INVESTMENT

Angel Bridge投資の舞台裏#35(Atransen Pharma株式会社)

2025.12.23

2025年12月にAtransen Pharma株式会社(以下Atransen社)が、シリーズAの資金調達を発表しました。資金調達額(AMED創薬ベンチャーエコシステム強化事業補助金含む)は14.7億円となります。Angel Bridgeは、本ラウンドにおいて出資しています。

Atransen社は、大阪大学の技術を基に低分子化合物による抗がん剤の研究開発を行う創薬ベンチャーです。具体的には、がん細胞に特異的に発現し、がん細胞の生存や増殖に必須となるアミノ酸を細胞外から細胞内に取り込む機能を持つL型アミノ酸トランスポーター1(LAT1)を阻害することで、がん細胞の増殖を阻止するSolute Carrier(SLC)トランスポーター阻害薬の研究開発を行っています。

今回の記事では、Angel BridgeがAtransen社に出資した背景について、SLCトランスポーター阻害薬の業界動向とAtransen社が持つ技術的な強みに焦点を当てて解説します。

  1. SLCトランスポーター阻害薬の概要
  2. SLCトランスポーター阻害薬の業界動向
  3. Atransen社の事業概要と強み
  4. 経営陣
  5. おわりに

 

1. SLCトランスポーター阻害薬の概要

はじめにSLCトランスポーター阻害薬について説明します。SLCトランスポーターとは、細胞膜に存在するタンパク質で、糖質やアミノ酸、イオンなど生体の維持に必須な物質、さらには代謝物や神経伝達物質などを選択的に輸送する役割を果たします。人体の細胞には、それぞれ異なる物質の輸送に特化したSLCトランスポーターが400種類以上存在しており、Atransen社がターゲットとするLAT1もその一種です。SLCトランスポーター阻害薬は、特定のSLCトランスポーターの働きを阻害することで、糖尿病から精神疾患に至るまで様々な疾患の治療に用いられています。過去には10種類を超える医薬品が日本や米国を含む世界中で承認を受けており、製薬企業の理解も十分にあるサイエンス面で確立した分野です。

図1. SLCトランスポーター阻害薬の仕組みと事例

 

2. SLCトランスポーター阻害薬の業界動向

SLCトランスポーター阻害薬は商業的な面でも大きな注目を集めています。まず、代表的なSLCトランスポーター阻害薬として、Atransen社の金井CSOが同定したナトリウム依存性グルコーストランスポーター2(SGLT2)に対する阻害薬が挙げられます。この薬は、腎臓で尿から糖質を再吸収し、体内へ戻す働きを持つSGLT2を阻害することで、糖質が再吸収されず尿と共に排出される仕組みを活用した糖尿病治療薬です。その中でもベーリンガーインゲルハイム社のジャディアンスは、糖尿病だけでなく慢性心不全、慢性腎臓病に対しても適応を取得したことで、2024年度の売上高が約1.5兆円に達しました。その他にも複数の医薬品が多くの患者さんの治療に貢献し、結果として大きな売上高を記録しています。

図2. 世界的に大きな売上高を記録したSLCトランスポーター阻害薬の事例

大手製薬企業による創薬ベンチャーの買収も活発に行われています。2024年9月には、フェニルケトン尿症に対するSLCトランスポーター阻害薬を開発する米国の創薬ベンチャーJnana Therapeutics社が、大塚製薬にマイルストーン達成に応じた支払いを含めると最大10億ドルを超える条件で買収されました。

幅広い領域の疾患においてすでに上市済みあるいは開発が進んでいるSLCトランスポーター阻害薬ですが、がん領域においては上市済みの医薬品がなく、開発段階においてもAtransen社を除くと1社しか候補薬を持っていません。「がんに対するSLCトランスポーター阻害薬」は、革新性が高くアンメットニーズの強い領域であると言えます。

図3. 疾患領域別の代表的なSLCトランスポーター阻害薬

3. Atransen社の事業概要と強み

続いてAtransen社の事業概要について説明します。同社は、SLCトランスポーターの一種でがん細胞の生存や増殖に必須となるアミノ酸を細胞外から細胞内に取り込む機能を持つLAT1の阻害薬APL1101の研究開発を行っています。現時点では動物モデルを用いた前臨床試験を実施しており、2026年度から人を対象とした国内第1相臨床試験を開始する予定です。

アミノ酸は、全ての細胞の生存・増殖に必須であり、細胞膜にあるトランスポーターで細胞内に取り込まれます。がん細胞は急速に増殖を繰り返すため特に多くのアミノ酸を取り込む必要があり、その役割を担うのががん細胞にのみ発現するLAT1です。LAT1阻害薬は、アミノ酸と同様にLAT1に入り込むことができますが、その際に嵌まり込んで分離しなくなってしまうことでLAT1の機能を阻害し、結果としてがん細胞は成長・分裂に必要なアミノ酸を取り込む機能を失い、成長の抑制や細胞死が生じます。なお、正常細胞にはLAT1がほぼ存在せず、異なるトランスポーターでアミノ酸を取り込んでいるため、LAT1阻害薬の影響は受けないことから副作用も生じにくいと考えられます。

図4. LAT1阻害薬の仕組み

このLAT1を強力に阻害するために、最適な設計がなされているのがAtransen社の化合物APL1101です。すでに創薬ターゲットとして一般的であったSLCトランスポーターも、最近までその多様な機能や複雑な分子構造についての理解が十分には進んでいませんでした。しかし、高い解像度を誇るクライオ電子顕微鏡の開発(開発した研究者には2017年にノーベル化学賞が授与されている)により、SLCトランスポーターの構造や機能が金井CSOを筆頭とする研究者によって一気に解明されていきました。その金井CSOによる最新の発見と知見に基づき設計されたのがAPL1101で、LAT1に一度結合すると分離が非常に困難となり、LAT1は不可逆的に阻害されます。

Angel Bridgeの投資判断にあたっては、Atransen社が保有する世界トップレベルのサイエンスを高く評価しました。Atransen社は、大阪大学教授でトランスポーター研究の第一人者である金井CSOが発明したLAT1関連の特許に基づいて設立されています。金井CSOは、SLCトランスポーターの一種であるSGLT2の分子同定に成功し、世界中で広く使われている糖尿病治療薬の開発に大きく貢献したことに対して2020年に日本医療研究開発大賞 内閣総理大臣賞を受賞しています。また、SLCトランスポーター研究に関連した4本の論文がNatureに掲載されるなど、世界的な学術誌への論文掲載実績も多数ある、まさに同領域の世界的な第一人者です。

図5. 金井CSOの研究実績

さらに、市場規模も重要な要素として考慮しました。がん治療薬は治療薬市場全体の中でも最も大きな市場ですが、Atransen社が適応獲得を目指す非小細胞肺がんはその中でも非常に患者さんが多く、グローバルの治療薬市場は2兆円を超える巨大市場です。市場規模としてはこれだけでも十分魅力的ですが、同社はさらに他の複数のがんに対する適応獲得を目指して臨床試験の準備を進めており、対象市場はさらに大きくなると予測されます。

