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Angel Bridge投資の舞台裏#11

建設業界で進められている3Dデータの導入
3D点群データ解析をSaaSで提供するローカスブルーに投資した理由とは

2022年12月21日、Angel Bridgeの投資先であるローカスブルー株式会社(以下ローカスブルー)がプレシリーズAラウンドにて約4億円の資金調達を発表しました。
https://locusblue.com/information/452/

ローカスブルーは、建設業向けの測量などで用いる3次元データを解析するソフトウェア「ScanX」をSaaSで提供しています。従来は非常に高額なソフトウェアとそれを動かすためのハイスペックPCが必要でしたが、クラウド上で利用できるScanXは、インターネットに接続したPCがあれば低価格で利用ができます。

建設業界で進められている3Dデータの導入

今回は、建設業向け3次元点群データ処理SaaSを提供するローカスブルーへAngel Bridgeが投資した理由を解説します。

建設業界におけるニーズと市場の成長

近年、建設業界において高齢化に伴う人材不足が課題となっており、省人化に向けた動きが活発化してきています。

i-Constructionについて 建設業界におけるニーズと市場の成長 (出典:国土交通省資料)

2016年には国土交通省が建設業のICT化を目指す「i-Construction」という取り組みを打ち出し、建設プロセス全体において3Dデータを活用する動きが加速しています。

2D図面では人間が頭の中で立体形状を想像しなければならないのに対し、3Dモデルは立体を可視化しています。コンピューター上でさまざまな角度から建設段階の構造物の状態を確認することができ、2Dの図面では確認が難しかった問題を発見することが可能です。確認や修正の時間が削減され、工事期間の短縮につながります。

人材不足という深刻なペインの存在、さらに政府による力強い後押によって、3Dデータ市場は大きく成長すると我々は考えています。

3D市場の課題
従来の3Dデータ処理の課題とローカスブルーによる解決
3D市場の課題

従来の3Dデータ処理ソフトウェアは、ライセンス料が非常に高額で、データ容量が重く取り扱いにくいという課題がありました。

ローカスブルーは以下のように顧客の課題を解決しています。
まず、高額なライセンス料の解決です。初期コスト無料、月額3万円から導入可能なSaaSとしての販売を行っており、数百万円ほどする買い切りソフトウェアよりはるかに価格が抑えられます。
次に、幅広い動作環境で使えるようにしました。従来は大規模なデータを処理するためには高性能PCが必要でした。一方、ScanXはユーザーの端末ではなくクラウドを介してデータ処理を行うため、通常のノートPCで動作可能です。
最後にデータの取り扱いのしやすさです。3Dデータは非常に容量が大きく共有困難なためCDやHDDで納品されていました。また施工現場で使用する通常のPCでは開けないことが多くとても不便なものでした。ScanXではデータ容量を軽くすることで、インターネットを介して共有することが可能であり、施工現場へも即座に共有し閲覧することを可能にしました。

このように価格・動作環境・データ共有のしやすさという点で、SaaSならではの強みを活かせているため競合優位性があると考えています。

ローカスブルー事業概要

ローカスブルーは2020年9月にリリースした「ScanX」というソフトウェアをSaaSで提供しています。これは、建設、土木、測量業界をはじめとする企業に3Dデータを解析するものです。

ScanXを活用した3Dデータの流れ
ローカスブルー事業概要
  • ドローンやレーザースキャナーで建設現場の3Dデータ(点群データ)を取得します。
  • 1で得たデータをScanXに取り込むと、3次元モデルが生成されます。
  • 点群をAIで処理することで、地面・樹木・家に自動的に分類され自動的にフィルタリングされます。この精度が非常に高く、ローカスブルーの強みの一つとなっています。
  • データ活用として、樹木抽出、土量計算などができます。
  • 4までに得たデータをもとに、設計・施工をおこなっていきます。
3Dデータでできること

3Dならではの機能としては、地面・樹木・家・車・電線等が自動的に分類されるため、用途によってフィルタリングが可能になります。以下のように樹木を伐採した場合のシミュレーションができます。

ローカスブルー事業概要

林業向けの樹木抽出機能もあります。一本一本の木をフィルタリングできるので、森林管理にとても役立ちます。

ローカスブルー事業概要
経営陣

投資を検討するにあたって、経営陣への理解も深めました。

経営陣

CEOの宮谷氏は、東京大学航空宇宙工学科で東京大学総長賞を受賞。フランスのAirbus社にて勤務後、シリコンバレー、イスラエルのドローンベンチャーで働いていた経験豊富な経営者です。さらに、彼を中心にグローバルなエンジニアチームが集結しています。

優秀かつグローバルな経験が豊富なうえに、リーダーシップをしっかり発揮する面もあり、粘り強く大きな事業をやり切れる人物だと考えました。

このように、①顕在化しているニーズ、②SaaS化の強み、③優秀な経営陣の3点から、Angel Bridgeはローカスブルーに投資することに決めました。

受賞歴と新サービス

Angel Bridgeが投資してから1年半が経ちましたがこの間にローカスブルーで起きたことについて説明します。

まずローカスブルーはいくつかの賞を受賞してきました。そのうちの1つが、令和3年度i-Construction大賞において最優秀賞である「国土交通大臣賞」の受賞です。i-Construction大賞とは、現場の生産性向上を図る「i-Construction」に係る優れた取組を表彰し、ベストプラクティスとして広く紹介し、横展開することにより、i-Construction に係る取組を推進することを目的としたものです。ローカスブルーは大林組、アンドパットと並び、最優秀賞を獲得しました。

受賞歴と新サービス

さらに2022年6月に新バージョン「ScanX Ver.2.0」をリリースしました。
新しく追加された機能の一部を紹介します。

出来形帳票生成機能

設計データと点群データをScanXにアップロードするだけで、国土交通省の土木工事施行管理基準および規格値に準拠した帳票出来形合否判定表を生成できます。

他にもユーザーニーズに合わせて各種機能を順次追加しています。

おわりに

ここまでローカスブルーへの投資理由について解説しました。3Dデータ活用は建設業という巨大産業全体の効率化のカギです。そのコア技術である3次元点群データ処理技術を保有するローカスブルーに投資し、成長をご支援することが社会全体にとても大きなインパクトをもたらすと考えています。

事業を推進する仲間も募集しているのでご関心ある方はぜひチェックしてみてください!
https://locusblue.com/career/

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