2023.02.22 INVESTMENT

2022年12月21日、Angel Bridgeの投資先であるローカスブルー株式会社(以下ローカスブルー)がプレシリーズAラウンドにて約4億円の資金調達を発表しました。
https://locusblue.com/information/452/

ローカスブルーは、建設業向けの測量などで用いる3次元データを解析するソフトウェア「ScanX」をSaaSで提供しています。従来は非常に高額なソフトウェアとそれを動かすためのハイスペックPCが必要でしたが、クラウド上で利用できるScanXは、インターネットに接続したPCがあれば低価格で利用ができます。

建設業界で進められている3Dデータの導入

今回は、建設業向け3次元点群データ処理SaaSを提供するローカスブルーへAngel Bridgeが投資した理由を解説します。

建設業界におけるニーズと市場の成長

近年、建設業界において高齢化に伴う人材不足が課題となっており、省人化に向けた動きが活発化してきています。

i-Constructionについて
建設業界におけるニーズと市場の成長
(出典:国土交通省資料)

2016年には国土交通省が建設業のICT化を目指す「i-Construction」という取り組みを打ち出し、建設プロセス全体において3Dデータを活用する動きが加速しています。

2D図面では人間が頭の中で立体形状を想像しなければならないのに対し、3Dモデルは立体を可視化しています。コンピューター上でさまざまな角度から建設段階の構造物の状態を確認することができ、2Dの図面では確認が難しかった問題を発見することが可能です。確認や修正の時間が削減され、工事期間の短縮につながります。

人材不足という深刻なペインの存在、さらに政府による力強い後押によって、3Dデータ市場は大きく成長すると我々は考えています。

3D市場の課題

従来の3Dデータ処理の課題とローカスブルーによる解決

3D市場の課題

従来の3Dデータ処理ソフトウェアは、ライセンス料が非常に高額で、データ容量が重く取り扱いにくいという課題がありました。

ローカスブルーは以下のように顧客の課題を解決しています。
まず、高額なライセンス料の解決です。初期コスト無料、月額3万円から導入可能なSaaSとしての販売を行っており、数百万円ほどする買い切りソフトウェアよりはるかに価格が抑えられます。
次に、幅広い動作環境で使えるようにしました。従来は大規模なデータを処理するためには高性能PCが必要でした。一方、ScanXはユーザーの端末ではなくクラウドを介してデータ処理を行うため、通常のノートPCで動作可能です。
最後にデータの取り扱いのしやすさです。3Dデータは非常に容量が大きく共有困難なためCDやHDDで納品されていました。また施工現場で使用する通常のPCでは開けないことが多くとても不便なものでした。ScanXではデータ容量を軽くすることで、インターネットを介して共有することが可能であり、施工現場へも即座に共有し閲覧することを可能にしました。

このように価格・動作環境・データ共有のしやすさという点で、SaaSならではの強みを活かせているため競合優位性があると考えています。

ローカスブルー事業概要

ローカスブルーは2020年9月にリリースした「ScanX」というソフトウェアをSaaSで提供しています。これは、建設、土木、測量業界をはじめとする企業に3Dデータを解析するものです。

ScanXを活用した3Dデータの流れ

ローカスブルー事業概要
  • ドローンやレーザースキャナーで建設現場の3Dデータ(点群データ)を取得します。
  • 1で得たデータをScanXに取り込むと、3次元モデルが生成されます。
  • 点群をAIで処理することで、地面・樹木・家に自動的に分類され自動的にフィルタリングされます。この精度が非常に高く、ローカスブルーの強みの一つとなっています。
  • データ活用として、樹木抽出、土量計算などができます。
  • 4までに得たデータをもとに、設計・施工をおこなっていきます。

3Dデータでできること

3Dならではの機能としては、地面・樹木・家・車・電線等が自動的に分類されるため、用途によってフィルタリングが可能になります。以下のように樹木を伐採した場合のシミュレーションができます。

ローカスブルー事業概要

林業向けの樹木抽出機能もあります。一本一本の木をフィルタリングできるので、森林管理にとても役立ちます。

ローカスブルー事業概要

経営陣

投資を検討するにあたって、経営陣への理解も深めました。

経営陣

CEOの宮谷氏は、東京大学航空宇宙工学科で東京大学総長賞を受賞。フランスのAirbus社にて勤務後、シリコンバレー、イスラエルのドローンベンチャーで働いていた経験豊富な経営者です。さらに、彼を中心にグローバルなエンジニアチームが集結しています。