図6. ターゲット疾患の市場規模

4. 経営陣

Atransen社の基盤には、サイエンスと事業を両面でバランス良く推進できる優秀な経営陣の存在があります。

図7. Atransen社の経営陣

浅野CEOは関西大学大学院工学研究科修了後、1996年に橋本化成社(現ステラケミファ社)に入社し、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を新規事業として立ち上げ、2007年に100%子会社としてステラファーマ社を設立しました。同社は、抗がん剤ステボロニンの開発に成功し、2020年に製造販売承認を取得しております。浅野CEOは同社の取締役社長、会長を歴任し、2021年の東証マザーズ(現グロース市場)への上場に至るまで牽引しました。その後、2022年にAtransen社を創業しました。浅野CEOは、ステラファーマ社での幅広い経験やその魅力あふれる人柄から高い巻き込み力を持つと同時に、ステボロニンはLAT1を介して細胞内に取り込まれる特性があることから、LAT1についても非常に深く理解されています。

河合COOは、東京大学大学院薬学系研究科修了後、味の素でアミノ酸製品の研究開発に従事されました。その後、三井物産では社内プロジェクトおよび社外との共同プロジェクトとして米国で複数社の設立に携わりました。これらの経験からサイエンスへの理解が深く、かつ新規事業における経験が豊富で実際に手を動かして実務を推し進めていくことも得意な経営者であることを確認させていただきました。また、業務歴から国際的な環境でのコミュニケーションにも長けており、将来的には海外投資家や製薬企業との交渉などにおいても活躍することが期待されています。

金井CSOは、東京大学大学院医学研究科生理学博士課程を修了後、杏林大学や大阪大学の教授職・センター長などを歴任されています。前述の通り世界トップクラスの業績を持つSLCトランスポーター研究の第一人者です。

各経営陣とのインタビューを通じて、3人それぞれが異なる強みを活かしてAtransen社に貢献していること、相互にそれを認め敬意を持って接している様子を確認させていただいており、相互の高い信頼関係とチームワークの上に成り立つ素晴らしい経営チームです。

5. おわりに

Atransen社はすでに科学として確立したトランスポーター創薬を、まだ承認事例のないがん領域で挑戦しようとする革新的なバイオベンチャーです。同社が開発を進めるAPL1101はがん細胞にのみ発現するLAT1の最新の構造理解を基に、強力かつ不可逆的に阻害するよう設計された非常に有望な候補薬であり、飲み薬の抗がん剤として様々な種類のがん治療に活用されることが期待されています。LAT1という抗がん剤開発における魅力的なターゲットに対して、クライオ電子顕微鏡による構造観察技術の向上がもたらした最適な化合物が誕生した今こそが、トランスポーター創薬に挑戦するバイオベンチャーに投資をする理想的なタイミングであるとAngel Bridgeとして考えております。

Atransen社のAPL1101が、世界トップレベルの優れたサイエンスと事業に対する深い知見を兼ね備えた経営チームによって世界中のがんに苦しむ患者さんに届けられる日がくることをAngel Bridgeは確信しています。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

この記事の監修者

Angel Bridge編集部

Angel Bridge編集部

Angel Bridgeは世の中を大きく変革するメガベンチャーを生み出すことを目指して、シード~アーリーステージから投資を行うベンチャーキャピタルです。プロファーム出身者を中心としたチームでの手厚いハンズオン支援に強みがあり、IT/大学発/ディープテックスタートアップへの投資を行います。

私たちは「起業家のサポーター」として、壮大で破壊力のある事業の創造を全力で応援しています。

所属
JVCA : (https://jvca.jp/)
INVESTMENT

Angel Bridge投資の舞台裏#34(株式会社Closer)

2025.12.18

2025年12月に株式会社Closer(以下Closer社)が、プレシリーズAの資金調達を発表しました。1stクローズの資金調達額は4.2億円になります。Angel Bridgeも本ラウンドにおいてリード投資家として出資しています。

Closer社は製造業における工場の中小規模製造ラインを簡単に自動化するソフトウェア型のロボットパッケージを提供する企業です。

今回の記事では、Angel BridgeがCloser社に出資した背景について、特に製造業の工場自動化の潮流や現状の課題、及びCloser社の強みに焦点を当てて解説します。

  1. 工場自動化の市場と課題
  2. Closer社の事業概要と強み
  3. チーム
  4. おわりに

 

1. 工場自動化の市場と課題

製造業における工場の自動化は第一次産業革命以降、技術の発展と共に徐々に実現されて来ました。第二次産業革命以降はコンベアラインによる自動的な流れ作業が実現され、現代ではIoT、ビッグデータなどを活用したスマートファクトリー化も進んでいます。一方でこのような自動化が実現されているのは主に自動化の採算が合いやすい大規模製造ラインであり、製品の入れ替わりも頻繁に発生する中小規模の製造ラインは未だに多くの人手での作業が残存している状況です。

特に食品製造業は製造業の中でも中小規模の製造ラインが多いことを背景にロボット導入が進まず生産性が低い業種であり、未だに多くの製造プロセスを手作業で行っている状況です。結果として製造業の業種別で最も多い約120万人¹従業員が働いており、製造が非効率になっています。

このような中小規模の製造ラインの生産性の低さは人手不足や物流2024年問題²背景に改善が求められており、日本政府も食品製造業の中小企業向けに給付金を交付するなど、自動化を促進する流れが活発化しつつあります。

      図1. 食品製造業における工場自動化の現状

また近年はロボット技術にも大きな変化が起こっています。これまではハードウェアを組み合わせてシステム構築を行う「ハードウェア型」のロボットが主流でした。ハードウェア型のロボットはコアの制御技術としてPLC(Programmable Logic Controller)という技術を用いており、柔軟性が低いものの決められた動作を何度も繰り返すような作業に適切でした。従ってハードウェア型のロボットを活用して重厚長大の大規模の製造ラインを構築していましたが、逆に中小規模の製造ラインには適していませんでした。しかし近年AI・機械学習技術の進展や計算資源の低コスト化によって、独自のソフトウェアプラットフォームやOSを活用した「ソフトウェア型のロボット」が生まれており、汎用的で柔軟なシステム構築ができることを強みに、複雑もしくは小規模な製造ラインに適したロボットが開発されています。スタートアップにおいてもMujinやTelexistenceなどは代表的なプレイヤーです。

図2. ロボットの種類(ハードウェア型/ソフトウェア型)

重厚長大な業界をメインに従来のハードウェア型のロボットのニーズも当然残ると思われますが、近年の労働力不足、データ活用技術の進展などを踏まえると、ソフトウェア型ロボットは今後さらに台頭してくると考えています。


注釈
  1. 経済産業省; 工業統計調査(令和2年6月1日時点)
  2. 2024年4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制(年間960時間)が適用されることで、輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」ことが懸念されている問題

2. Closer社の事業概要と強み

続いて、Closer社の事業概要について説明します。

図3. Closer社の事業

Closer社は、ソフトウェア型のロボットパッケージを提供する企業です。大きな特徴は中小規模製造ラインのペインを解消する点にフォーカスしている点です。

①優れたUI/UX

従来のハードウェア型のロボットはロボットの動きを定義するために「ロボットティーチング」という指示を専門的な方法で入力することが必要でした。この手法では専門の技術者が必要ですが、地方の工場ではこのような技術者がいないためにロボットを導入できないことや、専門の技術者であっても入力に8時間程度の時間がかかってしまうことが課題でした。一方でCloser社の製品は初心者の作業員でも3分程度で設定が可能で操作性の高いUI/UXを特徴とします。

② 小型で導入が容易

ソフトウェア型のロボットは性能がハードに依存する割合が小さく、小型でも高いスペックを実現することができます。特に工場の中小製造ラインはスペースが限られており、従来のロボットは導入が困難なケースが多々存在しました。その中でCloser社の製品は小さいスペースにも導入できる小型設計であることに加え、専門知識が不要で導入可能のため、リードタイムを抑えて簡単に導入することができます。

