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INTERVIEW

ゼロから新しい金融をつくる(株式会社Fivot)

[Fivot 安部CEO × Angel Bridge 河西]

2022.03.24

日本では初めてとなるRBF (Revenue Based Financing) という金融手法で業界を切り拓いていく株式会社Fivot。法人向けにデッドファイナンスを提供する「Flex Capital」、個人向けのプリペイドカード「IDARE(イデア)」という2つのサービスを行っています。 RBFとはどのような方法なのか、難しいとされるフィンテックでどのように起業に踏み切ったのか、そしてFivotの目指す世界について、Fivot代表取締役の安部氏とAngel Bridge代表パートナーの河西に聞きました。
安部匠悟 株式会社Fivot代表取締役
  • メリルリンチ日本証券の投資銀行部門に5年間在籍し、FIG(Financial Industry Group)を担当。その後、2020年にFivotを創業。
河西佑太郎 Angel Bridge株式会社 代表パートナー
  • ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門、ベインキャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て2015年Angel Bridgeを設立し、現在に至る。東京大学大学院農学系研究科修士修了(遺伝子工学)、シカゴ大学MBA修了。

新しい金融手法、RBF

Fivotはどのような事業を行っているのですか?

安部:Fivotは2つの事業を行っていて、法人向け、特にスタートアップに対してデットファイナンスを提供するFlex Capitalというサービスと、個人に対して積み立てにより欲しかったものを購入できるプリペイドカードを使ったサービス、IDAREを提供しています。

RBF (Revenue Based Financing) はどういったプロダクトなのですか?

安部:RBFは端的に言うと、将来発生する売上から支払いをしてもらうというスタイルです。分かりやすい例としては、手元の請求書を第三者に売却して現金を得る手法であるファクタリングというものがあるのですが、これの将来版と考えてください。

ファクタリングは売上が既に成立しているものを1-2か月前倒しで入金してもらえるサービスである一方、RBFでは、まだ売上が成立しておらず、これから発生するであろう将来債権を買い取るものになっています。過去を見ているファクタリングなのか将来を見ているRBFなのかという大きな違いがあります。

日本にFivotのような事業を行っている企業はありますか?

新しい金融手法、RBF

安部:個別にみると類似のサービスを行っている企業はあります。Flex Capitalについては、広くみるとVCや銀行も類似のサービスになりますし、スタートアップでも僕らと似たコンセプトでサービスを提供しようとしている会社もあります。

ただ、RBFは売上に完全に連動した新しいファイナンス手法になっているので、そこに限定していくとほとんど競合はいないのが現状です。欧州、欧米などではある程度確立されてきた手法なのですが、日本では当社が先駆者としてやっています。

IDAREに関しては、プリペイドカードに関連する事業をやっているところはたくさんありますが、残高を積み立てて「貯めること」にフォーカスしたプリペイドカードサービス、特に残高に対してポイントバックがされるのは日本でも当社だけです。

最終的には銀行を目指していく

安部さんがFivotを起業するまでの経緯を教えてください。

安部:私は元々メリルリンチ日本証券(現BofA証券)の投資銀行部門でM&Aのアドバイザリー業務や株式債券の引受業務をやっていて、特に金融法人グループで銀行や保険会社のお客様にサービス提供をしておりました。欧州だと2016年くらいからチャレンジャーバンクという新しいベンチャーが銀行免許をとって銀行サービスを始めることが流行っていたのですが、日本にはそのような流れが来ておらず、新規参入による業界のアップデートに可能性を感じていました。

既存の銀行ではどうしても過去のアセットやしがらみに縛られてしまう部分があるので、身軽にゼロから金融を考え直してサービスを作ることが出来れば、海外のチャレンジャーバンクに匹敵するような新しい金融サービスが作れるのではないかと考えました。新しい金融サービスを日本で自分の手で作りたいという気持ちで起業を決意しました。

河西:チャレンジャーバンクといえば、NuBankが上場して話題になりましたが、安部さんはどう見ていますか?

