algolia
COLUMN

Angel Bridge USベンチャー研究#9(algolia)

検索アルゴリズムをAPIで提供する「algolia」の事例

2022.06.28

こんにちは!Angel Bridgeインターンの山田と申します。

前々回の「Angel Bridge USベンチャー研究#8」は、EC上で返品された商品の検品・保管を行い、最高値で販売可能なチャネルに出品するOptoroについて紹介しました。
Angel Bridge USベンチャー研究#8

今回は、ECサイト内に高性能な検索アルゴリズムをAPIとして提供することでCVRを向上させるalgoliaについて紹介します。

Angel Bridge USベンチャー研究#9 (参考:EC×APIサービスの全体像)
algolia概要

algoliaは2012年に自然言語処理のエンジニアであったNicolas Dessaigneによって設立されました。2022年までに合計9回の資金調達を行っており、合計調達金額は$334M、評価額は$2.2Bです。

algoliaは「1つ1つのECサイト内にGoogleのような検索アルゴリズムを搭載する」ことをコンセプトに事業を展開しています。

algolia概要

続いて、algoliaのビジネスモデルについて紹介します。

algoliaはEC企業に対して、検索アルゴリズム (algolia SEARCH) とレコメンドアルゴリズム (algolia RECOMMEND) をAPIの形で提供します。

algolia概要

マネタイズはAPIの月額使用料で行っており、料金体系は基本料金+使用量に応じた従量課金となっています。

algolia概要 (参考:algolia料金体系)
解決しているペイン

ECサイト内の検索アルゴリズムの質が低いと、消費者がサイトに立ち寄っても欲しい商品が見つけられず離脱につながってしまうため、検索アルゴリズムの質はCVRに直結する重要な要素です。
しかし、一部の大企業を除いてほとんどのEC事業者には、自社サイト内に高度な検索アルゴリズムを構築できる優秀なエンジニアを雇う余裕がありません。
また、近年はShopifyなどのパッケージを利用してサイトを立ち上げるEC事業者が増加していますが、そうしたパッケージに最初から実装されている検索アルゴリズムも性能が高いとは言えません。

このようにEC事業者にとって、自社サイト内に高度な検索アルゴリズムを手軽に構築できないことは大きなペインとなっていました。

サービス内容

algoliaはわずか5分で実装可能な検索アルゴリズムである「algolia SEARCH」をAPIの形で提供することで、上記の課題を解決します。

また、検索アルゴリズムと連動した商品レコメンドエンジンである「algolia RECOMMEND」もAPIとして提供しており、相乗効果でCVRの向上を実現します。

以下、それぞれのサービスについて見ていきます。

① algolia SEARCH

algolia SEARCHは、あらゆるウェブサイトやアプリケーションにわずか5分で実装可能な高性能の検索アルゴリズムです。

以下、代表的な機能を紹介します。

A. 業界最速の検索処理スピードと自動インデックス作成機能
algolia SEARCHによる一件当たりの検索処理スピードは1~20ミリ秒であり、これは競合他社の200倍のスピードです。
また、API接続をした瞬間から1秒当たり約数千のインデックスを自動で作成する機能を有しており、開発者がインデックスを作成する必要がありません。
インデックス:検索エンジンが使用するデータが保存される場所のこと。ゼロから検索アルゴリズムを構築する場合、自社ECサイト内の全ての商品のインデックスを開発者が作成する必要がある。
B. AIによる同義語の設定機能
サイト内集まった様々な消費者の検索履歴をもとに、AIによって自動で同義語を設定することが可能です。まずは下の画像をご覧ください。
サービス内容(参考:同義語生成のイメージ)
このように、消費者は同じ商品を見つけるために様々な言語や語彙を用いて検索をしますが、すべての消費者のニーズに応えられるように同義語を人の手で設定しておくことはほぼ不可能です。
しかし、algolia SEARCHに搭載されているAIは検索履歴が溜まれば溜まるほど新たな同義語を設定することが可能です。
また英語・日本語・中国語・ドイツ語などあらゆる言語にalgolia SEARCHは対応しているため、「日本語+英語」の並びにも対応することが可能です。
この機能によって、消費者のサイト初回訪問時のCVRを向上させることが可能です。
C. AIによるパーソナライズ機能
algolia SEARCHのAIはパーソナライズ機能も有しています。
下のイメージのように、消費者のサイト内での行動履歴に基づいて、商品を検索した際の表示結果をパーソナライズすることが可能です。この機能によって、消費者の2回目以降のサイト訪問時のCVRを向上させることが可能です。
サービス内容 サービス内容
(参考:パーソナライズの例)
D. レポート機能
algolia SEARCHはサイト内の検索結果を自動でレポートにまとめることが可能です。
サービス内容
サービス内容
(参考:レポート機能)
E. ビジュアルエディタ機能
上記のレポート機能をもとに、簡単なドラッグアンドドロップインターフェイスで商品の表示結果を手動で変更することが可能です。
そして、変更されたことによる売上の変動は上記で紹介したレポート機能で確認することが可能です。
サービス内容
(参考:ドラッグアンドドロップインターフェイスでのサイト編集)
サービス内容
(参考:検索結果のうち関係のないものを手動で非表示にする機能)

