2024.04.25 INVESTMENT

2024年4月に株式会社XAION DATA(以下XAION DATA社)は、シードラウンドにおいて累計4.5億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。

XAION DATA社は、オープンデータを活用したダイレクトリクルーティングSaaSをメインにサービスを提供するテックスタートアップです。オープンデータを活用したビジネスは、海外でZoomInfoをはじめとしたメガベンチャーが複数提供しており、注目度が高い市場です。そこでXAION DATA社はコア技術であるオープンデータ取得/構造化技術を用いた独自データベースを強みとし、HR領域でサービスを展開しています。既にエンタープライズ企業やメガベンチャー企業への導入が進んでおり、今後の期待が大きいスタートアップです。

今回の記事では、Angel BridgeXAION DATA社に出資した背景について、ダイレクトリクルーティング市場を取り巻く環境とXAION DATA社の強みに焦点を当てて解説します。

1.ダイレクトリクルーティングの市場構造・動向・課題

ダイレクトリクルーティングとは、企業の採用担当者が候補者に直接アプローチをする採用手法です。具体的には、企業はビズリーチやLinkedInなどのプラットフォームを活用しながら、望ましい候補者を自らの手で探しアプローチします。候補者が企業にアプローチをかけるなどの従来の他の採用手法と比べ、企業側の採用工数がかかるものの人材のマッチング精度が高いことが特徴です(図1)。

 

図1 各人事採用手法の特徴と比較

ダイレクトリクルーティング市場は海外を中心に拡大している巨大市場であり、今後は日本においても急成長することが見込まれています。実際に市場規模は毎年31%で伸びており、足元では市場規模が1,000億円を超えています(2)。また、足元でプロフェッショナル人材の流動性が高まっており、特に年収の高いミドル/ハイレイヤー人材へのニーズが強いことも理由の一つです(3)。ミドル/ハイレイヤー人材はリファラルのみで採用が決定することも多いために、既存サービスでは発見することが難しく、能動的にアプローチをかけるダイレクトリクルーティングの必要性が高まりました。実際にビズリーチに続く形でリクルートやオープンワークなどの人材採用サービス各社もダイレクトリクルーティングサービスへ新規参入しています。

 

図2 急成長するダイレクトリクルーティング市場

しかし、ビズリーチなどの既存サービスにはまだ課題が残っています。既存のサービスでは、若手層などの転職意欲が高い候補者がプラットフォームに登録し、マッチングが行われることから、短期間で採用に繋げられる候補者へのアプローチには適しています。一方で、スペシャリスト人材やミドル/ハイレイヤー人材は既存サービスには少なく、アプローチしにくいというペインが存在しています(図3)。そこでXAION DATA社はこのようなペインを解決すべく、オープンデータを活用して、既存の登録型サービスには登録されておらずアプローチが難しいスペシャリスト人材やミドル/ハイレイヤー人材などの転職潜在層も含めた候補者へのアプローチが可能なサービスを提供しています。このサービスの提供を開始した背景には、202210月の職業安定法の改正(オープンデータを採用に利活用する事業に関するルールを整備する内容を含有)があり、時流を捉えたサービスとなっています。XAION DATA社は米国を始めとした海外でのオープンデータの利活用の潮流に着目し、日本における今後の法律改正を睨み、事業を創ってきていました。その結果、202210月の法律改正後いち早くサービスを展開しています。また、2023年には、厚生労働省の優良企業者認定制度発足にむけた有識者ヒアリングに招集されるとともに、2024年3月には厚生労働省の定める「優良募集情報等提供事業者認定制度」において、国内初で唯一の4号優良認定事業者に認定される等、リーディングカンパニーとしての立ち位置を確立しています。

図3 ダイレクトリクルーティング業界の課題

以上のように、ダイレクトリクルーティング市場は大きな需要の拡大が予想されておりポテンシャルがあるものの、そのニーズに応えられているプレイヤーは少なく、XAION DATA社にとっては非常に魅力的な市場環境と考えています。

2.XAION DATA社の事業概要

XAION DATA社が提供しているサービス/プロダクトは主に3つあります(図4)。

1つ目はSaaS事業で、足元ではXAION DATA社の独自データベースとAIモデルを活用したダイレクトリクルーティングSaaSである「AUTOHUNT」を提供しています(図5)。SNSやメディアなどのオープンデータから集めた430万人以上の転職潜在層も含めた人材データベース(推定年齢/職歴/学歴/スキルなどの情報を含有)を構築しており、顧客企業の求人情報に合致する候補者の特定とアプローチが可能です。

2つ目は人材紹介事業で、自社独自のデータベースや「AUTOHUNT」を活用した人材紹介支援サービスを顧客に向けて提供しています。

3つ目はソリューション事業で、XAION DATA社の保有データと顧客保有のクローズドデータを掛け合わせ、顧客のニーズに合わせた独自のAI/Dataソリューション(コンサルティングなど)を提供します。

図4 XAION DATA社事業全体像

 

図5 「AUTOHUNT」プロダクト画面

3.XAION DATA社の競合優位性

ダイレクトリクルーティングサービスを提供している会社は複数社ありますが、その中でも情報が表に出てこない転職潜在層に焦点を当て、ミドル/ハイレイヤー人材にもアプローチが可能なサービスを提供している企業はあまり存在しません。しかし、XAION DATA社はオープンデータを活用しながら転職潜在層を探すという新しくユニークな人材紹介アプローチに取り組んでいます。

XAION DATA社の強みは、大きく分けて2つあります。

1つ目は、圧倒的な技術力の高さです。XAION DATA社は様々なオープンデータを収集/統合する独自アルゴリズムを構築しており、他社でも入手困難なデータにアクセスし、一つのデータベースに統合しています。ユーザーデータや各企業のクローズドデータとの統合や連携も可能なため、オープンデータと掛け合わせることで独自のデータベースを構築することが可能です。他社が模倣して同様のデータベースを構築することは困難なため、参入障壁が非常に高いサービスだといえます。

