービスの需要も少なくなります。

このように、日本ではシンプルな医療機関向けの決済サービスへの需要はアメリカよりは少なくなっていると考えられます。決済サービスだけでなく、他の機能も付加する必要がありそうです。

例として混雑解消機能が挙げられます。日本ではアメリカよりも気軽に病院を受診できるため、病院での混雑が問題となっています。厚生労働省によると日本では3割の患者が病院で1時間以上待たされています。受付を先にオンラインで済ませることができるスマホアプリや、会計のための待機時間を減らす後払いサービスなどは需要があります。

また、医学生として病院で臨床実習を行なっていると病院内コミュニケーションツールが充実していないと感じます。現在、主に使われているPHSはメール機能がなく通話機能のみで、緊急かそうでないかにかかわらず院内でかかってきた電話はすべてその場で取らなければいけません。また、予定調整ツールなども使われておらず、会議などの時刻決定がろくになされていないこともあります。しかし、既存のツールではセキュリティに不安があったり、病院内で使用するには使い勝手が悪いなどの問題点があります。そのため、医療機関向けのセキュリティが担保された院内コミュニケーションツールの需要はあると考えられます。

おわりに

医療費決済サービスを提供するCedarが評価額を伸ばしていることが今回の調査で分かりました。日本とアメリカでは保険制度の違いで決済サービスの需要に差はあるものの、日本の医療機関ならではのペインがあり、それを解決するサービスは必要とされています。そもそも医療現場ではデジタル化が他の分野に比べて遅れており、人手不足による医療従事者の長時間労働問題、働き方改革が深刻な問題となっています。医療機関の負担を軽減できる画期的なサービスを提供するベンチャーの登場はいつでも期待されています。

Angel Bridgeはアナログな病院のDXに取り組むベンチャーに積極的に投資したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.02.05 COLUMN

こんにちは!Angel Bridgeインターンの黒田です。

アメリカの未上場Fintech企業についての調査結果をシリーズ化して発信しています。

今回は第3弾として資金調達プラットフォームを提供するPipeを紹介します!

Pipe概要

Pipeは2019年8月にSkurt創業者のHarry Hurst、Y Combinator出身の連続起業家であるJosh Mangel、同じく Y Combinator出身のZain Allarakhiaの3人によって創設されました。これまでに4度の資金調達を行なっており、その評価額は2021年3月時点で$2Bとなっています。最新のラウンドでは投資家による申し込みが大幅に超過したほどの注目企業です。

Pipe概要

Pipeは企業と投資家に、資金調達のプラットフォームを提供します。この資金調達は一般的な資金調達ではなく、Revenue-Based Financing(以下RBF)と呼ばれる方法を採用しています。

RBFとは

RBFとは、資金調達を行った企業が投資家に対して、その売上高に応じて返済を行うという資金調達方法です。企業は将来の債権をディスカウントして売却することで資金調達します。投資家は「企業の月々の売上のx%を返済に充て、投資額のy倍を返済してもらう」という条件で投資を行います。

例えば、企業が投資家から3,000万円の資金調達をしたとしましょう。このときの条件を「月々の売上の10%を返済に充て、投資額の1.5倍を返済してもらう」とします。この企業のある月の売上が1,000万円であれば100万円を、2,000万円であれば200万円を返済します。そして合計3,000万円×1.5倍の4,500万円を返済すれば返済完了となります。これがRBFの仕組みです。

RBFとは

投資額、売上高に対する返済額の割合、返済額の倍率は、企業のこれまでの売上高やビジネスモデルなどの情報から計算されたリスクに応じて決定されます。

ではRBFのメリットとはなんでしょうか。調達企業、投資家それぞれの目線から見てみましょう。

まず前提として、ベンチャー企業は銀行から融資を受けにくいという問題を抱えています。銀行にとってはベンチャーへの投資はハイリスクだからです。

調達企業にとってのメリットとして、ひとつ目に返済額が売上によって増減するという点が挙げられます。返済額が収入を上回ることもありません。これは創業初期の売上が安定しないスタートアップ企業にとっては大きなメリットとなります。また、担保として個人保証を求められることもありません。