優秀かつグローバルな経験が豊富なうえに、リーダーシップをしっかり発揮する面もあり、粘り強く大きな事業をやり切れる人物だと考えました。

このように、①顕在化しているニーズ、②SaaS化の強み、③優秀な経営陣の3点から、Angel Bridgeはローカスブルーに投資することに決めました。

受賞歴と新サービス

Angel Bridgeが投資してから1年半が経ちましたがこの間にローカスブルーで起きたことについて説明します。

まずローカスブルーはいくつかの賞を受賞してきました。そのうちの1つが、令和3年度i-Construction大賞において最優秀賞である「国土交通大臣賞」の受賞です。i-Construction大賞とは、現場の生産性向上を図る「i-Construction」に係る優れた取組を表彰し、ベストプラクティスとして広く紹介し、横展開することにより、i-Construction に係る取組を推進することを目的としたものです。ローカスブルーは大林組、アンドパットと並び、最優秀賞を獲得しました。

受賞歴と新サービス

さらに2022年6月に新バージョン「ScanX Ver.2.0」をリリースしました。
新しく追加された機能の一部を紹介します。

出来形帳票生成機能

設計データと点群データをScanXにアップロードするだけで、国土交通省の土木工事施行管理基準および規格値に準拠した帳票出来形合否判定表を生成できます。

他にもユーザーニーズに合わせて各種機能を順次追加しています。

おわりに

ここまでローカスブルーへの投資理由について解説しました。3Dデータ活用は建設業という巨大産業全体の効率化のカギです。そのコア技術である3次元点群データ処理技術を保有するローカスブルーに投資し、成長をご支援することが社会全体にとても大きなインパクトをもたらすと考えています。

事業を推進する仲間も募集しているのでご関心ある方はぜひチェックしてみてください!
https://locusblue.com/career/

Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、難しいことに果敢に取り組むベンチャーを応援していきたいと考えています!事業の壁打ちや資金調達のご相談など事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2023.02.08 INTERVIEW

革新的ゲノム編集技術「UKiS」

Logomixの事業内容を教えてください。

石倉:Logomixは2019年に設立された東京工業大学発バイオベンチャーです。弊社独自の研究開発プラットフォームGeno-Writing™ Platformを提供し、パートナー企業の課題解決につながる高機能細胞を開発するゲノムエンジニアリングカンパニーです。

御社の競争優位性はどこにあるのでしょうか?

石倉:私たちの強みのなかでもっともインパクトがあるコアテクノロジーは、大規模ゲノム改変技術「UKiS(Universal Knock-in System)」です。UKiSは、東京工業大学の相澤康則准教授が確立したゲノム改変技術で、ノーベル賞を受賞したことでも名高い「CRISPR/Cas9」の編集領域が約20塩基なのに対し、UKiSは大規模かつ自由自在にゲノム改変を可能とし(現時点において世界で最も大規模のゲノム配列(100万塩基対))、構造が複雑なゲノムを効率よく設計改変が可能です。これまでのゲノム編集技術を「建物のリフォーム」にたとえるなら、Geno-Writing™ Platformが実現するのは「街ごと作り変える」のようなレベルです。これほど大規模かつ正確なゲノム編集技術は世界を見渡してもほかにありません。

顧客の顔ぶれは?

石倉:現在は主に「医療・ヘルスケア」「バイオマテリアル・化学・エネルギー」「農業・養殖・環境」を対象に事業を展開しています。UKiSはこれまでの常識を超える先端的な技術です。それだけに、当初はこの技術を必要とするビジネスドメインを探すのにとても苦労しました。創業から1年ほどは、医薬、化学メーカーなど日米150社に足を運びヒアリングを重ね、ようやく現行のプロジェクトに絞り込んだ経緯があります。

そもそもなぜバイオベンチャーの立ち上げに関わるようになったのですか?

