石川:ミツモアという、見積もりが簡単にとれるプラットフォームを運営しています。ユーザーがミツモアのサイトに訪問して質問に答えていくと、それに対して事業者さんからの見積もりがすぐに最大5件届きます。
事業者側からすると、一度設定を行うだけでその後の見積もり業務が自動化されるので、ミツモア経由のお客様の引き合いに対して、事業者は何の手間もなく受注活動ができて非常に効率的です。
石川:まず、弊社ほど全領域をカバーしているプラットフォームはありません。特にカメラマン/税理士向けが強みですが、カバー領域はハウスクリーニング/リフォーム/庭の手入れなど20以上に及びます。
また、見積りプラットフォームのプロセスをここまで自動化できているサービスは他にはないでしょう。例えばよくある税理士の見積もりサイトだと、登録するといろんな業者から電話がかかってきて、ヒアリングをされて見積もりが出てくるという、まだまだアナログなやり方が行われています。
それに対しミツモアでは、リクエストの内容に基づいて計算をすることで、ベストな選択肢を自動で提案することができます。事業者の全てのデータを持っていて、この人がベストだというのが分かるので、最適な選択肢をお届けできるのです。この点がユーザーにとっての体験の差に繋がっていると思いますし、事業者からすると非常に効率的に営業活動ができることが強みだと思います。
石川:新卒でベイン・アンド・カンパニーという戦略コンサルティング会社に入社した後、自分で将来起業したいなと思い、アメリカでMBAを取りその後シリコンバレーのZazzleというスタートアップで働いていました。
石川:日本の将来の見通しの暗さをずっと感じており、どうやったら日本が明るい世界になるのかとコンサル時代からずっと考えていました。特に私は海外で暮らした経験もあったため、海外では給料が上がっていくのが当然で労働生産性も高いですが、日本はG7の中でも最低の労働生産性で平均賃金も伸びていないという状況を見てきました。
自分自身のことだけを考えれば日本経済の中でニッチに戦って満足するという生き方もありましたが、そうではなくマスに対して働きかけその人たちの労働生産性を改善させることで、日本の明るい未来が思い描けるようになりたかったというのが起業のきっかけです。
石川:アメリカは起業先進国で、プロダクトを作るときの考え方が洗練されています。そのため日本の基準でモノ作りをするよりは、世界の標準がどこにあるのかを理解してから作った方が、良いものを世の中に提供できると思ったからです。
石川:元来負けず嫌いな性格なので、日本が経済的に負けていることが嫌なんだと思います。
幼少期を日本と中国で過ごしたのですが、小さい頃日本は世界中の尊敬を集めていたのに対し、だんだんと後退していっているのを感じていました。
ベインで働いていた頃にもいろんな国を見ていましたが、経済が伸びている国の明るい雰囲気に対し、日本は諦めてしまっている雰囲気を感じました。そうではなく、明日のほうがいい暮らしができると思えた方が幸せだよね、と思ったんです。
石川:ミツモアの事業をやろうと決めた後は全く躊躇はありませんでした。どちらかと言えば最初はすごく孤独でしたね。3ヶ月間共同創業者が見つからず誰とも話さない時期があり、図書館からの帰り道に強めの音楽を聴いて自分を奮い立たせたりしました(笑)。
石川:いわゆる大企業向けの事業ではなく、より多くの人の労働生産性を上げることができるというのを一番のテーマに考えていました。そういった私のやりたい事と一致するかというのと同時に、自分がバリューを生み出せそうな分野か、海外の成功事例の中で日本でも成功しそうかという3つの観点で、色々なビジネスをデューディリジェンスしていきました。
その中でも特に泥臭いビジネスの方がバリューが出ると思い、数多くあるサービスの中で見積もりを取るという極端に泥臭いところを選びました。
石川:最初はCTOの柄澤と共同で創業しました。柄澤はヤフー出身で、知り合いのエンジニアに最も優秀でやる気があるエンジニアを紹介してくれと頼んで紹介してもらいました。その人はハッカーズバーというエンジニア向けのバーに勤めている人で、そのバーに週2-3回通って「紹介してくれないと帰りません!」と言って遂に紹介してもらったのを覚えています(笑)。柄澤はマスに対してのバリューを追い求めるという考え方が一致していて、彼とだったらこの先もすれ違うことなくやっていけると思いました。
またCXOの吉村は、私のMBA同期から起業したがっているMcKinseyの後輩がいるということで紹介してもらいました。
現在はパートタイムも含め120名ほどまでメンバーを拡大しています。
石川:やはり一番大きいのは、ミツモアが目指している世界観への共感だと思います。
起業当初に色々なベンチャーキャピタル(以下、VC)と話す中で、ニッチを狙ったほうがやりやすいしベンチャーの定石だよと指摘されたり、ベンチャーなのに野望を抱きすぎだということも散々言われていました。私自身としてももう少しニッチなところを攻めたほうがこんなに苦しまなかったと思いますし、成長も早かったと思います。しかし、だからこそプロダクトを磨きこむことで日本へ大きなインパクトを与えられるだろうし、難しいからこそチャレンジしてみたいというメンバーが集まってきたんだと思います。