次に株主の持分を希釈化する必要がないことが挙げられます。RBFでは投資家は企業に対して株式を要求しません。このため経営への介入を許したり、発言権の付与を行う必要がありません。一方で、VCなどの投資家はスタートアップへの出資の際に10~30%の株の持分を要求し、5年で10倍程度のリターンを求めます。それに比べるとRBFでは資金調達にかかるコストが相対的に低いのです。

着金までの時間の短さも魅力の一つです。通常、銀行やVCからの資金調達には2、3ヶ月かかります。しかし、Pipeでは収益情報の登録から承認まで48時間、RBFを提供するCLEARCOは投資決定まで24時間と驚きの短さです。

次に投資家にとってのメリットです。投資家はすでに売上が立っており、月々の返済が期待できる企業に投資することができます。これはVCのように資金回収まで数年かかり、またその成否も分からない状況で多額の投資を行うよりはるかにローリスクです。

また、このRBFはSaaS企業ととても相性が良いです。SaaS企業は商品を売りきりではなく、一定期間の使用に対して課金するという形で販売します。このため月々の売上の予想が立ちやすく、RBFとの相性が良いとされています。以下のグラフはSaaS市場規模の2020年からの予想推移とSaaS Capital IndexのValuation Multiplesです。SaaS市場規模は2020年1,138億ドル、2021年の1,307億ドルからCAGR28%で成長し、2028年には7,158億ドルに達すると予想されています。また、SaaS企業のValuation Multiple は高く、市場からも今後の成長が期待されています。このように成長する市場にマッチした投資方法であることも投資家にとってはメリットとなります。

RBFとは出典: FORTUNE BUSINESS INSIGTHS Public SaaS Company Valuation Multiple
RBFとは 出典: SaaS Capital

RBF市場

世界のRBF市場は年々大きくなっています。COVID19により、2020年にはベンチャー企業による資金調達量は減少しました。しかし、現在は世界経済が回復し、ベンチャー企業の資金調達の需要が高まっており、RBFも必要とされるようになっています。

2019年の世界のRBF市場規模は約$900Mとなっており、CAGR62%で2027年には$42Bまで達すると予測されています。この成長には、決済サービスの普及によるデータ取得環境の整備も寄与しています。Stripe、Square、Shopify、Amazonなどの決済サービスと連携することで、容易にSaaS企業の収益情報や取引情報を取得し、投資条件を素早く決定することができます。

RBF市場

Pipeのビジネスモデルと特徴

PipeはRBFによって資金調達を行いたい企業と投資家をプラットフォームでマッチングさせ、両者から手数料(資金調達額の最大1%)をとるというビジネスモデルです。Pipeは自身で貸し付けのリスクを負うことなく、大きくなるRBF市場に参加することができます。

ではどのようなプロセスで企業はPipeのプラットフォームを通して投資家から投資を受けるのでしょうか。例として年間収益が100万円の企業がPipeを通して資金調達をしたとします。Pipeの手数料は1%です。

以下の図の①~⑤が一連のプロセスです。Pipeはこのプロセスを通して両者から合わせて2万円の手数料をもらうということになります。

Pipeのビジネスモデルと特徴

Pipeの特徴として、資金調達までのスピードが挙げられます。Pipeは様々なソフトウェアと連携しており、資金調達を受けたい企業は使用している支払いシステムを同期するだけで収益情報をPipeに登録することができます。そして登録から48時間以内に承認を受け、資金提供を受けることができます。これはPipeの優秀な収益評価アルゴリズムのおかげです。VCからの調達や、銀行からの融資では数週間から数ヶ月かかるところです。素早い資金調達が必要なスタートアップとしては喜ばしいシステムです。また、社員が資金調達のタスクに時間を取られて本来の業務に集中できないスタートアップでありがちな問題も起きることはありません。

