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三好 洋史の投資哲学:起業家とともに悩み、未来を形にしていく伴走者になる

【三好 洋史(Angel Bridge株式会社 シニアアソシエイト)】

2025.11.20

鉄道会社が興したCVCや戦略コンサルティングファームで、大小さまざまな企業のビジネスと向き合ってきた三好洋史は、ビジョンや働く人々の魅力に惹かれ、Angel Bridgeに入社を決めました。今回はそんな経験を持つ三好に、Angel Bridgeに入社するまでの経緯を振り返ってもらいつつ、これまで築き上げた投資哲学や今後の展望について語ってもらいます。
三好 洋史 Angel Bridge株式会社 シニアアソシエイト
  • 2015年、慶應義塾大学経済学部卒業後、西日本旅客鉄道(JR西日本)入社。2019年、JR西日本イノベーションズの設立とともに出向し、新規事業創出案件に携わる。2019年、Bain & Companyに転じ、金融業界や小売業界、家電業界におけるコスト削減や収支構造改革、ビジネスデューデリジェンスプロジェクトに従事。2021年、Angel Bridge入社。

新卒2年目に巡ってきた「CVC立ち上げ」という好機

——Angel Bridgeに入るまでの経歴を振り返ってもらえますか?

大学を卒業後、入社したのはJR西日本でした。鉄道会社を選んだのは、一般的な不動産デベロッパーとは異なる「街づくり」のアプローチに興味があったからです。鉄道会社が取り組む街づくりの特徴は、鉄道を介してオフィスや商業施設、住宅などのハードをつくるだけでなく、ホテルや物販、飲食事業など、人々のライフスタイルに密着したソフトなサービスを組み合わせられる点にあります。単なる不動産開発ではなく、人の生活にまで影響を与えられるところにワクワクしたんです。たとえば当時、JR西日本ではサバの陸上養殖のように、鉄道会社の枠を超えた新規事業にも挑戦していたんです。そんな多様な事業を展開する企業でなら、鉄道会社が持つ莫大なアセットを活用して、ユニークな新規事業に携われるチャンスがあるかもしれません。それでJR西日本を選びました。

——新規事業開発に携わりたかったのですね。

はい。夢が現実になったのは入社2年目。駅員業務や鉄道用地の管理を経験するなかで、社内の新規事業アイデア公募に挑戦したんです。運よく最優秀賞に選ばれて、そこからCVC立ち上げに関わることになりました。まさか自分が本当に新規事業に携われるとは思っていなかったので、あのときの高揚感はいまでも鮮明に覚えています。

——どんなアイデアだったのでしょうか?

新規事業のアイデアをいくつか考えて提案したのですが、そのうちのひとつがCVCの立ち上げでした。当時、自分なりに新しい事業を考えようとしましたが、ゼロからアイデアをひねり出すのは難しいと感じていました。そんなときに出会ったのが「オープンイノベーション」という考え方です。自分たちだけで悩むのではなく、スタートアップと共創することで新しい事業を生み出せばいいのではないか──そう発想を転換したのがきっかけでした。その後、コーポレートベンチャーキャピタル事業を手がける「JR西日本イノベーションズ」が設立されることになり、私も初期メンバーのひとりとしてかかわることになりました。後から聞いた話では、当時本社の経営企画部門でもCVCを立ち上げようという機運が高まっていたそうで、タイミングがよかったのだと思います。入社2年目の若手に大きなチャンスをくれたJR西日本には感謝しかありません。

——当時はどんな案件を担当されましたか?

