TRIDENT
INVESTMENT

Angel Bridge投資の舞台裏#3(株式会社MagicPod)

グローバルで注目の高まるノーコード自動化ツールの事例

2021.09.27

今回は、AI技術を活用してソフトウェアテストを自動化するクラウドサービス「Magic Pod」を開発・運営している、株式会社MagicPodへの投資に至った背景について解説したいと思います。

ノーコード/ローコードとは、アプリケーションなどの開発やテストを行う際にコードを書かない、もしくは少ないコードでも開発ができるというものです。ノーコード領域はグローバルで注目度が高く、またソフトウェアテストの自動化ニーズも急速に顕在化してきており、今後市場が拡大することが予想されています。

Webブラウザ向けテストは比較的容易に実現可能であり多くのプレイヤーが存在していますが、一方でモバイルアプリのノーコードテスト自動化ツールは高い技術力を必要とし、世界でも成熟したソリューションとして製品化できているプレイヤーはTRIDENT以外に存在していません。こういった背景から、非常に可能性のある領域だと考え、投資に至りました。

それでは今回はAngel BridgeがTRIDENTに投資する際にどのような点を検討したかについて、ご紹介します。

サービス概要

まずTRIDENTのサービス内容について説明します。

エンジニアでない方には馴染みがないかもしれませんが、ソフトウェアテストは開発工程の30%を占める重要な工程であり、その中でTRIDENTが取り組むのはE2E(End to End)テスト領域です。

サービス概要

E2Eテストとはシステム全体が正しく動作することを確認するもので、アプリやWebサービスをバージョンアップした際にはリリース前に必ず実機でのテストをします。具体的には利用者による画面操作により、想定通りの動作となっていることを確認します。特にE2Eテストは多くの場合エンジニアがいちいちスマホやタブレットを何個も用意して手動でリリース前に動作確認しているため、ミスも起こりますし時間もかかります。またローンチ前に毎回手動でテストを行うため、ローンチサイクルを早める上でボトルネックとなります。

E2Eテストを自動でできるエンジニアもいますが数は多くなく、そういったエンジニアを雇っていたとしても、バージョンアップのたびに動作しなくなるためコードのメンテナンスが必要で工数が割かれてしまいます。こういったテスト工数の削減は大きな課題でした。

手動テストはこのように時間も工数もかかり品質面でも問題がありますが、一方でプログラムを書いて自動テストを行うハードルが高く、未だに多くの企業で手動テストが行われています。そういったペインを解消しているのが、TRIDENTが開発している「Magic Pod」でした。

Magic Pod

Magic Podでは、UI変更やiOS⁄AndroidのアップデートにもAIが自動対応しており、ノーコードで専門知識がなくても比較的容易にテストプログラムを構築できます。月々数万円で導入できるため、かなりのコスト削減になります。

テスト作成手順

Magic Podを活用したテスト作成手順は以下の通りです。

AIエンジンがアプリケーションの画面から項目を自動検出するので、ノーコードで非エンジニアでも簡単に自動テストを実装可能です。

テスト作成手順

またテスト対象アプリケーションのUIに変更があった時には、AIが自動でスクリプトを修正しテストスクリプトのメンテナンスの手間を大幅に削減します。

競合

次にTRIDENTの競合についてです。まずソフトウェアテストには、「Webブラウザ向けテスト」と「モバイルアプリ向けテスト」があります。

Webブラウザは更新ペースが比較的遅く、端末による挙動の違いを考慮する必要もないことから、比較的容易に実現可能です。また市場規模もモバイルアプリ向けテストより大きく、そのため多くのプレイヤーが存在しています。

一方で、モバイルアプリのテストはWebと比較して圧倒的に実現が困難です。まず、iOS⁄Androidの更新ペースが速いため、頻繁にテストを実施する必要があります。また、様々なモバイル端末で動作確認する必要性があり、ミスも多くコストもかかります。さらに、ベース技術となるソフトウェア(Appium)が開発されてから歴史が浅く、トラブルが多く安定性に欠けていることも課題です。

また、手元端末では接続状況などの環境要因が不安定で動作が重すぎるという課題が存在し、さらに手元端末へのインストール作業が複雑であることから、クラウド仮想端末の開発も必要になってきます。こういった難易度の高さに加え、市場はWebブラウザに比べると少ないことから、世界でもTRIDENT以外に成熟したノーコードのサービスを提供できているプレイヤーは存在しません。

競合

このような市場環境の中で、TRIDENTはモバイルアプリとWeb両方に対応した、ノーコードで非エンジニアでも扱えるツールというユニークなポジションを確立しています。日本でもトップクラスのエンジニアが複数結集してチームを組成していることから、こういった難易度の高い技術を提供できています。

Magic Podは実際に技術力のある大手IT企業での導入実績も多数あり、投資検討をするにあたり実際に複数の導入企業にインタビューを行いました。その結果、優秀なエンジニアを抱えるベンチャー企業でもテスト自動化のニーズは強く、Magic Podは競合比較でも高い評価を得ていることがわかりました。

導入実績

経営陣

Angel BridgeがTRIDENTに投資するにあたり、経営する皆様への理解を深めました。

まず代表の伊藤氏は、本の執筆やコミュニティでリーダーを務めるなど、テスト自動化領域では名の通った日本でも屈指の技術力を持つ人物です。AIと組み合わせることで自動化ツールを実現できるという発想を得たことから、本領域で本格的な事業拡大を開始しています。また、チーフエンジニアの玉川氏は東京大学情報理工出身のエンジニアで、ソフトウェアテスト自動化領域において著書や講演実績もある著名な人物です。

経営陣

テスト自動化のプロフェッショナルである伊藤氏のもとに日本屈指の技術力を持つエンジニアが結集しており、このようなテクノロジーにエッジを持つ経営陣が結集してチームを組成していることで、こういった難しい領域でも勝っていけるのではないかと感じました。

おわりに

TRIDENTの経営チームは全員がエンジニアで、マーケティングは一切せずにユーザーの声を一生懸命聞いてプロダクトを磨きこんできました。結果としてエンジニアリング力の高いユーザーから高いエンゲージメントを得ています。PMFする前にマーケティングを闇雲に行うのではなく、しっかりユーザーと向き合うことが大事ですし、それが出来ているベンチャーが一番最後に勝つと思います。

繰り返しになりますが、Angel Bridgeは社会に大きなインパクトをもたらすために、あえて難しいことに挑戦していくベンチャーこそ応援しがいがあると考えており、こういった領域に果敢に取り組むベンチャーを応援したいと考えています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

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