SaaS企業は通常、顧客に月契約ではなく年間契約をしてもらい、資金を獲得するために値引きを行います。例えば、通常月額5万円の商品で年契約してもらえば60万円のところを48万円に値引きするのです(この時、値引き率は20%です)。そして、その年間契約によって受け取った資金をもとに売り上げを成長させます。しかし、この値引率が高くなることがあります。Pipeのプラットフォームを使うと、この年間契約より低い値引き率で投資家から資金を受け取ることができます。より多くの成長資金を獲得できるわけです。これは企業の成長をより加速させます。

トラクション

2020年6月の一般公開以来から2021年4月にかけて4,000社以上の企業がPipeの提供するプラットフォームに登録しています。2021年4月時点で取扱額は$1Bを超えて$2Bに向かっており、現在も毎月数千万ドルが取引されています。取引限度額はビジネスモデルや経常利益からアルゴリズムによって計算され、$25K~$100Mとなっています。

また、取引企業にはIntercom (ARR $150M) やDataRobot (ARR $100M) などの有名なテック企業が入っており、信頼されていることがわかります。

日本のRBF

日本でもSaaS市場は成長傾向にあります。2018年からCAGR約13%の成長を維持しており、2025年には約1兆4607億円と2020年の約2倍へと成長する見通しです。また、ソフトウェア市場におけるSaaS比率も高くなると予想されます。

日本のRBF 出典: 富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2021年版」

SaaS市場の成長からSaaS企業の資金調達の需要が増え、相性の良いRBFの需要も増えていくことが予想されます。

また、デジタルD2C市場の成長も無視できません。SaaSと同様、継続的な収益が見込めるD2CもRBFと相性は良いです。日本のデジタルD2C市場は2019年時点で2兆円であり、2025年までに3兆円に達する見込みです。この市場でも資金調達の需要は増えると予想されます。

また多様な決済サービスの普及も追い風となるでしょう。PipeはStripe、Square、Shopifyなどの決済サービスと連携し、企業の収益や取引データの取得を行うことで、登録から承認まで2日というスピードを実現しています。日本でも同様に、決済サービスの普及は広がっており、RBF事業を行う下地は出来上がりつつあります。

おわりに

今回の記事では資金調達プラットフォームを提供するPipeを深掘りしてみました。

Angel Bridgeは世の中を大きく変えるイノベーションを起こしていきたいと考えています。 事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.01.17 COLUMN

こんにちは!Angel Bridgeインターンの黒田です。現在、京都大学医学部医学科5回生です。

これから、アメリカの未上場Fintech企業についての調査結果をシリーズ化して発信していきます。アメリカの成功事例を調査し、それが日本でも応用できないか? 日本とアメリカの注意すべき市場の違いは何か? などの観点から考察していきたいと思います。よろしくお願いします!

今回は第2弾として、住宅ローンを提供するBetterを紹介します。

Fintech市場全体像

KPMGのレポートによると、COVID19パンデミックの影響によって世界のFintech企業への投資額は2019年$215Bから2020年$122Bに下がりましたが、2021年はその流れに反発して上半期だけで$98Bもの投資が行われています。これは目覚ましい回復です。

次に全体と比較をしてみます。2021年第3四半期だけで42社のフィンテック企業がユニコーンになり、これはユニコーン誕生数の3分の1です。また、2021年上半期のVC投資額$294BのうちFintech分野が$52Bを占めています。このように全体と比較してもFintech分野が伸びていることがわかります。

アメリカFintech企業のリストアップにはFintechLiveの出している「The 198 Fintech Unicorns of the 21st Century (July 2021 update)」を参考にしました。このリストから本拠地がアメリカかつ、未上場のものを抽出しています。

