Angel Bridge投資の舞台裏#20(goooods株式会社)

ワンストップ卸売ECプラットフォーム『goooods/グッズ』の提供を行うgoooods株式会社に投資した理由とは。

2024.04.18

2024年4月にAngel Bridgeの投資先である、goooods株式会社(以下goooods社)が6.7億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドでリード投資家として出資しています。

goooods社は、連続起業家である菅野CEOと松本CPO/CTOら計4名で創業した、雑貨・アパレル、美容品などの業界におけるB to B卸ECプラットフォーム『goooods/グッズ』の提供を行うスタートアップです。

「Everyone, entrepreneur」をミッションとして掲げ、情熱を追い求めてプロダクトを作るブランドオーナーや、小売店の経営者、次のトレンドを発掘するバイヤーなど、自身の情熱を追いかけて日々挑戦する人々を支援しています。

『goooods/グッズ』は、販路拡大や商品発掘で課題を抱えている、主に中小規模のバイヤー(小売店・EC)とセラー(ブランドメーカー)向けのECプラットフォームで、魅力的な商品の発掘や拡販、受発注業務の効率化、資金繰りまでを一貫してサポートします。
『goooods/グッズ』を使用することで、バイヤーの趣向に合わせた全国の魅力的な製品の発掘が容易になり、書類作成や取引・入出金管理などの受発注業務の効率化や資金繰りの改善も可能となります。また、セラー側も業務効率化に加えて、入金漏れの防止や全国や海外への販路拡大も可能になります。

今回の記事では、Angel Bridgeがgoooods社に出資した背景について、巨大かつ生産性改善の余地が大きいB to B卸業界を取り巻く環境と、goooods社の強みに焦点を当てて解説します。

goooods株式会社 | 資金調達特設サイト

今回の資金調達にあわせて『goooods/グッズ』の魅力をお伝えする 特設サイト を開設しています。

プラットフォームの魅力、裏側の技術、導入事例、採用ポジションなどを掲載しておりますので、こちらも併せてご覧ください!

1. B to B卸業界の動向と中小事業者の抱える課題

goooods社が対象とする雑貨・アパレル、美容品などのB to B卸業界の流通総額は全体で38兆円、中小企業の取引のみでも5兆円の規模がある巨大な市場です。その中で卸事業者などの中間業者の収益は15~20%を占めており、中小企業の取引だけでも約1兆円近い収益規模が存在します。

現状、卸業務は対面やメール、FAXを通じた取引が多く、EDIを除くEC化率は11%と拡大余地が大きく残っています。一方で、コロナによってオンライン取引に対する事業者の認知度合いや意識の変化もあり、EC化率は成長基調になっています。(図1)

また、従来の卸業者も各業界で社数が減少傾向にあり、これまで提供してきたきめ細かいサービスが行き届かなくなりつつあります。現状、B to C領域においては生活雑貨・家具、ファッションは20~30%ほどのEC化率である一方で、B to Bでは15%にとどまっており、goooods社が対象とする雑貨、ファッションなどの業界ではEC化率が伸びる余地が十分存在すると考えられます。

1. B to B卸業界の動向

海外でも同様の課題感から雑貨やアパレルなどを扱うB to BEC市場が立ち上がっており、米国ではFAIRE、欧州ではAnkorstoreなど、デカコーン、ユニコーンが誕生しています。両社ともに中小企業向けに雑貨・アパレル商品を対象にECプラットフォームサービスを展開しており、今後日本でも同様のサービスへの需要が高まっていくと想定されます(図2

2 海外の類似企業

現状、日本のB to B卸業界では、大企業と中小の事業者で取引におけるシステムの活用状況が異なっています。
大企業では、投資体力やその仕入れの種類・数量の大きさから受発注システムへの投資が進んでおり、EDIと呼ばれる大量かつ、繰り返しの多い受発注を自動的に行えるシステムを用いて受発注業務を効率化しています。

一方で、中小の事業者においては一部の業務に特化した効率化ツールの導入が進む一方で、商品の発掘・販売から受発注、入出金管理までを一貫して行えるプラットフォームが少なく、セラー側とバイヤー側でそれぞれ課題が発生しています。

セラー側の課題

  • 受発注業務: 売上向上につながる営業やマーケティングに時間をかけたい一方で、注文処理から発送処理、入金管理の業務に追われ、深夜まで作業する場合もあり
  • 入出金管理: また、現状紙やエクセルで取引管理しているため、作業の非効率性に加えて入金漏れが発生し、確認漏れへの不安からバイヤー側への催促もしづらく、売上損失も発生
  • 商品拡販: 商品を全国に拡販したいが、営業人員不足や展示会への参加費用や時間をねん出できない。また、こだわりのあるブランドをこだわりを持って陳列・販売してくれる質の高いバイヤーを探すのが難しい

