前回のスタートアップアカデミー#3では、VCが投資検討時にベンチャーをどのような視点で見ているのかをご紹介しました。
今回はステージを大きく前に進めて、ベンチャー企業がIPOに向けて準備すべきこと、またその際に陥りがちな落とし穴について解説します。
起業家にとってIPOは初めての経験であることが多いのに対して、多くのVCは投資先のIPOを経験しています。そのため、起業家は経験のあるVCに頼ることで比較的スムーズにIPO準備を進めることができます。Angel Bridgeも投資先ベンチャー企業のIPO準備の際には多方面で手厚い支援を行っています。
まずは全体のプロセスの理解から始めましょう。IPO準備は大きく社内業務と社外業務に分けることができます。社内業務には「IPO準備チームの立ち上げ」「ガバナンス体制の構築」「事業計画構築」「エクイティストーリー構築」が挙げられます。社外業務には「監査法人の選定」「主幹事証券の選定」が挙げられます。IPO準備の期間にはそれぞれの業務を同時並行的に進めていかなければなりません。
時間軸はIPO申請期をN期として、そこから1期さかのぼるごとにN-1期、N-2期…と数えます。N-1期は直前期と呼ばれ、上場企業と同程度のコーポレート・ガバナンスでの企業運営が求められます。N-2期はN-1期のための準備期間です。この間に内部管理体制を整備し、N-1期に備えなければなりません。そしてそのための体制の土台づくりをN-3期で行います。
では、それぞれの業務についてどのような流れで進めていくのか、そしてその際に陥りがちな落とし穴について解説していきます。
優れたエクイティストーリーとは、投資家が期待して出資したくなるように事業を魅力的に伝えながら、実現できる説得力を持ったものです。説得力のあるエクイティストーリーを構築することが投資家からの高評価、ひいては高いvaluationにつながります。また、そのようなエクイティストーリーを構築することは経営者自身が自社の強みを自覚し、中長期の成長戦略を考える上でも重要です。
企業によって事業を魅力的に伝えるために強調するポイントは異なりますが、今回は不可欠な3点を挙げたいと思います。一つ目は「参入市場(TAM)が大きいこと」ということ、二つ目は「足元で安定した成長をしている」ということ、そして三つめは「将来的に事業が急成長・グロースする可能性がある」ということです。この3点をはっきり示すことで、投資家も投資しやすくなります。わかりやすい図を用いることも説得力を高めるために必要になります。今回は、実際にAngel BridgeがIPO支援を行った株式会社オンデックを例にとって解説します。オンデックは2020年12月にIPOを果たした、国内中小企業を対象としたM&A仲介事業を行う企業です。Angel BridgeはIPOの約2年前に投資しています。IPO準備時にはエクイティストーリーのブラッシュアップを支援しました。
以下の図ではオンデックの参入する国内M&A市場が大きいこと、そしてそれが将来的に拡張していくことをわかりやすく伝えています。
また、中長期の成長戦略として、「大阪ではすでにM&A仲介業者として地位を築いており、堅調な成長をしている」という足元の安定した成長性を示しつつ、「東京やその他全国の国内企業へのターゲットの拡大」と「開発中のM&Aプラットフォーム構築による潜在顧客の獲得」という2点で事業のグロースの可能性を示しました。
一度主幹事証券会社を決めてしまうと簡単には変更できません。Angel Bridgeでは複数の証券会社に提案書をプレゼンしてもらい、それらを比較したうえで決定することをおすすめしています。提案書の見るべきポイントとしては、「アサインされたチーム」と「エクイティストーリー」です。
アサインされたチームの質が良いかどうか、上の役職の人を巻き込めているかなどで証券会社の本気度がわかります。本気度によっては、ファイナンス面だけでなく事業面でのシナジーあるサポートを期待することができ、自社の事業成長にもつなげることができます。
提案されたエクイティストーリーに説得力があるかどうかで、証券会社の事業への理解度がわかります。自社の事業をよく理解している証券会社に、事業内容と成長戦略を適切に投資家に伝えてもらうことは、投資家から高い評価を受ける上で重要です。また、事業への理解度が高い証券会社の方がIPO後のIRやファイナンス支援もより質の高いものを期待できます。
主幹事を複数の証券会社に引き受けてもらうことを共同主幹事といいます。共同主幹事でのIPOは、IPO準備企業側にとってのメリットが大きく、IPO時の想定時価総額にもよりますが可能であれば共同主幹事にしたほうが良いとAngel Bridgeは考えています。メリットとしては「複数の証券会社の強みを活かすことができる」「複数の証券会社が競い合い、投資家により高く株式を売ろうというインセンティブが働く」という2点が挙げられます。一方でCFOは両社とのやり取りが発生するため業務負担が大きくなってしまうというデメリットもあります。
今回は企業がIPOする際にやるべきことと、その際に陥りがちな落とし穴について解説しました。冒頭でも述べましたが起業家の皆さんにとっては、IPO準備が初めての経験であることが多く、経験が豊富なVCに頼ることが大切です。
Angel BridgeはIPO人材の採用、監査法人の選定、主幹事証券会社の選定、エクイティストーリーの構築など投資先ベンチャー企業のIPOを強力にサポートしています。事業の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!
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