③ 汎用性が高い

従来のロボットは個別の製造ラインに特化して作られるのが一般的ですが、Closer社の製品は汎用性の高いソフトウェア型のロボットであるため、別製造ラインへの移行も容易に実行可能です。特に中小製造ラインは製造する製品が変わることに対応して製造ラインの形状が変わるケースも存在し、汎用性が高いことへのニーズが存在します。

投資検討の際には、Closer社の製品を導入している顧客へのインタビューも行いました。各企業は、工場の人手不足に深刻なペインを抱えており、大型のロボットは導入を試したこともあるものの非常に導入が困難との課題を抱えていました。Closer社の製品はティーチングや操作が容易で、着実に必要人員の削減に繋がることから、非常に高い満足度を実現している様子を伺うことができました。このようなロボットの開発には高度な技術力が必要であり新規の参入には一定高いハードルが存在することに加え、既存の大手ロボット開発会社は既にハードウェア型のロボットの開発に注力しておりリソースを割きづらいという事情で、Closer社のロボットは高い優位性を構築しています。

図4. 顧客インタビュー

投資判断にあたっては、Closer社の製品が競合の製品とどのように棲み分けられているかも確認を行いました。Closer社の製品は競合と比較して確かに柔軟性、導入スピード、UI/UXが優れていることを製品ベースでも比較を行っています。

図5. ポジショニング

今後の展開としては、現在のロボット販売のみの売り切りモデルから発展し、保守・メンテナンスサービスを付加した売り切り+リカーリングモデル、最終的にはソフトウェア型のロボットだからこそ可能である発展的なデータ活用によるリカーリングモデルの強化も十分に見込めると見ています。例えば複数拠点の稼働分析、経営ダッシュボードとの連携などはソフトウェア型のロボットが工場で稼働することで製造に関するデータをストックすることにより実現ができる工場の経営高度化であり、高単価と高粗利を両立し得るビジネスモデルとなるポテンシャルがあります。

通常、ロボットの「モノ売り」だけでは市場から評価されるにあたってかなりの売上をあげる必要がありますが、Closer社が開発するソフトウェア型のロボットはハードウェア型のロボットより粗利が高い傾向にあり、モノ売りでありながらも市場から高く評価されやすいビジネスになっています。モノ売りに加えて、リカーリング性の高い売上を獲得するとそれだけ市場からの評価も高まり、大きなアップサイドも見込めると考えています。

図6. 今後のビジネスモデルの展開

3. チーム

Closer社には、ロボット技術者として非常に優秀な樋口CEOとその下に集う優秀な開発チームが揃っています。

図7. Closerのチーム

樋口CEOは、高専を卒業後に筑波大学大学院に進学され、博士課程に在籍中にCloser社を創業されました。若い経営者ですがロボットエンジニアとしての経歴は長く、小学生時代からロボット競技をはじめられています。長岡高専在学中にはRoboCup世界大会で優勝され、孫正義育英財団、IPA未踏事業に採択されるなど注目の起業家です。筑波大学大学院時代にもロボットの開発を続けられる中で大きな社会課題をロボットで解決するという観点で起業を決意されました。

複数のリファレンスインタビューも行わせていただきましたが、Angel Bridgeとしては樋口CEOの経営者としてのポテンシャルを高く評価させていただきました。大学発ベンチャーの経営者にありがちな失敗要因として、技術に傾倒するあまり素晴らしい製品を作り上げるのですがビジネスとしてはうまくいかないことが挙げられます。一方で樋口CEOはロボットエンジニアとして高い技術をお持ちである点はもちろん、徹底的な顧客視点でロボットを開発され、時には顧客ニーズに合わせてピボットを行う中で事業の成長を作り上げてこられました。顧客に徹底的に寄り添う姿勢は起業家として最も重要なことの一つであり、今後も益々素晴らしい経営者になられるのではと大きな期待をしております。

4. おわりに

工場の自動化が進む中で中小規模の製造ラインは未だに自動化の波に取り残された領域です。一方で、ロボット開発においては、これまでのハードウェア型中心の進化に加え、近年はソフトウェア型のロボットも登場し、多様なニーズに合わせたロボットが出現しつつあります。

Closer社が開発する製品はソフトウェア型のロボットで中小の製造ラインを自動化するものです。操作性が高く、容易に導入できるロボットを開発するためには高度な技術力が必要であり、優秀なロボットエンジニアである樋口CEOだからこそ構築できる強力なチームに支えられています。大規模の製造ラインが概ね自動化されつつある中で、次の自動化のターゲットは中小製造ラインになるのではと考えています。Closer社は確かな技術力と強い市場ニーズを背景に、大きな成長を実現できるとAngel Bridgeは確信しています。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

 

この記事の監修者

Angel Bridge編集部

Angel Bridge編集部

Angel Bridgeは世の中を大きく変革するメガベンチャーを生み出すことを目指して、シード~アーリーステージから投資を行うベンチャーキャピタルです。プロファーム出身者を中心としたチームでの手厚いハンズオン支援に強みがあり、IT/大学発/ディープテックスタートアップへの投資を行います。

私たちは「起業家のサポーター」として、壮大で破壊力のある事業の創造を全力で応援しています。

所属
JVCA : (https://jvca.jp/)
INTERVIEW

freee出身のCEOが挑むソフトウェア企業の共通課題への挑戦(PLAINER株式会社)

[小林 大 PLAINER CEO × Angel Bridge 河西 × Angel Bridge 三好]

2025.12.10

ソフトウェアのデモをノーコードで作成できるサービスを提供するPLAINER(プレイナー)株式会社。同社は2025年5月にシリーズAラウンドで4億円、累計5.7億円の資金調達を実施しました。 今回は同社代表取締役CEOの小林大氏にご登場いただき、起業の経緯やAngel Bridgeとの関わり、Angel Bridgeから受けたハンズオン支援、今後の展望などをお話しいただきました。
小林 大 PLAINER株式会社 代表取締役 CEO
  • 上智大学法学部卒業後、2017年にfreeeに入社。インサイドセールスチームで50名中トップの成績を残した後に、営業戦略の策定/実行に従事し組織の成長を牽引。その後、モバイル版freeeの事業責任者に就任しYoY300%以上の成長を実現。2019年PLAINER設立
河西 佑太郎 Angel Bridge株式会社 パートナー
  • ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門、ベインキャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て2015年Angel Bridgeを設立。創業期の2年間社長を担うなどHeartseedを立上げから支援。東京大学大学院農学系研究科修士修了(遺伝子工学)、シカゴ大学MBA修了。
三好 洋史 Angel Bridge株式会社 シニアアソシエイト
  • 2015年、慶應義塾大学経済学部卒業後、西日本旅客鉄道(JR 西日本)入社。2019年、JR西日本イノベーションズの設立とともに出向し、新規事業創出案件に携わる。2019 年Bain & Company に転じ、金融業界や小売業界、家電業界におけるコスト削減や収支構造改革、ビジネスデューデリジェンスプロジェクトに従事。2021 年、Angel Bridge 入社。

ソフトウェア企業の共通課題を解決。プロダクトデモがノーコードで作成できる

——事業内容について教えてください

小林:ソフトウェアプロダクトをノーコードで複製・カスタマイズして、簡単にデモ画面を作成できる「PLAINER」というサービスを提供しています。ソフトウェア企業のマーケティングからカスタマーサポートまであらゆるビジネスオペレーションでご活用いただけるプロダクトとなっており、自動車販売における試乗、不動産販売における内見のソフトウェア版のようなイメージで、「ショールーム」・「説明書」に近い役割を担っていると考えています。