石倉:もともとは医師になるか、医学研究の道に進もうと考えていたのですが、2000年6月を境に考えが変わりました。当時のクリントン米大統領がホワイトハウスでヒトゲノムの解読作業をほぼ終えたという記者会見を見て「これだ」と思ったからです。その後、GenentechAmgenなど、当時創業30年にも満たなかったバイオベンチャーの時価総額が、名だたる製薬会社より大きいことを知り、すっかりそのダイナミックさに魅了されてしまいました。学部生の途中からは、研究ではなく事業を通して社会実装に直結する仕事をしようと心に決め、以来バイオ、ゲノムの世界を歩み続けています。

共同創業者であり、Geno-Writing™ Platformの生みの親である相澤准教授との出会いについて教えてください。

石倉:2010年以降、長年バイオ領域の成長を支えてきた投資家に加え、ITビジネスで成功した人たちがどんどん投資サイドに入ってきたこともあって、合成生物領域に注目が集まっていました。2017年になると、史上初めて真核生物のゲノムを1から設計し、合成に成功したというニュースを知り「これはスゴいことになるぞ」と。それで、合成生物学の領域で起業するチャンスを模索するようになり、何人もの先端的なゲノム技術を持つアカデミアの方々とお話しするなかで出会ったのが相澤先生です。相澤先生は専門の合成生物学だけでなく、バイオ、化学、医薬などにも詳しく、ご自分の人生を社会課題の解決に費やしたいと信念をお持ちの方。知的好奇心旺盛で気さくで、経営感覚にも長けておられます。ご一緒しませんかと申し出ました。

革新的ゲノム編集技術「UKiS」

Angel Bridgeを選んだ3つの理由

Angel Bridgeとの出会いについて教えてください。

石倉:創業前に在籍していた日本医療機器開発機構時代に一度お会いしたことがあります。確か2018年でしたね。

河西:そうでした。あるとき合成生物学に興味を持ってネットで情報を集めていたとき、たまたま見つけたプレスリリースにLogomixと石倉さんのお名前がありました。ただその時点では確信が持てず、相澤先生にアポイントをいただいてようやく「あのときお会いした石倉さんだったと」(笑)。2021年の夏に再会して、そこから本格的なお付き合いが始まりました。

河西さんから見て石倉さんはどんな起業家だと思いますか?

河西:石倉さんは、バイオ、ゲノム領域におけるシリアルアントレプレナーです。大学発ベンチャーに付き物の大学や研究者との関係構築の難しさをよくご存じで、それを踏まえてビジネスを構築できる希有な方です。その上、相澤先生が確立した技術をどう活かせば、社会的インパクトを残せるかよくわかっていらっしゃる。とても信頼を置ける経営者だと考えています。

石倉:ありがとうございます。相澤先生を含め私たちに共通しているのは、仮説検証プロセスに欠かせない事実に基づいた議論を好むことかも知れません。それだけに意思疎通に齟齬がなく専門的なテーマでも議論が深まりやすく、有意義な時間を共有できる。私たちにとっても、河西さんはビジネスを進める上で欠かせない存在です。

河西:相澤先生もそうなのですが、おふたりともいつお会いしても目がキラキラ輝いているのが印象的だなと思っているんです。それにおふたりとも非常に真面目。以前ご一緒した会食の際「資金調達が完了するまで、飲みません。禁酒中なんです」とおっしゃっていましたよね。それで改めて、真摯な経営者なんだと思いました。小さなエピソードですが、それだけでも信頼に足る方だと感じました。業界の成長性、技術の優位性、ビジネスの将来性もさることながら、私はLogomixを率いるおふたりの輝く目を見て投資を決めたんです。

実際にAngel Bridgeから投資を受けたのはいつですか?

石倉:2022年の1月です。Angel Bridgeさんにリードインベスターになっていただき、ジャフコさんや東大IPCさんほか日米のエンジェル投資家の皆さんから総額5億円調達しました。

なぜAngel Bridgeから投資を受けようと思ったのですか?

