INTERVIEW

卸売産業における新たなスタンダードを創出する(goooods 株式会社)

[菅野 圭介 goooods CEO × Angel Bridge 河西]

2024.11.19

こだわりが詰まった商品のつくり手と、魅力ある商品を消費者に届ける販売者の架け橋となるべく立ち上がった卸売マーケットプレイス「goooods(グッズ)」。連続起業家として知られる創業者の菅野圭介氏にとって、goooodsはスマートフォン動画広告のFIVEに続き、2社目の起業です。なぜ菅野氏は小規模卸売産業の変革にチャレンジしたのでしょうか。goooodsに賭ける意気込みと、魅力あるサービスづくりのポイントについてお話をうかがいました。
菅野 圭介 goooods株式会社 代表取締役 CEO
  • 早稲田大学商学部卒業後、2008年に Google へ入社し AdMob や YouTube のプロダクトマーケティングなどを担当。2014年にスマートフォン動画広告プラットフォームを開発・提供する FIVE を創業し、代表取締役 CEO として経営。2017年に LINE による M&A で同社グループ入りし、2021年までカンパニーエグゼクティブとして広告事業を管掌。2021年10月にグッズを共同創業し、2度目のスタートアップに挑戦。海よりは山派。
河西 佑太郎 Angel Bridge株式会社 パートナー
  • ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門、ベインキャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て2015年Angel Bridgeを設立し、現在に至る。東京大学大学院農学系研究科修士修了(遺伝子工学)、シカゴ大学MBA修了。

goooodsは、売り手と買い手をつなぐ卸売プラットフォーム

——goooodsはどのような顧客に対しサービスを提供する企業なのでしょうか?

菅野:端的にいいますと、goooodsは卸売産業にチャレンジしている企業です。具体的には、ユニークで素敵な製品をつくられているメーカーやブランドと、厳選した商品を仕入れ販売する小売店やEC事業者の間を取り持つマーケットプレイス事業に取り組んでいます。

——特徴は?

菅野:マーケットプレイスとして取引の場を設けるだけでなく、与信請求業務などの煩雑で手間のかかる作業を軽減し、取引先管理・受発注業務・書類発行業務まで事業者のみなさんのバックオフィス負担を減らす機能を備えている点です。このほかにもブランドイメージに忠実なウェブページ生成機能の提供や、成功報酬型の料金体系を採用するなど、ネットを介した卸売取引に慣れていないみなさまの不安やお悩みをワンストップで解消できるサービスと自負しています。

——小規模卸売産業の現況についてお聞かせください。

菅野:国内のファッション・雑貨の卸売市場の規模は全体で約38兆円あり、そのうち小規模事業者による取引は約5兆円を占めるといわれています(出典: 経産省; 平成28年経済センサスなど)。しかし、その大半が電話やファックスを通じたやりとりなど非効率的な業務の上に成り立っており、狭義のEC化率はわずか5%程度(出典: 経産省; 令和二年度電子商取引に関する市場調査)に過ぎないとされています。一方、卸売取引のEC化で先行する米国や欧州に目をやると、それぞれのリージョンで複数のプラットフォーマーがしのぎを削っているにもかかわらず、日本にはいまだ業界を牽引するリーダーが存在しない状況です。goooodsは現在、この空白を埋めるべく利用者の獲得と取引拡大に挑んでいます。

——どんなアプローチでマーケットリーダーを目指しますか?

菅野:ここ数年でメーカーが直接消費者に商品を販売する DtoC(Direct to Consumer)が広がり取引環境がかなり整備されました。私たちは、DtoCから卸売で販路を拡げたいブランドと個性的な商品を求める小売店が出会い、新規取引を増やすだけでなく、以前からお付き合いのある取引関係も、goooodsに集約すると便利な状況をつくることで、この分野におけるマーケットリーダーを目指しています。

身近な課題を解決するインパクトの大きなビジネスへの挑戦

——菅野さんはスマートフォン動画広告のFIVEの起業に続き、goooodsが2社目の起業になります。なぜ小規模卸売産業にチャレンジされたのですか?

菅野:最初の起業は、Googleでの広告マーケティングの経験をもとに一定の見通しを立てた上での起業でした。goooodsではまったく経験のない卸売の領域でのチャレンジです。なぜ卸売産業に挑もうと思ったのかといえば、手触りのある身近な課題と、それが解決されたときの裾野が大きい領域に挑戦してみたかったからです。以前に経営していたアドテクノロジー分野は、人間の認知に働きかけるいわば「首から上のビジネス」の領域でしたが、より物理的・身体的な「首から下のビジネス」に挑戦しようと考えました。情報技術は加速度的に発達していきます。その技術の恩恵を受けていない産業にアプローチすることに価値があると思っています。

——変革が期待される産業はたくさんあります。卸売領域に着目したきっかけを教えてください。

菅野:実は妻がハーブティの小売販売業を営んでいるのですが、彼女が慣れない卸売に苦労している姿を見たのがきっかけでした。普段個人のお客様相手に販売しているサイトに、年商を上回る卸売の依頼が舞い込んだことで、受注から納品まで数カ月にわたり悪戦苦闘している姿を目の当たりにして、事業者にとって卸売取引が持つポテンシャルとハードルの高さを知りました。そこから卸売取引の主な手法が昔から変わっていないこと、潜在的な市場規模の大きさ、海外での成功事例を知り、卸売取引で成長したい意欲のある売り手と、ほかにはない商品を求める買い手に卸売の新しいスタンダードを提供したいと思い、この領域にターゲットを絞りました。