2つ目は、事業拡張のポテンシャルの高さです。XAION DATA社独自のデータベースは汎用性が高く、このデータベースを活用して足元ではダイレクトリクルーティングSaaSの「AUTOHUNT」を提供しています。今後も独自データベースを基にマーケティング/認証領域などの関連領域においても、様々なプロダクトを提供していくことも期待できます。

4.経営陣

XAION DATA社には高いプロダクト開発力と事業推進力を有する、非常に優秀で強力な経営陣が集まっています。佐藤CEO/石崎CTOは、米国シリコンバレーのAIスタートアップにて採用プロセスと求職プロセスをAIによって効率化/最適化するサービスの責任者として事業展開/開発に従事した経験があり、当事業領域において解像度と開発力の高さを持ち合わせています。また、ゴールドマン・サックス証券の投資銀行部門(IBD)やインベスコ・アセット・マネジメントで活躍してきた金谷CFOをチームに迎え入れており、佐藤CEOがいかに高い巻き込み力を有しているかが伺えます。(図6)。

 

図6 XAION DATA社経営陣

5.おわりに

最後に、Angel Bridgeの今回の投資のポイントをまとめます。

1つ目は、オープンデータを活用した転職潜在層のダイレクトリクルーティングには巨大な市場ニーズがある点です。企業規模に関わらず、プロフェッショナル人材の採用ニーズは高く、転職潜在層に効果的にアプローチするソリューションは今後急速に伸びていくことが考えられます。一方でオープンデータを活用したダイレクトリクルーティングサービスを提供している企業は少なく、先行者優位を活かして独自のポジショニングを構築することで大きな市場を狙えるポテンシャルがあります。

2つ目は、優秀な経営陣です。米国シリコンバレーのAIスタートアップで経営陣として組織を率いた経験を有しており高いリーダーシップ能力やマネジメント能力を持っている佐藤CEOに加え、オープンデータを収集/統合する独自アルゴリズムを開発するなど高い技術力を有しておりCTOとしてのマネジメント能力も兼ね備える石崎CTO、戦略的な思考力を発揮しながら卓越した営業力でエンタープライズ企業やメガベンチャー企業を獲得する金谷CFOがそれぞれ違う強みを持ち合い、強いコミットメント力で一丸となってこの事業に挑戦していることが最大の武器となっています。

3つ目は、他社には模倣困難な高い技術力を有しており、その技術を用いて構築した独自のデータベースを他の事業領域にも応用できるポテンシャルがある点です。他社が入手困難なデータも含めて広範にオープンデータを収集/統合した独自のデータベースはそれ自体に価値があり、汎用性の高さから足元で提供しているダイレクトリクルーティングSaaS以外にも様々な事業領域でプロダクトを開発して提供していくことが期待できます。

4つ目は、急速に立ち上がるトラクションです。「AUTOHUNT」は正式リリース後、約1年の短期間で複数のエンタープライズ企業やメガベンチャー企業がサービスを導入しており、既に売上高が積み上がってきています。初期からこれだけ多くのエンタープライズ企業やメガベンチャー企業にサービスを導入できるスタートアップはそう多くはありません。XAION DATA社の技術/ビジネス両面でのケイパビリティの高さを示す何よりの証拠です。

以上の観点から、XAION DATA社が新しくユニークなダイレクトリクルーティング市場の開拓を行い、GDP向上に大きく寄与する存在となることを信じ、またその想いに共感し、投資の意思決定をしました。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2024.04.18 INVESTMENT

2024年4月にAngel Bridgeの投資先である、goooods株式会社(以下goooods社)が6.7億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドでリード投資家として出資しています。

goooods社は、連続起業家である菅野CEOと松本CPO/CTOら計4名で創業した、雑貨・アパレル、美容品などの業界におけるB to B卸ECプラットフォーム『goooods/グッズ』の提供を行うスタートアップです。

「Everyone, entrepreneur」をミッションとして掲げ、情熱を追い求めてプロダクトを作るブランドオーナーや、小売店の経営者、次のトレンドを発掘するバイヤーなど、自身の情熱を追いかけて日々挑戦する人々を支援しています。

『goooods/グッズ』は、販路拡大や商品発掘で課題を抱えている、主に中小規模のバイヤー(小売店・EC)とセラー(ブランドメーカー)向けのECプラットフォームで、魅力的な商品の発掘や拡販、受発注業務の効率化、資金繰りまでを一貫してサポートします。
『goooods/グッズ』を使用することで、バイヤーの趣向に合わせた全国の魅力的な製品の発掘が容易になり、書類作成や取引・入出金管理などの受発注業務の効率化や資金繰りの改善も可能となります。また、セラー側も業務効率化に加えて、入金漏れの防止や全国や海外への販路拡大も可能になります。

今回の記事では、Angel Bridgeがgoooods社に出資した背景について、巨大かつ生産性改善の余地が大きいB to B卸業界を取り巻く環境と、goooods社の強みに焦点を当てて解説します。

goooods株式会社 | 資金調達特設サイト

今回の資金調達にあわせて『goooods/グッズ』の魅力をお伝えする 特設サイト を開設しています。

プラットフォームの魅力、裏側の技術、導入事例、採用ポジションなどを掲載しておりますので、こちらも併せてご覧ください!

