プラテック:我々はAIを使って、ECモールにおける消費者の商品の発見しやすさを自動的に大幅に改善できるソリューションを提供しています。商品のテキスト情報はEC事業者がフリーテキストで自由に作っていますが、そこからAIが商品の属性などを自動的に抽出し、サイトの絞り込み検索のためのタグ情報と自動的に紐づけています。
まず商品の検索方法には、キーワードで検索するパターンと、サイト側から提案された商品の絞り込み(カテゴリー、色、サイズなど)に沿って検索する2種類があります。そして、ECでのショッピングの割合がPCからスマホに移行し画面のスペースが狭くなっている中、文字の入力が面倒なので入力は最低限にし、どんどん条件を絞り商品を見つけたいというニーズが高まっています。
一方で、ECモールには必ず絞り込み検索の機能がありますが、例えばTシャツの色/ネックの形/素材/色/サイズをフリーテキストで書いて検索した商品数と、絞り込み検索のタグで絞り込んだ場合の商品数を比べると、実は絞り込み検索ではフリーテキストで検索した場合の約30%しか商品が出てこないのです。要するに、商品情報の中にはちゃんと情報が入っているのにも関わらず、タグ付けをしていないので7割は絞り込み検索では商品が出てこないということです。リアルのショップでいうと、裏の倉庫にモノがあるのに、ディスプレイされていないのでお客さんはその商品がお店にあるのかないのか分からない状態です。これと同じことがECモールの商品の7割に起こっているのです。
ニーズは高いのになぜ3割しかタグ付けがされていないかというと、単純にタグ付けが非常に大変な作業だからです。ECサイトごとに独自の商品の構造やカテゴリーごとの属性の構造があり、それに対して紐づけを手動でやろうとするとかなりの時間と人力が必要です。そのためなかなかタグ付けまで手が回らないというのが現状としてあります。
そこで、私たちはこの問題を解決するためにAIで完全自動でタグ付けができるサービスを開発しています。例えば100時間かかる作業が1分で終わってしまうぐらいのレベルなので、人力の問題が一気に無くなります。非常にインパクトのあるソリューションだと思っています。
プラテック:自動タグ付けをどんなサイトでも使えるシステムとして提供している会社は、私が知る限りLISUTOが日本初であり世界初です。ただ、我々は商品のテキスト情報に注目していますが、画像から商品の情報を抽出して絞り込み検索に使えるようにしているサービスはいくつかあります。
プラテック:まず商品情報のほとんどはテキストの情報にあります。サイズや素材など、写真だけ見てもわからない情報が沢山あり、ファッションに限らず電気製品も写真だけだと違いが分かりません。そのためテキストのほうがタグ付けに対応でき、画像よりはるかにマーケットが大きいのです。また画像はデータが重いですし、技術的にもテキストの方が効率よくできます。LISUTOは画像の情報からタグを付ける技術も実は持っていますが、まずはテキスト情報からのタグ付けに注力しています。
プラテック:画像は言語関係なく抽出できますが、テキストからタグを付ける場合はまず言語の分析から始まり、言語から単語を抽出し、それをAIでラーニングさせ構造データと紐づけるというプロセスが必要です。この技術は画像の情報からタグを付けるよりもはるかに難しいです。
また、私たちはその中でも難易度の高い日本語からスタートしています。英語やヨーロッパ言語は単語が分かれているのですが、日本語は単語がつながっており漢字とひらがなもあるので、まずテキストを単語ごとに分けていく必要があり更にハードルが高いです。私たちはこの一番難しい日本語からチャレンジしています。
プラテック:LISUTOは日本のベンチャーですが、私たちの開発の舞台はイスラエルにあります。私はもともと国籍がイスラエルですし、共同創業者のパベルはLISUTOのイスラエルオフィスを統括しています。パベルはもともと世界初の価格比較サイトであるShopping.comのカタログを作っていたシニアマネージャーであり、商品の構造のスーパーエキスパートです。その後Shopping.comがeBayに買収され、eBayがイスラエルに商品のカタログセンターを作った時もパベルが一から立ち上げを担っていました。商品の構造の仕組み等について、彼ほど優れた人は世界に数人しかいないと思います。
ではどこにLISUTOのアドバンテージがあるのかと言いますと、ただテキストデータを抽出するだけであれば広い範囲で色々な会社があると思いますが、我々は各サイトの属性の構造を分析し、かつそれをAIとコンビネーションするところに他の会社が真似できないレベルのノウハウの蓄積があり、具体的なコードに対する紐づけまで出来てしまう点が強みだと考えています。
プラテック:私はもともとエンジェル投資をしており、その後1990年代後半にVCを設立しました。その時に感じたこととしては、投資も面白いですが、創業者は自分の意志が強いので投資家としてアドバイスをしても結局は創業者の想いの方向に事業は進んで行くということでした。そういった背景から、自分のアイデアで自分自身で事業をしたいという想いが高まりました。
ちょうど私が起業した時は世界中にインターネットが普及し、EC市場が大きくなり始めた時期だったので、ECのポテンシャルをとても感じていました。私は元々日本生まれなので日本への想いが強く、またイスラエルのベンチャーエコシステムを見ている中でこれと同じことを日本でもやりたいなと思い、起業家としてECのサービスを日本で作ろうと強く決心しました。
プラテック:私はイスラエル人ですが、もともと日本でドメスティックなECの事業をやっていました。そんなある日、eBayという海外向けに商品を出品するサービスからのアプローチがありました。その時、自動的に日本語のデータを構造化し多言語に変換することで、日本語で出品したものを海外向けに販売できるようなソリューションを開発したところ、沢山の商品が海外で売れ始めたんですね。そこでこのソリューションをEC事業者の方に提供するのが良さそうだと思い、LISUTOを設立するきっかけとなりました。そこからビジネスを始めたのですが、やっているうちに分かったことが2つあります。