これまで、プロダクトデモは人が操作を覚えてユーザーに伝達するのが主流でした。しかし、プロダクトのアップデート、1社ごとに扱うプロダクト数が増えたこと、また製品に関わるヒトの入れ替わりが発生することにより、教育などの従来の方法をベースに製品価値を伝達するプロセスを維持するのが困難になりました。PLAINERはこうした構造的課題を解決するプロダクトです。

——競合や参入障壁について教えてください。

小林:現状では、国内に直接的な競合は存在しないと認識しています。デモ動画を作るのか、「PLAINER」を採用するのかという比較のされ方がほとんどです。分かりやすいマーケットではないため、これまで競合の新規参入も多くありませんでした。プロダクトを作る際は、競合が少なく、本来あるべき姿に真っ直ぐ製品を磨き込める市場を選びました。私は前職でクラウド会計ソフト「freee」を提供するフリー株式会社にいて、どれだけ良いプロダクトであっても本来的な価値の10-20%ほどしかユーザーに届いていないと感じていましたし、その事象が発生する背景・要因についての解像度も高かった。なのでこれこそ自らが解決するべき課題として適切と感じました。

——PLAINERの強みはどこにあるのでしょうか。

小林:現在の強みは、独自性があり構築に時間のかかる自社プロダクトを保有し、プロダクトデモ市場で先行者利益を作れていること、そして所属メンバーが事業領域のペインを深く理解していることです。私はfreee出身であり、大多数のメンバーが大手SaaS企業経験者で構成されており、本事業を推進する初期的なチームとして最適な布陣だと考えています。また、PMF前後の主要な販売チャネルである展示会では、出展企業の多くがソフトウェアプロダクトを扱っており、関係者間に一定のネットワークが形成されています。そのため、紹介や自分達のつながりを起点に販路を拡大しやすい環境にありました。こうした地道な初期アクションを積み重ね、大手 SaaS 企業への導入が進むことで、今ではその周辺プレイヤーにも導入が広がるなど、ネットワーク効果が生まれつつあります。

起業家として不可欠なIQとEQ、やりきる力

——PLAINERとAngel Bridgeの関わりはどのような形ではじまりましたか。

三好:最初に小林さんとお話ししたのは、まだプロダクトを本格的に形にしていく初期フェーズでしたので、深い議論までは至りませんでした。ただ、その短いやり取りの中でも、freeeで培ったSaaSの知見をもとに課題を的確に捉えていることは強く伝わってきました。

プロダクトデモのプラットフォームという構想は一見するとニッチに見えますが、営業やマーケティングの在り方を根本から変えていける可能性を秘めています。「このテーマに挑むのであれば、単なるツール提供にとどまらず、より大きな構想につながるはずだ」──そう感じ、改めて腰を据えて議論してみたいという期待を持つようになりました。

小林:最初に連絡いただいたのが2023年8月頃で、プロダクトを本格的に作っていくフェーズでした。その後、2024年11月に改めてお会いしたときに、深くディスカッションさせていただき、本格的な検討を進めていただくこととなりました。

Angel Bridgeさんからさまざまな質問をいただきましたが、議論のし甲斐がある論点ばかりで、建設的な会話が積み重なっていく感覚がありました。少なくとも数億円のラウンドになるため、検討項目や必要資料が多岐に渡ることは当然なのですが、ご依頼いただく資料やそこに付帯するご質問は、なぜそれをお知りになりたいのかが明快で、弊社の事業を本質的にご理解いただいた上での問いかけだと感じていたので、共同でアウトプットを作っているような感覚でやり取りそのものがとても楽しかったことを覚えています。オファーを頂くタイミングでは、河西さん、林さん両パートナー陣とのご会食機会もいただき、その際にもお二人ともたくさんのトラックレコードをお持ちでありながらも、全く飾らないお人柄を持ち合わされており、強く尊敬の念を抱きました。

——PLAINERの投資に至った経緯を教えてください。

河西:決め手のひとつは、小林さんをはじめとしたチームの強さです。小林さんが何度もピボットしながら現在のプロダクトにたどり着いた話を聞き、多くの人が途中でやめてしまうような局面でも粘り強く事業に取り組まれていることが決め手になりました。小中高はサッカーにのめりこまれていたという話からも、その目標達成に対する一貫した姿勢を感じています。

私は起業家に大事な素養は、IQとEQ、そしてやりきる力だと考えています。IQとは考える力や問題解決力であり、EQとは人間的な魅力です。IQはお客様のニーズやそれに応える機能を考え抜き、その度に正しい判断をするために必要な力です。そして、EQは会社が50人、200人、300人と拡大していく中で、リーダーになっていくために求められる能力です。さらに、困難な状況を迎えることの多いスタートアップの経営者は、やりきる力が必要です。小林さんはこの3つをバランスよく持っていらっしゃる方です。

三好:河西からは小林さんやチームのお話がありましたので、私は事業の面について触れたいと思います。起業家やチームの強さと同じくらい大切なのは、「顧客の課題を本当に解決できているか」という点です。そのためPLAINERについても、数社に顧客インタビューを行いました。

そこで印象的だったのは、「他社にもぜひ勧めたい」といった声が何度も出てきたことです。プロダクトがここまで自然に評価されるケースは、そう多くありません。さらに、ある企業では一つの部署に導入されたことをきっかけに、他部署から「うちでも使いたい」と自然に広がっていったというエピソードもありました。押し売りではなく、現場が自発的に使いたいと思えるプロダクトだからこそ起こる現象だと感じています。

そうした現場からの高い評価が、実際に売上の伸びや極めて低い解約率、さらにはアップセルにつながっている。数字とユーザーの声がしっかり一致している点は非常に強力で、これがPLAINERの大きな競争優位性だと思います。投資家としても、このプロダクトなら市場に根を張り、長く愛され続けると確信しました。

重要な採用の場に同席を依頼するほど、Angel Bridgeとの距離感が近い

——2025年5月にシリーズAラウンドで4億円、累計5.7億円の資金調達を実施されました。これ以降、Angel Bridgeからはどのような支援を受けていますか?

小林:月次で定例ミーティングを設け、経営課題や事業進捗について継続的に議論を行っています。加えて、2~3日に一度はメッセージを通じてコミュニケーションを取っており、話題は多岐にわたります。海外の関連製品や有益なセミナー情報の共有、議論の中で浮かび上がった論点の整理・深掘り、さらには課題解決に向けた具体的な支援など、多方面でご尽力いただいています。

また、採用に関する相談に乗っていただくことも多く、場合によっては面談の場に同席いただくなど、実務面でも力強くサポートしていただいています。このように、さまざまな側面で継続的かつ実践的な支援を頂戴しています。

三好:主役はあくまで小林さんをはじめとする経営陣で、私たちVCの役割はその背中を押し、横で支えることだと思っています。論点の整理や他社事例の紹介といった材料はお伝えしますが、最終的に決断するのは経営チームです。その判断が少しでもスムーズに進むように、必要な情報や視点を届けることを心がけています。

