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Angel Bridge投資の舞台裏#26(シンプルフォーム株式会社)

2024.11.12

2024年11月に、Angel Bridgeの投資先であるシンプルフォーム株式会社(以下シンプルフォーム社)が、40億円の資金調達を発表しました。Angel BridgeもシリーズBラウンドにおいて出資しています。

シンプルフォーム社は、法人取引における審査を支える情報基盤の提供、運用支援を行うスタートアップです。法人取引における審査体制の構築・運用支援を行うプロフェッショナルサービスをはじめ、金融犯罪防止や業務生産性の向上を支援するプロダクトは金融機関やカード会社などで採用されています。

この記事では、Angel Bridgeがシンプルフォーム社に出資した背景について、法人審査市場を取り巻く環境と、シンプルフォーム社の強みに焦点を当てて解説します。

  1. 法人審査市場の動向と課題
  2. シンプルフォーム社の事業概要
  3. 経営陣
  4. おわりに

1.法人審査市場の動向と課題

まず、法人審査市場の全体像を説明します。

法人審査とは、法人を顧客とする企業が取引先、あるいは提携先の企業について、その実態性や信用度などを審査することを指します。また、その会社自体の審査に加えて、複数の会社の関係性やネットワークも含めた調査も含まれます。また、金融機関など社会基盤を構成する企業は犯罪収益移転防止法(犯収法)等の法律を遵守する必要があり、より厳格な審査が求められます。

法人審査においては、会社そのものだけでなく、社長などの代表者やその会社と関係性のある会社まで調査が必要で、その調査内容や方法も多岐にわたります。また、取引先となる全ての企業に対して調査が必要です。国内には企業が500万社ほど存在します。規模の大きい企業に関しては、調査機関からの情報が使用可能ですが、規模の小さい中小企業、創業間もない企業に関しては探しても情報が少ないのが現状です。

図1 法人審査とは

通常、法人審査は社内外での調査や現地に赴いての実地調査、調査機関への依頼など多様な手法で実施しています。

①社内調査
取引履歴のある企業の場合、営業部や審査部が情報を保管している可能性があります。こうした社内情報を収集して、調査に活用します。
②外部調査
商業登記簿や不動産登記簿といった官公庁で取得できる情報や、インターネットで収集できる情報などをもとに調査を行います。
③直接調査
訪問、電話、FAX、メールといった手段で、取引先の企業を直接調査します。
④依頼調査
信用調査会社など、第三者に調査を依頼します。

また、報道やSNS、インターネット掲示板などでの情報などもチェックする必要があり、1社を調査するだけでも最大で2~3日かかることがあります。また、中小企業は情報がないことも多く、現地に赴いての調査や、外部の第三者への依頼調査は、費用対効果も悪いことが課題となっています。

そのような中で、コロナ禍の影響もあって非対面取引が増加し、詐欺被害額は増えています。20年には詐欺の被害額が約600億円であったのが、23年には1,600億円へと約2.7倍へと急増しました。こうした被害は日本のみならず、海外諸国でも増加傾向にあり、23年のG7安全担当相会合では、初めて組織的詐欺についての議論が行われました。

こうした犯罪や不当な取引で得られた資金は、多数の金融機関を経由して出所をくらませ、犯罪組織やテロ組織に渡り、さらなる活動の資金源となる危険性が高いと言われています。国際的に組織犯罪の脅威が増す中、AML/CFT等をはじめとする金融犯罪対策の重要性が高まっています。国際的にマネロン等対策の中心的な役割を担っている機関から、有効な対策が行われているかについて審査を受け、2021年8月に結果が公表されました。この結果、国内金融機関等は2024年3月末までに、金融庁の示すガイドラインに沿った対応が求められました。リスクの特定・評価のため、顧客情報や口座の利用目的の定期的な確認を行うなど、形式的ではない、審査の実効性を向上させる取り組みが不可欠となります。

一方で、特に審査業務に対する人材不足も課題で、効率化に対するニーズが大きくなっています。また、審査人員の審査に対するばらつきもあり、組織全体としての審査の高度化へのニーズも高まっております。結果として、法人審査市場は年々拡大しており、今後も成長が見込まれます。