石倉:チームとしてのAngel Bridgeの優秀さもありますが、決め手はやはり河西さんの存在です。創業社長として投資先の1社であるHeartseed(ハートシード)の創業期を支えたことからもわかるように、大学発ベンチャーをよく知る事業家であり、医療やバイオ、ゲノムなどディープテックに強い投資家としての実績を考えると、ほかに選択肢はなかったように思います。大きなビジョンに寄り添うだけでなく、現実を踏まえた落とし所を見極めた上で助言してくださるのもありがたく思います。

河西:そう言っていただいて光栄です。いまおっしゃっていただいたように、私はHeartseedの社長を3年務めた経験があるので、研究と事業を両立する難しさや大学との特許契約にまつわる交渉の大変さは身をもって知っています。こうした形で自分の経験を共有できることは、私自身にとっても大きな喜びです。

事業規模10兆円を目指す

出会いから今日まで、Angel Bridgeからどのような支援を受けましたか?

石倉:たとえば、いま事業開発を担ってもらっているメンバーや共同研究先の紹介に始まり、Angel Bridgeさんの投資先を集めた「クロスラーニングの会」で、先輩経営者を紹介してくださるなど、資金のみならず、経営のあり方や組織、制度づくりの要諦など、物心両面で地に足のついたご支援いただいています。いま話に出た特許契約の実務のほか、資本施策についても事業家としてのご自身の経験を踏まえ、中立的立場から助言していただける非常にありがたい存在です。

河西:実はLogomixさんの月次の定例会に出席するのが楽しくて仕方ないんです。理由は、出るたびに事業上の重要事項が大きく前に進んでいるからです。そういう意味でも助言や紹介のしがいがありますし、そもそもディスカッション自体がとても楽しい。石倉さんの視野の広さや経営手腕、相澤先生の専門性とオープンマインドな性格がそう感じさせてくれているのだなとつくづく感じます。

石倉:相澤先生もよく「楽しい」とおっしゃってますよ(笑)。私自身、進捗をちゃんとお伝えしなければと身が引き締まる思いがありつつも、河西さんとの議論を楽しんでいます。

今後の展開を教えてください。

石倉:たとえば冒頭に名前を挙げたGenentechやAmgen、illuminaのような各分野のリーディングカンパニーのような、バイオやゲノムの世界で一目置かれる企業の多くは、総じて単一プロダクトで勝負するというより、多様な課題解決に使えるプラットフォームを打ち出すことで大きな飛躍を遂げています。つまりLogomixがゲノムエンジニアリングでトップを獲ることができれば、彼らと並ぶ事業規模、具体的には時価総額10兆円を目指すことも決して夢ではないということ。まだまだ先は長いですが、少なくともこの世界にはそれだけの可能性があり、私はLogomixにはそれに応えるだけのポテンシャルがあると確信しています。Logomixを世界中の研究者がこぞって訪れてくれるような会社にするのが目標です。

事業規模10兆円を目指す

改めて、Logomixの投資先としての魅力は?

河西:Logomixは数ある大学発ベンチャーのなかでも際立った存在であり、革新的でイノベーティブなゲノム編集技術に加え、研究熱心で技術の社会実装に強い関心を持つ相澤先生とバイオ、ゲノム事業で豊富な経験を持つ石倉さんの強力なタッグも非常に魅力的です。私もLogomixには10兆円規模のビジネスを展開できるポテンシャルがあると確信しているので、これからもその実現に向けて全面的にサポートしていくつもりです。

最後に次代を担う若手起業家にメッセージをお願いします。

石倉:近年、衰退が指摘される日本にも世界で勝てる技術は少なくありません。私が最初に起業した2000年代初頭とは比べものにならないくらいスタートアップコミュニティは成熟していますし、投資サイドにも小さな失敗を経験として評価する機運が高まっているのを感じます。投資市場の停滞が指摘される経済環境ではありますが、もしビジネスで社会課題の解決を志すのであれば、縮こまっている場合ではありません。積極的にチャレンジすべきだと思います。

河西:今後も引き続き、投資先企業と二人三脚でビジネスを育てていくつもりです。とりわけバイオ、ゲノム領域は向こう数年で、5倍、10倍の成長が期待できる数少ない分野。そのなかでもLogomixは世界で勝負できる数少ない日本のバイオベンチャーの1社なのは間違いありません。これからも一緒に知恵を絞って、Logomixの成長を全力で後押ししていきます。

聞き手・構成/武田敏則(グレタケ)