実際にPLAINERでは、資金調達に向けた戦略設計や「どの顧客セグメントに注力すべきか」といった議論を重ねてきました。組織拡大の局面では候補者をご紹介したり、クロージングの場に同席して投資家の目線からPLAINERの魅力を伝えることもあります。定例の議論にとどまらず、日々のやり取りの中で幅広い相談をいただきながら、一緒に伴走してきました。

そうした積み重ねがあるからこそ、課題が出てきたときに「ちょっと相談してみよう」と思ってもらえる距離感を築けているのだと思います。経営陣と同じ景色を見ながら、ときに悩みを共有し、一緒に次の一歩を踏み出していけることが、私にとってのやりがいです。

小林:経営陣の一員として強いコミットメントを持って関わっていただいていると感じています。また、常に寄り添いながら並走してくれる存在であり、共通の目標に向けて建設的な議論を積み重ねられる重要なディスカッションパートナーとして認識しています。

河西:採用の場に同席してほしいと言ってもらえるのは、ベンチャーキャピタリストにとって誉れです。三好が同席させていただいた話を聞き、Angel Bridgeの社内でも共有したほどです。

「ユーザーにプロダクトの価値を伝える難しさ」が原体験となり起業

——起業に至った経緯を教えてください。

小林:高校までサッカーに打ち込んでいたのですが、早々にスポーツでは一番になれないと悟りました。プレイヤーとしてそのスポーツを極めたかと言えばまるで程遠く、土俵上に上がれないようなレベルではありましたが、様々な出会いを通じて、「どれだけ早熟か」ではなく「どれだけ大きなインパクトを出せるか」を意識するようになったと思います。自分の未熟さ故に人よりも早く、多くの挫折を経験したことで、失敗を前提にしながらも前に進む図太さが身についたと感じています。卒業後は、それまでの経験から早く自分の人生をかけられるコトを見つけたいと考え、起業を志すようになりました。ただし、当時は知識も経験もなかったため、まずは大学卒業後に企業へ就職し、早期の起業を目指すことにしました。

そんな中で出会ったのが、当時社員150名ほどのfreeeです。出会った社員が素敵な方ばかりで学べるものが多いと考えて入社しました。

freeeで働いて感じたのは、「良い製品であるにもかかわらず、その価値が顧客に十分に届いていない」という現実でした。多くの顧客は製品を最低限しか使いこなしておらず、関連製品にいたっては認知すらされていない状況でした。とても優秀な人達が、たくさん学び、真剣に顧客価値を追求している環境であったにもかかわらず、そうした課題が存在していたので、この価値伝達の非効率性は全てのソフトウェア企業で起きている課題なのだと直感しました。これらの経験を通じて、ソフトウェア製品の価値を余すことなく届けることができれば、市場に大きなインパクトを生み出せる。そう強く感じたことが、現在の事業に取り組む原点になっています。

——現在のプロダクトである「PLAINER」の立ち上げまでに、いくつか事業をピポットされています。どのような道のりがありましたか。

小林:「PLAINER」は3つ目の事業です。いずれの事業も先ほどお話ししたようなソフトウェア製品の価値流通を発展させる観点から着想しました。1つ目の事業はソフトウェア企業のマーケティング活動に関わるコンテンツを自動かつ、高クオリティで作成できるプロダクト、2つ目は分析業務とデジタル施策を一気通貫で実施するプロダクトでした。1つ目の事業は今の生成AI技術であっても実現には程遠く、時期尚早だった点。2つ目はそもそもマーケットが限定的かつ、誰の課題かの仮説も外していたと振り返っています。

——「この事業はピポットした方がいい」と判断したきっかけを教えてください。

小林:端的に申し上げると、「この事業は自分が取り組むべきものだ」と確信を持ち続けられなくなった時点で、ピボットを決断しました。自社製品を提案した際に、たとえ誰かから「その製品には意味がない」と言われたとしても、自分の中に揺るぎない確信や思いがあれば、前に進み続けることができます。しかし、それが持てなくなった場合は、事業を継続することは難しくなります。

振り返ると、「PLAINER」に至る前に取り組んだ2つの事業は、コンセプトとしては理想的で意義もあるものでしたし、上場できるようなポテンシャルを持つ事業だったと思います。一方で、自分自身が当事者としてその領域に深く関わった経験がなかったため、顧客に価値を提供するまでの具体的なワークフローをありありと語る事が難しかった。

「PLAINER」は、私自身が前職で深く関わってきたテーマです。プロダクトデモやチュートリアルを作成する際に、エンジニアを巻き込みながら成果を上げた経験があり、その知見をさらに深掘りすることで事業化につなげました。

——どのような経験だったのでしょうか。

小林:「freee」では、ユーザーがホーム画面に到達した後、その多くが何のアクションも起こさずに離脱している状況がありました。一方で、主要機能を体験したユーザーの契約率が数十倍に向上することが判明していました。そこで、ホーム画面に到達する前の段階で、製品価値の源泉となる主要機能を体験できるデモを作成したところ、圧倒的な成果を上げることができました。

ただし、この取り組みには多くのエンジニアリソースを割く必要があり、本来実施したかった施策の半分程度しか着手できなかったという課題もありました。そこで、「PLAINER」は、”エンジニアリングスキルがなくとも、誰もがプロダクトを用いて顧客に価値を届けられる”をコンセプトに製品開発を始めていきました。

——ご自身の実績から「PLAINER」を着想されたのですね。「PLAINER」の事業で手ごたえを感じたのはどんな瞬間ですか?

小林:お客様に「PLAINER」で解決できる課題をご説明した際、その背景にまで深く共感していただき、プロダクトが未完成の段階にもかかわらず導入を即決くださる方が複数いらっしゃった事です。

それまでの2つの事業では、私が想定した課題をお伝えしても、お客様にその課題やインパクトを十分に理解いただくことが難しく、手応えを得ることができませんでした。この経験からそもそも、課題を丁寧に説明しなければ伝わらない時点で、ターゲット設定もしくは課題仮説自体が本質的に誤っているのではないかと考えるようになりました。

——小林さんが経営者として意思決定する上で大事にしていることはありますか。

小林:元も子もない話かもしれませんが、最も重要なのは「その挑戦を絶対にやめない」という覚悟を持つことだと考えています。起業にあたって私は、「事業をやめずに継続し続けること、そして目標を引き上げ続けること」を自分との約束として定めました。事業を進めていく過程では、さまざまな困難が生じ、やめる理由や諦める理由はいくらでも見つかります。しかし、「何があってもやめない」という前提に立ち、かつ目標を上げ続けることで、あとは自分が努力すればよいだけの“コントロールできる構造”になると感じています。

その他の要素は枝葉に近い感覚ではありますが、あえて一つ挙げるとすれば、自分自身を含め、関わる人の感情に最大限配慮しつつも、常に冷静かつ客観的な視点で意思決定を行うよう努めています。人の感情は完全に読み切れるものではないため、時に悩みに発展することもありますが、それらは自分自身の欲求不満として受け止めることで、適切に消化できると考えています。事業が成長しステークホルダーが増えている今、これは私自身のチャレンジポイントだと感じています。

テクノロジーをインフラにしていく事業を構想中

——今後の展望について教えてください。

小林:私たちは、テクノロジーを水や電気のようなインフラにしていきたいと考えています。水や電気は使うことが簡単で、疑いようもなく価値のある存在です。一方、テクノロジーは使うことが難しく、価値もわかりづらい。私たちがテクノロジーを使いやすい形に変換することで、多くの人がテクノロジーから生まれる恩恵を受けられる世界にしていきたいと考えています。