1. B to B卸業界の動向と中小事業者の抱える課題

goooods社が対象とする雑貨・アパレル、美容品などのB to B卸業界の流通総額は全体で38兆円、中小企業の取引のみでも5兆円の規模がある巨大な市場です。その中で卸事業者などの中間業者の収益は15~20%を占めており、中小企業の取引だけでも約1兆円近い収益規模が存在します。

現状、卸業務は対面やメール、FAXを通じた取引が多く、EDIを除くEC化率は11%と拡大余地が大きく残っています。一方で、コロナによってオンライン取引に対する事業者の認知度合いや意識の変化もあり、EC化率は成長基調になっています。(図1)

また、従来の卸業者も各業界で社数が減少傾向にあり、これまで提供してきたきめ細かいサービスが行き届かなくなりつつあります。現状、B to C領域においては生活雑貨・家具、ファッションは20~30%ほどのEC化率である一方で、B to Bでは15%にとどまっており、goooods社が対象とする雑貨、ファッションなどの業界ではEC化率が伸びる余地が十分存在すると考えられます。

1. B to B卸業界の動向

海外でも同様の課題感から雑貨やアパレルなどを扱うB to BEC市場が立ち上がっており、米国ではFAIRE、欧州ではAnkorstoreなど、デカコーン、ユニコーンが誕生しています。両社ともに中小企業向けに雑貨・アパレル商品を対象にECプラットフォームサービスを展開しており、今後日本でも同様のサービスへの需要が高まっていくと想定されます(図2

2 海外の類似企業

現状、日本のB to B卸業界では、大企業と中小の事業者で取引におけるシステムの活用状況が異なっています。
大企業では、投資体力やその仕入れの種類・数量の大きさから受発注システムへの投資が進んでおり、EDIと呼ばれる大量かつ、繰り返しの多い受発注を自動的に行えるシステムを用いて受発注業務を効率化しています。

一方で、中小の事業者においては一部の業務に特化した効率化ツールの導入が進む一方で、商品の発掘・販売から受発注、入出金管理までを一貫して行えるプラットフォームが少なく、セラー側とバイヤー側でそれぞれ課題が発生しています。

セラー側の課題

  • 受発注業務: 売上向上につながる営業やマーケティングに時間をかけたい一方で、注文処理から発送処理、入金管理の業務に追われ、深夜まで作業する場合もあり
  • 入出金管理: また、現状紙やエクセルで取引管理しているため、作業の非効率性に加えて入金漏れが発生し、確認漏れへの不安からバイヤー側への催促もしづらく、売上損失も発生
  • 商品拡販: 商品を全国に拡販したいが、営業人員不足や展示会への参加費用や時間をねん出できない。また、こだわりのあるブランドをこだわりを持って陳列・販売してくれる質の高いバイヤーを探すのが難しい

バイヤー側の課題

  • 商品発掘: 魅力的なブランドや売場のテイストに合った商品、売れ筋商品を仕入れたいニーズがあるが、展示会での参加には時間や費用が掛かり、またオンラインでは情報が十分でなく、探しきれない
  • 受発注業務: 問い合わせや取引条件の交渉が手間。発注・経理作業が手間
  • 資金繰り: 発注管理や経理業務に時間がかかる上に、業界構造上前払いが多く、資金繰りにも苦労

各業界の卸事業者の減少を踏まえると、当該課題に対する意識はより大きくなっていくと考えられます。

図3. B to B取引における中小事業者(セラー、バイヤー)の課題

2.プロダクト概要とgoooods社の強み

前述したペインを解決すべく、goooods社は中小事業者を主な対象に、魅力的なブランドのマッチングから受発注DX、資金繰りまでをワンストップで支援するB to BECプラットフォーム『goooods/グッズ』を提供しています。

主な特徴は以下の3つであり、卸業務における各プロセスのペインに対して一貫して解決可能なECプラットフォームを提供しています。

1.エッジのある魅力的なブランドの発掘 / 拡販

バイヤー

  • AIを活用し、バイヤーのセンスや店舗のテイストに合うブランドの発掘が可能
  • 新規購入ブランドであれば、30日間お試し可能

セラー

  • 魅力的なブランドストーリーや豊富な商品説明
  • 全国や海外も含めた新しいバイヤーの獲得

2.受発注管理業務の効率化

  • 取引先とのコミュニケーションや取引関連書類の発行や管理が一元化でき、付加価値の高い業務(商品発掘、接客やマーケティングなど)に注力可能
  • 顧客に応じた取引条件のルール化ができ、条件のきめ細かい設定が可能

3.資金繰り支援

  • 支払・入金状況の可視化により、入金や支払い漏れを防止
  • バイヤー側は支払い期間を最大60日間まで延伸可能

4. goooods/グッズ』のウェブサイトイメージ

また、goooods社は非常に開発力の高いチームのもと、UI/UXやデザインの優れたプラットフォームを構築できています。加えて、AI/MLを活用したアルゴリズムによって、バイヤーのセンスを元にした商品提案が可能になり、バイヤー側の訪問頻度も非常に高く、根強いユーザーの獲得に成功しています。

ECプラットフォームは、構造的にセラーとバイヤーを獲得するにつれてプラットフォームの価値が高まる事業モデルであり、一度軌道に乗れば急速な成長を実現し、winner-take-allになる可能性を秘めています。実際に海外の類似企業であるFAIREAnkorstoreでもネットワーク効果が働き、加速度的な成長を実現しています。

3.経営陣

goooods社には有数のテック企業での経験を持ち、スタートアップの創業からExitまでの経験がある経営陣が集っています。

菅野CEOは、前職FIVE社を2014年に起業し、わずか3年でLINE社に大型売却した優秀な連続起業家です。FIVE社は、現在公開されている20142023年のスタートアップの売却額でも上位に位置するなど、成功したM&Aの一つになっています(図6)。
菅野CEOは、非常にロジカルである上に、創業初期に泥臭く営業に同行するなど、行動力も高い優秀な経営者です。

また、ワークスアプリケーションズや動画DSPスタートアップのリードエンジニアを経てFIVE社を共同創業した松本CPO/CTOや、PwCおよびBooz Allen Hamiltonで戦略コンサルタントとして従事し、GoogleAmazonなどのテック企業を経た埜々内 CCOなど。優れた経営陣がそろっています。経営チーム以外のメンバーに関しても、FIVE社のコアメンバーが在籍しており、スタートアップでの経験が豊富なチームとなっています。

5. goooods社経営チーム

6. 過去10年間のスタートアップのM&A額上位15社(非公開案件除く)