バイヤー側の課題

  • 商品発掘: 魅力的なブランドや売場のテイストに合った商品、売れ筋商品を仕入れたいニーズがあるが、展示会での参加には時間や費用が掛かり、またオンラインでは情報が十分でなく、探しきれない
  • 受発注業務: 問い合わせや取引条件の交渉が手間。発注・経理作業が手間
  • 資金繰り: 発注管理や経理業務に時間がかかる上に、業界構造上前払いが多く、資金繰りにも苦労

各業界の卸事業者の減少を踏まえると、当該課題に対する意識はより大きくなっていくと考えられます。

図3. B to B取引における中小事業者(セラー、バイヤー)の課題

2.プロダクト概要とgoooods社の強み

前述したペインを解決すべく、goooods社は中小事業者を主な対象に、魅力的なブランドのマッチングから受発注DX、資金繰りまでをワンストップで支援するB to BECプラットフォーム『goooods/グッズ』を提供しています。

主な特徴は以下の3つであり、卸業務における各プロセスのペインに対して一貫して解決可能なECプラットフォームを提供しています。

1.エッジのある魅力的なブランドの発掘 / 拡販

バイヤー

  • AIを活用し、バイヤーのセンスや店舗のテイストに合うブランドの発掘が可能
  • 新規購入ブランドであれば、30日間お試し可能

セラー

  • 魅力的なブランドストーリーや豊富な商品説明
  • 全国や海外も含めた新しいバイヤーの獲得

2.受発注管理業務の効率化

  • 取引先とのコミュニケーションや取引関連書類の発行や管理が一元化でき、付加価値の高い業務(商品発掘、接客やマーケティングなど)に注力可能
  • 顧客に応じた取引条件のルール化ができ、条件のきめ細かい設定が可能

3.資金繰り支援

  • 支払・入金状況の可視化により、入金や支払い漏れを防止
  • バイヤー側は支払い期間を最大60日間まで延伸可能

4. goooods/グッズ』のウェブサイトイメージ

また、goooods社は非常に開発力の高いチームのもと、UI/UXやデザインの優れたプラットフォームを構築できています。加えて、AI/MLを活用したアルゴリズムによって、バイヤーのセンスを元にした商品提案が可能になり、バイヤー側の訪問頻度も非常に高く、根強いユーザーの獲得に成功しています。

ECプラットフォームは、構造的にセラーとバイヤーを獲得するにつれてプラットフォームの価値が高まる事業モデルであり、一度軌道に乗れば急速な成長を実現し、winner-take-allになる可能性を秘めています。実際に海外の類似企業であるFAIREAnkorstoreでもネットワーク効果が働き、加速度的な成長を実現しています。

3.経営陣

goooods社には有数のテック企業での経験を持ち、スタートアップの創業からExitまでの経験がある経営陣が集っています。

菅野CEOは、前職FIVE社を2014年に起業し、わずか3年でLINE社に大型売却した優秀な連続起業家です。FIVE社は、現在公開されている20142023年のスタートアップの売却額でも上位に位置するなど、成功したM&Aの一つになっています(図6)。
菅野CEOは、非常にロジカルである上に、創業初期に泥臭く営業に同行するなど、行動力も高い優秀な経営者です。

また、ワークスアプリケーションズや動画DSPスタートアップのリードエンジニアを経てFIVE社を共同創業した松本CPO/CTOや、PwCおよびBooz Allen Hamiltonで戦略コンサルタントとして従事し、GoogleAmazonなどのテック企業を経た埜々内 CCOなど。優れた経営陣がそろっています。経営チーム以外のメンバーに関しても、FIVE社のコアメンバーが在籍しており、スタートアップでの経験が豊富なチームとなっています。

5. goooods社経営チーム

6. 過去10年間のスタートアップのM&A額上位15社(非公開案件除く)

4.おわりに

B to Bの卸市場は、非効率なオフライン取引、アナログな作業が中心で、EC取引やDXによる生産性の向上余地が大きく残る市場です。また、コロナを契機に、特に中小事業者を中心に商品発掘・販路開拓や受発注効率化、資金繰りに対する課題がますます浮き彫りになりました。上記の課題感からECでの取引や受発注業務のDXは今後加速していくと考えられ、B to Bの取引においても、ECプラットフォームが今後重要性をさらに増していくと考えられます。

goooods社は、LINE社に前職のFIVE社を売却した経験をもつ連続起業家の菅野CEOを筆頭に有数のテック企業やスタートアップでの経験が豊富な経営陣のもと、巨大なB to B卸業界の変革を粘り強く成し遂げていけると、我々も期待しています。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。
ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

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