「見積もり」業務の効率化でより良い社会を実現する

「見積もり」業務の効率化でより良い社会を実現する

[吉村昌子ミツモアCSO × Angel Bridge 河西]

2023.05.31

2019年6月に5億円、22年8月に23億円の調達を実現した株式会社ミツモア。300種以上にのぼる業務見積もりの仲介で消費者と事業者をつなぐ「ミツモア」や、現場事業者の業務効率化と営業力強化を実現する「MeetsOne」を提供しています。今回はそんなミツモアでCSO(最高戦略責任者)を務める吉村昌子氏にご登場いただき、マッキンゼーからシード期のミツモアに身を投じた経緯、またAngel Bridgeから受けた具体的な支援内容などについて、Angel Bridge代表パートナーの河西と振り返っていただきます。
吉村昌子 株式会社ミツモア CSO
  • 京都大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて製造業・IT・小売業界を中心に、大手クライアントの全社トランスフォーメーションやデジタルマーケティング、価格戦略等のプロジェクトに従事。2017年10月、創業間もないミツモアにジョイン。
河西佑太郎 Angel Bridge株式会社 代表パートナー
  • ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門、ベインキャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て2015年Angel Bridgeを設立し、現在に至る。
  • 東京大学大学院農学系研究科修士修了(遺伝子工学)、シカゴ大学MBA修了。

デジタル化を通じて集客とオペレーションの改善に取り組む

ミツモアの事業内容を聞かせてください。

吉村:ミツモアは2つのサービスを提供しています。1つは各界のプロに見積もりを依頼できるサービス「ミツモア」、そしてもう1つが「MeetsOne」という現場事業者向けのオペレーション改善サービスです。

具体的にどのような課題を解決する事業、サービスなのでしょうか?

吉村:現場事業者の多くは、個人事業主や小規模事業者が多く、いまだに電話、ファックス、紙によるコミュニケーションに頼っていることが少なくありません。利用者にしてみれば、庭木の剪定や家のリフォームなど、1日でも早く解決したい問題があるのに、依頼から発注までに2週間程度待たされることも多い上に、信頼できる業者を見つけるのも大変です。一方、現場事業者にしてみれば、見積書提出後のフォローや既存顧客に対する定期的なケアまで手が回らず、営業機会の損失を重ねるケースが珍しくありませんでした。しかしミツモアなら、事前に入力していただいた詳細な価格表に基づいて、24時間いつでも1分程度で見積もり出すことができ、MeetsOneなら、ITに不慣れな方でも簡単に業務効率化を通じ営業力強化が図れます。私たちが提供しているのは、集客とオペレーションのデジタル化によって旧態依然とした業務を改善し、稼げる仕組みを提供するサービスなんです。

競合状況はいかがですか?

吉村:ミツモアが得意としているのは、ある程度相場が明らかなサービスと利用者のマッチングではなく、本来なら現地調査や詳細な打ち合わせなどを経なければ、金額の目安さえわからない個別性の高い依頼です。確かにプロに仕事を依頼するサービスや事業者の業務効率化を支援するサービスはほかにも存在しますが、業務フローが複雑であるがゆえに、長らく古いプロセスが温存されてきてしまった領域をソフトウェアの力で改善するという意味において、真正面からぶつかり合う競合はほぼないという認識です。

デジタル化を通じて集客とオペレーションの改善に取り組む

プロフェッショナルファームからシード期のスタートアップへ

幼少期から社会に関心のあるお子さんだったと聞いています。社会人になるまでどんな生活をされていたのでしょう?

吉村:生まれも育ちも奈良で、いま振り返るとちょっと恥ずかしいんですけれど、教育制度に一言もの申したくて文科省にパブリックコメントを送ったりするような「意識高い系」の小学生でしたね(笑)。子どものころから家族揃ってテレビのニュースを観たり、新聞を読む機会が多かったので、自然と社会への関心が高くなったんだと思います。将来の夢は、割と素朴に「国公立大学に進学して公務員になれたら」と思うくらいで、はっきりとした目標があったわけではありません。ただ、何らかの形で社会に貢献したいという気持ちはその当時からあった気がします。

その後、京都大学法学部に進学され、卒業後はマッキンゼーに入られました。どんな心境だったのですか?