未上場Fintechは54社ありました。今回はそれをカオスマップにまとめています。

Fintech市場全体像 *Angel Bridge作成

この中から今回は第一弾として、住宅ローンを提供するBetterを紹介します。

Better概要

Betterは2014年に現CEOのVishal Gargによって設立されました。これまでに5回の資金調達を行っており、その合計調達額は$900Mです。最新の2021年4月のラウンドでは$6Bという高い評価を受けています。最新ラウンドではSoftbank Vision Fundも参加しており、注目企業となっています。そのミッションは「住宅ローンを迅速に、低いコストで、透明化されたプロセスで提供する」となっています。

Better概要

Betterのビジネスモデルについて解説します。住宅購入者に対して住宅ローンを提供し、その住宅ローンを投資家に売却することでマージンを得るというものです。ローンの金利で収益を上げているわけではありません。

Better概要

この投資家には、Fannie MaeやFreddie Macなどの政府支援機関や、機関投資家が含まれます。売却される住宅ローンは証券化され、政府支援機関に元本保証されます。

ローンをすぐに投資家に売却するメリットとして、ローンを回収できないリスクを回避できること、資金不足に陥らず次々と多くの住宅購入者にローンを提供できることが挙げられます。

Betterが解決しているペイン

ではBetterは債務者のどのようなペインを解決する企業なのでしょうか? 現在、住宅ローンを組むときの債務者のペインとして次の二つが挙げられます。

①手数料が高すぎる
通常、住宅を購入するときは購入価格の6~10%が手数料としてかかります。不動産手数料に加えて様々な保険料や鑑定料、ローン手数料などです。
②プロセスが複雑すぎる
住宅ローンを組む際、処理すべき書類が多すぎたり、手続きの完了まで時間がかかりすぎたりするのがペインの一つとしてあげられます。具体的には必要となる書類が500枚以上になる、ローン手続きまで平均で45日かかる、といったことが挙げられます。CEOのVishal GargがBetterを創設したのも、住宅ローンを組もうとした際に散々手続きでトラブルになった挙句組めなかったという原体験がきっかけとなっています。

サービス内容

Betterはテクノロジーを使ってこれらのペインを解決します。
Betterのサービスは大きく分けて4つで、住宅ローン、不動産、タイトル保険、住宅所有保険です。

本記事では、Betterのサービスの中心となっている住宅ローンについて解説します。

手数料は一切無料で住宅ローンを提供する
本来、住宅ローンを組む際は、ローン提供者に対してローン手数料を支払わなければなりません。しかし、Betterは他の住宅ローン提供者が取る手数料の類を一切取りません。
100%オンラインで、事前承認まで3分、ローンクロージングまで平均32日で行える(業界平均は45日)
Betterは独自のワークフローエンジンを持っており、住宅ローンを組む際の手続きの多くを自動化しています。住宅ローン購入者の負担が減り、手続き完了までの時間が短くなっています。
業界水準より低い金利で住宅ローンを提供する
下の図は業界水準とBetterの金利の推移です。常にBetterの金利が下回っているのが分かります。これにより、住宅ローン購入者は平均で$8,200を節約できます。
住宅ローンサービスの詳細 出典:Better Investor Overview May,2021

