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Angel Bridge投資の舞台裏#24(ペイトナー株式会社)

2024.08.08

2024年8月にペイトナー株式会社(以下ペイトナー社)が、シリーズCラウンドにおいて累計12億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。
ペイトナー社は、フリーランスや個人事業主向けのオンライン2者間ファクタリングサービス、ならびに請求書処理SaaSを提供するスタートアップです。
今回の記事では、Angel Bridgeがペイトナー社に出資した背景について、特にファクタリング業界を取り巻く環境と、ペイトナー社の強みに焦点を当てて解説します。

  1. ファクタリング業界の動向と課題
  2. ペイトナー社の事業概要と強み
  3. 経営陣
  4. おわりに

1.ファクタリング業界の動向と課題

ファクタリングとは、保有する売掛債権をファクタリング事業者に売却し、現金を調達する資金調達方法です。特に資金繰りに課題を抱える中小企業、フリーランス、個人事業主などによく利用されています。通常、入金まで一か月~数か月かかる売掛債権をすぐに現金化できることが特徴になっています。
フリーランス、個人事業主の資金調達方法としては、ファクタリング以外にも消費者金融からの融資と銀行からの無担保フリーローンがありますが、ファクタリングはそれらの方法に対して以下の3つのメリットがあります。

  • 利用金額に総量規制が適用されない
    消費者金融や無担保フリーローンは規制上年収の1/3までしか借入出来ませんが、ファクタリングにはその制限がありません。最大で売掛債権の範囲内での資金調達が可能となっています。
  • ノンリコース型
    ファクタリングの場合、売掛債権が回収不能になった際には利用者はファクタリング事業者に利用金額を支払う義務がありません。
  • 期間に応じて手数料が増えない
    借入の場合は、借入期間に応じて金利の負担額が上昇しますが、ファクタリングの手数料は契約時から変化しません

       

      図1 個人の資金調達方法

      以上の観点からファクタリングは独自価値の高い資金調達手法となっています。
      続いて、より詳しくファクタリングの仕組みについて解説していきます。
      ファクタリングは大きく分けると、「3者間ファクタリング」と「2者間ファクタリング」の2種類があります。

      3者間ファクタリングは、利用者、ファクタリング事業者、取引先企業の3者で契約を結ぶ方法です。取引先の企業も巻き込むため契約に時間がかかる傾向にありますが、売掛金の支払いが取引先の企業から行われ、ファクタリング事業者としては回収の手間や未回収のリスクが減るため、手数料が比較的安めになるケースが一般的です。一方で、利用にあたり取引先企業の調査も必要になり、時間がかかったり、資金繰りが必要なことを取引先に知られてしまうといったデメリットも存在します。

      次に2者間ファクタリングですが、こちらは利用者とファクタリング事業者の2者間で契約を結ぶ方法です。取引先の企業を介さないため、最短即日での入金が可能なケースもあり、早急に資金が必要な場合に適しています。また、取引先の企業に通知がされないため、資金繰りに不安があるなどの懸念を与えなくて済むことがメリットです。しかし、回収リスクが高まる観点から回収リスク分を手数料に含める場合が多いことには注意が必要です。

      図2 3者間ファクタリングと2者間ファクタリングの取引構造(ペイトナー社HPより引用)

      さて、このようなファクタリング市場ですが、今後も大きな成長が見込まれます。主な要因はフリーランス人口の増加です。昨今働き方が多様化する中で、2020年に1,062万人だったフリーランス人口は2022年に1,577万人と2年で1.5倍弱、労働人口全体に占めるフリーランスの割合も22%に上るなど、顕著な増加がみられます。
      フリーランスの平均年収の約7割が年収400万円ほど、さらにアンケートで資金繰りに困った経験があると回答した割合が2割に上ることに鑑みると、柔軟に資金調達が可能なファクタリングサービスに対するニーズは堅調に成長していくことを見て取ることができます。これを踏まえて、Angel Bridgeではファクタリング市場規模はおよそ3,275億円に上ると試算しています。特に建設業や運輸業などは業界構造上、コストを先払いする文化が多く、資金繰りのニーズが高い業界で、ファクタリングに対する需要も大きく存在する業界になっています。

       

      図3 フリーランス・個人事業主向けの業界別ファクタリングの市場規模

      図4 フリーランスの資金調達ニーズ

      また、法規制や原材料高騰による物価高の観点からも追い風が吹いています。
      法規制に関しては、1998年債権譲渡特例法の緩和による2者間ファクタリングの解禁、2020年債権譲渡禁止特約の改正により、債権譲渡禁止特約付きの債権の譲渡も可能になるなど、年々緩和傾向です。加えて、原材料も高騰しており、過去10年で資材価格が5%上昇しています。建設業界や運輸業界など、慣習上立替え金額が多い業界は資金繰りが厳しい状況に陥りやすく、ますます資金調達ニーズが高まる可能性があります。

