2023年12月、Angel Bridgeの投資先であるHITOTSU株式会社がA1ラウンドにて2億円の資金調達を発表しました。
HITOTSUは医療機器管理SaaSのHITOTSU AssetとコミュニケーションDXサービスのHITOTSU Linkを提供しております。前者は医療機器管理に関するペインを解決するプロダクトで、クラウドベースで院内のあらゆる機器・資産を一括管理・情報共有し、医療DXを実現します。後者は今回新たにリリースされる新サービスで、臨床工学技士と販売業者やメーカー間のコミュニケーションを効率化するプロダクトです。医療業界に特化したUIにより医療DXを実現します。
今回は、HITOTSUへAngel Bridgeが投資した理由を解説します。
医療機器はメーカーから販売業者を通して医療機関に提供され、医療機関内では臨床工学技士が点検、修理、在庫管理を担っています。メーカー(約600社)や販売業者(2,000社以上)は取り扱う医療機器の種類や地域で細分化され、中規模事業者が多数存在しており、SaaSによる効率化余地の残された市場となっています。
現状は多くの場合アナログで非効率な方法で医療機器を管理しており、病院、臨床工学技士、販売業者それぞれにペインが存在しています。実際にこれらのペインは現場の声として、HITOTSUの導入事例の中で複数の病院から確認したほか、業界エキスパートへのヒアリングを通して販売業者側のペインも確認することができました。
病院のペイン
臨床工学技士のペイン
販売業者のペイン
HITOTSUはクラウド型の医療機器管理SaaSとコミュニケーションツールを提供しこれらのペインを解消します。
では、HITOTSUの提供するサービス内容をご紹介します。
HITOTSUは現在二つのプロダクトを展開しています。
① 医療機器管理SaaS HITOTSU Asset
特徴2: かゆい所に手が届き業務効率を劇的に改善
特徴3: 現場にとどまらず経営改善のインパクトを創出
②コミュニケーションDX HITOTSU Link
医療業界特化のコミュニケーションツールを提供し、業界課題である非効率なコミュニケーションを解決します。まずは臨床工学技士と販売業者間のコミュニケーションを効率化します。
特徴は3つあります。
特徴1: 情報共有の効率化
特徴2: 医療機器管理システムとの連携
特徴3: 医療業界に特化した病院ならではの機能
業務日報、リマインダー、発注、入館管理など、医療業界フィットしたUIで提供することが可能
これらのプロダクトが本当にニーズに応えられているかどうかという観点で導入実績の精査を行いました。ローンチから間もないとは言え、初期の導入先においてしっかり活用されているかどうかは非常に重要なポイントだと考えています。個社ごとのアクティブ率や、非アクティブな先については背景にある定性的な状況についても詳しく理解を進めました。結果としてしっかりニーズを掴んだプロダクトであることが分かり、検討を進めることができました。
こういったプロダクトは、「業界標準プラットフォームをとれるかどうか」が成否を分けますが、そこに向けて今後の各種戦略が練り込まれており、投資意思決定に至りました。
HITOTSU Assetの競合についてです。
まず下図の低価格だが利便性が低いカテゴリに属するものを見ていきます。
①Excel+紙、自作ソフトを利用するケース
最も多いのがこのケースです。外部コストはゼロに抑えられますが、実際には構築するのに人的コストがかかっているうえに、機能や使い勝手が良くなく、業務効率が低下しています。さらに担当技士の離職時にメンテナンスが困難でリスクが高いです。
②低価格クラウド
低価格のクラウドで提供されているものを活用している病院もあります。基本的には非専業のメーカーが他領域で作成したシステムを転用して提供しており、機能が不足しています。また、クラウド型ではありますが、UIも前時代的で使い勝手も良くないことが多く、安かろう悪かろうの状態になっています。
次に下図の利便性は高いが高価格なカテゴリに属するものを見ていきます。
③オンプレミス型で提供している中価格帯or高価格帯のサービス
オンプレミス型は高価だが使い勝手が悪いというところにペインが存在します。5年で500万-2,000万円の費用が掛かり、初期費用負担が重く、大規模病院でないと導入が難しい規模感です。機能が多すぎる、UIが悪いなどの理由で現場では使いこなせていないケースも多く存在します。
以上のように競合サービスは存在するものの、魅力的なサービスを提供できれば十分勝ち目のある市場だと捉えています。
実際にHITOTSUは低価格と利便性の高さを同時に達成できており、導入病院数も急速に増加しています。
Angel BridgeがHITOTSUに投資するにあたり、経営チームへの理解を深めました。佐藤CEOは東京大学総合文化研究科広域科学専攻を修了。三井住友海上、ボストンコンサルティング(医療ヘルスケア領域を主に担当)、バイオベンチャーにてCEOを務めるなど経営経験豊富で、医療領域の知見も持ち合わせる稀有な人材です。また田村会長は臨床工学技士としての原体験を持ち、創業者としてビジョンを掲げてチームを率い、エキスパティーズをプロダクトに注入してきました。
業界のエキスパートである田村会長と経営経験豊富な佐藤CEOのコンビネーションはこの領域で事業展開していくにはこれ以上ない経営チームであると考えました。
最後にAngel Bridgeの今回の投資のポイントを改めてまとめます。
1つはやはり経営陣の強みです。Angel BridgeではVertical SaaS業界を突破する秘訣は業界専門家と優れたビジネスマンのコンビネーションだと考えています。Verticalに勝負する上では非常に高い解像度でペインを理解することが重要、かつ営業面でも業界内部の人間であることは強みとなります。これらの観点で業界専門家が経営陣にいることが重要です。一方で業界専門家は必ずしもビジネスに明るいわけではありません。ニッチになってしまいがちなVerticalビジネスモデルで大きな構想を描いて事業を推進していくにはやはり優れたビジネスマンとタッグを組むことが重要だと考えています。HITOTSUはまさにこのコンビネーションが実現されており、非常に魅力的に感じたポイントでした。
2つ目は中長期的に強力なMoatを築けるビジネスモデルです。HITOTSUはVerticalにマルチプロダクトをすごいスピードで出していく構想を持っています。シングルプロダクトのベンチャーと比較して開発や営業などハードルは高いとは思うものの、それぞれの業界プレーヤに刺さるプロダクトを通じて巻き込み、エコシステムを構築し、利便性を一気に向上し・・・というサイクルが回り始めれば、結果としての非常に強い参入障壁を築くことができます。
結果としてHITOTSUには業界スタンダードとして高いペネトレーションを実現し、医療業界に変革をもたらしメガベンチャーとなるポテンシャルがあると考え、投資意思決定をしました。
今後はHITOTSUがビジョンを実現し医療業界にとって欠かせない存在となるために、Angel Bridgeとして全方位でご支援していきます。
Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、難しいことに果敢に取り組むベンチャーを応援していきたいと考えています!事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!