Betterを支える技術

ではBetterはどのような技術でこれらのサービスを実現しているのでしょうか。

具体的に、二つの技術が挙げられます。一つはワークフローエンジンの「Tinman」、もう一つが「投資家とのマッチングエンジン」です。それぞれ解説します。

①Tinman
TinmanとはBetter独自のワークフローエンジンです。従来はブローカーが人力で行っていた作業を自動で行います。従来は債務者と住宅売却者の情報のやり取りや、債務者とローン提供者の情報のやり取りの間には、ブローカーが介入し、手続きを進めていました。この方法では債務者は書類の確認作業に追われたり、ブローカーに高い手数料を払わなければならなかったりとデメリットがあります。しかしTinmanがこの作業を代替することで債務者の確認作業が減り、ローン組成終了までの時間、人件費を削減できます。図で表すと下のようになります。
Tinman
Tinmanは現在も進化を続けています。エンジニアチームが営業チームからのフィードバックをリアルタイムで受け取り改善するというシステムで、生産性を上げ続けています。
②投資家とのマッチングエンジン
Betterは債務者と物件のデータを取得し、投資家の求める価格や条件を瞬時にマッチングさせるプラットフォームを持っています。大部分の住宅ローンは政府支援機関に売却するのですが、このマッチングエンジンを利用して、投資家に直接売却することで政府支援機関に売却するよりも高く売ることができます。このプラットフォームには年間一兆円以上の需要が集約しています。ローンを組成して売却するまでのプロセスを合理化することで、住宅ローン購入者に対して低金利、手数料無料という形で還元することができています。
これら二つはBetterのエンジニアの高い技術力によって作られ、動かされています。創業当時から最新の技術を取り入れ、Amazon Web Services上にインフラを構築しています。また、独自のコードテスト、コードリリース環境のおかげで、エンジニアによるコードの作成と検証を何度も素早く行うことができる環境となっています。
GoogleからBetterに転職したエンジニアのインタビューによると、Betterでは大企業よりも一人のエンジニアのビジネスへの影響力が大きく、より早く成長できます。また、エンジニアの数に対するプロジェクトの数も多く、様々な技術を使いながら課題を解決しなければなりません。そのような点で、Betterはエンジニアにとっては魅力的な環境となり、優秀な人材が流れているようです。

トラクション

ローン組成額は右肩上がりとなっており、2021年の第一四半期だけで$14Bのローンを提供し、現在は月に$4Bのローンを提供しています。また、収益もそれに応じて増加しています。

トラクション 出典: Better Investor Overview May,2021

日本の住宅ローン市場

次に日本とアメリカの住宅ローン市場の違いについて考察します。以下の二つが挙げられます。

①市場規模が異なる
日本とアメリカでは住宅ローンの市場規模が異なります。2020年に組まれたローン額を比べると、アメリカは$3T、日本は$185B(21兆円)となります。日本で同じようなビジネスを興す際にはこの点に注意する必要があるでしょう。また、下のグラフからわかるように、現在特に住宅ローン市場が伸びているわけではありません。
日本の住宅ローン市場 出典: 住宅金融支援機構 業態別の住宅ローン新規貸出額及び貸出残高の推移
②証券化の文化がアメリカよりも乏しい
アメリカでは70%の住宅ローンが証券化されているのに対し、日本では証券化されているローンは10%程度です。これにより日本では貸し倒れリスクを引き受けられる資金力のある金融機関が住宅ローンを提供するものだという風潮があります。
では日本ではノンバンクが住宅ローンの参入できないかというとそうではありません。住宅ローンを証券化するシステムは存在します。住宅金融支援機構が住宅ローンを買取り、証券にして売却する「フラット35」というシステムがあります。日本の住宅ローンを提供するノンバンクの多くはこのシステムを利用し、貸し倒れリスクを回避しています。しかしこの買い取り量も伸び悩んでおり、証券化の文化が進んでいるとは言い難いです。
日本の住宅ローン市場 出典: 住宅金融支援機構 フラット35利用者調査 2020年度
③アメリカより日本は金利が低い
アメリカでは住宅ローン金利が3~3.5%あるのに対して、日本は1~1.5%と低いことも違いとして挙げられます。これは証券を購入する投資家が得る利益が相対的に少ないことを意味します。また、組成したローンを売却する側としても、売却時に得られるマージンが少なくなります。

おわりに

日本とアメリカの市場の違いを考慮すると日本で住宅ローン事業を行うのはアメリカよりは厳しいかもしれません。しかし、日本ではまだBetterのような、実店舗を持たず完全オンラインで住宅ローンを提供し、かつ、手数料を0にしている企業は存在しません。もしそのような企業が現れて日本の市場の現状を変えてしまえば、面白いと考えています。