既存事業のブラッシュアップに加え、非鉄道領域での新規事業創出を担当しました。たとえば古民家再生を手がけるスタートアップとともにホテルをつくり上げるなど、地域資源を活かした事業開発に関わる機会が多かったです。行政や金融機関、スタートアップと連携しながら、1日500万人もの利用客や地域に眠る資産を活用して新しい雇用や需要を生み出していく——そうした取り組みは、単なるビジネスを超えて「地域を元気にする挑戦」だと感じていました。特に過疎化や高齢化が進む地域において、長年にわたって地域の発展を支えてきた鉄道会社にかかる期待は非常に大きく、この挑戦はとてもやりがいに満ちたものでした。

 

「まだ存在しない未来をどう創るか」に挑戦するためのキャリアチェンジ

——やりがいに満ちた仕事を辞め、戦略コンサルティングのBain & Companyに移りました。なぜだったのでしょうか?

CVCで投資先や社内外のステークホルダーと向き合うなかで、「もっと経営課題そのものに深く関わりたい」という気持ちが強くなっていきました。目の前には、素晴らしい技術や人材を持ちながら、十分に力を発揮できていない企業がたくさんある。そうした企業のポテンシャルを引き出し、もう一段成長させる力を身につけたいと思ったんです。

そのためには、自分自身がさらに高いレベルで経営課題を解決できるようにならなければいけない。足りないビジネススキルを痛感していたこともあり、あえてコンフォートゾーンを出て、一番厳しい環境で自分を鍛えようと決め、Bain & Companyに飛び込みました。

——CVCからコンサルティングファームへの転職です。率直な感想を聞かせてください。

鉄道会社からコンサルに行くのはかなり珍しく、大きなスキルギャップがあって想像以上に大変でした。入社1年目は広島駅で駅員研修をしていて、当時はPCをまともに触ったことすらなかったんです(笑)。CVCに関わるようになってからはExcelやPowerPointも使うようになりましたが、Bainで求められる水準やスピード感はまったく別次元でした。

プロジェクトでは限られた時間のなかで論点を定め、仮説を立て、検証を重ねるプロセスをひたすら繰り返す。そのたびに「これが経営課題を解くということか」と痛感しました。課題には明確な答えがあるとは限らず、納期ギリギリまで粘り抜くのは当たり前。ときには心が折れそうになったこともあります。

ただ同時に、その過程自体がとても刺激的で、楽しかったのも事実です。優秀な仲間と議論を重ね、経営の根幹に挑む中で、自分の思考や仕事の精度が日々鍛えられていくのを実感できました。もどかしさを感じる瞬間も多かったですが、「ここで得られるものは大きい」というワクワク感の方が勝っていたと思います。

振り返れば、Bainで培ったのは「プロとしてやり切る覚悟」と「課題解決を楽しむ姿勢」です。この二つが今の自分の基盤になり、スタートアップ支援の現場でも迷わず走り切れる力につながっています。

——VCに行こうと思われたのはなぜですか?

戦略コンサルタントは、クライアントの期待に応えるために全力を尽くす仕事です。そのやりがいに疑問を感じたわけではありません。ただ、1社ごとに課題を解決するだけでなく、もっと広い視点で社会全体にインパクトを残す仕事に人生を賭けたい——そう思うようになったのが転職の動機です。

同時に、JR西日本でCVCを立ち上げ、スタートアップに投資・支援した経験がとても楽しく、刺激的だったことも大きな理由でした。Bainで大企業の経営課題に向き合った経験を経て、次は「まだ存在しない未来をどう創るか」に挑戦したいと自然に思えたんです。スタートアップへの投資と支援を通じて社会課題を解決し、新しい産業を生み出せるのはVCだからこそできるはずだと、30歳目前という節目のタイミングで、起業家と一緒に未来を形にしていく道に進もうと決めました。

——数ある選択肢のなか、なぜAngel Bridgeを選んだのですか?

ベンチャーキャピタルの仕事は、中長期で腰を据えなければ成果が見えてこない世界です。だからこそ、どのVCに身を置くかは慎重に考えました。実はエージェントはAngel Bridgeの求人を持っていなかったのですが、自分で国内のVCを調べる中で強く興味を持ち、「このVCは採用していますか?」と確認したところ、ちょうど募集していると分かり、受けることにしました。

まさに自分から探し当てたご縁でもあり、「ここなら本気で起業家に向き合える」と確信できた瞬間でした。

——どんな点に興味を惹かれたのでしょう?