1つ目としては、EC事業者の方は皆さん越境ECに興味を持ち始めてはいたものの、やはりまずは日本の目の前のモールの販売がすごく重要で、越境ECもやりたいがまだ手を出せていない状態であるということです。既に国内向けに在庫の管理や出品のシステムを導入しているなかで、海外向けの別のシステムを更に連携させるというのが実はすごくハードルが高く、商談がすぐ決まらないということが分かりました。ベンチャーにとって商談がすぐ決まらないというのは非常に辛かったですね。
しかし同時に分かったこととしては、日本のモールではタグ付けに非常に大きなペインがあり、かつ私たちの技術をそのまま応用できるということです。日本のドメスティックなEC事業者の多数がタグ付けに興味を持っていたので、AIタッガーのようなサービスを開発すればすぐに利用してもらえるということに気づきました。また、今はまだ日本国内でのみサービス展開していますが、eBayのような世界中のどのモールでもそのモール中でタグ付けのニーズがあるので、グローバルのどのEC事業者もターゲットになります。そこで越境ECのサービスからPivotし、現在のAIタッガーの事業に行きついたのです。
プラテック:LISUTO設立の段階から、銀行系のファンドや物流会社、倉庫会社の方から出資をいただいていました。また去年佐川急便様と業務提携させていただき、一気にお客様を紹介していただく仕組みを作りました。
プラテック:私は海外のVCを経験していますが、Angel Bridgeはメンバーの方々が優秀で、かつ外資系ファーム経験者やバイリンガルの方が多いため、今後グローバル展開した時も海外の投資家とのコミュニケーションが円滑に取れ、また考え方もグローバルなので海外展開における良いパートナーであると感じました。
河西:まず我々はLISUTOに出資をする前から、BNPLのようなECのCVRを上げるサービスが非常に面白いと思っていました。またその中でもAIタッガーはペインに対してちゃんと答えているなと思いましたし、この経営陣なら日本発かつ世界初のベンチャーとしてグローバルに戦っていけるのではないかと強く感じました。
また、プラテックさんが日本語ペラペラなのも驚きました(笑)。お話を聞いてみると、日本で生まれて10歳まで日本で育ち、その後イスラエルに帰ったけれども日本が好きだという話があって、そこまでプラテックさんが日本に思い入れがあるというのがすごく嬉しかったですし、日本に拠点を持っているというのもすごく納得感がありました。
プラテック:毎月定例の取締会にご参加いただきながらも、それとは関係なく色々と密にミーティングし、会社の課題や方向性に関してディスカッションをさせていただいていて、期待していた通りのコミュニケーションができているなと感じています。また次の資金調達に関しても、一緒にお話しさせていただきながら進めています。
プラテック:越境ECのサービスでやっていたこと自体は間違っていなくて、ただ時期が早かったんだと思っています。私は起業家を何回もやっているので、自分のアイデアがマーケットより早かったケースを何度も経験しています。マーケットより早すぎるのは非常にベンチャーにとって危険なのです。今のままの事業を今のままの計画で続けるのか、それとも同じコア技術を使った3倍の速さで伸ばしていける別の商品を開発するかを何回も合理的に考えた結果、後者の方が現在はニーズが強くすぐに売上が伸びるためPivotしたというのが現実です。
河西:現在のAIタッガーの事業をリリースしてみて、ニーズがやはり強かったというのが決め手になったのでしょうか? 実際今は佐川急便さん含め全社的に取り組み売上も順調に伸びているということで、その決断は正しかったのだと思います。
プラテック:1つ目と2つ目の商品の違いは、1つ目はEC事業者の反応がとても良かったとしても契約にはなかなか繋がりませんでしたが、2つ目は商談してから平均2週間で契約がスタートしていたことです。当日契約がスタートする場合もありましたし、やはりニーズが強くてハードルが低いというこの組み合わせが大事なのだと気づきました。
プラテック:個人的には、私の国籍との組み合わせでLISUTOを日本発のグローバルな会社にするというのが一つの夢です。これからグローバル展開をして世界中のEC事業者が使うサービスになる可能性は十分あると思いますので、世界中のECの販売をお手伝いできるようになることを目指したいです。
私がECを始めたときはまだPCしかなかった時代でしたが、そんな時代から今はスマホの時代になって、5Gが出てきて、誰でもECができる時代へとどんどん変わってきました。また今後更にメタバースなどの新しい変化が訪れ、まだまだECは変わっていくと思っています。文字での検索や画像での検索等色々な検索方法がでてきていますが、どんな場合でも商品の情報と構造は変わらないんです。メタバースで商品を買っても商品は商品で、その情報は変わらない。そうなると商品の発見というニーズは必ずあるわけなので、それに対して我々の技術を発展させ、世界ナンバーワンのプレイヤーになりたいと思っています。
プラテック:コロナ禍になって経済や社会を支えてきた一つの分野はやはりECですよね。どんなに状況が悪くて家から出られなくても、食べ物など必要なものをECで家に届けることが世界中でできている。インターネットとECがなかったらこのパンデミックは今の何百倍も大変だったと思います。ECは絶対必要である上で、それを更に簡単に出来るようにすることが皆さんのQOLの向上に繋がっており、社会にも貢献出来ているのかなと思います。
河西:インターネット領域で日本発の技術が世界に進出した例ってあんまりないじゃないですか。LISUTOの技術であればそれを達成できると思っています。