こんにちは!Angel Bridgeインターンの山田と申します。
前々回の「Angel Bridge USベンチャー研究#8」は、EC上で返品された商品の検品・保管を行い、最高値で販売可能なチャネルに出品するOptoroについて紹介しました。
Angel Bridge USベンチャー研究#8
今回は、ECサイト内に高性能な検索アルゴリズムをAPIとして提供することでCVRを向上させるalgoliaについて紹介します。
algoliaは2012年に自然言語処理のエンジニアであったNicolas Dessaigneによって設立されました。2022年までに合計9回の資金調達を行っており、合計調達金額は$334M、評価額は$2.2Bです。
algoliaは「1つ1つのECサイト内にGoogleのような検索アルゴリズムを搭載する」ことをコンセプトに事業を展開しています。
続いて、algoliaのビジネスモデルについて紹介します。
algoliaはEC企業に対して、検索アルゴリズム (algolia SEARCH) とレコメンドアルゴリズム (algolia RECOMMEND) をAPIの形で提供します。
マネタイズはAPIの月額使用料で行っており、料金体系は基本料金+使用量に応じた従量課金となっています。
ECサイト内の検索アルゴリズムの質が低いと、消費者がサイトに立ち寄っても欲しい商品が見つけられず離脱につながってしまうため、検索アルゴリズムの質はCVRに直結する重要な要素です。
しかし、一部の大企業を除いてほとんどのEC事業者には、自社サイト内に高度な検索アルゴリズムを構築できる優秀なエンジニアを雇う余裕がありません。
また、近年はShopifyなどのパッケージを利用してサイトを立ち上げるEC事業者が増加していますが、そうしたパッケージに最初から実装されている検索アルゴリズムも性能が高いとは言えません。
このようにEC事業者にとって、自社サイト内に高度な検索アルゴリズムを手軽に構築できないことは大きなペインとなっていました。
algoliaはわずか5分で実装可能な検索アルゴリズムである「algolia SEARCH」をAPIの形で提供することで、上記の課題を解決します。
また、検索アルゴリズムと連動した商品レコメンドエンジンである「algolia RECOMMEND」もAPIとして提供しており、相乗効果でCVRの向上を実現します。
以下、それぞれのサービスについて見ていきます。
① algolia SEARCH
algolia SEARCHは、あらゆるウェブサイトやアプリケーションにわずか5分で実装可能な高性能の検索アルゴリズムです。
以下、代表的な機能を紹介します。
以上、algolia SEARCHの代表的な機能をまとめました。この他にも下記のような機能があります。
② algolia RECOMMEND
algolia RECOMMENDはalgolia SEARCHと連携することが可能です。
それによって、個々の消費者のサイト内での行動履歴に基づいて、関連商品やよく一緒に購入される商品のレコメンドを行うことが可能です。
代表的な顧客にはDiorやLVMHグループなどの有名ファッションブランドや、オフィス機器を扱うStaplesなどが並びます。
実際の導入効果の一例として、LACOSTEではサイト内の商品検索からの売上が150%上昇し、CVRも37%上昇しました。
また、API接続可能なプラットフォームにはShopifyをはじめ以下のものがあります。
日本でもEC事業者に検索アルゴリズムを提供している企業は既に存在しています。
しかしながら、algoliaのようなユニコーンは存在していません。
この理由は大きく2つ考えられます。
第1の理由として、algoliaはEC事業者に対してだけでなく、SlackやStripeなどのSaaSサービスや様々なメディアサービスに対しても検索アルゴリズムを提供しているのに対して、日本企業のサービスはEC事業者のみを対象としているので、市場の大きさが異なることが挙げられます。
この市場の違いは、algoliaの検索アルゴリズムがECサイトだけでなく、あらゆるサイトやアプリ内で機能するように設計されているという、algoliaの技術力の高さに起因しており、日本企業が簡単に模倣できるものではないと思われます。
続いて第2の理由として、日本におけるEC消費は、検索アルゴリズムをAPI連携することができないAmazonや楽天などのモール型ECに集中していることが挙げられます。
そのため、日本のEC事業者は「検索アルゴリズム自体を高性能にすることで自社の商品を探しやすくする」という戦略ではなく、「自社の商品をいかにしてモールの検索アルゴリズムに最適化するか」というSEO対策を中心に行なっており、algoliaのようなサービスを提供する企業の需要はアメリカほど大きくないと思われます。
以上2つの理由により、日本ではalgoliaのようなEC事業者に検索アルゴリズムを提供するユニコーンは存在していませんが、モール型ECのSEO対策のサービスなど、日本のEC市場に特化した検索アルゴリズムサービスを提供する企業が生まれるのではないかと期待しています。
今回はEC領域特化SaaS紹介の第四弾として、EC事業者に高性能な検索アルゴリズムをAPIの形で提供するalgoliaについて紹介しました。
サイト内の検索アルゴリズムの違いによって、CVRが大きく変化するというのは非常に面白いと思いました。
また、日本とアメリカのEC市場の違いから、日本独自のサービスが生まれる可能性もあるため、ECの検索アルゴリズム領域には今後も注目していきたいと思います。
最後になりましたが、Angel BridgeはCVR向上を目的としたEC周辺サービスにも積極的に投資しています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!