現在はソフトウェア事業に対するサービスを中心に展開していますが、ソフトウェアのユーザー企業に対しても貢献し得ると考えています。例えば、ソフトウェアを導入した企業のユーザーが、ソフトウェアを使いこなすためのデモマニュアルを作成するような事業も構想しています。ただし、根本的にはテクノロジー自身が自分の価値を理解し、人の手を借りずとも自律的に価値を伝達していくインフラを作り出そうとしています。

——PLAINERでは、採用を積極的に行っています。どんな方と一緒に働きたいですか。

小林:変化し続けられる方を重視しています。バックグラウンドは多様になるかと思いますが、以前の環境で成果を出せた方法が、新たな環境でも同じように通用するとは限りません。そのような状況に直面した際、自らを変化させる柔軟性があるか、そしてその変化の幅がどれほど大きいかを重要視しています。変化の幅を広げるには、ポジティブな姿勢を持ちながらも、結果や事象をある種ドライに受け止め、自分自身を客観的に見つめることが必要だと考えています。そのような資質を持つ方がいれば、ぜひお話ししてみたいと思っています。

現在の組織は私を含め約20名ですが、今後は VPoE(Vice President of Engineering)や CFO(Chief Financial Officer)といった経営人材が不可欠になっていきます。こうしたポジションを経験されている方、あるいは目指している方で、世の中に大きなインパクトをもたらすビジネスに携わりたいと考えている方にお会いできればうれしく思います。

三好:「PLAINER」ほど「現場から熱烈に求められているプロダクト」は本当に珍しいと思います。単なる便利ツールではなく、営業やマーケティングの仕組みそのものを変えていける可能性を持っている。そうした事業の広がりを一緒に形にしていけるのは、大きな魅力です。

チーム自体がスピード感と柔軟性にあふれていて、新しい挑戦が次々と生まれています。だからこそ、PLAINERに入る方には事業の成長と同じ熱量で、自分自身の成長も実感できるはずです。組織の成長と個人の成長が自然にリンクしていく、そんな環境がPLAINERにはあると思います。

「変化の早い環境で挑戦し、自分を大きく伸ばしたい」という方にとって、PLAINERはまさにその機会を提供できる会社だと思います。ぜひ一緒に未来をつくっていただきたいです。

——小林さんが、Angel Bridgeに今後期待していることを教えてください。

小林:これまでと同様に、隣で並走していただける存在でいてくださると大変心強く思います。例えば、三好様に採用面談へ同席いただいたことも、採用を経営課題の一つとして共有してきたからこそ生まれた、ごく自然な流れでした。今後も、このような密度の高いコミュニケーションを継続していければと考えています。

三好:これまで通り、近い距離感で気軽に相談していただける関係性を大切にしていきたいと思っています。事業が拡大するにつれて、採用や組織づくり、海外展開など、これまでとは違う新しい課題が次々に出てくるはずです。そうした局面でも、私たちの経験やネットワークを総動員して、一緒に解決策を探っていければと思います。

これまでも採用の場に同席したり、資金調達の設計を壁打ちしたりと、経営のさまざまなテーマにご一緒してきました。今後も「これは相談していいのかな」と迷う前に声をかけてもらえるような存在でありたいですし、その積み重ねがPLAINERのさらなる成長につながると信じています。

河西:PLAINERは今後メガベンチャーとして時価総額1,000億円を超えるような上場を目指していくことになります。Angel Bridgeを挙げて、全力でPLAINERの事業と小林さんをサポートしていきます。

この記事の監修者

Angel Bridge編集部

Angel Bridge編集部

Angel Bridgeは世の中を大きく変革するメガベンチャーを生み出すことを目指して、シード~アーリーステージから投資を行うベンチャーキャピタルです。プロファーム出身者を中心としたチームでの手厚いハンズオン支援に強みがあり、IT/大学発/ディープテックスタートアップへの投資を行います。

私たちは「起業家のサポーター」として、壮大で破壊力のある事業の創造を全力で応援しています。

所属
JVCA : (https://jvca.jp/)
INTERVIEW

オープンデータの収集・活用技術で、HR領域の新たな可能性を広げる(XAION DATA社)

[佐藤 泰秀 XAION DATA CEO × Angel Bridge 林 × Angel Bridge 三好]

2025.11.25

スペシャリスト人材や転職潜在層にアプローチ可能な、オープンデータ活用型のダイレクトリクルーティングを実現するSaaSを提供する株式会社XAION DATA(ザイオンデータ)。 競合が容易に追随できないデータ収集・活用技術と特許を強みとする同社は、2024年4月にシードラウンドにおいて累計4.5億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。 今回は同社代表取締役CEOの佐藤泰秀氏にご登場いただき、起業の経緯やAngel Bridgeとの関わり、Angel Bridgeから受けたハンズオン支援、今後の展望などを伺いました。
佐藤 泰秀 株式会社XAION DATA 代表取締役
  • 日立製作所新卒入社後、公共システム部門において大規模基幹系システムの導入・構築プロジェクトをPLとして対応。大規模システム更改プロジェクトにおいては、事業所技術賞を受賞。その後、アメリカ・シリコンバレーのAIスタートアップ企業にジョインし、アメリカにて市場開拓やファイナンス関連の業務に従事。アメリカ・日本市場開拓責任者を担い、日本の東証一部上場のHR企業のCVCから調達を実施。本社COOを経て、日本子会社設立および、同社代表取締役に就任。2020年1月、XAION DATAを共同創業。
林 正栄 Angel Bridge株式会社 パートナー
  • 伊藤忠商事にて北米統括シカゴ支店長などを務めた後、1部上場企業取締役、コンサルティング会社代表取締役、エミアル株式会社代表取締役社長などを経て2015年Angel Bridgeを設立し、現在に至る。 慶應義塾大学経済学部卒、ノースウエスタン大学Kellogg MBA修了。
三好 洋史 Angel Bridge株式会社 シニアアソシエイト
  • 2015年、慶應義塾大学経済学部卒業後、西日本旅客鉄道(JR 西日本)入社。2019年、JR西日本イノベーションズの設立とともに出向し、新規事業創出案件に携わる。2019 年Bain & Company に転じ、金融業界や小売業界、家電業界におけるコスト削減や収支構造改革、ビジネスデューデリジェンスプロジェクトに従事。2021 年、Angel Bridge 入社。

XAION DATAが展開する事業とその根幹となる高い技術力

——事業内容について教えて下さい。

佐藤: XAION DATAはその名の通り、データを取り扱う会社です。社名「XAION DATA」の文字を並び変えると「AI on DATA」となる通り、DATA上にさまざまな事業領域のAIをのせて各課題解決に役立てる、という意味を込めています。主に取り扱うのはWEB上で公開されているオープンデータやパブリックデータといった膨大な情報です。弊社はこれらを収集・活用する技術と特許を保有しています。

私たちのビジネスモデルは、集めたデータを使いやすい形に整え、さまざまな事業ドメイン向けのプロダクトやソリューションとして提供することです。

現在のメイン事業は、転職潜在層にアプローチ可能な、オープンデータ活用型のダイレクトリクルーティングを実現するSaaSです。ダイレクトリクルーティングとは、企業の採用担当者が候補者に直接アプローチする採用手法で、人材のマッチング精度が高いことが特徴です。

既存のダイレクトリクルーティングサービスは求職者の登録型が一般的ですが、弊社のプロダクトはオープンデータを活用している為、既存の登録型サービスに登録されていないスペシャリスト人材やミドル/ハイレイヤー人材などの転職潜在層も含めた候補者へのアプローチが可能になります。

また、その他にもオープンデータやパブリックデータを活用して営業支援を行うセールステック領域向けのSaaSプロダクトも提供しています。

——XAION DATAの強みはどこにあるとお考えですか?