4.おわりに

B to Bの卸市場は、非効率なオフライン取引、アナログな作業が中心で、EC取引やDXによる生産性の向上余地が大きく残る市場です。また、コロナを契機に、特に中小事業者を中心に商品発掘・販路開拓や受発注効率化、資金繰りに対する課題がますます浮き彫りになりました。上記の課題感からECでの取引や受発注業務のDXは今後加速していくと考えられ、B to Bの取引においても、ECプラットフォームが今後重要性をさらに増していくと考えられます。

goooods社は、LINE社に前職のFIVE社を売却した経験をもつ連続起業家の菅野CEOを筆頭に有数のテック企業やスタートアップでの経験が豊富な経営陣のもと、巨大なB to B卸業界の変革を粘り強く成し遂げていけると、我々も期待しています。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。
ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2024.04.10 COLUMN

自己紹介

第1弾第2弾に続き、今回はAngel Bridgeにて2022年12月から2024年1月まで約1年間インターンを経験した、二人のインターン生がインターン体験記事をお送りします。

河村こんにちは。東京大学法学部4年の河村有里子です。2024年4月から外資系投資銀行に入社予定です。

瀬川皆さん、こんにちは!瀬川と申します。東京大学経済学部に所属し、同じく2024年4月から外資系投資銀行に入社予定です。

今回は私たちがAngel Bridgeでの1年間のインターンについて、業務内容やインターンを通した学びを共有しようと思います。近年は長期インターンがポピュラーとなっている一方で、インターンがどのような業務内容でどんな学びが得られるのかが見えにくく、不安を持っている方もいらっしゃるのではないかと思います。この記事を通して、Angel Bridgeのインターンについて興味を持っていただけると幸いです。

Angel Bridgeのインターンに応募した経緯

河村

まずAngel Bridgeに応募したきっかけについて話していきたいと思います。
私は、就職後の足腰を鍛える、スタートアップへの理解を深めるという2軸でインターンを探していました。

第一に「就職後の足腰を鍛える」ですが、これはプロファームで仕事をするにあたってのマインドセットを鍛えることが主な目的でした。

そのためには、「優秀なメンバーのいるチーム」で「責任感を持って働くこと」が重要だと考えていました。その点、Angel Bridgeは他の企業と比べて、少数精鋭で戦略コンサルや投資銀行出身の方が多いVCであったこと、インターン生に対する要求水準が高く、良い意味で学生扱いされないように感じたことが、印象的でした。また、過去のインターン生が実際にコンサルファーム等で活躍している話を聞き、ジョインしたいと思うようになりました。

実際に入社してみても、主要な会議に全て参加できたり、タスクベースではなく課題ベースで仕事を依頼されたりと、会社の全体像を把握しながら、自分の頭で考えて業務を遂行する必要があり、まさに期待通りの環境でした。自分が取り組みたい業界や案件があれば、ある程度自由に手を挙げて関わることができた点も良かったです。

第二に「スタートアップへの理解を深める」ことについてです。周囲に起業したり、ベンチャー企業・VCでインターンする人が増え、多くの資金が流入している業界や技術トレンドの話を耳にすることがあり、自分も最先端の領域についての見識を深めたいと思うようになりました。情報の流れが速いスタートアップの世界は、しっかりと内部に入らなければ詳しくなれないと考え、学生生活の残り1年はベンチャーキャピタルで働こうと決意しました。

瀬川

Angel Bridgeのインターンに応募したきっかけはサークルの知人の紹介でした。実際に応募した理由は次の2点です。

第一に既に投資銀行に内定しており、入社前に社会人としての基本的なスキルを身に付けたかったためです。Angel Bridgeは代表パートナーの河西を中心に、プロファーム出身のキャピタリストが在籍しており、プロファームの働き方を学べそうだと感じていました。

第二に以前マーケティング企業でインターンをしていた際に、営業活動でスタートアップの方と話す機会が多く、スタートアップビジネスに興味を持っていたためです。大企業が腰を据えて取り組めないニッチ分野を掘り起こして大きなビジネスに育て上げる過程に興味がありました。様々な業界のスタートアップに触れてみたかったのでVCは最適な環境だと考えました。

インターンを通じて身につけたいことや知りたいことを明確に考えることが、インターンでの学びを最大化する秘訣ではないかと思います。応募を考えている方はインターンを通じて何を学びたいのか考えておくと良いでしょう。

Angel Bridgeでの業務内容

Angel Bridgeのインターンは全ての投資業務に関わっています。

ソーシング

ソーシングとは投資先候補を探すことを指します。具体的にはスタートアップのロングリストを作成し、話を聞いてみたい企業をピックアップします。私たちはインターンとして、ロングリストの作成や企業の評価付けを行いました。初めはビジネスモデルを理解するのに時間がかかり大変でしたが、慣れてくると強弱をつけて情報を見ることができました。

また最新のトレンドを知り、投資に生かすために、高いリターンを出している海外VCの投資先を調べ、業界トレンドや先進的なビジネスモデルの勉強も行います。

他にはスタートアップとの面談にも同行します。インターンの業務としては議事録をとり、社内報告用のメモにまとめます。この際に担当キャピタリストと議論を行いながら、どのような点が評価できるか、一方で懸念点は何かなどを考えます。このような経験を通して、短期間でビジネスモデルの本質を見抜き、まとめる力がつきます。

投資検討

次のステップとして、業界リサーチを行います。キャピタリストから依頼された調査事項を元に、市場環境は魅力的なのか、競合は誰でどのくらい脅威かなどを定性/定量的に調べていきます。

簡易なリサーチやスタートアップの経営陣との議論の中で投資の確度が高まってくると、本格的な投資検討(デューデリジェンス)に入ります。スタートアップの経営陣から貰ったデータを元に、エクセルでKPIを計算し、考察を行います。それらをパワーポイントやワードなどでビジュアライズし、投資会議に向けた論点の整理/検証を進めていきます。

検証の結果、ぜひ投資したいスタートアップに巡り合うと、投資の妥当性を説明するための投資委員会資料を作成します。インターンは担当キャピタリストが作ったストーリーを元に、根拠となる分析やチャートを作成します。市場環境や競合リサーチなど自分が特に注力して調べたスライドは、何を書くべきかについてゼロベースで考え、キャピタリストと議論を行います。

