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Angel Bridge投資の舞台裏#29(株式会社パートナープロップ)

2025.01.29

2025年1月に株式会社パートナープロップ(以下パートナープロップ社)が、シリーズAの資金調達を発表し、資金調達額が累計8.5億円に到達しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。

パートナープロップ社は、パートナービジネスを成功させるためにパートナー企業の管理・育成を行うSaaSを提供するスタートアップです。

今回の記事では、Angel Bridgeがパートナープロップ社に出資した背景について、特にパートナービジネスを取り巻く環境と、パートナープロップ社の強みに焦点を当てて解説します。

  1. パートナービジネスを取り巻く環境と課題
  2. パートナープロップ社の事業概要と強み
  3. 経営陣
  4. おわりに

1.パートナービジネスを取り巻く環境と課題

パートナービジネスとは、企業が自社の製品やサービスの営業を第三者の企業(パートナー)に委託する顧客獲得手法です。

企業がパートナーを活用する目的として、自社でリーチが難しい顧客に対してアプローチを行うことや、社内のリソースが不足している場合に効率的な営業を行うことが挙げられます。例えば、地方への営業拡大を行う際には、地銀とパートナーシップを組んで地場顧客へのアプローチを行うことで、これまで自社ではアプローチできなかった顧客に対して営業を行うことができます。

パートナービジネスは、BtoB取引の約75%を占めるという試算(※1)もある大きなチャネルであり、SaaSを含むITシステム、人材、メーカーなどの業種で多く活用されています。その背景として、多売モデルでパートナービジネスとの相性が良いことに加え、労働人材の減少による営業人材不足や企業の成長による顧客ターゲットの拡大によって、社外のリソースを利用するニーズが拡大していることが挙げられます。

図1:パートナービジネスを利用する目的と構造

直販セールスの領域は日本でも多くのセールステック企業が出現してDXが進んでいます。しかしパートナービジネスの市場は大きい一方で旧態依然としており、強いペインが残存しています。パートナーの稼働状況が可視化されておらず管理ができないことに加え、適切なインセンティブ設計/商材の学習システムがないために「パートナーが稼働してくれない」という悩みを持った企業が多く、パートナービジネスを活用する企業が多いのにもかかわらず、成功している企業はほとんどいない課題の大きな領域になっています。

図2:パートナービジネスにおける課題

これらのペインを解消するのが、パートナープロップ社が提供するパートナー・リレーションシップ・マネジメント(PRM)ツールです。ベンダーとパートナー間の情報共有や連携促進により、パートナーを適切に稼働させることを目的としています。世界的に見てもPRM市場は高い成長が見込まれており、2028年には157 Billion USD(※2)に達する見込みで、impact.comやImpartnerなどのユニコーン企業も出現しています。

 

図3:グローバルにおけるPRM市場

※1 アクセンチュア「B2BCX – 企業間取引における顧客体験調査2017」

※2 Grand View Research「Partner Relationship Management Market Report, 2021-2028」

2.パートナープロップ社の事業概要と強み

そんなPRM市場にパートナープロップ社はどのように切り込んでいるのでしょうか。続いて、パートナープロップ社の事業概要について説明します。

図4:パートナープロップ社のプロダクト

パートナープロップ社は、パートナー管理・育成を簡単に行えるツールを提供しています。ベンダー/パートナー間での案件状況やパートナー企業の各営業の稼働状況を独自プラットフォームで一括管理し、チャット機能を用いて円滑にコミュニケーションを取ることができます。また、「パートナーを稼働させる」「パートナーを育成する」ための商材のラーニング機能、パートナーへの段階的なインセンティブ付与機能などを搭載しており、競合企業と比較しても高い完成度を誇るプロダクトです。

投資検討の際には、『パートナープロップ』を導入している企業へのインタビューも複数行いました。パートナービジネスを既に実施している企業は「パートナーが稼働してくれない。稼働状況が可視化できずPDCAが回せない」といった課題を抱えており、パートナービジネスを始めたばかりの企業は「パートナービジネスの立ち上げ方がわからない」といった課題を抱えていました。このような課題に対して、『パートナープロップ』を利用することでパートナーと双方向のコミュニケーションが可能となり、さらにはeラーニングによるパートナー育成環境の整備やインセンティブ付与の仕組化を行うことができました。また、導入から一定期間が経過している顧客では毎日のように『パートナープロップ』を使用しているなど使用頻度の高さから顧客の満足度の高さを伺えます。