佐藤: 大きく二つの強みがあります。一つ目はデータを取り扱う技術力の高さです。様々なオープンデータを収集・統合する独自のアルゴリズムに強みを持ち、多様な事業領域にデータを展開・活用できる技術基盤も有しています。特に、石崎CTOは日立で技術を磨いた後、シリコンバレーのAIスタートアップでもグローバルCTOを務めた優秀なエンジニアであり、彼の存在があってこそ、優秀なエンジニアチームの構築に成功したと言っても過言ではありません。

二つ目は事業を推進するスピードの速さです。私も元々はシリコンバレーのAIスタートアップで事業の立ち上げを経験していました。そこで培ったグローバルなネットワークを生かし、海外の最新トレンドや技術動向をリアルタイムで把握しながら、素早く事業に反映させることができます。特に、WEB上に分散しているオープンデータを収集・統合化して活用するビジネスは、今グローバルでも盛り上がりを見せている領域。海外の先行事例をいち早く取り入れ、日本市場に合わせて展開する。このスピード感が、私たちの大きな強みになっています。

——競合や参入障壁の有無について、どのようにお考えですか?

佐藤:大量のデータを正しく扱うには、まず“データを収集・統合・更新し続けるための基盤”が不可欠です。しかし、この基盤をゼロから構築するには膨大な時間と専門性が求められます。私たちはこの領域に早い段階から投資し、海外での事業経験で培った技術力とドメイン知識を活かしながら、独自のデータ基盤を磨いてきました。

さらに、日本でオープンデータを活用する際に課題となる法制度についても、ガイドライン整備や法改正に向けた働きかけを含め、適切な運用ができる環境づくりに取り組んできました。

こうした技術・データ・制度の三つのレイヤーを揃えている企業はほとんど存在せず、これが私たちの大きな参入障壁になっています。他社が短期間で追随するのは難しいと考えています。

支援の決め手はクリエイティブな事業構想と、スピード感のある成長

——XAION DATAとAngel Bridgeの関わりは、どのような形ではじまりましたか。

林:2023年1月、XAION DATAが取り上げられた日経新聞の記事を読んだことがきっかけでした。オープンデータをダイレクトリクルーティングに活用する事業に関するルールが整備されたニュースとともに同社のことを知り、Facebookから佐藤さんにご連絡しました。

佐藤:まずオンラインで林さんと三好さんとお話しさせていただきました。林さんはAngelBridgeのパートナーでいらっしゃるにもかかわらず、私のようなスタートアップの無名の若手に対しても敬意をもって話を聞いてくださったことが印象的でした。
三好さんもお人柄がよく、加えて事業会社でのご経験があり、知見の幅が広い方だと感じました。XAION DATAが取り組むビジネスと近しいプレイヤーや業界の最新トレンドについて多角的な意見を頂いたのを覚えています。

——Angel Bridgeから投資を受けるにあたって期待や懸念点はありましたか?

佐藤:ハンズオン支援には期待していました。それぞれの領域で先陣をきって事業をしているスタートアップの経営陣とも対等に話せるほどのドメイン知識をお持ちだと聞いていたので。

さらに林さんは豊富なネットワークをお持ちです。営業面での支援も期待していましたし、実際に助けていただいています。

ハンズオン型のVCは経営に過剰に関与するケースもあると聞いたことがあったので、少し懸念はしていました。でも実際は違いましたね。
むしろ私たちのやりたいことや意思を尊重したうえで、重要なアドバイスをいただいています。

——XAION DATAの支援に至った経緯を教えてください。

三好:
最初に強く惹かれたのは、事業そのもののユニークさでした。他社では到底扱えないほど質の高いオープンデータを、大量かつ体系的に収集できる仕組みをすでに構築していた点は、明確な競争優位だと直感しました。

さらに、その基盤を支えるのは、佐藤さんと共同創業者の石崎さんの経験と技術的知見です。単なるエンジニアリングにとどまらず、データベースをビジネスへと橋渡しできる実装力を備えていたことが、非常に面白く、また稀有だと感じました。

そして特筆すべきは、データを「どう事業として成立させ、顧客に価値として届けるか」という視点を、初期段階から持ち合わせていたことです。エンジニアリングの深い専門性と、ビジネスを俯瞰する経営的視点。その両方を同時に持つ経営者は多くありません。

約1年間、定期的に議論を重ねる中で印象的だったのは、常に「対話から次の一手を導き出そうとする姿勢」です。こちらが提示した視点を、単に受け取るだけではなく、自分たちなりに深めて返してくれる。そして次に会うと、もう具体的に試し、前進している。その柔軟さと推進力には毎回感心させられましたし、議論の時間そのものが私にとっても学びと刺激になっていました。

投資を決めるに至った理由は、数値や計画の整合性以上に、こうした佐藤さんの姿勢にあります。経営者と投資家という立場を越えて、同じ未来を描き、具体的に歩んでいけるパートナーだと確信できたことが、投資の決め手となりました。佐藤さんたちとなら、困難な状況に直面しても共に乗り越え、大きな市場を切り拓いていけると信じています。

林: 佐藤さんがアメリカで経験を積まれたことも大きなポイントでした。このご年齢で日本の大企業とシリコンバレーの両方を経験している方は珍しいです。その視点から見た事業構想は非常にクリエイティブで、大きくスケールする可能性を感じました。

クライアント開拓の営業支援から、経営戦略や財務まで幅広く支援

——シードラウンドで累計4.5億円の資金調達を実施されました。それ以降、Angel Bridgeからはどのような支援を受けていますか?

佐藤:営業と戦略の大きく2つの側面で支援をいただいています。

営業の側面では、林さんの豊富な経営者ネットワークを活かした支援を頂き、実際のクライアント開拓にも繋がっています。戦略の側面では、マーケット調査だけでなく、経営戦略に関する壁打ちや、経営会議の進め方、財務に関わるアドバイスなど幅広い領域のアドバイスをいただいています。

私たちはエンジニアの多い会社で、財務やKPIなどのモニタリング機能が充実していなかったのですが、三好さんの支援で見違えるほど変わってきています。定例会議が経営指標の報告の場ではなく、「この数字を確認したうえで、次に何をすべきか」という戦略を議論する場になっています。粗削りでも仮説をまずは立て、その検証に必要な観点を持ち寄り、迅速に仮説検証できるような体制に大きく変わりました。

三好: XAION DATAの経営陣は常に未来を見据えており、同社で構築したデータ基盤を活かした多様な事業を展開できる可能性を秘めています。ただ、スタートアップにとっては「全部を一度に進める」ことが必ずしも最適ではありません。だからこそ、「どこに集中するか」「どう成長の階段を上るか」を一緒に考えることが、私の大切な役割だと思っています。

実際のディスカッションでは、「今攻めるべき事業領域はどこか」「どのような顧客層を優先すべきか」といった問いを丁寧に掘り下げました。その際も、短期のKPIだけに縛られず、中期的な成長ストーリーとのバランスを意識しながら議論を進めています。加えて、その議論を実行につなげるために、モニタリングの仕組みを整えたり、次回の資金調達のゴールから逆算してマイルストーンを描いたりもしてきました。