図1 不動産の売買仲介市場の構造

マーケティング

記事作成

ベンチャーキャピタルについての理解を深める記事(スタートアップアカデミー)や、なぜAngel Bridgeが投資したかを説明する記事(投資の舞台裏)を書いています。キャピタリストにベンチャーキャピタルの業務についてインタビューをしながら記事を書くので、ベンチャーキャピタルにおける投資の意思決定への解像度が上がります。

マーケティング数値分析

記事は作成するだけで終わりではなく、どれだけ読まれたのかを分析/改善することでPDCAを回していきます。具体的にはPV数などの各種KPI数値を時系列で取得し、数字が変化した要因は何か検討したり、その要因を踏まえた上で次はどんなテーマで記事を書くのか議論を行ったりしています。

インターンでの学び

仕事への姿勢

自分で仕事を獲得する

主要なMTGに参加し常に会社の全体像を把握できるため、自分で仕事を見つけやすいです。先回りしながら自分ができる業務はないか、面白そうな仕事はないかを見渡していました。

定期的に実施されるキャピタリストとの1on1などで最近注目しているスタートアップ・業界をヒアリングし、自分の興味がある業界であれば、ぜひリサーチやデューデリジェンスに参加したいという意思表示をするよう心がけていました。もちろん会社の為に何ができるのかを考える事は必要ですが、主体的に自分がやりたいことを見つけ、楽しく仕事ができるかも等しく重要だと思っています。

また、自分がイベントで出会った企業の中で、良いと思った企業の投資検討も行いました。それまでにサポートした投資検討での経験を活かし、社内メンバーに企業の概要や投資すべき理由を説明したり、貰ったデータを元にKPIを分析しました。結果的に投資には至りませんでしたが、手探りの中、自分で主導権を握って仕事を進める良い経験になりました。

さらに、面白そうな仕事を探すだけでなく、やるべき仕事に気づくという観点もあります。マーケティングはインターンが主導する場面も多く、それ故に課題に気づくことが多くありました。HPの改変や記事のヘッダー作成など、細かい点をアップデートしていきました。次期のインターンがスムーズに業務を理解できるようなマニュアルの作成など、投資業務の合間に自分が見つけた課題を少しずつ潰していきました。

タイムスケジュール管理 ・マルチタスク 

インターン中は常に複数のプロジェクトにジョインしていたため、マルチタスクをこなすスキルが身につきました。仕事の工数を推測し、社員とのタッチポイントを自分からセッティングし、求められるクオリティのものを期限内に出す。当たり前のことですが、複数のプロジェクトに入っていると最初のうちは慣れなくて大変でした。インターンを続ける中で、優先順位の付け方や自分のキャパシティの見極め方が徐々に分かるようになり、マルチタスクができるようになりました。社会人になる上で必須の力なのでAngel Bridgeで鍛えることができてよかったです。

知識

リサーチする中での業界理解 

IT企業は複雑な構造をしている業界も多く、パッと見ただけではビジネスモデルの本質が見抜けないことも多々あります。Angel Bridgeのキャピタリストはコンサルティングファーム出身者が多いため、どのような項目を検証すべきかなどの見立てが上手く、短時間で深い示唆を出すことができていました。そのような方のリサーチをサポートすることで、ビジネスモデルのどの部分を見るべきか、どうしたら短時間で検証項目の結論を導き出せるかを学ぶことができました。

起業に関する知識

スタートアップとの面談や社内議論に参加することで、実際に投資家が何を見ているかを知ることができました。また、投資委員会に向けた資料作成やVCファイナンスに関する記事執筆を通してVCファイナンスについて知識を得ることができました。起業に対しての解像度が上がり、将来起業することやスタートアップで働くことへのハードルが下がったように感じます。

図2 キャピタリストとのディスカッション

その他

ハードスキル 

初めにエクセル講座やパワーポイント講座を開催していただいたので、ショートカットをすぐに習得することができました。また業務を通して膨大なエクセルとパワーポイントを作成し、都度フィードバックを受けるので投資銀行やコンサルに就職する方にはとても有用だと思います。

起業家と話す機会 

Angel Bridgeでは、BBQやフットサルなど多くの社内イベントがあります。インターン生も毎回参加し、多くの起業家と話します。どういう経緯で起業したか、会社をやっていく中で辛かったことは何かなど、リアルな経験談を気軽に伺うことができます。

図3 投資先の皆様との懇親会の様子

優秀な社員やインターン生との交流

Angel Bridgeの社員は優秀でフレンドリーな方ばかりです。社員の方から伺う仕事への思い入れや、プロフェッショナルファーム時代の体験談は今後社会人として働く中で大きな糧になると思います。また、インターン生も意識の高い学生ばかりなので良い刺激をたくさん受けました。

図4 インターン卒業時の送別会

インターンに応募してほしい人

Angel Bridgeのインターンは以下のような人に特におすすめです。

①コンサル・外銀などプロフェッショナルファームに入社予定がある、または目指している方:Angel Bridgeのキャピタリストはプロフェッショナルファームで活躍していた経験を持つ方ばかりです。エクセルやパワーポイントなどのハードスキルから、仕事の進め方やプロフェッショナルとしての心構えなどソフトスキルまで、ビジネスマンとしての素養を磨く素晴らしい機会となるはずです。

②起業・VCを将来のキャリアとして検討している方:Angel Bridgeのインターンでは、他VCに比べ、より投資業務の本質的な部分に関わることができます。インターン生はキャピタリストと共にDDを進め、投資検討のための会議に参加することで投資家としての目線を培うことができます。

③学生時代に本気で取り組めることを探している方:Angel Bridgeのインターンは原則週3以上の出勤がマストとなっております。(試験・旅行の際は事前に申請すれば調節可能です)業務内容も本格的で取り組みがいがあるものばかりなので、インターンに本腰を入れて取り組みたい方におすすめです。

最後に

Angel Bridgeでは本格的にVC業務に関わることができ、優秀なキャピタリストからプロフェッショナルとして働く心構えやスキルを学ぶことができます。エクセル講習など研修プログラムもしっかりとしているため、これまでインターンをしたことが無い方でも安心して応募してくださいね。

また、社員の方は皆さんフレンドリーでランチや飲み会もよく誘ってくれ、1on1などでは親身に相談に乗ってくれます。こうしたAngel Bridgeならではのネットワークもインターンの大きな魅力です。

この記事を読んでAngel bridgeのインターンに興味を持った方はぜひホームページTwitterから応募してみてください!