——河西さんにうかがいます。goooodsや菅野さんとの出会いのエピソードを聞かせてください。

河西:はじめてお会いしたときの印象は、ビジネスの酸いも甘いも知っている方だと感じました。そもそも菅野さんは、最初の事業を70億円で売却され、売却後も買収先に籍を移して3年間で売上を100億円にまで引き上げた実績の持ち主です。そうした経験を持つ方が、古くからある卸売産業をアップデートするというのですから興味を持たずにはいられませんでした。

菅野:卸売産業には既存のプレイヤーが無数にいるうえ、私自身、新たに学ばなければならないことも多く、簡単に成功できるような甘いビジネスではないことは当初からわかっていました。しかし、業務効率化の立ち後れが目立つ領域であり、きちんとシナリオを描き、立てた仮説を一つひとつ泥臭く証明していけば、必ず勝機が開けるはずと考えて挑戦することにしたんです。

河西:われわれがgoooodsへの投資を決めたのは、菅野さんをはじめ創業メンバーの顔ぶれや実績、海外での成功事例や成功すれば社会的インパクトは計りしれない大きさになると判断したからですが、理由はそれだけではありません。一度の成功に満足せず、新しい領域に果敢にチャレンジしようという姿勢に惹かれた面が少なからずあったのは確かです。とりわけ菅野さんの事業に対するパッションの強さには驚かされました。

——どんなときにそれを感じたのですか?

河西:デューデリジェンスに先立って、当社から菅野さん宛に質問事項をお送りしたときのことです。回答の密度に強い熱意と意欲を感じました。本気でコミットしていなければ出てこないような詳細かつ的確な回答ぶりを見て「この人なら古い業界の慣習を切り崩せる」と確信したのを覚えています。参入障壁が決して低いとはいえない業界ですが、これほどまでのパッションがある方なら夢を託しても後悔はないだろうと思い投資を決めました。

プロフェッショナルでありながら親しみやすいAngel Bridge

——菅野さんはAngel Bridgeに対してどんな印象をお持ちですか?

菅野:お声がけしたVCのなかで一番早くお返事をいただいたのはAngel Bridgeさんでした。そしてAngel Bridgeさんのミーティングでの発言はもちろん、頂戴する資料の質も際立っていました。いま、当社で経営管理用に利用しているKPIシートは、実はデューデリジェンスの過程でAngel Bridgeさんに共有していただいたものをひな形にして使っているんです。Angel Bridgeさんには6.7億円を集めたシリーズAのファーストクローズでリードをとっていただきましたが、それ以降もさまざまな面で手厚いサポートをいただき、とても感謝しています。

——どのようなサポートなのでしょうか?

菅野:目下私たちが課題に感じていることや経営上の悩みに対して、集中的な討議の場を設けていただいたり、マーケットの状況や戦略面での整理をしていただいたりしています。戦略面では膨大なスタートアップ事例を組織的に蓄積したパターン認識と、投資先個別の事業特性や指向性を踏まえたアドバイスをいただけると感じています。実行面での支援では、メガベンチャーのSO付与状況から最適なSO運用方法についてインプットをいただいたり、製品開発面での市場リサーチをご一緒いただいたこともありました。Angel Bridgeさんがユニークなのは、仕事はプロフェッショナルでありながら、親しみやすく相談しやすい雰囲気がある点です。私たちが向き合う卸売産業は、相応の投資があってはじめて打席に立てる難しい領域です。この領域に向き合うにあたってファイナンスだけでなく、プロフェッショナルファームクラスの経営支援を受けられるのは、とてもありがたいことだと思っています。

意欲ある市井の人たちを勇気づけるビジネスを手がけたい

——創業から丸3年が経ちました。これからAngel Bridgeにどんな支援を期待しますか?

菅野:プロダクト戦略やファイナンス戦略の面で、引き続きサポートしていただけたらと思っています。また、現在CFOがいないため、河西さんのファイナンス面での知見は積極的に借りていきたいと思っています。

河西:経営資源を正しい場所に正しくアロケートするのがハンズオン支援を自負するわれわれの仕事です。Angel Bridgeにできるサポートはこれからも最大限提供するつもりなので安心してください。

菅野:ありがとうございます。事業に関わるお客様、社員、投資家はそれぞれのお金や時間を期待をかけて投じてくれています。後世から振り返ったときに、goooodsの仕組みが存在して良かったと関わった全員が思えるような傑出した事業を目指していきます。その道のりの過程では、誠実に説明責任を果たしていくことも重要だと考えています。よろしくお願いします。

河西:もちろんです!

——最後にうかがいます。菅野さんはgoooodsを通じてどんな世界を実現したいですか?

菅野:僕らは「Everyone Entrepreneur」をミッションとして掲げており、これからも意欲ある市井の人たちを支援し勇気づけるようなビジネスを手がけていきたいと考えています。資金繰りの大変さや商売の厳しさを感じることはあっても、常に前を向いて一歩踏み出せるサービスを社会にお届けし、チャレンジしやすい世の中を実現したいと願っています。

河西:今日はとてもいい話をうかがえました。これからも一緒に頑張っていきましょう。

菅野:はい、こちらこそよろしくお願いいたします!

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