こんにちは!Angel Bridgeインターンの山田です。
前々回はアメリカのEC領域特化SaaS紹介の第2弾として、ECでの返品業務を効率化するReturnlyについて紹介しました。
今回は、同じくECの返品領域において、返品された商品の検品・保管から再販までを効率化するOptoroについて紹介します。
参考:EC×APIサービスの全体像
Optoroは2010年に、eBayの出品代行サービスであるE-Spotの元創業者、Tobin Mooreによって設立されました。2021年までに合計10回の資金調達を行っており、合計調達額は$270M、評価額は約$1Bです。
Optoroの最大の特徴は、「返品された商品を検品・保管し、最も高値で売れる二次流通チャネルで再販する」という、返品におけるEC事業者の業務のほぼ全てを効率化するソリューションを展開していることです。
続いてOptoroのビジネスモデルについて紹介します。
OptoroはEC事業者と提携し、返品された商品の検品・在庫管理と、最高値で売れるチャネルの特定・再販を行います。
マネタイズは在庫管理の月額費用と、再販の手数料として売上の一部をもらうことで行なっています。
また、前回紹介したReturnlyなどの返品効率化SaaSと連携することで、返品における消費者とのやりとりも効率化することが可能です。
参考:ReturnlyとOptoroの返品における業務範囲イメージ
アメリカのEC小売業の返品率は25% ~ 40%で、2020年の返品額は$500B(約60兆円)にものぼります。加えて、返品された商品のうち毎年約26億kgもの商品が廃棄されており、大きな環境問題となっています。
一部の大企業では、返品された商品を中古商品として再販することで廃棄を減らすという取り組みが行われていますが、ほとんどの中小規模のEC企業は、商品の管理コストや輸送コストの背景から再販しても利益が出ないため、再販を行うことができないというペインを抱えていました。
Optoroは自社で倉庫と再販用の二次流通マーケットの両方を抱えることで在庫管理と流通のコストを抑え、中小規模のEC企業でも再販から利益を得られるようにします。
以下、在庫管理と再販のそれぞれの機能について紹介します。
Optoroを支える最大の技術は、前述のSmartDisposition®テクノロジーです。
SmartDisposition®テクノロジーには大量の商品情報を用いて学習させたAIが搭載されており、返品された商品をどのチャネルで販売すれば良いかをわずか数秒で判断することが可能です。
この他にも、倉庫で用いるスキャナーには画像認識AIが搭載されており、検品とデータベース化を同時に行うことができる点など、Optoroはロジスティクス企業でありながら高い技術力を有しています。
実際に、現CTOであるDouglas Bemis氏はUber AI Labs*のCTOを務めていた人物であり、その他にも精鋭エンジニアが多数Optoroに在籍しています。
*Uber AI Labs:Geometric IntelligenceをUberが買収して設立された人工知能の研究部門。自動運転技術の開発などを行う。
Optoroの提携企業は、以下のような大規模ブランドから中・小規模のブランドまで多岐に渡ります。
参考:代表的なOptoroの提携ブランド
日本においても返品領域は盛り上がり始めており、前回の記事で紹介したReturnlyのような返品の受付業務を効率化するSaaS企業は日本でも登場しています。
しかし、Optoroのような在庫管理から再販まで返品の領域全般をカバーする企業はまだ現れていません。
この理由として、アメリカでは以前から返品された商品を取り扱う二次流通マーケットが盛んなのに対し、日本ではまだそういったマーケットが盛り上がっていないことが挙げられます。
というのも、初期のOptoroは最高値で販売できる二次流通マーケットを選定して出品するソリューションのみを手掛けており、そこから自社で倉庫を構えたり、運送業者と提携したりすることで現在のビジネスモデルに至るからです。
よって、日本でもまず初めに、返品された商品の二次流通マーケットを手掛ける企業が現れ、市場が盛り上がった後にOptoroのような企業が現れるのではないかと考えられます。
今回はEC領域特化SaaS紹介の第三弾として、返品領域全般をカバーするOptoroを紹介しました。「返品された商品の再販を最適化する」という日本にはまだないコンセプトを持っており、日本の返品市場の今後の展開を考察するうえで重要な企業なのではないかと思いました。日本でもOptoroのような企業が現れるのか、それともアメリカには存在しないビジネスモデルの企業が登場するのか、これからもECの返品領域に注目していきたいです。
最後になりましたが、Angel BridgeはCVR・LTV向上を目的としたEC周辺サービスにも積極的に投資しています。 事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!