2024.04.09 INVESTMENT

2023年9月に、Angel Bridgeの投資先であるクラフトバンク株式会社(以下クラフトバンク社)が、シリーズAラウンドにおいて累計14.2億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。

クラフトバンク社は、専門工事会社向けの経営管理SaaS 『CraftBank Office』 の提供を行う建設テックスタートアップです。従前、アナログで非効率なツールを組み合わせて行っていた事務作業を一元管理し、スマホで完結するプロダクトを提供しており、職人や経営者の事務作業負担の削減によって、専門工事会社の売上成長を目指します。

建設業界では、高齢化や労働人口の減少に伴う人材不足の深刻化により、長時間労働が常態化しており、改善の困難さから「働き方改革関連法(2019年4月施行)」の適用に5年間の猶予期間が取られていました。

2024年4月より適用が開始された事から、「2024年問題」と称して労働環境の是正が目指されましたが、思うように解決されていないのが現状です。今回の投資が、クラフトバンク社の成長を促進し、建設業界の作業効率化、働き方改革の一助になる事を期待しています。

この記事では、Angel Bridgeがクラフトバンク社に出資した背景について、専門工事会社を取り巻く環境と、クラフトバンク社の強みに焦点を当てて解説します。

建設業界の市場構造

まず、建設業界の全体像を説明します。

建設業界は、下図のように大きなピラミッド構造となっており、実際の工事実務を担うのは、二次請け以下の専門工事会社になります。専門工事会社では、大工や左官などの職人を中心とした10-20人程度の規模の会社が多く存在しています。クラフトバンク社は、この専門工事会社向けに、事務作業の効率化サービスを提供しています。

建設業界の市場構造

次に、市場の概要を見ていきましょう。

上図で表されているように、専門工事会社の数は非常に多く、巨大な市場となっています。
建設業の会社数から見ると、コアターゲットとなる会社(個人事業主ではない資本金3,000万円未満の企業)だけでも22万社あり、社会基盤を支えている工事実務は、実は専門工事会社に下支えされています。また、下請完成工事高(国土交通省「建設工事施工統計調査報告」の定義に準拠)の事務作業市場から見ても、事務作業市場の規模は3兆円と、巨大な市場となります。

クラフトバンク社の事業概要

ここからは、クラフトバンク社の事業について詳しく説明していきます。

先ほど見た、巨大な市場における大きなペインは、「事務作業負担が重く、職人・経営者共に本業に集中できないこと」です。多くの工事会社は、アナログで非効率なツールを複数組み合わせて管理せざるを得ず、職人の労働時間のうち31%を事務作業が占めています。

建設業界では、長らく労働環境が厳しく、長時間労働や危険な作業環境、過重労働が懸念されてきました。これに加えて、若手労働者の離職率が高まり、同時に技術者層が高齢化しているため、新たな人材確保が難しく労働力不足が顕著になっています。

政府は、この問題を解決するため、2019年に施行した「働き方改革関連法」において建設業界も対象とし、「時間外労働の規制」を5年の猶予を付けて実施しました。しかし、ほとんどの企業でこれに対応する取り組みが進まず、建設業界はいわゆる「2024年問題」に直面しています。執行猶予の期限である2024年3月末までに、建設業界が働き方改革に本格的に取り組む必要が求められていました。

このような状況下で、事務作業の効率化などを提供するサービスへの需要は高まっており、職人、経営者の双方が本業に専念するための支援が一層必要とされています。クラフトバンク社は、専門工事会社における様々な事務作業(案件管理、見積書・請求書作成、勤怠打刻など)をスマホ完結で一元管理できるサービス『CraftBank Office』を提供しています。事務作業の効率化と業務のスムーズな進行を実現するこのサービスは、2024年問題を解決する一助となるため、そのニーズは高まる一方です。

CraftBank Officeは、現場向けと経営向けにそれぞれ提供されており、優れたUIで職人も使いこなせる上に、クラウドで情報を一元管理できることによって、現場ごとのデータを自動的にレポート化することが可能です。

リリース以来、プロダクトのラインナップも急速に拡大しており、ユーザーの利便性を高めてきました。 CraftBank Officeは、SaaSでありながら、カスタマイズして提供しているという特徴もあります。中小企業が主体となる専門工事会社は、案件管理や見積書・安全書類など、百社百様の書類と業務フローが組まれており、さらに歴史のある企業では数十年前からの自社のオペレーションがなじんでいるという一般的なSaaSには不向きな市場と言えます。

それゆえに、SaaSに合わせて業務フローを変えるのではなく業務フローに準拠した形でSaaSを提供するということに着眼しました。「SaaS」と「カスタマイズ」という一見矛盾するコンセプトを実現するため、CraftBank Officeの開発基盤は実装難易度が高い一方で、ローコードで非エンジニアでもカスタマイズ可能な設計で開発されています。CSがユーザーの業務フローや要望を要件整理した上で各社に合ったプロダクトを提供している点が CraftBank Officeの最大の特徴であり、DXが進んでいなかった専門工事の業界に風穴を開けるカギだと考えています。

投資検討の際には、CraftBank Officeの導入後、活用度合いが高い会社とあまり利用していない会社の両方に複数社ずつインタビューを行いました。初期はPMFの検証のために、専門工事会社以外にも導入が進んでいたこと、それによって適合しにくい業態があることを理解しました。一方で、直近に獲得したユーザーでは優れたUIによる導入のしやすさ、カスタマイズ性の高さが強く評価され、満足度高く利用されていました。

事業の強み

続いて、クラフトバンク社の優位性に関してです。

建設業向けに業務効率化・ソフトウェアを提供している企業という観点では、多くの素晴らしい企業があります。その多くは設計や工事管理を中心とした元請企業を対象としています。近年の建設DX気運の高まりも相まって、元請側の業務効率化は相当進んだと認識しています。