規模こそ小さいながらパートナーやメンバーの経歴を見るとプロフェッショナルファーム出身者が多く、「ここでは質の高い議論が日常的に交わされているはずだ」と直感しました。そして何より、「資金を正しく投下し、正しく働かせ、日本発のメガベンチャーを多数生み出す」というミッションが自分の理想と重なったんです。

初回の面談で河西さんと話をしたとき、その直感はすぐに確信に変わりました。目の前の投資先に全力で向き合う姿勢、起業家への本気のコミットメントに触れて、「この人たちとなら未来を一緒に描いていける」と素直に思えたんです。

他にも著名なVCを紹介してもらいましたが、最後はやはり「誰と働くか」「どんなビジョンに賭けるか」が決め手でした。Angel Bridgeは、両方を満たしていると感じられた唯一の場所でしたし、ここでなら自分も本気で力を尽くせると確信しました。

 

Angel BridgeでつかんだVC投資とハンズオン支援の本質

——現在はどんな投資先を担当していますか?

私自身がソーシングから携わった案件と、投資実行段階から担当するようになった案件を含めて、現在約10社を担当しています。領域はSaaS、フィンテック、フードテック、バイオ系ディープテック、エンタメと幅広いですね。担当する投資先が増えるに従ってハンズオン支援の引き出しが自然と増えていきます。一社ごとに異なる経営課題に向き合うなかで、自分の洞察や支援の解像度が少しずつ高まっているのを実感しています。

——CVC時代との違いを感じることはありますか?

CVC時代は、スタートアップ側から声をかけてもらうことが大半で、会社としてもストラテジックリターンに重きを置いていたこともあり、純粋な投資家としての立場を強く意識する場面はあまり多くありませんでした。しかしいまはVCとして、起業家と出資者の双方への責任を負いファイナンシャルリターンを追求する立場です。独立系VCが数多く存在するなかでAngel Bridgeを選んでもらうには、言葉だけではなく具体的な成果を残す必要があります。だからこそ、自分の振る舞いや関わり方を常に意識し、「Angel Bridgeとして最大の価値をどう出すか」を自問自答しながら日々取り組んでいます。

——職場の雰囲気についても教えていただけますか?

Angel Bridgeでは、メンバー全員が毎日フル出社しており、SlackやNotionの活用も盛んです。雑談から真面目な議論まで、コミュニケーションはとても活発です。投資先の状況やリサーチ情報、他社のベストプラクティスなども、自然な流れで日々共有されるので、何気ないやり取りの中から新しい視点や学びを得られることが多いですね。オフィス全体が「常に知見が行き交う場」になっていると感じます。

——戦略コンサルタント時代の経験が活きることはありますか?

コンサル時代に培った「論点を絞って仮説を立て、実行と検証を繰り返す姿勢」は、今の仕事にも直結しています。さらに、点在する情報やアイデアを整理して論点につなげ、経営陣と意思決定の議論に落とし込む力は、スタートアップ支援の現場で特に役立っています。

スタートアップの支援では、答えが最初から決まっていることはほとんどありません。だからこそ、情報を整理して経営陣が意思決定に使える形に落とし込み、そして不確実な中でも仮説を持って「まずはこの一歩を」と背中を押せることが重要になります。これらはまさにBainで磨かれた力であり、今の自分の武器になっています。

——逆にVCだからこそ鍛えられたと感じるスキルは?

