2024年4月に株式会社GenerativeX(以下GenerativeX)は、シードラウンドにて1.2億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。
GenerativeXは大企業における生成AI活用に特化したコンサルティングやDX支援を提供するスタートアップです。生成AIの市場は急速に立ち上がっており、生成AIを活用した業務効率化ニーズは大企業も含めて大きいといえます。GenerativeXは生成AIネイティブなプロファームとして、創業1年で各業界のトップ企業と取引を行うなど急速にビジネスを展開しています。
今回の記事では、Angel BridgeがGenerativeXに出資した背景について、企業の生成AI活用を取り巻く環境とGenerativeXの強みに焦点を当てて解説します。
生成AIとは、学習済みのデータを活用し、文章や画像・音声など様々なコンテンツを作り出すことができる人工知能技術の一種です。精度・スピード・使いやすさが劇的に向上したことで注目が高まり、本領域で多くのユニコーン企業が誕生しています。例えばテキストから画像を生成するStable Diffusionを提供するstability.ai社や、SEOに最適化されたコンテンツなど、高品質な文章作成が可能なサービスを提供するJasper社などが挙げられます。直近では2022年11月にOpenAI社がChatGPT-3.5を公表したことにより、全世界的に生成AIに対する注目度が高まりました。
生成AIは今後も急速な需要の拡大が予想されており、特に大企業においては非常に関心が高い状況です。比較的先進的なITの活用が進むIT系の企業のみならず、銀行や自治体などIT系以外でも既に生成AIを活用した業務効率化の取り組みがはじまっています。社内文書の作成やプログラミングコードの自動生成、営業が用いるセールストークスクリプトのアイデア出しなど幅広い分野での活用が想定されており、各社で生成AIを活用することで得られる効率化について試算がなされています。
しかし、生成AIの活用が十分に進んでいる企業はまだまだ少数派です。既存のDXプレイヤーであるSIerやAI受託開発企業、学生ベンチャーなどでは、生成AIに関するサービス提供価格・スピード・クオリティに課題があり、結果として大企業における生成AIの活用は進んでいません。そこでGenerativeXは既存プレイヤーのこのようなボトルネックを解決すべく、生成AI分野に特化して組織構築を進め、安価でスピーディ、そして高品質なサービスを提供しています(図1)。
図1 既存のAI開発・コンサル企業の課題
以上のように、生成AIを活用した大企業DXは大きなポテンシャルがあるものの、そのニーズに応えられているプレイヤーは少なく、GenerativeXにとっては非常に魅力的な市場環境と考えています。
GenerativeXは生成AIに特化した受託開発やコンサルティングを企業向けに提供しています。環境整備から要件定義、ユースケースの洗い出し、PoC実施、その後の運用改善まで一気通貫したサービスとしてプロジェクトを遂行することで、顧客と長い接点を構築しDXを実現しています。具体的にはプロンプトの研修やDX企画・コンサルティング、そしてPoC開発・検証・システム化のメニューを企業のニーズに合わせて提供しています(図2)。結果としてGenerativeXは創業から1年という短期間で各業界トップクラスの大企業をクライアントに持つに至りました。
図2 GenerativeX提供サービスの特徴
このように事業を成功させつつあるGenerativeXは、生成AIネイティブな組織構築とマーケティングへの積極投資を通して、①安価で安く提供できる機動力、②大企業向けの営業力、③既存ソフトウェアと融合させる技術力、④豊富な導入事例の4つの強みを発揮しています(図3)。
図3 GenerativeXの競合優位性
AI受託開発やコンサルティングを行う会社は複数ありますが、その中でも巨大な市場ニーズが見込まれる生成AI市場に焦点を当て、大企業のニーズに応えられるハイレベルなサービスを提供できる企業はあまり存在しません。その中でも特にGenerativeXは技術とビジネスの両方を理解したメンバーによるプロフェッショナルサービスを提供できる稀有な企業であり、既に大企業への豊富な導入事例があることも相まって、多くのクライアントを獲得しています。
トップ企業からの受託・コンサル型の事業を起点として、今後は各業界・業務に即したSaaSの展開や海外展開、生成AIが広く浸透した後に必要となるインフラを提供していくことも視野に入れています。
GenerativeXには技術面とビジネス面の双方の専門性を兼ね備えた、非常に優秀で強力な経営陣が集まっています。荒木CEOは投資銀行出身のビジネスマンでありつつテクノロジーにも明るく自らコードも書きます。さらに、過去に一度スタートアップを起業しており、経験も踏まえ、自分の強みや弱み、ベンチャー運営に対する勘所も押さえられているシリアルアントレプレナーです。共同創業者の上田CSOはコンサルティングファーム出身のビジネスマンでありつつ、直近は松尾研究所の経営企画のコアメンバーとして新規技術の社会実装についての戦略策定や社内事業の改善を経験した人物です。小坂CTOはリタリコやByteDanceなど優秀なエンジニアが揃う組織でのエンジニア経験が豊富な人物です。小坂CTOは荒木CEOの前回起業時も1人目社員として参画しており、荒木CEOのリーダーシップと周りの人の巻き込み力が伺えます。この優秀な経営チームがGenerativeXの強みの源泉となっています。
3人は同じ大学院出身ということもあり、学生時代から10年来の付き合いを経て企業に至っています。非常に優秀なだけではなく強い信頼関係がチームの強みの源泉となっていると考えています。
図4 GenerativeX経営チーム
最後に、Angel Bridgeの今回の投資のポイントをまとめます。
1つ目は、優秀な経営チームです。シリアルアントレプレナーならではの強みを持ち、能力の高さと強いリーダーシップを兼ね備えられた荒木CEOに加え、事業戦略の策定経験が豊富な上田CSO、エンジニアとして多数のキャリアを積まれた小坂CTOがそれぞれ違う強みを持ち合い、一丸となって強いコミットメントでこの事業に挑戦していることが最大の武器となっています。これだけ強力なメンバーが創業初期から揃っていることはそう多くはないと思いました。
2つ目は、生成AIを活用した企業のDXには巨大な市場ニーズがある点です。生成AIの市場は足元で急速に立ち上がり、大企業を中心に生成AIを活用した業務効率化などに強いニーズがあります。一方で十分な生成AIの活用が行えている企業は少なく、大きな市場を狙えるチャンスがあります。
3つ目は、急速に立ち上がるトラクションです。創業から1年の短期間で業界トップクラスの大企業から複数案件を受注し、既に一定の売上高を見込んでいます。初期からこれだけ大手企業と取引できるスタートアップはそうはありません。GenerativeXの技術/ビジネス両面でのケイパビリティの高さを示す何よりの証拠だと考えています。
以上の観点から、GenerativeXが大企業の生成AI活用/生産性向上のエネーブラ―となり、GDP向上に大きく寄与する存在となることを信じ、またその想いに共感し、投資の意思決定をしました。
Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!