図5:顧客インタビュー

提供価値が高く、優れたUI・UXを誇るプロダクトが高く評価され、2024年3月のプロダクト正式ローンチから1年弱(2025年1月時点)にも関わらず多数のエンプラ企業や急成長しているベンチャー企業が利用しており、順調にMRRを伸ばしています。

海外で複数のメガベンチャーが生まれており、日本におけるペインも深い市場なので、先行するプレイヤーも複数存在しておりますが、パートナープロップは初期フェーズのスタートアップであるのにも関わらずパートナーの管理に留まらず「パートナーを稼働させること」にフォーカスした完成度の高いプロダクトを提供し、業界のことを熟知したメンバーによる丁寧な営業/CSによってリプレイス商談/コンペでの勝率も非常に高く、シェアを急速に獲得しています。

足元ではSaaS、プラットフォーム、人材、ITシステム企業などのニーズが強いですが、金融、メーカー、営業マーケティング代理店などの顧客も拡大しており、今後このような領域も本格的に開拓することで非常に大きな市場を攻めることができ、更なる成長が期待できます。

3.経営陣

パートナープロップ社には、パートナービジネスの知見が豊富なバランスの良い経営陣が集まっています。

図5:パートナープロップ社の経営陣

井上CEOは、リクルートに営業として入社後、事業企画として『Airペイ』におけるパートナービジネスを立ち上げてパートナー経由の顧客獲得が数10件~約6,500件のフェーズを経験されました。その後最年少でリクルートのSaaS事業である『Air事業』のPdMに異動し、事業立ち上げから全体戦略の策定・推進までを担当されていました。リクルートでのご経験に加え、海外先行企業の徹底的なリサーチなども相まって、パートナービジネスに対して非常に高い解像度をお持ちの「パートナービジネスのエキスパート」ともいえる人物です。投資検討プロセスを通して、高い戦略構築能力と事業に対する熱量も感じさせていただきました。

福森CTOは、スタートアップの1人目エンジニアとして新規プロダクトの開発や開発組織の立ち上げを経験した人物であり、プロダクトのイメージを開発に落とし込んでいく重要な役割を担われています。学生時代からの豊富なエンジニア経験を活かし、パートナープロップ社の強みであるプロダクト開発を支えている中心人物です。

金田COOは、リクルートの営業として金融事業セールス部門の立ち上げにも携わり、通期MVPを受賞されるなどトップセールスとして活躍された人物です。SaaS事業部アライアンスグループではパートナービジネスの立ち上げも経験されています。パートナービジネスへの深い理解と細かな顧客ニーズの吸い上げを踏まえた営業/CSはもちろん、社内コミュニケーションやオペレーションなどCOOとして広範にパートナープロップ社を支えられています。

宮下CISOは、新卒からIoTヘルスケアの研究開発やセキュリティ診断プロジェクトに従事した後、ヤフーに入社し、プラットフォームエンジニアとして全社へのセキュリティプロダクトの導入や運用を担当されていました。パートナープロップ社のプロダクトは多数のパートナーとプロダクトを接続する必要があり、セキュリティが重要ですが、宮下CISOが技術エキスパートとして、高いセキュリティを実現されています。

4.おわりに

パートナービジネスは、BtoB取引の約75%を占める大きなチャネルである一方で、パートナーが稼働しない、パートナーの稼働状況が可視化されていない、パートナーが育成できないなど、複数の強いペインが存在します。

こういった強いペインが存在する中で、パートナープロップ社は事業領域にフィットした優秀な経営陣と完成度が高く、競合優位性の強いプロダクトで市場に切り込んでいます。今後も日本ひいてはアジアのPRM市場を牽引し、Partner Driven Marketingという概念と共に大きな成長を遂げるとAngel Bridgeも確信しています。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

 

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