2024.05.20 INTERVIEW
気軽に海外株投資ができるスマホアプリを提供
ブルーモ証券の事業内容を教えてください。
中村:ブルーモ証券は、個人向けの投資アプリを提供している会社です。スマートフォンから米国株や海外のETF(投資信託)に投資ができるアプリです。これまでの投資アプリと違うのは、自分で資産運用を考えたい方にとってとにかく使いやすいところ。金融リテラシーが乏しかったり、面倒な手続きが嫌な方でも簡単にはじめられる点が挙げられます。
その「使いやすさ」とは、どんなところに表れているのでしょうか。類似サービスとの違いは?
中村:まず、口座開設の申し込み手続きはおよそ2分で完了します。また口座に入金するだけで、自分で選んだ複数の米国株・ETFに対して両替、買い付けができます。著名な投資家や他のユーザーのポートフォリオをそのままコピーできるので、投資経験が浅い方でも迷わず分散投資を行うことが可能です。当社の「Bloomo」は、海外株による長期分散投資をより多くの人の手に届けるために開発したアプリなので、投資に対する敷居を下げるためにも使いやすさにはこだわりました。
個人投資への注目が集まっています。現在の市況についてはどう見ていらっしゃいますか?
中村:日本ではこれまで金融資産は預金に偏り、投資に対して慎重な方が少なくありませんでした。しかし、過去5年ほどの間に状況は大きく様変わりし、コロナ禍による生活を見直す機運の高まりや金融庁の報告書をきっかけに「老後2,000万円問題」が話題になるなど投資への関心が高まりを見せています。2024年からは新NISAがはじまり、証券口座の年間開設数が大幅に増えており、個人投資サービス全体に非常に強い追い風が吹いている状況です。
経営陣についても教えてください。どんな方が集まっていますか?
中村:CTOを務める小林悟史は、東大のコンピュータサイエンス出身で、オンラインレンディングや株式投資型クラウドファンディングシステムをスクラッチ開発した経験を持つエンジニアです。またバックオフィスの業務責任者を務める吉岡龍弥は、マッキンゼー時代の同僚で証券会社に必要なバックエンドシステムの仕様策定、業務の設計や運用を担ってくれています。私自身は、過去財務省に在籍していたこともあり法規制に明るく、スタンフォードMBAでの留学中に最先端のテクノロジービジネスとデザイン思考を学んだ経験を活かし、経営とプロダクトマネジメント全般を統括しています。スタートアップながらお客様のために最善を尽くせる体制を築けたと自負しています。
Angel Bridgeとの出会いのきっかけは?
中村:創業から間もなく、Angel Bridgeの八尾さんから声がかかったのがきっかけです。八尾さんは私と吉岡と同じくマッキンゼーのご出身で、私たちが起業したのを耳にされた八尾さんから吉岡にアプローチがありお付き合いがはじまりました。その後パートナーの河西さんやほかのメンバーを紹介していただき、いまに至っています。
Angel Bridgeに対する最初の印象はいかがでしたか?
中村:プロフェッショナルファーム出身者が多く、仕事に対するマインドや組織カルチャーが似ており、共通言語が多い印象でした。お声がけいただいた当時は、まだ個人投資家から調達した資金で賄えていたので「すぐにでも」という話にはなりませんでしたが、近い将来、VCから調達する時期がやってくるのはわかっていましたから、それ以降、定期的に連絡を取らせていただいていただくようになりました。
河西さんにうかがいます。中村さんやブルーモ証券への第一印象を聞かせてください。
河西:日本において長期分散投資の有用性を多くの方に広げたいという志の高さに共感を覚えたのと、中村さんの輝かしいキャリアに加え、創業初期にもかかわらず小林さんや吉岡さんをはじめ、非常に優秀なメンバーを迎えられていることに大変驚いたのを覚えています。それがブルーモ証券の第一印象でした。
Enjoy your journey, not outcome.
その後はAngel Bridgeとはどのようなお付き合いをされてきましたか?
中村:最初にお話させていただいてから半年ほど経ったころ、いよいよ本格的に証券会社としての体裁を整えるにあたり、改めて「ぜひ投資していただけないか」とお話しさせていただきました。それから投資を決定いただくまで、わずか2週間ほどだったのがいまも印象に残っています。意志決定のスピードには驚かされました。
河西:はじめてお会いしたときから、ぜひ応援させてもらいたいと思っていましたからね。最初にお目にかかってから半年ほどの間に、第一種金融商品取引業免許の取得に向けたプロセスを踏んでおり、やるべきことを着実に実現していく手堅さも感じたので、迷わず投資を決めることができました。
Angel Bridgeから支援を受けるなかで、どんなところがほかのVCと異なると感じますか?
