中村:ブルーモ証券は、個人向けの投資アプリを提供している会社です。スマートフォンから米国株や海外のETF(投資信託)に投資ができるアプリです。これまでの投資アプリと違うのは、自分で資産運用を考えたい方にとってとにかく使いやすいところ。金融リテラシーが乏しかったり、面倒な手続きが嫌な方でも簡単にはじめられる点が挙げられます。
中村:まず、口座開設の申し込み手続きはおよそ2分で完了します。また口座に入金するだけで、自分で選んだ複数の米国株・ETFに対して両替、買い付けができます。著名な投資家や他のユーザーのポートフォリオをそのままコピーできるので、投資経験が浅い方でも迷わず分散投資を行うことが可能です。当社の「Bloomo」は、海外株による長期分散投資をより多くの人の手に届けるために開発したアプリなので、投資に対する敷居を下げるためにも使いやすさにはこだわりました。
中村:日本ではこれまで金融資産は預金に偏り、投資に対して慎重な方が少なくありませんでした。しかし、過去5年ほどの間に状況は大きく様変わりし、コロナ禍による生活を見直す機運の高まりや金融庁の報告書をきっかけに「老後2,000万円問題」が話題になるなど投資への関心が高まりを見せています。2024年からは新NISAがはじまり、証券口座の年間開設数が大幅に増えており、個人投資サービス全体に非常に強い追い風が吹いている状況です。
中村:CTOを務める小林悟史は、東大のコンピュータサイエンス出身で、オンラインレンディングや株式投資型クラウドファンディングシステムをスクラッチ開発した経験を持つエンジニアです。またバックオフィスの業務責任者を務める吉岡龍弥は、マッキンゼー時代の同僚で証券会社に必要なバックエンドシステムの仕様策定、業務の設計や運用を担ってくれています。私自身は、過去財務省に在籍していたこともあり法規制に明るく、スタンフォードMBAでの留学中に最先端のテクノロジービジネスとデザイン思考を学んだ経験を活かし、経営とプロダクトマネジメント全般を統括しています。スタートアップながらお客様のために最善を尽くせる体制を築けたと自負しています。
中村:創業から間もなく、Angel Bridgeの八尾さんから声がかかったのがきっかけです。八尾さんは私と吉岡と同じくマッキンゼーのご出身で、私たちが起業したのを耳にされた八尾さんから吉岡にアプローチがありお付き合いがはじまりました。その後パートナーの河西さんやほかのメンバーを紹介していただき、いまに至っています。
中村:プロフェッショナルファーム出身者が多く、仕事に対するマインドや組織カルチャーが似ており、共通言語が多い印象でした。お声がけいただいた当時は、まだ個人投資家から調達した資金で賄えていたので「すぐにでも」という話にはなりませんでしたが、近い将来、VCから調達する時期がやってくるのはわかっていましたから、それ以降、定期的に連絡を取らせていただいていただくようになりました。
河西:日本において長期分散投資の有用性を多くの方に広げたいという志の高さに共感を覚えたのと、中村さんの輝かしいキャリアに加え、創業初期にもかかわらず小林さんや吉岡さんをはじめ、非常に優秀なメンバーを迎えられていることに大変驚いたのを覚えています。それがブルーモ証券の第一印象でした。
中村:最初にお話させていただいてから半年ほど経ったころ、いよいよ本格的に証券会社としての体裁を整えるにあたり、改めて「ぜひ投資していただけないか」とお話しさせていただきました。それから投資を決定いただくまで、わずか2週間ほどだったのがいまも印象に残っています。意志決定のスピードには驚かされました。
河西:はじめてお会いしたときから、ぜひ応援させてもらいたいと思っていましたからね。最初にお目にかかってから半年ほどの間に、第一種金融商品取引業免許の取得に向けたプロセスを踏んでおり、やるべきことを着実に実現していく手堅さも感じたので、迷わず投資を決めることができました。
中村:投資先に対するコミットメント力が半端ないところですね。何としても付加価値を提供したいという強い意欲を感じますし、反応速度が非常に速い上にとにかく泥臭い(笑)。その献身ぶりは目を見張るほどです。
河西:投資先のバリューアップにつながるなら、気合と根性でやり遂げるのがチームとして大事にしていることなので、そのお言葉は大変光栄です。われわれは投資先の応援団。どんなに泥臭いことでも率先してやらせていただきます。