一方で、工事実務を行う専門工事会社は、SMBを中心とした市場ということもあり、なかなか業務効率化が進まなかった市場です。クラフトバンク社は、この市場に着目し、工事会社の現場と経営を中心としたSMB市場にサービスを提供していることから、プロダクトの設計が全く異なります。

米国の市場を見ても、元請け向けのプロダクトと工事会社向けのプロダクトは別のものとして棲み分けがなされており、日本国内においても両者が競合することはなく、今後も棲み分けがなされていくものと考えています。

建設業界向けにソフトウェアを提供している会社という観点では、ANDPAD、SPIDERPLUSなど多くの企業が活躍されていますが、どちらも元請の会社を対象としたツールを提供していることから、クラフトバンク社とは対象としている市場が異なると考えています。

SMB市場に着眼を置いた戦略設計を行っているということから、クラフトバンク社では、オンライン工事マッチング「Craft-bank.com」や全国30都道府県で週2回以上・計100回以上開催しているオフラインイベント「職人酒場」を展開しています。
これにより、地域都市の建設工事会社との強固な繋がりを構築していることは、Webマーケティングが通用しないこの業界でユーザー獲得を進めるにあたって、非常に大きな強みです。

これらの理由から、先行する建設DX企業が将来的に競合する可能性は高くはなく、むしろ連携を図っていくことで建設業界全体の業務効率化が一気に進んでいくものと考えています。

経営陣/メンバー

Angel Bridgeがクラフトバンク社に投資するにあたり、経営チームへの理解も深めました。

Founder/代表取締役の韓さんは、東京大学 大学院 建設学専攻を修了し、リクルートに入社。SUUMO事業・経営企画・国内新規事業を経て非HR領域の東南アジア・欧州展開を主導し、自ら買収ディールを行ったQuandoo GmbHでMDを務めます。その後、内装工事会社・ユニオンテックに経営参画し代表取締役を経験され、そこからIT部門をMBOして設立したのがクラフトバンクという会社です。事業経験、経営経験が豊富で、かつ内装工事会社の当事者として業界にも深く入り込んで解像度高く顧客を理解していることが強みとなっています。

各業界で経験を積んだ強力なメンバーも多数参画しています。CPOの武田さんや、VP Partner Salesの田久保さんといった若い経営陣が事業を主導していることからも、優秀な若手を巻き込む力も持ち合わせていることがわかります。

複雑で参入障壁の高い建設業界において、頭脳明晰で事業推進力が高いのはもちろんのこと、業界の当事者としての経験を併せ持ち、ウェットな関係性を構築し信頼を得ることのできる韓さんは、まさにこの業界にフィットした経営者であり、本事業を進める上でこれ以上ない人物であると考えました。

おわりに

最後に、Angel Bridgeの今回の投資のポイントをまとめます。

1つ目は、巨大な市場があり、その中で独自のターゲット層にアプローチできていることです。建設業界という非常に大きなピラミッド構造の中で、クラフトバンク社は二次請け以下の専門工事会社向けにサービスを展開しています。この層の会社数は多く、コアターゲットとなる会社(22万社)の事務作業市場で3兆円のTAMが存在します。クラフトバンク社は、この層をターゲットとして領域横断型のプロダクトを提供することでポジションを確立しています。2024年問題に代表されるように、建設業における事務作業の効率化ニーズは急増しており、旧態依然とした働き方の変革を求める現場からの声は大きいです。このペインを解決する意義は大きいですし、今後成長が見込まれる魅力的な市場だと考えています。

2つ目は、優れたプロダクトで急速に市場に受け入れられていることです。CraftBank Officeは、SaaSでありながら、カスタマイズして提供しているという特徴があります。これは、簡単に業務フローを変更できない一方で、業務効率化したい専門工事会社の内実に沿った設計になっています。また、プロダクトのカスタマイズはローコードで行えるため、各社へのカスタマイズ工数が各段に少なくなります。こういった使い勝手の良さに加え、充実したCSによるカスタマイズ性の高さによって、DX化の進んでいなかった専門工事の市場に風穴を開けたプロダクト力を、高く評価しました。

3つ目は、優秀な経営チームです。代表の韓さんは、経営者としての豊富な経験に加え、建設工事会社の当事者として経営された経験も持ち合わせています。故に、「職人酒場」のような業界特性にマッチした戦略設計を行い、業界からの信頼を得ることに成功しています。複雑で参入障壁の高い建設業界に、これ以上なくフィットした人物だと判断しました。CPOの武田さんや、VP Partner Salesの田久保さんなどの若手経営陣に韓さんが思い切った権限移譲ができていることも評価しています。組織を俯瞰して考えることのできる優秀な若者が育っていることは、今後組織が拡大していく上での大きな強みとなります。

以上の観点から、クラフトバンク社が専門工事会社向けのSaaSを中心に建設業のDX化を推進し、専門人材活用・生産性向上を果たすとともに、メガベンチャーとなる可能性が非常に高いと考え、投資の意思決定をしました。

Angel Bridgeは、社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

2024.04.03 INVESTMENT

2024年4月に株式会社GenerativeX(以下GenerativeX)は、シードラウンドにて1.2億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。

GenerativeXは大企業における生成AI活用に特化したコンサルティングやDX支援を提供するスタートアップです。生成AIの市場は急速に立ち上がっており、生成AIを活用した業務効率化ニーズは大企業も含めて大きいといえます。GenerativeXは生成AIネイティブなプロファームとして、創業1年で各業界のトップ企業と取引を行うなど急速にビジネスを展開しています。

今回の記事では、Angel BridgeGenerativeXに出資した背景について、企業の生成AI活用を取り巻く環境とGenerativeXの強みに焦点を当てて解説します。