中村:投資先に対するコミットメント力が半端ないところですね。何としても付加価値を提供したいという強い意欲を感じますし、反応速度が非常に速い上にとにかく泥臭い(笑)。その献身ぶりは目を見張るほどです。
河西:投資先のバリューアップにつながるなら、気合と根性でやり遂げるのがチームとして大事にしていることなので、そのお言葉は大変光栄です。われわれは投資先の応援団。どんなに泥臭いことでも率先してやらせていただきます。
中村:先日も三好さんが気を利かせてくれて、ある採用候補者のリファレンスを取ってくださったのですが、そもそも彼は当社の担当ではないんです。そんなことはほかのVCではありえないこと。そのホスピタリティは、ほかのVCとは一線を画すレベルだと思います。
起業家、経営者としてやりがいを感じる瞬間は?
中村:ひとつは優秀なメンバーがチームにジョインしてくれたときですね。「この人がきてくれたら、きっとこれまでとは違う景色が見られる」と思えるのはうれしいことですし、経営者としてのモチベーションが高まります。もうひとつは、お客さまの存在です。ローンチから間もないスタートアップにお金を預けていただけること自体、私たちに価値を感じてくださっているわけですし「毎朝アプリを開くのが楽しみです」「ほかの方のポートフォリオを見ながら勉強しています」といった前向きな言葉を頂戴すると励まされます。このビジネスにチャレンジしてよかったと感じる瞬間です。
経営者として大切にされている信念を教えてください。
中村:自分たちが本来やろうとしたこと、やりたいことを決してぶらさず、大きな目標に向かって、やるべきことを愚直に取り組むことですね。かつて物理学者のアインシュタインは「Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is not to stop questioning(過去から学び、今日を生き、明日への希望をつなげよう。もっとも大切なことは、問うことをやめないことだ)」と述べており、私も日々の積み重ねが偉業につながると信じています。また、スタンフォード留学中に出会ったシリアル起業家の恩師からは成長企業経営の名物授業で、起業家という仕事について「Enjoy your journey, not outcome(結果ではなく旅路を楽しめ)」といわれ、いまも心に残っています。どちらも、自分の意志で選んだ道を信じ、真摯に経営と向き合い続けることの大切さを教えてくれました。
少子高齢化の一途を辿る日本の若者が希望を持てる社会にしたい
これからブルーモ証券をどんな会社にしたいですか?
中村:当面は、期待が高い新NISA口座の開設に向けた対応や積立投資機能の整備を急ぎつつ、海外株での資産形成に必要な金融機能を順次拡張していくつもりです。長期分散投資を通じて、資産形成のパートナーとして多くの方に認知していただくために、ブルーモ証券をみなさんのご期待に応えるビジネスに成長させたいと思っています。
今後、Angel Bridgeに期待することは?
中村 : 今後も信頼関係を保ちながら同じ夢を見続けられたらいいなと思っています。これからも最高の応援団でいてください。
河西 : もちろん、私たちもそのつもりです。中村さんは苦学の末、Angel Bridgeのオフィスからもほど近い都立日比谷高校を出られ、さらに東大、財務省、マッキンゼーを経て、今日に至るまで、数々の困難に直面されたはずですが、それをものともせずことごとくクリアしてこられた。私たちはそんな中村さんのガッツに期待しているんです。
中村 : ありがとうございます。財務省に入省したのも、その後MBAを経てマッキンゼーに入り、さらにブルーモ証券を創業したのも、少子高齢化の一途を辿る中で日本を若者が希望を持てる社会にしたかったからです。その思いは大学時代から15年以上変わりません。これからもその目標を達成するため最善を尽くすつもりなので、ぜひご支援のほどよろしくお願いいたします。
河西 : もちろんです。
最後に、プロフェッショナルファームご出身者や在職者のなかで、とりわけスタートアップでのキャリアに関心がある読者に対しメッセージをお願いします。
中村 : もし、スタートアップに関心をお持ちなら、健全なメタ認知を持ってチャレンジしてほしいですね。プロフェッショナルファームは待遇もいいし世間からの評価も総じて高い。そのため、どうしても自らの実力を高く見積もりがちです。スタートアップをはじめ、プロフェッショナルファームとは大きく異なる領域にチャレンジするのであれば、その領域で見た場合の自分の市場価値をフェアに見積もり、どうすれば会社の看板なしに実力を発揮できるか、足りない部分があるとしたらそれは何かを把握し補う努力が欠かせません。プライドや世間の評価に惑わされず、正しい決断をするためにもメタ認知を持って立ち向かっていただければと思います。
河西 : 中村さんのように官僚経験者やプロフェッショナルファーム在職者のなかにも、スタートアップで活躍しうる適性を持つ方は大勢いるはずです。こうした方々がスタートアップの世界に参入してくだされば、日本によりよい変化をもたらせると信じています。ぜひチャレンジしていただきたいと切に願っています。中村さん、本日はありがとうございました。
中村 : こちらこそありがとうございました。
2024.05.09 TEAM
グローバルファームからVCへの転身を促したもの
——山口さんは毎日どのようなスケジュールでお仕事をされているのでしょうか?