中村:先日も三好さんが気を利かせてくれて、ある採用候補者のリファレンスを取ってくださったのですが、そもそも彼は当社の担当ではないんです。そんなことはほかのVCではありえないこと。そのホスピタリティは、ほかのVCとは一線を画すレベルだと思います。
中村:ひとつは優秀なメンバーがチームにジョインしてくれたときですね。「この人がきてくれたら、きっとこれまでとは違う景色が見られる」と思えるのはうれしいことですし、経営者としてのモチベーションが高まります。もうひとつは、お客さまの存在です。ローンチから間もないスタートアップにお金を預けていただけること自体、私たちに価値を感じてくださっているわけですし「毎朝アプリを開くのが楽しみです」「ほかの方のポートフォリオを見ながら勉強しています」といった前向きな言葉を頂戴すると励まされます。このビジネスにチャレンジしてよかったと感じる瞬間です。
中村:自分たちが本来やろうとしたこと、やりたいことを決してぶらさず、大きな目標に向かって、やるべきことを愚直に取り組むことですね。かつて物理学者のアインシュタインは「Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is not to stop questioning(過去から学び、今日を生き、明日への希望をつなげよう。もっとも大切なことは、問うことをやめないことだ)」と述べており、私も日々の積み重ねが偉業につながると信じています。また、スタンフォード留学中に出会ったシリアル起業家の恩師からは成長企業経営の名物授業で、起業家という仕事について「Enjoy your journey, not outcome(結果ではなく旅路を楽しめ)」といわれ、いまも心に残っています。どちらも、自分の意志で選んだ道を信じ、真摯に経営と向き合い続けることの大切さを教えてくれました。
中村:当面は、期待が高い新NISA口座の開設に向けた対応や積立投資機能の整備を急ぎつつ、海外株での資産形成に必要な金融機能を順次拡張していくつもりです。長期分散投資を通じて、資産形成のパートナーとして多くの方に認知していただくために、ブルーモ証券をみなさんのご期待に応えるビジネスに成長させたいと思っています。
中村 : 今後も信頼関係を保ちながら同じ夢を見続けられたらいいなと思っています。これからも最高の応援団でいてください。
河西 : もちろん、私たちもそのつもりです。中村さんは苦学の末、Angel Bridgeのオフィスからもほど近い都立日比谷高校を出られ、さらに東大、財務省、マッキンゼーを経て、今日に至るまで、数々の困難に直面されたはずですが、それをものともせずことごとくクリアしてこられた。私たちはそんな中村さんのガッツに期待しているんです。
中村 : ありがとうございます。財務省に入省したのも、その後MBAを経てマッキンゼーに入り、さらにブルーモ証券を創業したのも、少子高齢化の一途を辿る中で日本を若者が希望を持てる社会にしたかったからです。その思いは大学時代から15年以上変わりません。これからもその目標を達成するため最善を尽くすつもりなので、ぜひご支援のほどよろしくお願いいたします。
河西 : もちろんです。
中村 : もし、スタートアップに関心をお持ちなら、健全なメタ認知を持ってチャレンジしてほしいですね。プロフェッショナルファームは待遇もいいし世間からの評価も総じて高い。そのため、どうしても自らの実力を高く見積もりがちです。スタートアップをはじめ、プロフェッショナルファームとは大きく異なる領域にチャレンジするのであれば、その領域で見た場合の自分の市場価値をフェアに見積もり、どうすれば会社の看板なしに実力を発揮できるか、足りない部分があるとしたらそれは何かを把握し補う努力が欠かせません。プライドや世間の評価に惑わされず、正しい決断をするためにもメタ認知を持って立ち向かっていただければと思います。
河西 : 中村さんのように官僚経験者やプロフェッショナルファーム在職者のなかにも、スタートアップで活躍しうる適性を持つ方は大勢いるはずです。こうした方々がスタートアップの世界に参入してくだされば、日本によりよい変化をもたらせると信じています。ぜひチャレンジしていただきたいと切に願っています。中村さん、本日はありがとうございました。
中村 : こちらこそありがとうございました。