2023.02.08 INVESTMENT

今回は、細胞ゲノムの高機能化技術を提供する東工大発の合成生物学ベンチャーである株式会社Logomixへの投資に至った背景について解説します。

合成生物学とは、組織・細胞・遺伝子といった生物の構成要素を組み合わせて代謝経路や遺伝子配列などを再設計し、新しい生物システムを人工的に構築したりする学問分野です。機能性物質の生産などへの応用があらゆる分野で期待されており、医薬品・燃料・プラスチック・食品添加剤・化粧品原料等の様々なモノを効率的に生産することが可能です。従来は捨てるはずだったものを原料にできたり、存在しなかった物質を優秀な遺伝子から作れたり、ヒト細胞の開発によって新しい創薬アプローチが実現できたり等、既存の生産手法で作っていたものやより優れたものが、合成生物学の技術を用いることで非常に安く効率的に作ることが出来る、大変可能性のある技術です。

それでは今回はAngel BridgeがLogomixに投資する際にどのような点を検討したかについて、ご紹介します。

合成生物学概要

それではまず既存の生産方法と合成生物学を用いた生産方法の比較です。合成生物学を用いた生産方法では、既存の生産プロセスが抱える各種課題の解決に寄与しています。例えばプラスチックを作る際に、従来は化石原料等を用いた化学合成技術を経て生産していましたが、合成生物学の技術を用いることで、サトウキビやトウモロコシなどを食べる優れた細胞を用い、目的生産物をより効率的に環境負荷の少ない形で作ることが出来ます。

合成生物学概要
合成生物学概要

近年の合成生物学の急速な発展の背景にはいくつかのファクターがあります。1つ目は次世代シークエンサー(遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置)の開発です。次世代シークエンサーが開発されたことで、ゲノム解析の高速化・低コスト化が急速に進展し、解析コストは2000年の10万分の1に低下しました。2つ目はCRISPR-Cas9の開発です。これによりゲノムが自由に書き換えられるようになり低コスト化も進展しました。この技術は2020年にノーベル化学賞を受賞しています。またIT/AI技術の発展によって、ゲノム配列と生物機能の関係の解明も急速に進展しました。

市場

実際に合成生物学市場は急速に発展しており、市場に新たな機会を生み出すことが期待されています。世界の合成生物学市場は2020年時点で約70億ドルであり、2027年には約300億ドルに達すると予想されています。(出所:data bridge market research market analysis study 2020)

海外では世界市場を舞台にしたメガベンチャーが多数出てきており、GinkgoAmyrisといった企業が上場しています。株主としてはKleiner PerkinsKhosla VenturesSoftbankといった大型投資家等も投資をしており、大きな資金が集まる環境となっています。

市場

日本においても、2023年1月に米製薬大手のModernaが日本のバイオスタートアップであるオリシロジェノミクスを8,500万ドルで買収したことが発表しており、注目が集まる領域となっています。

色々なメガベンチャーが出てきていますが、それぞれのベンチャーで特色があります。そもそものDNAを作るようなプレイヤーもいれば、今回のLogomixのような優れた細胞株を作るゲノム編集技術が得意なプレイヤーもいますし、実際にそれらを使って工業的に製品を作るような下流側のプレイヤーもいます。このように米国を中心に多数の合成生物学ベンチャーが勃興し、各ベンチャーの持つ技術を組み合わせたビジネス体系を形成していることが分かります。

市場

サービス概要

Logomixの技術は以下のような4つの技術から構成されています。データベースを活用する中で、どの遺伝子が有用であるかやどの部分が不要であるか等を、Logomixのノウハウやシステムを使うことで効率よく検知し、大規模にゲノムを改変することができる技術となっています。

サービス概要 サービス概要

この中でも特にUKiSという技術がLogomixのコア技術となっています。

今までのゲノム改変技術は、CRISPR-Cas9に代表されるように1箇所だけを好きな塩基に変えることができるという技術でしたが、UKiSは染色体上の大きな領域を好きな塩基配列に変えることができます。一箇所の塩基をピンポイントで変えることができるというのも素晴らしい技術ですが、全体のゲノムを入れ替える中で長い領域を変えられるというのは非常に革新的であり、様々な領域に応用できる可能性を秘めています。