仕事の割合でいうと、新たな投資先を探すソーシングに3割、新たな投資先を選定するためのデューデリジェンスに5割、残りの時間はWebサイトの更新やSNSアカウントの運用、社内イベントの企画や実行など、自社のブランディングにまつわるマーケティング活動に費やしています。今後、担当する投資先が増えればバリューアップ支援の割合が増えていく見込みです。
——Angel Bridge入社前はどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?
慶應義塾大学にて数理モデルの構築・分析によって意思決定の最適化を行う「オペレーションズリサーチ」という学門を学び、さらに東京大学大学院で国際物流の最適化シミュレーションの研究をした後、ボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)に入社しました。Angel Bridgeに入社したのは2024年2月のことです。
——なぜ新卒でBCGに入社しようと思ったのですか?
そもそもコンサルタントを志すようになったのは、大学3年生のころ、海外インターン交流を支援する学生団体の代表を経験したのが最初のきっかけです。学内だけでも100人にもおよぶメンバーを束ね、団体の将来や戦略を考えるうちに、経営戦略立案に興味を持ちました。理系の学生でしたので「制約がある中でどのように効用を最大化するか」という観点で、オペレーションズリサーチや国際物流の最適化の研究を行った後、戦略コンサルタントとして経営戦略の策定に携わることに決めました。数あるコンサルファームの中でもBCGを選んだのは、BCGが日本で一番成功している戦略ファームだからです。経験できる案件の幅が広く、日本を代表する企業のために働くことで、日本経済の成長に貢献できると考えました。
——BCGではどんなお仕事を?
在職中は、消費財・通信・メーカー・PEファンドなどのクライアントに対し、中期成長戦略・新規事業戦略・M&A戦略・ターンアラウンド戦略の策定などを支援するプロジェクトを経験しました。グローバルなプロジェクトメンバーやクライアントの社員様など、バックグラウンドが異なるメンバーと協働し、価値ある成果を出す難しさや醍醐味とともに、定量的に経営を捉え戦略に落とし込む面白さを体験できたのは、いま思い返しても貴重な経験だったと思います。
——かつての同僚で、山口さんと同じようにVCをセカンドキャリアに選ぶ方はいらっしゃいましたか?
身近な先輩のなかにも何人かいらっしゃいます。いまは国を挙げてスタートアップ投資を増やしていこうという流れがありますし、スタートアップへの投資環境が成熟するなかで、コンサルタントとしてスタートアップビジネスに関わる機会も少なくありません。何よりコンサルタントは好奇心旺盛な方が多いので、「コンサルとしては支援しづらいスタートアップビジネスに関わりたい」という方も多く、また投資判断のプロセスや投資後のご支援などで戦略コンサルタントが持つビジネス分析力や戦略立案力に対するニーズが高まっているのも一因だと思います。
——山口さんはどのような思いでVC業界に転身しようと?
学生のころから起業したりスタートアップで活躍する友人が多く、新しい価値を世の中に届けようと努力する人たちを応援したい、強い思いを持って起業に臨んだ経営者をサポートしたいと思うようになりました。スタートアップエコシステムの中でもセカンドキャリアとしてVCを選んだのは、多くの熱量のある起業家と関わりながら、一つの会社だけでなくスタートアップを取り巻くエコシステム全体を盛り上げられたら、きっと日本経済への貢献にもなりますし、投資判断のプロセスや投資後のご支援の中でBCGで培った経験やノウハウを活かせそうだと思ったからです。
アットホームでありながらプロフェッショナルな社風
——数あるVCのなかからAngel Bridgeを選んだ理由は?
