こんにちは! Angel Bridgeインターンの山田と申します。
前回はアメリカのEC領域特化SaaS紹介の第1弾として延長保証をAPIで提供するExtendについて紹介しました。
今回は第2弾として、EC事業者に対して返品効率化SaaSを提供するReturnlyを紹介します。
Returnlyは2014年にEduardo Vilarによって設立されました。2020年までに3回の資金調達を行なっており、合計調達額は$30Mです。
そして、2021年4月にBNPLのトップ企業であるAffirmによって$300Mで買収されました。
Returnlyの最大の特徴は、返品が完了する前に顧客にストアクレジット(購入ECサイトでのみ使えるポイント)を前払いで提供し、同時に類似商品のレコメンドをすることで、返品を介してEC事業者に追加の収益をもたらすことができる点です。
続いてReturnlyのビジネスモデルについて説明します。
Returnlyは配送業者と提携し、消費者からの返品申請を処理するプラットフォームをAPIとしてEC事業者に提供します。
マネタイズはAPIの使用料と、返品される商品の金額に応じた手数料で行なっています。
補足として、消費者がストアクレジットを用いて商品を購入した場合はReturnlyがストアクレジット分の代金をEC事業者に支払います。ストアクレジットを超える分の代金は消費者が支払う必要があります。
上記の返品業務にまつわる問題を解決し、顧客に快適な返品体験を提供するためにReturnlyは以下のようなサービスを提供しています。
先程紹介した返品業務フローのうちReturnlyが効率化する部分は以下のようになります。
以下それぞれの機能を詳しく見ていきます。
2019年時点でのReturnlyの発表によれば、消費者の90%がストアクレジットを受け取った際に同じECサイトで新しい商品を購入しており、購入した商品の金額は返品した商品の金額に比べて23%ほど高い傾向があったとのことです。
また、提携ブランドはD2Cブランドが中心で200社以上と提携しています。
API接続できるECプラットフォームはShopifyのみで、その他複数の運送会社や3PL(サードパーティー・ロジスティクス)企業※と提携して配送の効率化を実現しています。
日本でのECにおける返品率は5%程度でアメリカの25~45%に比べてかなり低くなっています。この数字の低さは日本人の性質というよりも、返品ポリシーが厳しい企業や、そもそもECで購入した商品の返品を受けつけていない企業が多いためだと思われます。
しかし、2016年からAmazonが出品者に対して返品無料を義務付けていることや、ZARAをはじめ返品無料ポリシーを掲げている海外企業が日本に進出していることから、国内企業でも返品を無料化し、快適な返品体験を顧客に提供することでCVR・LTV向上につなげる動きが生まれつつあります。
そうした背景から、日本でも既に数社が返品効率化SaaSを提供しており、今後更に返品領域は盛り上がっていくのではないかと考えられます。
今回はEC領域特化SaaS紹介の第二弾として返品効率化SaaSを手がけるReturnlyを紹介しました。返品を効率化することで顧客のLTV向上を目指すことはもちろん、返品完了前に返金を行うことで、返品を通じて追加の収益を発生させることのできる面白いビジネスモデルだと思いました。また、Returnly自身は返品された商品の検品や再販の効率化は行いませんが、Optoroという企業と提携することで検品や再販の効率化も行っています。
ここで登場したOptoroは、返品された商品の在庫管理から再販まで全てを行う、ネクストユニコーンと称される注目企業です。次回の記事はOptoroについて紹介したいと思います。
最後になりましたが、Angel BridgeはCVR・LTV向上を目的としたEC周辺サービスにも積極的に投資しています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!