Angel Bridgeは世の中を大きく変えるイノベーションを起こしていきたいと考えています。 事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2022.01.07 COLUMN

こんにちは!Angel Bridgeインターンの山田と申します。
現在、海外や日本でSaaSの大型資金調達やIPOが続出しており大きなトレンドとなっていますね。特に、領域特化型のVertical SaaSが盛り上がりをみせています。
そうした背景からアメリカのEC領域特化SaaSの成功事例を調査し、それが日本でも応用できないか?日本とアメリカの注意すべき市場の違いは何か?などの観点から考察していきたいと思います。よろしくお願いします!
今回は第1弾として、延長保証をAPIで提供するExtendをご紹介します。

EC領域特化SaaSの全体像

まず初めに、EC分野のテクノロジー企業に対する投資動向について見ていきます。
BDOグローバルのレポートによると、EC分野のテクノロジー企業への投資額は2019年から2020年の前半にかけてCOVID-19の影響を受けて減少したものの、その後右肩上りに上昇しています。(*左軸参照)

EC領域特化SaaSの全体像 出典:New technology developments stimulate e-commerce investment and growth 14 June 2021 by BDO GLOBAL

次にもう少し詳しく見ていきます。
まず、EC領域特化SaaSは大きく二つに分類することができます。それは、

  1. ①ShopifyのようにEC機能全般を提供する企業
  2. ②ECサイトにAPIを提供することでサイトの機能を拡張する

の二つです。そして今回は②について詳しく見ていきたいと思います。
というのも、APIがビジネスとビジネスを繋ぎ、企業同士がお互いの強みを利用して新たな価値を創出する動きが近年活発になってきているからです。

フィンテック分野のBNPLはその代表例です。BNPLとは「Buy Now Pay Later」の略で、その言葉の通り「今買って後で払う」後払いサービスのことです。与信審査や手数料が発生しないという手軽さから利用者が急増しており、ECサイトに後払い決済機能を有したAPIを接続することで、EC事業者はCVR向上が見込めるのです。2021年9月に、日本でBNPLサービスを手掛ける株式会社PaidyがPayPalに3000億円で買収されたことでも話題になりました。

そして、BNPL以外にもECにAPIを提供するSaaS企業は年々増加しており、2021年現在14社のユニコーンが存在しています。その中でも特に注目な企業をリーチ・コンバージョン・ペイメント・ロジスティクス・カスタマーサポートというカスタマージャーニーに沿った5つのステップに分類してカオスマップを作成しました。

EC領域特化SaaSの全体像

こうして見てみると、半分以上の企業が2021年になってから1億ドル以上の大型資金調達を実施しており、EC領域特化SaaSの盛り上がりが分かりますね。

この中から、今回は第一弾として延長保証をAPIで提供するExtendを紹介します。

Extend概要

Extendは2019年に現CEOのWoodrow Levinによって設立されました。これまで4回の資金調達を行なっており、その合計調達額は$320Mです。
直近のSoftbank Vision Fundも参加した2021年5月のラウンドでは、$260Mを調達し評価額$1.6Bのユニコーンとなっています。Extendのmissionは、CEOのLevinのインタビューによれば「すべての製品にAppleCareをつけること」です。

Extend概要

続いてExtendのビジネスモデルについて説明します。
Extendは独自に保険会社と提携し、EC事業者に対して延長保証を簡単にECサイトに実装できるAPIの形で提供します。

Extend概要

企業は自社の商品と共にExtendの商品を販売するだけでよく、延長保証の運営自体はExtendが全て代行してくれます。マネタイズは消費者から支払われる延長保証の代金で行なっておりAPIの使用料は無料です。

Extendが解決しているペイン

延長保証の有無で顧客のCVRが大きく変わることから、ECにおいて延長保証はマーケティング戦略の一つであるという考えが最近浸透しつつあります。
しかし、以下のようなペインから中小のEC企業では充実した延長保証が提供できない状況が続いており、また顧客にとっても不便が多い状況でした。
Extendは延長保証業界がこれまで抱えていた以下のペインを解決しています。