実は1号社員でAngel Bridgeに入社した八尾は大学院の学科の先輩にあたり、パートナーの河西についても八尾を通じて面識があったので、以前からAngel Bridgeの社風を知っていたことが、転職を後押ししてくれました。いずれ日本を代表するメガベンチャーを創出するんだという大きなビジョンを掲げつつ、自らも日本を代表するVCになろうという成長意欲の高さにも共感しましたし、Angel Bridgeにはプロフェッショナルファーム出身者が多くカルチャーフィットが期待できそうなのもAngel Bridgeを選んだ理由です。
——入社されていかがですか? 率直な感想を聞かせてください。
実際働いてみて感じるのは、投資先と一緒に知恵を絞り「どうしたらその理想を実現できるか」という観点で、前向きな議論を尽くせるのは非常に楽しいですしやりがいを感じます。それと同時に経営者の思いや人柄に寄り添いながらみなさんのご期待に応える難しさも感じるので、それについては今後の課題になりそうです。Angel Bridgeのメンバーのアウトプットのクオリティの高さや、投資先に対して主体的に貢献しようとするマインド、オーナーシップを持って仕事に取り組む姿勢は想像通りでした。仕事に対する前向きな姿勢と最後までやりきるプロフェッショナルな意識は、すべてのメンバーから感じるところです。
——社風についてはいかがでしょう?
Angel Bridgeはオンもオフもどちらも楽しくやろうという人たちの集まりなので、仕事に全力で取り組む一方で飲み会やバーベキュー、ゴルフなど、社内イベントも盛んです。社員同士はもちろん投資先同士も非常に仲がよく、アットホームな社風だと思います。
——Angel Bridgeのパートナー陣は山口さんにとってどんな存在ですか?
河西は深い知見に基づいた分析力や決断力に学ぶところが多く、林については豊富なビジネス経験に基づいた人脈の広さや人望の厚さで定評があります。2人とも投資先のビジネスはもちろん、起業家の人柄や想いの丈をよく理解した上で、確信を持って投資しているからこそ、迷いなくコミットできるんでしょうね。パートナー自ら投資先に対してここまで多くの時間を割いているVCは、おそらくAngel Bridge以外にないのではと思うほどです。
——投資先との信頼関係を紡ぐためには何が必要だと思いますか?
Angel Bridgeに入って、相手の立場に立ってプロフェッショナルファーム品質の価値を提供し続けることが、信頼を勝ち取る唯一の道だと思うようになりました。それは投資を検討させて頂く段階においても変わりません。経営課題の改善や成長に資する示唆を少しでも出し、起業家のみなさんに喜んでいただけるよう全力を尽くすこと。それがみなさんにAngel Bridgeを選んでいただく強い原動力になるはずです。投資先と手を携え、同じ目的に向かって走るには、常に相手の立場や気持ちに思いをはせ、ロジカルかつハートフルに振る舞うことが欠かせないと考えています。
——山口さんはどんな人と働きたいですか?
Angel Bridgeで活躍するにはオーナーシップの強さが求められます。投資先を支援する上で必要になるのはもちろん、Angel Bridge自身もまたスタートアップフェーズにあるからです。いわれたことだけをしっかりとこなすだけで満足せず、自ら積極的に提案する人が重宝されるのはスタートアップならではでしょう。努力を惜しまず能動的に動ける方とご一緒したいと思います。
起業家の支援を通じてメガベンチャー創出を目指す
——これからAngel Bridgeで成し遂げたい目標を聞かせてください。
一社でも多くスタートアップの成長に寄与するのが当面の目標です。中長期的な目標は、個人の名前で仕事ができるようになることと、投資先のみなさんに「この人と一緒にいると成功できる気がする」という安心感や希望を与えられる存在になりたいですね。その上でメガベンチャーの創出に携われたらこれ以上の喜びはありません。そのためにもこれから多くの経験を通して成長したいと思っています。
——最後に山口さんが大切にしている信念を教えてください。
私自身、尖ったアイデアと実行力を伴った強い信念をお持ちの方を支援するのが好きですし、自分にない感性や能力を持つ方に頼られるのはありがたいことだと感じます。そんな方々に気軽に声をかけていただくには、「何色にも染まる」余地を常に残しておくのは大事なことではないでしょうか。VCである以上、ベンチャーファイナンスの専門家として価値を出すことはもちろんですが、どんなことであっても最初に頼られ、価値を出せる人になりたいです。「何色にも染まる」には、普段からのインプットやそれを基にした思考に加え、人間としての懐の深さが欠かせません。相手の想像を超えるような成果を届けられるようなビジネスパーソンになるためにも、養っていきたい能力だと思います。