2.シンプルフォーム社の事業概要と強み

煩雑で時間がかかるのに加え、情報の少ない中小企業の審査を含めた、審査業務の効率化・高度化を進めるべく、シンプルフォーム社は大手金融機関で求められる高い水準での審査が実現できるプロダクトを複数展開しています。

図2 シンプルフォーム社のプロダクト

特に、国内全法人をカバーする情報の高い網羅性と価値の高い独自データを多数保有していること、それらの情報を統合し短時間で審査レポートを作成できる点がシンプルフォーム社の強みになります。具体的には、全国に散らばる紙データ等を、足で稼いで収集し、実体性の確認を人手をかけて行うことで、価値の高い独自データを有しています。

このような強みを突き詰めることで、シンプルフォーム社にしかできない価値を生み出せており、すでに金融機関の審査現場のオペレーションやシステムに深く組み込まれ、高い価値を実現しています。

現場ではなくてはならない存在になっており、導入前の10倍以上の数をさばけるようになっている顧客も現れています。

顧客に対して高い価値を提供できていることから、足元ではゆうちょ銀行、みずほ銀行をはじめ、ネット銀行や地銀も含めた大手銀行に数多く導入されており、楽天グループ、リクルートやDGファイナンシャルテクノロジーなど、銀行以外の大手顧客にも導入されています。

また、現行のプロダクトに加え、全国500万社に関する独自性の高いデータと生成AI技術を基盤として、新プロダクトを順次展開していくことで市場を拡大することを見込んでいます。

3.経営陣

シンプルフォーム社には、銀行業界での豊富な経験やAIに関して高い技術力を持つ優秀な経営陣が集います。
田代CEOは、DBJ(日本政策投資銀行)に9年間在籍し、銀行やファンドでの経験があり、金融業界に対する知見が深く、法人審査業界に対してファウンダー・マーケット・フィットのある起業家です。また、ビジョナリーでやり切り力が高く、巻き込み力や組織構築力に長けています。金融業界の未来を数十年単位で見据えた上で、業界変革の道のりを描けており、大手銀行の経営陣の方々からも信頼されています。また、「面倒を愛する」という価値観を醸成し、素晴らしいメンバーを集め、強力な組織体制や文化を構築できています。

また、NTTデータの研究開発部門にて人工知能の社会実装研究に従事した経験を持ち、大規模なシステムの構築・運用や、最先端のAI技術に詳しい小間CTOや、DBJにて多数の投資業務に従事し、強固な推進力を持つ中野COO・執行役員など、優れた経営人材が集まっています。また、組織全体としても顧客の業界や現場課題への深い理解や高い技術開発力を有しており、優秀な人材もシンプルフォーム社の強みの源泉の一つとなっています。

図3 シンプルフォーム社の経営チーム

4. おわりに

法人審査市場は、今後成長が見込まれる大きな市場である一方で、いまだアナログ作業が多い業界です。また中小企業に関するデータも十分でないため、生産性の低さやリスクの検知漏れが課題となっています。シンプルフォーム社はこうした課題を的確に捉え、顧客から熱烈な支持を得るプロダクトを開発し、導入や活用支援の事業開発も実現できています。

シンプルフォーム社が全国津々浦々で泥臭くかき集めた独自データは価値が高く、今後の生成AI技術の進展に伴い、さらに強いMOATを実現可能になっています。

また、田代CEOを含めた優秀な経営チームのもと、力強い組織を構築できており、顧客に伴走しながら課題を深く理解した上で、課題解決を粘り強く実現できています。また、AIに関して第一線で研究してきた小間CTOのもと、拡張性・安定性が高い優れたプロダクトを開発できており、これからの新プロダクト開発も加速化が期待されます。

現在は、大手金融機関を中心に導入が進んでおり、審査現場のオペレーションやシステムに深く組み込まれていますが、今後は他業界の法人調査における隣接領域の業務の効率化や、審査の高度化を行うプロダクトを次々と投入することでさらなる成長を見込みます。

その流れの中で、シンプルフォーム社は法人審査を起点に金融をシンプルにし、金融業界から日本全体のGDPの成長に大きく貢献することを目指しています。田代CEO率いる強固で粘り強い組織と独自価値の高いデータを基にした優れたプロダクトにより、必ずや業界変革を成し遂げられると弊社も期待しております。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

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