サービス概要

応用例

それではLogomixの技術の応用例についていくつかご紹介させていただきます。

①CO2固定化微生物の開発
従来は水素酸化細菌にパーム油を加えることでプラスチックの工業生産を行っておりますが、Logomixが開発した優秀な人工水素細菌を用いると、CO2と組み合わせることで高機能性バイオ素材等を作ることができます。この技術ではCO2を固定し酸素を出すため、植物のように現在のCO2関連の問題に対しアプローチできるというメリットもあります。
CO2固定化微生物の開発
②独自疾患モデル細胞や治療用細胞開発を用いた創薬支援
神経系は遺伝子の異常によって引き起こされる疾患が非常に多いため、病気の患者と健常者の細胞を比較することで、どの遺伝子が原因かを1つ1つ調べるといったプロセスをせざるを得ないのが従来のやり方です。本来は遺伝子以外も人によって違うためそのノイズを合わせる必要がありますが、従来は一塩基しか変えることが出来ないため、この問題にアプローチできていませんでした。
しかしUKiSの技術では、CRISPR-Cas9単独使用によるゲノム編集よりもより広範囲のゲノム改変が可能であるため、広いゲノム領域での変異や、離れた複数ゲノム部位での変異による疾患のモデル細胞も創出可能です。
また、UKiSの技術を用いることで、誰にでも移植できる細胞であるユニバーサルドナー細胞(UDC)の研究開発を進めています。白血球型抗原(HLA)が不一致であったりHLA遺伝子が欠損していたりする他人の細胞・臓器などを移植した場合、免疫細胞に攻撃・排除される、いわゆる拒絶反応を起こしてしまう事がありますが、UDCはこの免疫拒絶反応が抑えられている細胞で、移植される患者のHLA型に適合させる必要なく移植が可能ですLogomixは免疫拒絶に関係する多くのHLA遺伝子を同時に欠損させることが出来ますが、これは大規模ヒトゲノム改変技術を世界に先駆けて開発したからこそ実現できる手法であり、世界でも前例がないものです。
独自疾患モデル細胞や治療用細胞開発を用いた創薬支援
独自疾患モデル細胞や治療用細胞開発を用いた創薬支援

経営陣

Angel BridgeがLogomixに投資するにあたり、経営チームへの理解を深めました。

まず代表の石倉CEOはバイオ・医療分野でベンチャー3社の創業経験があり、バイオベンチャーの運営やグロースのために必要なスキルセットを持ち合わせています。また相澤CSOは東京工業大学の准教授であり、合成生物学領域において非常に有能な研究者として著名な人物です。

経営陣

このように業界に対する知見/合成生物学分野における高い技術力を持ち合わせており、バイオベンチャーとしては高いバランス感覚のある稀有なチームであると考えました。

おわりに

合成生物学はグローバルで注目度が高く、メガベンチャーが多数生まれている領域です。Logomixのコア技術であるUKiSは、広範囲にわたるゲノム領域を一気に改変することができることから、従来型の一塩基を改変するゲノム編集ではカバーできない領域に応用できる可能性があります。また、バイオベンチャー3社の創業経験がある石倉CEO/合成生物学領域において非常に著名な研究者である相澤CSOは非常にバランスの取れた経営陣であり、この難易度の高い領域で戦っていけると信じています。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2023.02.01 INVESTMENT

2023年1月6日、Angel Bridgeの投資先である日本ハイドロパウテック株式会社(以下NHP)ロッテとの資本業務提携を締結したというプレスリリースが発表されました。

今回は、Angel Bridgeが合成樹脂押出技術を食品加工に応用したフードテック企業であるNHPへ投資した理由を解説します。

盛り上がるフードテック市場

盛り上がるフードテック市場

(出典:経済産業省「フードテック振興のアイデア」)

現在、フードテック市場は成長し続けています。経産省によると世界のフードテック市場規模は、24兆円(2020年)から279兆円(2050年)と30年間で10倍以上に急拡大する見込みです。領域も代替肉や昆虫食、陸上養殖、植物工場など多岐にわたります。

この市場急成長の背景としては、食料不足や健康・栄養問題、食料生産による環境問題などのグローバルな社会課題の顕在化があります。これらの課題を解決できる産業としてフードテックが期待されています。

盛り上がるフードテック市場 (出典:2022 AgFunder AgriFoodTech Investment Report)
盛り上がるフードテック市場
盛り上がるフードテック市場