吉村:大学時代に鯖江市の地域活性化活動に携わったときに、これから戦略コンサルタントになるという方にお会いして、コンサルティングファームに興味を持ちました。コンサルティングの世界について、自分なりにいろいろと調べてみると、公務員や官僚より自分の性分に合っていそうな気がしましたし、民間のほうがかえって面白い仕事ができるかもしれないと思って受けたところ、運良く入社できました。

マッキンゼー時代に得たこと、学んだことについて教えてください。

吉村:マッキンゼーに在籍していた4年半弱の間に学んだことは数知れません。社会人としてのイロハにはじまり、時間あたりの価値を最大化するために何を考え、何をどうすべきか、プロとして必要なことをすべてを教えてもらいました。学んだのは具体的な方法論や手法だけではありません。「戦略とは何か」「論理的に考えるとはどういうことか」「課題解決のためにどんな問いを立てるべきか」といった、抽象度の高い思考力も鍛えられました。優秀で意欲的な人たちに囲まれ、成果を出すために必要なすべてを実践の場で体系的に学べたのは得難い経験だったと思います。

なぜ、No.1プロフェッショナルファームを自認するマッキンゼーから、スタートアップのミツモアに移られたのでしょう?

吉村:マッキンゼーでは得るものが多かったのですが、さまざまな経営者と接するなかで、当事者として戦略を描き、ビジネスと向き合い成果を出したいと考えるようになりました。実はマッキンゼーを退職後、起業するつもりで準備をしていた時期もあったのですが、残念ながら計画が頓挫してしまったこともあり時間ができたので、シード期のスタートアップの現実を知ろうと思いマッキンゼー時代の先輩に紹介されたミツモアにアルバイト入社しました。

ミツモアのどこに惹かれたのでしょうか?

吉村:当初「3カ月で辞めます」と公言していたのですが、CEOの石川彩子、CTOの柄澤史也の優秀さや裏表のない言動、誠実な人柄に触れ気が変わりました。当時はまだ事業が立ち上がったばかりで、売上も月に数万円程度しかない超アーリーステージです。こうした状況にあっても、石川と柄澤は私利私欲を満たすためではなく、全身全霊で顧客のため世の中のためにベストが尽くそうとしていたんです。当時私は27歳で、この先5年、10年をどこでどう過ごすべきか、キャリアの上でも人生の上でも非常に大事な選択だと考えていたからこそ3カ月で辞めるつもりだったのですが、この人たちとならきっと有意義な時間が共有できると確信したので、ミツモアに腰を落ち着けました。

河西:いま吉村さんが言われた通り、石川さん、柄澤さん、吉村さんをはじめ、ミツモアの経営陣は事業に対する思いの強さや情熱がありながら、論理的に考え、よく話し合い、理に適った決断を下せる非常に希有なチームです。頭の良さに加え気合いと根性が備わっている。そんな印象がありますね。

吉村:河西さんにそう言っていただけて光栄です。きっと2人も喜ぶと思います(笑)。

ハンズオン投資家ならではの心強い一言が救いに

河西さんに聞きます。ミツモアとの出会いを教えてください。

河西:2019年1月ごろだったと思います。あるビジネスイベントで石川さんのプレゼンを拝見して、非常にユニークで将来性のあるサービスだと感じ声を掛けさせていただいたのが最初です。その2週間後には、石川さん、柄澤さん、吉村さんに弊社までご足労いただき、その後も何度か面談を重ねてお話しさせていただいたのですが、最初に受けた印象は変わることなくむしろ確信に変わりました。はじめてお会いしてから1カ月足らずでシリーズAラウンドに参加することを決め、それ以降も継続的にご支援させていただき、2022年8月に実施されたシリーズBラウンドにも参加させていただきました。

ユニークで将来性のあるサービスに惹かれたとのことですが、投資に至った一番の決め手は何だったのでしょうか?

河西:皆さんそれぞれキャラクターは違うんですが、 価値観が一致しており、何があっても諦めない人たちだと感じましたし、あえてニッチを狙わず、見積もりを通じてあらゆるビジネスを支援するという志の大きさも決断を揺るぎないものにしてくれました。ここまで明確な目標があり、情熱に裏打ちされた考え抜く力と実行する意欲があるなら、仮に投資が失敗しても悔いが残らないだろうと感じ投資に踏み切りました。

Angel Bridgeからはどのような支援を受けていますか?

