今回は、Angel Bridgeが処方箋入力代行SaaSを提供する株式会社プレカルへ投資した理由を解説します。
プレカルは薬局向けに、オンライン事務員による処方箋入力代行サービス「プレカル」を提供しています。
処方箋入力は薬局最大の事務作業であり、「処方箋の複雑さ」や「ソフトの難解な操作性」によって薬局の大きな負担になっています。その処方箋入力をなくすため、送信された処方箋の画像を元に遠隔でAIと人力を組み合わせた入力代行を行うプロダクトを開発しています(プレカルホームページより引用)。
労働人口の減少を背景に、店舗運営効率化や利益率向上のための店舗型ビジネスDX化の流れが到来している中、日本に6万店舗存在する薬局における最大の業務課題をAI搭載のOCRとクラウドワーカーの二重チェック体制の構築という新たな方法で解決に導くプレカルに大きな可能性を感じ、投資に至りました。
では、Angel Bridgeが具体的にどのような検討を行ったかについてご紹介します。
薬局業務は
①受付→ ②処方箋入力→ ③薬の準備→ ④薬のお渡し→ ⑤薬歴
という流れで行われます。
中でも処方箋入力は薬局業務において最も時間のかかる事務作業ですが、処方箋の年間発行枚数は8.4億枚と推定されていて、年間1,100億円もの人件費が割かれているのが現状です。
処方箋入力作業は、処方箋をレセプトコンピューターという「レセプト(診療報酬証明書)」を作成するコンピューターシステムに打ち込む作業で、調剤報酬点数の計算に必要です。この点数に応じて薬局が市町村から貰える補助金の金額が決まるため、薬局運営には必要不可欠な作業であり、患者に渡すための、薬の説明が記載された紙の発行にも必要です。
しかし、薬剤師や事務員が処方箋1枚につき40項目ほどを手作業で打ち込まなくてはならないため、1日あたり約4時間もの時間を割かれていることが大きな課題となっています。
では、プレカルのサービス概要をご紹介します。
プレカルは処方箋入力を代行するサービス「プレカル」を提供しています。
従来の処方箋入力代行サービスは、手書きや印刷された文字をイメージスキャナやデジタルカメラによって読み取り、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換するOCRという技術を用いて行われてきました。
処方箋には40以上の入力項目があり、フォーマットも病院ごとに異なるため、OCRのみを使った入力代行では精度が90%程度と低いことが課題で、薬剤師が入力内容をチェック、修正する必要があるため、結果として業務負担はあまり改善されませんでした。
一方でプレカルはOCRに加えて、大量のクラウドワーカーによる二重チェック体制を構築することで99%以上の精度での処方箋入力代行を実現しています。
プレカルを活用した実際の処方箋入力フローはこのようになります。
患者の来店から処方箋のレセコンへの入力、印刷までの一連の作業において、薬剤師や事務員の業務負担を大幅に軽減することが可能です。
次に競合についてです。
処方箋の入力代行には多くのプレーヤーが存在していますが、それらはOCR技術のみを使ったサービスを提供していて、ご紹介してきた通り精度が低く、十分なペインの解決には至っていません。
一方でOCRとクラウドワーカーによる2重チェック体制を構築しているプレーヤーはプレカルのみとなっています。
1~3分程度の入力時間で99%以上の精度を実現するうえ、クラウドワーカーに訂正されるにつれてAIが学習し、精度が向上するという特長を持つため、実用性が高くニーズは非常に強くなります。
また大量のクラウドワーカーによる素早いチェック体制の構築が必要であり、学習が可能なAIの開発も行わなくてはならないため、参入障壁は高いと考えています。
投資を検討するにあたって、経営陣への理解も深めました。
代表の大須賀氏は北里大学薬学部卒業後、薬剤師としての勤務経験や薬局設立経験があり、業界に深い知見を持っています。
Angel Bridgeとの一年間に及ぶ定期的なミーティングの中では、大須賀氏の誠実さや事業にひたむきな姿が印象的で、自身で開発から営業までこなせる行動力に富んだ人物であることが分かりました。また周囲へのインタビューでは人望の厚さや、投資家やチームからの信頼も確認することが出来ました。
最後に、プレカルの今後の展望について説明します。
処方箋に含まれる情報は患者の健康状態の評価や背景を把握するための大きな価値があるものの、現状では薬局の店舗内でしか管理できておらず、有効活用の大きな余地があります。
プレカルが多数の薬局に普及することで処方箋のデータ数が集まれば、医療ビックデータプラットフォームを構築することが可能になるため、処方箋入力SaaSに留まらない成長可能性が存在すると考えられます。特にプレカルではOCRで処方箋を読み込む際に同時並行でAIによって構造化を行なっているため、薬局ではできない処方箋情報の構造化が可能です。構造化されたデータによって医療機関における薬の需要予測が可能になるため、製薬会社にとって大きな需要が存在するでしょう。
処方箋に含まれる情報は患者の健康状態の評価や背景を把握するための大きな価値があるものの、現状では薬局の店舗内でしか管理できておらず、有効活用の大きな余地があります。
プレカルが多数の薬局に普及することで処方箋のデータ数が集まれば、医療ビックデータプラットフォームを構築することが可能になるため、処方箋入力SaaSに留まらない成長可能性が存在すると考えられます。特にプレカルではOCRで処方箋を読み込む際に同時並行でAIによって構造化を行なっているため、薬局ではできない処方箋情報の構造化が可能です。構造化されたデータによって医療機関における薬の需要予測が可能になるため、製薬会社にとって大きな需要が存在するでしょう。
医療ビッグデータ市場は日本の高齢化や医療現場の逼迫などの背景から、毎年平均で11.7%の成長を続けており、2025年には約8,300億円に到達する見込みの巨大市場です。
プレカルは取得できる情報の種類が他社と比べて多いため、アップサイドが狙えるのではないかと考えています。
これまでプレカルへの投資に至った理由を説明してきましたが、このように社会に大きなインパクトをもたらすために、難しい領域に果敢に取り組むベンチャーをAngel Bridgeは全力で応援していきます!事業や資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!