以上、algolia SEARCHの代表的な機能をまとめました。この他にも下記のような機能があります。

サービス内容 サービス内容 サービス内容

② algolia RECOMMEND

algolia RECOMMENDはalgolia SEARCHと連携することが可能です。
それによって、個々の消費者のサイト内での行動履歴に基づいて、関連商品やよく一緒に購入される商品のレコメンドを行うことが可能です。

サービス内容 (参考:algolia RECOMMEND)
トラクション

代表的な顧客にはDiorLVMHグループなどの有名ファッションブランドや、オフィス機器を扱うStaplesなどが並びます。

トラクション (参考:algoliaの主要顧客)

実際の導入効果の一例として、LACOSTEではサイト内の商品検索からの売上が150%上昇し、CVRも37%上昇しました。

トラクション (参考:LACOSTEの導入効果)

また、API接続可能なプラットフォームにはShopifyをはじめ以下のものがあります。

トラクション
日本市場

日本でもEC事業者に検索アルゴリズムを提供している企業は既に存在しています。
しかしながら、algoliaのようなユニコーンは存在していません。

この理由は大きく2つ考えられます。
第1の理由として、algoliaはEC事業者に対してだけでなく、SlackやStripeなどのSaaSサービスや様々なメディアサービスに対しても検索アルゴリズムを提供しているのに対して、日本企業のサービスはEC事業者のみを対象としているので、市場の大きさが異なることが挙げられます。
この市場の違いは、algoliaの検索アルゴリズムがECサイトだけでなく、あらゆるサイトやアプリ内で機能するように設計されているという、algoliaの技術力の高さに起因しており、日本企業が簡単に模倣できるものではないと思われます。
続いて第2の理由として、日本におけるEC消費は、検索アルゴリズムをAPI連携することができないAmazonや楽天などのモール型ECに集中していることが挙げられます。
そのため、日本のEC事業者は「検索アルゴリズム自体を高性能にすることで自社の商品を探しやすくする」という戦略ではなく、「自社の商品をいかにしてモールの検索アルゴリズムに最適化するか」というSEO対策を中心に行なっており、algoliaのようなサービスを提供する企業の需要はアメリカほど大きくないと思われます。

以上2つの理由により、日本ではalgoliaのようなEC事業者に検索アルゴリズムを提供するユニコーンは存在していませんが、モール型ECのSEO対策のサービスなど、日本のEC市場に特化した検索アルゴリズムサービスを提供する企業が生まれるのではないかと期待しています。

おわりに

今回はEC領域特化SaaS紹介の第四弾として、EC事業者に高性能な検索アルゴリズムをAPIの形で提供するalgoliaについて紹介しました。
サイト内の検索アルゴリズムの違いによって、CVRが大きく変化するというのは非常に面白いと思いました。
また、日本とアメリカのEC市場の違いから、日本独自のサービスが生まれる可能性もあるため、ECの検索アルゴリズム領域には今後も注目していきたいと思います。

最後になりましたが、Angel BridgeはCVR向上を目的としたEC周辺サービスにも積極的に投資しています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

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