吉村:基本的には月に1度のペースで行っている株主報告会にご出席いただき、主に資金調達や採用の面でのアドバイスやサポートをいただいています。

とくに印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

吉村:2021年の暮れにシリーズBの調達準備をはじめたころの話です。当時、株式市場は悪化の一途を辿っており、投資環境はかなり冷え込んでいました。そうした状況下にあっても河西さんは、「最後は俺たちが何とかするから大丈夫」と、私たちの判断に太鼓判を押してくださったんです。私たちの価値観や目指すところに共感していただけているんだと感じずにはいられませんでしたし「そこまで言っていただけるなら諦めず頑張ろう」という気持ちにもなれました。本当に心強かったです。

河西:資金的な面でのお手伝い以外でハンズオン投資家にできることは、実践的なアドバイスと寄り添う気持ちしかありません。ミツモアを最後まで支える覚悟があることをいち早くお伝えすることが皆さんの励みになるのであればと思ってお話ししました。将来性のあるビジネスですし、ガッツのある経営陣が揃っているんですからサポートしないわけにはいきません。当時はそんな心境でしたね。

吉村:シリーズAラウンドの調達の後、ビジネスが伸び悩んだ時期にも何度も相談に乗っていただきましたね。

河西:そうでした。勇気を持って状況を変えていこうとされている姿を見て、きっとトンネルから抜けられると思ったので、とくに不安はありませんでした。実際、新たな施策がうまくいきビジネスが再び成長しはじめたのを見て、このチームなら将来、新たな課題に直面したとしても必ず乗り越えられるだろうなと確信しました。

吉村:ありがとうございます。河西さんの言葉やご支援がどれだけ励みになったかわかりません。

「稼ぐ」仕組みの提供で日本のGDPに貢献する

改めて吉村さんにうかがいます。これからミツモアをどんな会社にしていきたいですか?

吉村:社会を支える労働人口が減りゆくなかで、限られた人数でいかに生産性高く「稼ぎを上げていくか」が、これからの日本にとって大きな課題です。手間や時間が掛かるせいで仕事を頼みたいのに頼めなかった方、また、いくら請求されるかわからず発注に二の足を踏んでいた方々が、ミツモアを通じて心置きなく現場事業者さんに仕事を頼めるような環境を整えていくつもりです。同時にMeetsOneの活用によって、業務の効率化と営業力強化が実現できれば、お客様のビジネスはさらに伸びるはず。これからも「稼ぐ」ための仕組みによって、お客様のビジネス、ひいては日本のGDPに貢献したいと思っています。

河西さんはAngel Bridgeとしてどんな支援を提供したいとお考えですか?

河西:ミツモアは自ら課題解決できる自走型チームなので、こまごまとしたアドバイスよりも、温かく見守ること、寄り添うことが大事だと思っています。ここ一番というタイミングで皆さんが正しい決断が下せるよう、これからもそんなスタンスでサポートしていくつもりです。

最後にスタートアップ経営者やスタートアップに関心を持つ方々にメッセージをお願いします。

吉村:スタートアップは苦労の連続です。気合いと根性で乗り越えざるを得ない局面に出くわすこともよくあります。スタートアップに携わるのであれば、どんなビジネスをどのような手段で実現するのかと同じくらい、誰と一緒に成し遂げたいか、よく考えてみることをお勧めしたいですね。良い時期もさることながら、価値観を共有できない人と苦しい時期を共有することはできないからです。これは創業メンバーや社員選びに限らず、投資家選びにも通じる話だと思います。

河西:この記事を読んでくださっている方のなかには、コンサルティングファームなどで活躍中の方も多いでしょう。そうしたプロフェッショナル志向を持つ方にこそ、もっとスタートアップに関心を持っていただきたいというのが私の願いです。ミツモアのような前途有望なスタートアップに優秀な人材が集まれば、吉村さんがおっしゃるように、日本のGDPを増やすことにつながるはず。ミツモアは経営陣も優秀ですしビジネスも有望です。投資家の立場からもお勧めできる会社なので、興味をお持ちの方はぜひアプローチしてみてほしいですね。

 

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