スタートアップはスピード感が命です。しかも取れる打ち手には限りがあるなかで、短期間で売上や実績を積み上げていかなければなりません。だからこそ、筋の良い仮説を立てるだけでなく、迷っている時間を最小限にし、高速で仮説検証を回して最適解を探る姿勢が以前よりも強く鍛えられたと思います。

——入社後、転機になった案件を教えてください。

特定の一社というよりも、むしろ日々の積み重ねが自分を形づくってきた感覚があります。特にハンズオン支援では、経営者が抱える悩みや不安を受け止め、ともに考え抜き、次の一歩につながる方向性を探っていく瞬間の連続です。そのプロセスこそが、自分を鍛え、ベンチャーキャピタリストとしての血肉になっていると思います。

「量が質を担保する」とよく言いますが、まさにその通りで、自分も数多くの打席に立ち続けることで、この仕事の本質が少しずつ見えてきました。ひとつひとつの経験が積み重なって、今の自分を形づくっているのだと思います。

——改めて三好さんの投資哲学を教えてください。

スタートアップ経営は不確実性の連続で、絶対的な「正解」は存在しません。だからこそ私が大切にしているのは、経営者の隣に立ち、一緒に悩み、次の一歩をどう踏み出すかを考え抜くことです。もちろん事業戦略や資金調達といった実務的なサポートも全力で行いますが、それ以上に、悩みや迷いを共有しながら一緒に進む伴走者でありたい。起業家が前を向いて次の一歩を踏み出せるような関わり方こそ、私の投資哲学です。

 

変化する社会のなかでも、起業家を支え続ける覚悟

——昨今のVC業界についてはどう見ていますか?

資本市場の変化や生成AIをはじめとする技術の進展によって、従来の前提が次々と覆されています。そんな環境だからこそ、VCに求められるのはただ資金を出す存在としてではなく、起業家と一緒に未来を切り拓く覚悟だと思います。スタートアップは日本経済の成長を牽引する存在です。その伴走者として、私たちAngel Bridgeも変化を受け止め、常に動き続けるVCでありたいと考えています。

——ベンチャーキャピタリストとしての目標を聞かせてください。

日本を代表するようなスタートアップの創出に関わりたいという思いはいまも変わりません。そのうえで目指しているのは、「三好さんに声をかければ一緒に前に進める」と自然に思っていただける存在になることです。華やかな場面だけでなく、日々の泥臭い課題解決を一緒に考え、いつでも相談してもらえる関係性を築いていきたい。単に名前を覚えていただくだけではなく、日々の意思決定や悩みの場面で思い出してもらえる、そんな投資家であり続けることで、スタートアップとともに未来を切り拓いていきたいと思います。

——Angel Bridgeのなかでどんな存在でありたいですか?

Angel Bridgeの「切り込み隊長」でありたいですね。投資先との関わりや新しいテーマに挑むとき、誰よりも先に踏み出して道を切り拓く存在でありたいと思っています。外部とのネットワークを活かして新しい機会を持ち込み、投資先のソーシングや支援でも推進力を発揮する──そんな役割で貢献していきたいです。

——最後にAngel Bridgeに興味をお持ちのみなさんにメッセージをお願いします。

スタートアップ支援は、日本に新しい選択肢を生み出す価値ある挑戦であり、時に厳しい局面に直面することもあります。それでも、起業家と肩を並べて意思決定に伴走し、未来が動き出す瞬間をともに味わえるのは、この仕事ならではの醍醐味です。

「起業家と一緒に未来を描きたい」「メガベンチャーの誕生に立ち会いたい」と思う方には、Angel Bridgeは最高の環境だと思います。私たちは、そんな挑戦を志す仲間を心から歓迎します。

この記事の監修者

Angel Bridge編集部

Angel Bridge編集部

Angel Bridgeは世の中を大きく変革するメガベンチャーを生み出すことを目指して、シード~アーリーステージから投資を行うベンチャーキャピタルです。プロファーム出身者を中心としたチームでの手厚いハンズオン支援に強みがあり、IT/大学発/ディープテックスタートアップへの投資を行います。

私たちは「起業家のサポーター」として、壮大で破壊力のある事業の創造を全力で応援しています。

所属
JVCA : (https://jvca.jp/)

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