こんにちは!Angel Bridgeインターンの黒田です。現在、京都大学医学部医学科5回生です。
これから、アメリカの未上場Fintech企業についての調査結果をシリーズ化して発信していきます。アメリカの成功事例を調査し、それが日本でも応用できないか? 日本とアメリカの注意すべき市場の違いは何か? などの観点から考察していきたいと思います。よろしくお願いします!
今回は第2弾として、住宅ローンを提供するBetterを紹介します。
KPMGのレポートによると、COVID19パンデミックの影響によって世界のFintech企業への投資額は2019年$215Bから2020年$122Bに下がりましたが、2021年はその流れに反発して上半期だけで$98Bもの投資が行われています。これは目覚ましい回復です。
次に全体と比較をしてみます。2021年第3四半期だけで42社のフィンテック企業がユニコーンになり、これはユニコーン誕生数の3分の1です。また、2021年上半期のVC投資額$294BのうちFintech分野が$52Bを占めています。このように全体と比較してもFintech分野が伸びていることがわかります。
アメリカFintech企業のリストアップにはFintechLiveの出している「The 198 Fintech Unicorns of the 21st Century (July 2021 update)」を参考にしました。このリストから本拠地がアメリカかつ、未上場のものを抽出しています。
未上場Fintechは54社ありました。今回はそれをカオスマップにまとめています。
この中から今回は第一弾として、住宅ローンを提供するBetterを紹介します。
Betterは2014年に現CEOのVishal Gargによって設立されました。これまでに5回の資金調達を行っており、その合計調達額は$900Mです。最新の2021年4月のラウンドでは$6Bという高い評価を受けています。最新ラウンドではSoftbank Vision Fundも参加しており、注目企業となっています。そのミッションは「住宅ローンを迅速に、低いコストで、透明化されたプロセスで提供する」となっています。
Betterのビジネスモデルについて解説します。住宅購入者に対して住宅ローンを提供し、その住宅ローンを投資家に売却することでマージンを得るというものです。ローンの金利で収益を上げているわけではありません。
この投資家には、Fannie MaeやFreddie Macなどの政府支援機関や、機関投資家が含まれます。売却される住宅ローンは証券化され、政府支援機関に元本保証されます。
ローンをすぐに投資家に売却するメリットとして、ローンを回収できないリスクを回避できること、資金不足に陥らず次々と多くの住宅購入者にローンを提供できることが挙げられます。
ではBetterは債務者のどのようなペインを解決する企業なのでしょうか? 現在、住宅ローンを組むときの債務者のペインとして次の二つが挙げられます。
Betterはテクノロジーを使ってこれらのペインを解決します。
Betterのサービスは大きく分けて4つで、住宅ローン、不動産、タイトル保険、住宅所有保険です。
本記事では、Betterのサービスの中心となっている住宅ローンについて解説します。
ではBetterはどのような技術でこれらのサービスを実現しているのでしょうか。
具体的に、二つの技術が挙げられます。一つはワークフローエンジンの「Tinman」、もう一つが「投資家とのマッチングエンジン」です。それぞれ解説します。
ローン組成額は右肩上がりとなっており、2021年の第一四半期だけで$14Bのローンを提供し、現在は月に$4Bのローンを提供しています。また、収益もそれに応じて増加しています。
次に日本とアメリカの住宅ローン市場の違いについて考察します。以下の二つが挙げられます。
日本とアメリカの市場の違いを考慮すると日本で住宅ローン事業を行うのはアメリカよりは厳しいかもしれません。しかし、日本ではまだBetterのような、実店舗を持たず完全オンラインで住宅ローンを提供し、かつ、手数料を0にしている企業は存在しません。もしそのような企業が現れて日本の市場の現状を変えてしまえば、面白いと考えています。
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