①企業側にとってのペイン
延長保証のカスタマーサクセスに人員が大量に必要なことや、延長保証の契約料が高額なことから大企業しか延長保証を提供できないこと。
②顧客側にとってのペイン
実際に商品を購入した店舗に行って、煩雑な手続きを経なければ保証内容を受けられないこと。またレシートや書類などを保管しておかなければならないこと。

サービス内容

ExtendはECサイト上に無料で組み込めるAPIの形で延長保証を提供し、これらの課題を解決します。まずはExtendの延長保証提供のプロセスを見ていきましょう。

プロセス1: 消費者は商品と一緒に延長保証を購入
サービス内容
プロセス2: 商品が故障した際はExtend内のチャットで交換申請
サービス内容
プロセス3: 申請が通れば、新品の商品が発送される
サービス内容

このわずか3つのプロセスで保証が完結してしまうのです。
消費者にとっては、従来のように煩雑なプロセスを経ず全てオンライン上で保証が完結し、レシートや書類の管理なども必要ないのでスムーズな保証体験を提供できます。
企業にとっても、APIの使用量は無料であり、カスタマーサポートもExtend側が全て引き受けてくれるので負担ゼロで延長保証が導入できるのです。

Extendを支える技術

ではExtendはどのような技術でこのサービスを実現しているのでしょうか。
その技術として以下の二つが挙げられます。

①AIチャットボット
「Kaley」と名付けられており、機械学習技術によって請求されたクレームの98%を60秒以内に裁定できる機能を有しています。この技術はスムーズな顧客体験を提供すると共に人材削減にも貢献しており、APIの無償提供を可能にしています。
②機械学習を用いた価格設定技術
延長保証の適切な販売価格を設定することは、API使用料でマネタイズしていないExtendにとって生命線です。そのため、Extendは高度なデータエンジニアリング技術を持つメンバーを多数採用しています。例えば、現在ExtendのCRO(最高利益責任者)を務めているRob Pfeiferは、Affirm*の創業メンバーで最高リスク責任者と最高収益責任者を務めていた人物です。
その他にもAffirmで機械学習を用いた価格設定および財務組織で指導的地位をしめていたKevin Tsuiなど、金融バックグラウンドを有した精鋭エンジニアが多数在籍しています。

*Affirmとは2012年創業の「後払い」に特化したフィンテック企業で、これまでに累計10億ドル以上を調達した後、2021年1月に上場を果たしました。上場時の評価額は236億ドル(約2兆4500億円)となっています。

トラクション

現在Peloton、iRobotなどD2Cブランドを中心に150社以上のブランドと提携しています。

トラクション

また、APIを組み込めるECプラットフォームは、Shopify、BigCommerce、Magentoをはじめ30ほどあります。
実際にExtendの導入による収益増加の実績も多数あります。

トラクション

日本の延長保証市場

日本の消費者はアメリカと比較して、D2C企業よりも楽天などのモール型サイトの出品者からの購入が多いという違いがあります(Extendはモール型サイトへのAPI提供は行なっていません)。
しかし、延長保証をAPIの形で提供することへの大きな障壁は無いと思われます。
実際に、日本でも数社が延長保証をAPIで提供するサービスを手掛けており、日本の延長保証業界は今後更に盛り上がると考えられます。

おわりに

今回はEC領域特化SaaS特集の第一弾として、延長保証を提供するExtendを紹介しました。延長保証をAPIの形でECサイトに実装しUX向上を図ることは、アメリカでは既に主流となっており、日本にもその流れが着々と来ています。これからも、アメリカのEC領域特化SaaSの事例をもとに、日本で現在起こっている、もしくは今後起こりうるトレンドを紹介していきたいと思います。

最後になりましたが、Angel BridgeはCVR向上を目的としたEC周辺サービスにも積極的に投資しています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!