      図5 ファクタリング業界の動き

      こういった市場環境の変化を受け、ファクタリングを活用した資金調達へのニーズが今後も高まっていくことが予想されます。

      2.ペイトナー社の事業概要と強み

      続いて、ペイトナー社の事業について説明します。

      ペイトナー社は大きく成長が見込まれるファクタリング市場において、フリーランスや個人事業主向けのオンライン2者間ファクタリングサービスを提供しています。特に、もともと対面で行われていた2者間ファクタリングサービスをオンライン化しており、審査の手軽さと現金化までの素早さを実現しています。ペイトナー社では、AIを用いた独自の与信アルゴリズムや審査オペレーションの高度化を強みの源泉として、以下の価値を提供しています。

      1. 最短10分で現金化
      2. 提出書類が少なく、審査が簡単
      3. オンラインで取引が完結し、どこからでも手軽に手続き可能
      4. 手数料が一律10%で分かりやすい料金体系

       

      図6 プロダクトの特徴

      図7 ペイトナー社の競合優位性

      また、従来のファクタリングに比べて、審査が手軽であり、実態の審査時間や利用開始時間も競合他社の1/3と早いことから、利用者にとっても利便性が高く、高いリピート率と満足度を誇っています。また、利用実績が増えることによって信頼性が向上し、認知度も高まるため、より利用者が安心して使用できるという観点でも好循環を生み出せるビジネスモデルとなっています。加えて、マーケティングにおけるエキスパートも数多く在籍しており、業界に適したマーケティングによって、ユーザー数を拡大できており、創業以来、累計取扱件数も右肩上がりに成長し続けております。

      図8 ペイトナーファクタリングの取扱い件数の推移

      さらに、ペイトナー社はこの革新的な手軽さでありながら、未払い率も大手の消費者金融と近い水準に抑えられていることも大きな特徴の一つです。
      この手軽さによってプロダクト利用の障壁を低減し、大量の審査データを解析可能にする。それによって審査の精度がさらに高度化し、未払い率が下がっていく、という好循環を回していくことができます。結果として、ユニットエコノミクスも良好な水準を実現できており、投下する運転資本に対して利回りのよい金融事業のモデルとなっています。

      このように消費者獲得、及び収益性の観点から規模が拡大すればするほどより強固になっていくビジネスモデルを構築でき、成長に拍車がかかる状況を実現できております。

      3.経営陣

      ペイトナー社の経営チームは、全体として高いレベルでの経営や事業の執行ができており、少数精鋭のチームで高い成果を実現しています。

      阪井CEOは大阪教育大学卒業後、新卒でNTTドコモの法人事業部に入社。その後、コイニー(現STORES)でクレジットカードの決済サービス事業のBizDev.として個人事業主や中小規模の顧客を対象に事業を開発するなど、個人事業主、中小規模の顧客を解像度高く理解されています。また、高いビジョンを掲げて、組織を推進していける力も併せ持っています。
      また、野呂COOは 高い論理的思考力や問題解決力を持っており、実現可能性を踏まえて戦略を活動計画へ落とし込む緻密さとそれを実行しきる推進力を持ち合わせています。三浦CTOも、エンジニアとしての経験も豊富なことに加えて、事業開発の経験も持ち合わせるなど事業への理解も高く、希少性の高い人材です。

      現経営陣の三名がそれぞれの強みを持って補完しあい、全体として高いレベルでの経営が実現できており、ペイトナー社の強みの源泉の一つとなっています。

      図9 ペイトナー社の経営チーム

      4.おわりに

      ファクタリング業界は、現金化までの時間や利便性を武器に世界的にも利用者数が増えている領域で、フリーランス、個人事業主向けだけでも3,000億円の潜在市場規模を持つ成長市場です。一方で、いまだ審査に時間がかかる、必要な書類が多くて面倒など、手軽かつ早急に資金を手に入れたいニーズに十分対応ができておらず、ペイトナー社はこうした課題を的確に捉え、顧客から強い支持を得るプロダクトの開発に成功しました。
      また、優れた与信モデルによって未払率を上手くコントロールすることで、良好な水準でのユニットエコノミクスを実現できており、投下資本に対して利回りのよい事業モデルを構築できています。さらに優れたマーケティング人材を擁し、業界に応じた適切なマーケティングを実施することで、高い認知度を実現できており、これまでの利用実績データやAIを活用した与信モデルを活用することで素早い審査を実現し、利用者に対して高い利便性も提供できています。
      結果として、創業6年で累計20万件のファクタリングを取扱い、創業以来右肩上がりの成長を実現できており、リピート率も高く、顧客満足度も高いサービスを実現しています。

      資金繰りは事業や生活に関わる根幹であり、ペイトナー社は金融の観点からフリーランス、個人事業主の方々の日々の悩みを解決しています。そういったニーズの強さを的確にとらえ、ペイトナー社は創業以来、右肩上がりの成長をし続けてきました。今後もより一段と事業を拡大し、大きな成長を遂げていけると弊社も期待しております。

      Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

       

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