石川:著名なエンジェル投資家の方々のインナーサークルがあり、一人から投資を受けると他にも色々な投資家の方に繋いでいただけたというのはありますね。
最初に投資してくれた方は、「石川だったら諦めないし本気でやるだろうから」ということで投資してくれました。起業するとやはり苦しいことが多いので、諦めないかどうかが一番大事だと思います。
また事業への共感もあったと思います。当時AI領域が流行っていたので、AIを選べば簡単に成長できると思うが何故AIに行かないのかと聞かれ、「マスに対して大きいことをしたいんです」ということを説明したら、とてもいいねと共感してもらえました。
石川:もともとシリーズAは2社から投資を受けようと決めていました。1社だけだと万が一上手くいかなかった時のことを思うと不安ですし、逆にあまり増やすとコミュニケーションコストが上がり、事業成長がスローダウンすると思ったからです。
プロダクトを作るときに海外を意識して作っていたので、1社は海外にもプロダクトにも強いという軸でWiLを選びました。
もう1社は本当に辛いときにもそばにいてくれる、一緒に乗り越えてくれる、心理的繋がりが持てるようなVCが良いと思い、それが圧倒的に感じられたAngel Bridgeに決めました。
また、寄り添ってくれるという点の他にも、ファイナンス面での知識が豊富であることもAngel Bridgeを選んだポイントでした。多くの起業家はファイナンスをしたいから起業しているわけではなく、モノづくりをしたくて起業しているのでファイナンスのことはよくわかりません。当時河西さんは投資先の調達のために自分もVC回りをしていると言っていて、私自身調達する時に事業が止まってしまうことがすごく心苦しかったので、次の調達を考えたときに非常に魅力的だと感じました。
石川:まず投資検討のプロセスの進め方が非常に起業家フレンドリーでした。スピードが早いのもそうですし、他のVCとの交渉方法までアドバイスしてくれたので、ここまで寄り添ってくれるVCはなかなかいないなと驚きました。自分自身がVCなのにVCとの交渉の仕方を教えてくれるというのは驚きですよね。
また、次のラウンドはこういう設計でやるといいかもしれないねとか、次のラウンドを見据えて今回の調達はこういう形が良いよねとか将来を見越したアドバイスまでくれて、非常に起業家目線だったことが大きいですね。
河西:まず石川さんをリーダーとしたマネジメントチームが魅力的でしたね。レジュメの見た目だけでなく、メンバー全員にインタビューした時に感じた泥臭くやり切るというパッションに感銘を受けました。
あとはビジネスモデル的な面でいうと、スケールが担保できればネットワークエフェクトが効いてくる典型的なプラットフォームビジネスなのでそこの守りの部分は安心かなと思いました。また、攻めの部分で言うと一つのミツモアブランドで全ての見積もり市場を取りに行くという点が素晴らしいなと思いました。我々はメガベンチャーの創出をモットーに掲げているのでニッチを攻めずにそこにチャレンジしているというのが何よりも共感を持てました。
最後に当時カメラマンと税理士の2つの領域で既にサービスが立ち上がっていたので、今後他領域への展開も順調にできると思えたのも大きかったと思います。
色々他に検討しようと思えばいくらでも出来ましたが、これらのポイントだけを確認して実質的には1週間ほどで投資を決定しましたね。
石川:プロダクトマーケットフィットしたと思っていたのに、実は完璧にはしていなかったということがありました。イノベーターと一部のアーリーアダプターで止まっていて、マスへの壁を乗り越えられていなかったんです。永遠に越えられない壁を感じ、一番苦しかったですね。
それを乗り越えるために、課金体系を成功報酬型にするなどビジネスモデルやプロダクトを変えてもがき続け、今のモデルにたどり着きようやくマスに受け入れられるようになりました。
石川:ファイナンス面だけでなく事業面でも沢山ご支援をいただいており、本当にありがたいなと感じています。新しいカテゴリーをやるときは、ほぼ必ずMckinsey出身の八尾さん(Angel Bridgeアソシエイト)にお声がけをしています(笑)。
というのも、カテゴリーが多いので尋常ではない数の市場を理解しないといけないからです。例えば自動車整備業界を1週間で理解するとなるとかなりコンサル的なワークが必要になるので、McKinsey的に客観的に分析できることが非常に助けになります。
石川:ミツモアのゴールは日本の労働生産性が上がってGDPが増えたときだと思っています。ミツモアを使っている会社って他の会社に比べて労働生産性が高いよねという状態が実現され、そうなった時にみんながミツモアを使っていて、それにより日本全体のGDPが向上しているような世界を実現したいです。
今はミツモアというプラットフォームで、集客・見積り自動化・発注したら一瞬でベストチョイスが見つかるというモデルで勝負していますが、将来的にはこれを越えて真に人々の生活に食い込んでいけるようなサービスを作り続けたいと思っています。