安部:すごいです、素晴らしいですよね。一方で、ブラジルだからできる部分も多いと思っています。既存の銀行インフラが日本に比べると整っておらず、金利も高く、マージンが取れる市場に対して、モバイルオンリーで個人が簡単に安く使えるサービスなので、こういうものができたらいいなと思いますが、日本だと同じモデルでは不可能と考えています。日本の銀行インフラは便利で整備も行き届いているので、単にモバイルで便利に使える新しい銀行では魅力が弱いと見ています。マーケットの違いはしっかり考えながらやっていかないといけないと思います。

河西:チャレンジャーバンクは色々な形がありますからね。日本だからこそのチャレンジャーバンクもあると思うので、RBFを皮切りに色々な形に広げていけたらいいですよね。

安部:べンチマークしているところにイギリスのOakNorthというチャレンジャーバンクがあるのですが、主に起業家や中小企業へのローンを提供していて、少し金利は高いですが凄いスピードで融資の意思決定をしています。データ処理にはAIを使っていますが、AIだけでなく優秀な人間の目でも判断していることを同時に売りにしています。我々も同様のモデルだと思うので、機械と人間のかけ合わせをきちんとやっていかないといけないなと思っています。

起業にあたり安部さんを突き動かしたものは何でしたか?

最終的には銀行を目指していく

安部:そうですね。アドバイザリー業務は第三者的な立場なので、「何かもっとできることがあるんじゃないか」と歯がゆさを感じていたんです。自分が意思決定者になって、自分が考える「これがあればもっとよくなる」というものを作れたら面白そうだなという気持ちでした。自分が中心に立ってサービスを作りたいという気持ちですね。

起業するにあたって悩みはなかったですか?

安部:悩みはなかったです。あまりリスクも感じていませんでした。万が一うまくいかなくても、得られた経験や能力を生かして新しいものを生み出せる可能性を考えると、むしろチャレンジしないリスクの方が大きいと思いました。

河西:フィンテックって他の分野に比べて起業するのが大変そうですが、不安にはならなかったですか?

安部:不安には思わなかったですね。起業する時はだれしも自信過剰になっている部分があると思うんです(笑)。今考えると当時の自信は実力に対して過剰であったなと思いますが、その時はそういった根拠のない自信がありました。

創業時はどのようなメンバー構成でしたか?

安部:創業時は私とCFOの佐保の2名でした。佐保は前職が一緒でして、一時期は一緒にFIG案件を担当していました。次のキャリアとして新しく金融を作ることを打ち明けた時に「ぜひ一緒にやりましょう」と言ってくれたんです。

河西:CTOの方と2名で起業というのは良く見かけますが、似たようなバックグラウンドで起業するというケースは珍しいようにも思えます。このような意思決定をしたのはなぜでしょうか?

安部:佐保はバックグラウンドは近いのですが、考え方は結構違いますね。僕はどちらかというと突き進むタイプで、佐保は一歩下がって客観的に物事を見て、冷静に意見をくれることが多いです。僕がアクセル、佐保がブレーキといった感じでうまく釣り合いが取れていて相性がいいと思ったのでこの2名で起業をすることにしました

その後、メンバーはどのように増やしていきましたか?

安部:2人ともプログラマーではないので、まずエンジニアを採用しようということになりました。フィンテックはお金を扱うのでプログラムのミスはあり得ません。システムが肝なんです。人づてなどで適した知見がある人を探していました。

そんな時に、とあるエンジニア向けの雑誌を読んでいると、フィンテックに関連する記事を寄稿しているエンジニアが目に留まりました。記事の書きぶりを見て、この人は信頼できるなと思いました。早速Facebookで名前を検索して、ものすごく長文のメッセージを送りました(笑)。そのとき彼は転職する気はないと言っていたのですが、ランチに誘ってひたすら口説き、無事Fivotにジョインしてくれることになりました。

シードラウンドの出資はどのようなVCから受けましたか?

安部:最初はEast Venturesから出資を受けました。次のラウンドでDeepcore、ANOBAKAに新しく入っていただきました。

Angel Bridgeとはどのように出会いましたか?

安部:初めはお問い合わせフォームからメッセージをいただいたのがきっかけです。当時別のVCをリード候補で進めようとしていたところでしたが、お話させてもらうことにしました。
もともとAngel Bridgeを知っていた訳ではないのですが、非常に仲が良い知人も出資を受けていたことが分かって、信頼できそうだなと感じました。話を重ねていく中で、特に河西さんにはスタートアップ向けのデッドファイナンスの将来性や必要性をすごく理解していただけました。投資までの意思決定もめちゃくちゃ早かったですね。この人たちと一緒だったらスピード感をもって進められそうだと思いましたね。

河西:初めてお話してから意思決定までどれくらいかかりましたっけ? すごく早く意思決定したのを覚えてます(笑)。

安部:2週間ぐらいですよ。本当に早くてびっくりしました(笑)。それだけこの事業に対して将来性を感じてくれているんだなと思って、すごく嬉しかったです。経営陣に対する期待も強く感じ、必ず成功させようと思いました。

河西さんは投資にあたってどのようなことを検討しましたか?