例えば海外では代替肉を開発するBEYOND MEATが評価額$1.4B、代替乳製品を開発するOatlyが評価額$10BでIPOしました。日本国内においても近年はIPOはないものの資金調達は活発化しています。

NHPが事業展開するフードテック市場が巨大かつ今後も成長し続ける可能性が高いという点は彼らに投資を決めた背景の1つです。

NHP事業概要

NHPはCEOである熊澤氏がダイセル化学工業(現(株)ダイセル)で習得した合樹押出技術を食品加工に応用した加水分解技術をもとに事業化した会社です。当初は米を原料とした加水分解物の製造受託を中心に取り組んでいましたが、更なる高付加価値化を目指し、高単価なチョコレートや昆虫食、バイオエタノール等を新たな事業の柱と位置づけてフードテック領域に本格参入しました。

NHP事業概要

合樹押出技術はプラスチックなどの着色、コンパウンドを製造する際に使用される技術であり、食品業界ではスナックの製造に使用されています。押出機内で加水分解を安定的に起こすためには材料に応じてスクリュー形状の変更や温度調整などを行う必要があるため、高いレベルでの知識・ノウハウが要求されます。NHPではCEO熊澤氏とCTO中林氏の高い技術力により、合樹押出技術の食品業界への応用を実現しました。

NHP事業概要

NHPの製法は従来の加水分解製法と違い、高粘度の原料を低い酸素濃度、高温、高圧で剪断加工を行うので、原材料が分子レベルで分解し、炭化もしません。これによって従来よりも効率的に、また高品質な食品を製造することができます。さらに製造の際の環境への負荷も少なくなっています。特に、高品質なチョコレートや昆虫食を作るための技術(無菌化・微細化)が備わっている点は他社との明確な差別点となっています。

他企業との共同開発・業務提携

他企業との共同開発・業務提携

チョコレート・昆虫食・バイオエタノールを事業の柱にしていくにあたり、NHPは各領域でパートナリングを行い、共同研究開発や販路拡大を推進しています。

チョコレート領域ではロッテと資本業務提携契約を締結したことが発表されました。ロッテは現在、サスティナビリティに向けた取り組みに力を入れており、「DO Cacao chocolate」という新ブランドの立ち上げやチョコレート会社の買収など積極的に活動しています。NHPの加水分解技術とロッテの資本力・開発力が合わさることで、さらにチョコレート事業が加速していくことが予想されます。

他にも昆虫食領域では同じくフードテック企業であるエコロギー社との業務提携契約を締結して製造を受託していたり、バイオエタノール領域ではGreen Earth Institute社と業務提携を結び、成長が著しいSAF市場で国産SAFの商用化に向けた取り組みに貢献していたりします。

このように様々な領域でリーディングカンパニーと提携できていることが、NHPの技術力の高さや業界内での評価の高さを表しています。

経営陣

投資を検討するにあたって、経営陣への理解も深めました。

経営陣

CEOの熊澤氏は、ダイセル化学工業で10年以上合樹押出技術についての知識/ノウハウを蓄積し、さらにそれを食品加工に応用するという革新的なアイデアを持った優秀な経営者です。面談を重ねていく中でIPOへの強い思い、そして自身の技術への強い自負が感じられました。

CTOの中林氏も熊澤氏と同じくダイセル化学工業出身です。機械設備導入や工場のオペレーションの指揮を行っています。機械に関する高い知見と経験を持っており、製造のプロフェッショナルとしてNHPを支えています。

COOの杉村氏は証券会社・コンサルティング会社出身のビジネスマンです。ベンチャー企業や新規事業開発支援の経験が長く、事業開発のプロフェッショナルとしてNHPにコミットしています。

このように、革新的なアイデアを持つ熊澤CEOとそれを実現できる優秀でバランスのとれた経営陣で、事業を力強く推進できる点がNHPに投資する理由の1つとなりました。

おわりに

ここまでNHPへの投資理由について解説しました。まとめるとNHPの魅力的な点としては(成長する巨大市場)×(革新的な技術)×(優秀な経営陣)の3点が挙げられ、メガベンチャーになる要素が詰まっていると考えています。今後は海外市場への参入や自社ブランド商品の開発などを目指しており、さらなる成長が期待できます。

Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、難しいことに果敢に取り組むベンチャーを応援していきたいと考えています!事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!