企業の生成AI活用の動向と課題

生成AIとは、学習済みのデータを活用し、文章や画像・音声など様々なコンテンツを作り出すことができる人工知能技術の一種です。精度・スピード・使いやすさが劇的に向上したことで注目が高まり、本領域で多くのユニコーン企業が誕生しています。例えばテキストから画像を生成するStable Diffusionを提供するstability.ai社や、SEOに最適化されたコンテンツなど、高品質な文章作成が可能なサービスを提供するJasper社などが挙げられます。直近では202211月にOpenAI社がChatGPT-3.5を公表したことにより、全世界的に生成AIに対する注目度が高まりました。

生成AIは今後も急速な需要の拡大が予想されており、特に大企業においては非常に関心が高い状況です。比較的先進的なITの活用が進むIT系の企業のみならず、銀行や自治体などIT系以外でも既に生成AIを活用した業務効率化の取り組みがはじまっています。社内文書の作成やプログラミングコードの自動生成、営業が用いるセールストークスクリプトのアイデア出しなど幅広い分野での活用が想定されており、各社で生成AIを活用することで得られる効率化について試算がなされています。

しかし、生成AIの活用が十分に進んでいる企業はまだまだ少数派です。既存のDXプレイヤーであるSIerAI受託開発企業、学生ベンチャーなどでは、生成AIに関するサービス提供価格・スピード・クオリティに課題があり、結果として大企業における生成AIの活用は進んでいません。そこでGenerativeXは既存プレイヤーのこのようなボトルネックを解決すべく、生成AI分野に特化して組織構築を進め、安価でスピーディ、そして高品質なサービスを提供しています(1)

1 既存のAI開発・コンサル企業の課題

以上のように、生成AIを活用した大企業DXは大きなポテンシャルがあるものの、そのニーズに応えられているプレイヤーは少なく、GenerativeXにとっては非常に魅力的な市場環境と考えています。

GenerativeXの事業概要

GenerativeXは生成AIに特化した受託開発やコンサルティングを企業向けに提供しています。環境整備から要件定義、ユースケースの洗い出し、PoC実施、その後の運用改善まで一気通貫したサービスとしてプロジェクトを遂行することで、顧客と長い接点を構築しDXを実現しています。具体的にはプロンプトの研修やDX企画・コンサルティング、そしてPoC開発・検証・システム化のメニューを企業のニーズに合わせて提供しています(2)。結果としてGenerativeXは創業から1年という短期間で各業界トップクラスの大企業をクライアントに持つに至りました。

2 GenerativeX提供サービスの特徴

このように事業を成功させつつあるGenerativeXは、生成AIネイティブな組織構築とマーケティングへの積極投資を通して、①安価で安く提供できる機動力、②大企業向けの営業力、③既存ソフトウェアと融合させる技術力、④豊富な導入事例の4つの強みを発揮しています(3)

 

3 GenerativeXの競合優位性

AI受託開発やコンサルティングを行う会社は複数ありますが、その中でも巨大な市場ニーズが見込まれる生成AI市場に焦点を当て、大企業のニーズに応えられるハイレベルなサービスを提供できる企業はあまり存在しません。その中でも特にGenerativeXは技術とビジネスの両方を理解したメンバーによるプロフェッショナルサービスを提供できる稀有な企業であり、既に大企業への豊富な導入事例があることも相まって、多くのクライアントを獲得しています。

トップ企業からの受託・コンサル型の事業を起点として、今後は各業界・業務に即したSaaSの展開や海外展開、生成AIが広く浸透した後に必要となるインフラを提供していくことも視野に入れています。

経営陣

GenerativeXには技術面とビジネス面の双方の専門性を兼ね備えた、非常に優秀で強力な経営陣が集まっています。荒木CEOは投資銀行出身のビジネスマンでありつつテクノロジーにも明るく自らコードも書きます。さらに、過去に一度スタートアップを起業しており、経験も踏まえ、自分の強みや弱み、ベンチャー運営に対する勘所も押さえられているシリアルアントレプレナーです。共同創業者の上田CSOはコンサルティングファーム出身のビジネスマンでありつつ、直近は松尾研究所の経営企画のコアメンバーとして新規技術の社会実装についての戦略策定や社内事業の改善を経験した人物です。小坂CTOはリタリコやByteDanceなど優秀なエンジニアが揃う組織でのエンジニア経験が豊富な人物です。小坂CTOは荒木CEOの前回起業時も1人目社員として参画しており、荒木CEOのリーダーシップと周りの人の巻き込み力が伺えます。この優秀な経営チームがGenerativeXの強みの源泉となっています。

3人は同じ大学院出身ということもあり、学生時代から10年来の付き合いを経て企業に至っています。非常に優秀なだけではなく強い信頼関係がチームの強みの源泉となっていると考えています。

4 GenerativeX経営チーム

おわりに

最後に、Angel Bridgeの今回の投資のポイントをまとめます。

1つ目は、優秀な経営チームです。シリアルアントレプレナーならではの強みを持ち、能力の高さと強いリーダーシップを兼ね備えられた荒木CEOに加え、事業戦略の策定経験が豊富な上田CSO、エンジニアとして多数のキャリアを積まれた小坂CTOがそれぞれ違う強みを持ち合い、一丸となって強いコミットメントでこの事業に挑戦していることが最大の武器となっています。これだけ強力なメンバーが創業初期から揃っていることはそう多くはないと思いました。

2つ目は、生成AIを活用した企業のDXには巨大な市場ニーズがある点です。生成AIの市場は足元で急速に立ち上がり、大企業を中心に生成AIを活用した業務効率化などに強いニーズがあります。一方で十分な生成AIの活用が行えている企業は少なく、大きな市場を狙えるチャンスがあります。

3つ目は、急速に立ち上がるトラクションです。創業から1年の短期間で業界トップクラスの大企業から複数案件を受注し、既に一定の売上高を見込んでいます。初期からこれだけ大手企業と取引できるスタートアップはそうはありません。GenerativeXの技術/ビジネス両面でのケイパビリティの高さを示す何よりの証拠だと考えています。

以上の観点から、GenerativeXが大企業の生成AI活用/生産性向上のエネーブラ―となり、GDP向上に大きく寄与する存在となることを信じ、またその想いに共感し、投資の意思決定をしました。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!