最終的には銀行を目指していく

河西:まずRBFというプロダクトがすごくいいなと思いました。ベンチャーがデッドを借りづらい状況の中で、将来発生するであろう売掛債権をディスカウントで買うというやり方があるのに驚きました。最近はStripe、Shopify経由など、売上のデータはいろんなやり方で連携できるので、そのデータをみて素早い意思決定ができるというようになって来ています。アメリカでは既に盛り上がっているので金融商品として定着しうるものであるという感覚を持ちました。ほとんどコンセプトと経営チームだけで意思決定しましたね。安部さん、佐保さん、この2人が真面目に命賭けてやるんだったらいっちょ賭けてみるかと!

河西さんが投資検討を進めていく中でよく覚えているエピソードはありますか?

河西:オフィスがベンチャーっぽくて、非常に好感度が高かったですね。外は古くても中がすごくきれいになっていて。

安部:外見はボロボロなんですが、中はリノベしてあったんですよね。ビルの外観だけみると取引先に驚かれることもあります。

Angel Bridgeからはこれまでどんな支援・取り組みがありましたか?

安部:いろいろご支援いただいていまして、継続的なところで言うと月次定例では毎回アドバイスをいただいています。採用面でも優秀な人材を紹介していただき、ありがたかったです。その中で一番プラスになっているのは、富裕層の方をご紹介いただいて、その方から資金面でのバックファイナンスを一部いただいていることですね。これは事業面の直接のインパクトがある支援なので本当にありがたいです。

Angel BridgeはどんなVCだと思いますか?

安部:支援の濃度が特に高いと感じています。VCによってサポートの方法は様々なのですが、Angel Bridgeさんにはゴルフに誘っていただくなどプライベート含めて密度濃くお世話になっていますね。先日のディナーもすごく盛り上がりましたよね(笑)。

河西:若干飲みすぎましたが楽しかったです(笑)。

最終的には銀行を目指していく

お金で未来の経済を救う

後輩起業家に伝えたい、起業にあたって気を付けるポイントはありますか?

安部:そうですね。反省点として挙げられるのは、あれもこれもやってみたいという気持ちがあったので方向性が定まらなかった時期があったことです。結果的には、仮説を持ってやってみたので少しやった段階でダメなことが分かったのは良かったですね。

ただ、もう少し仮説の数は最初から絞れたかなと思っています。一度に打つ仮説の数を思い切って減らした上で、じっくり1つ1つの検証を進めてもよかったかなと。具体的に言いますと、個人に対しての融資サービスやABL(Asset Based Lending:顧客の流動資産を担保として活用する金融手法)などもやっていたのですが、これらについてはプロダクトとしてのシャープネスをもっと磨くべきだったなと思います。構想段階で進めてしまうと労力含め大変でしたね。

結果論ではあると思います。やらないよりは良かったですが、絞り込みの段階でまだできることがあったなと思います。

Fivotをどんな会社にしていきたいですか?

安部:私たちは既存の金融機関では埋められていないスペースを埋めるための新しい金融を目指しています。そのスペースを埋めなければならないと考える理由として、そもそも金融はお金があれば成長できるのにお金が足りなくて成長できないところにお金を融通するためにあると思っています。特にベンチャーについては、現在はGDPに占める割合は微々たるものですが、今後の経済の新陳代謝や構造変化の中でその割合は増えることが予測されるので、今から資金を融通する仕組みを作っていかないと経済が滞ると感じています。
将来的にFivotがいたから経済が促進されて、色々なベンチャーや成長企業が生まれたと思ってもらえたら本望ですね。

何を社会に届けたいですか?

安部:直接的に社会に何を届けるかと言えばお金になると思うのですが、これを必要な企業に届けることで企業が成長して、消費者に付加価値がより大きく届けられるという循環を実現したいですね。社会の成長を助けることにつながるのではないかと思います。

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