経営陣が意思決定を単なる「議論」から「行動」へと変えていく姿を横で見られるのは本当に刺激的です。私は、その一歩が少しでもスムーズになるよう支え、ときには悩みを共有しながら歩調を合わせていく──そのプロセスに伴走できることが、最大のやりがいだと感じています。

佐藤:三好さんはアドホックに質問してもすぐに返答くださり、とてもフレキシブルに支援いただいています。

三好: 佐藤さんは、疑問や悩みをその場で率直に共有してくれます。そのリアルタイムなやり取りがあるからこそ、こちらも「ではこの人を紹介してみよう」「あの投資先の事例が役に立つかもしれない」とすぐに動けるんです。机上の議論ではなく、いま必要な支援をその場で返せるのは、こうした信頼関係と距離感があるからだと思います。この関係性をこれからも大事にしていきたいですね。

実は、私たちは半年ごとに経営合宿を開き、各投資先へのハンズオン支援を振り返る機会を設けています。そこでもXAION DATAへの伴走は特に高く評価されており、「ハンズオン大賞」をいただいたことが私自身の励みにもなっています。

日立製作所、シリコンバレーのスタートアップを経て起業

——起業に至った経緯を教えてください。

佐藤:起業したいという気持ちは中学生の頃からありました。卒業アルバムの将来の夢に「IT会社の社長になる」と書いていたくらいです。

新卒では日立製作所に入社し、大企業の一員として頑張っていましたが「このままでいいのだろうか」と思っていたんです。そんなときに、日立のグローバル人材育成プロジェクトで選出されてアメリカで働く機会をもらいました。そこでシリコンバレーのスタートアップと働く機会があり、マーケットに直接対峙して自分の力で世の中を変えようというマインドを持つ人たちと出会いました。それをきっかけに、私も会社の枠組みにとらわれず自分の力でやっていきたいと思うようになりました。

成果を出せたことでスタートアップから誘いを受け、4年半ほど働いた日立を辞めてシリコンバレーのスタートアップで、日本史者立ち上げを含め2年半ほど働きました。

——その後、XAION DATA設立にどのように至ったのでしょうか?

佐藤:アメリカで事業を経験したあと日本に戻ってきた際、HR領域には“情報の非対称性や既得権益に支えられた古い仕組み”がまだ強く残っていると感じました。こうした構造の中では、企業も個人も本来の力を十分に発揮できません。
同時に、日本では自己肯定感が低い人が多く、個人の価値が活かされにくい社会環境にも課題意識を持ちました。最初は教育を変えたいと考えましたが、平準化を重視する日本の教育の背景には、新卒至上主義や終身雇用といった“採用側の制度”が大きく関係していると感じました。
この因果関係をたどると、「教育を変えるより先に、採用の仕組みそのものを変えない限り、本質的な変化は起きない」と考えるようになりました。そこで、既存の構造に守られた採用領域に革新を起こすために、XAION DATAを立ち上げました。

——プロダクトを作るまでの流れについて教えてください。

佐藤:軸足を置いていたのは、中長期的に「データで市場価値を生む」というゴール設計です。これを実現するためにあらゆる戦略を考えた結果、HR領域から始めるのが最もゴール達成に良いという判断でスタートしました。

プロダクト開発にあたっては、キャッシュとリーガルの2つの側面で大きな課題がありました。キャッシュについては、まず人材紹介事業で収益を上げ、その利益をプロダクト開発に再投資する形で回しました。一方で、オープンデータを活用する際の法的な課題については、専門の弁護士に相談しながら業界の有識者とのネットワークを広げ、適切な運用や制度面での整理を進めていきました。当時は2、3人でこれらを同時に動かしていました。

オープンデータをダイレクトリクルーティングに活用するにあたり、関連する法制度やガイドラインを丁寧に確認し、行政とも継続的に意見交換を行うことで、透明性の高い運用体制を整えてきました。こうした取り組みが評価され、2024年3月には厚生労働省の「優良募集情報等提供事業者認定制度」において、国内初・唯一の4号優良認定事業者に選ばれています。

——現在の事業に、これまでの経験はどのように生きていますか?

佐藤:技術領域では、アメリカのスタートアップで最新の技術領域をインプットしたことが生きています。当時、日本のリクルートや現地のIndeedから事業領域の課題に対して技術的な相談を受ける側として、技術交換や意見交換をする機会もありました。最先端の技術やマーケットの概念を深く学べましたし、グローバルなネットワークを築くことができたと感じています。

——これまで特に大変だったことや難しかったことはありますか?

佐藤:会社経営では段階的に課題がシフトしていくので、毎年違った難しさに直面しています。まず感じたのは売上を作る難しさです。お客様に価値を提供して初めてお金をいただけるということを頭では理解していても、実際は容易ではなく、その本質的な難しさを痛感しました。

次に事業が軌道に乗り始めると仲間集めが課題になり、仲間が集まってくると組織作りの難しさにも直面します。これらは今でも感じている課題です。そして、次に出てくる課題はマーケットや外部環境だと考えています。

「技術を通じて世の中を良くしたい」という思いをベースに、まずHR領域で人の可能性を最大化する

——佐藤さんが経営者として大切にしている信念や考え方を教えてください。

佐藤:大切にしていることは三つあります。まず一つ目が、私たちのバリューの一つである「Integrity First」で誠実性です。他人に対する誠実性はもちろんですが、それ以上に自分自身と誠実に向き合い、弱いところを乗り越える姿勢を重視しています。人が成長するためには、自分と向き合う誠実性が不可欠だと、これまでの組織作りで確信しました。

二つ目は、同じくバリューである「Respect The Difference」であり、人に優劣はないという考え方です。当社は海外メンバーが多く、考え方の違いが多々ありますが、それはあくまで「違い」であって「優劣」ではありません。この文化を根付かせないと、人に対するリスペクトは生まれないため、人としても事業を作る上でも大事にしている考えです。

三つ目は「New, But Practical」という言葉で、我々がビジネスフィロソフィーとして掲げているものです。スタートアップとして常に新しいモノを作り続けつつも、顧客に価値を感じていただける実用的なものを作ろうという意味が込められています。アメリカで多くのスタートアップを見たときに感じたのが、自分たちを大きく見せようとして言動と実態が伴わない企業が多いということです。お客様に本質的な価値を提供できなければ、ものづくりとしての意味がありません。私たちは、先進的なプロダクトを作るチャレンジをしつつも、価値のある実用的なものを作りたいと考えています。こうしたプロダクトづくりの信念を共同創業者と共有しています。

——XAION DATAの今後の展望について教えてください。

佐藤:私たちは1つのプロダクトで上場を目指しているわけではなく、コアとなるデータ基盤を元に、中長期的に大きく成長していく事業構想を描いています。この構想を実現するため、まずは足元の事業をしっかり伸ばしつつ、投資家の皆様やステークホルダーの皆様に中長期的な未来を理解していただけるように、事業運営を進めていきたいと考えています。

私たちが目指す社会貢献は、「技術を通じて世の中を良くしたい」という思いです。今はHR領域において、人の可能性を最大化し、人が本来の活躍ができるような環境を実現していきたいと考えています。そのため、採用にも力をいれています。

——特に、どんな方を求めていますか?

佐藤:私たちが特に重視しているのが、プロダクトをいかに良くしていくかと、事業をどう伸ばしていくかの2点です。そのため、プロダクトマネージャーや事業を推進する事業責任者を担ってくれる人材の採用に注力しています。一緒に働きたいのは、先ほどお話しした当社の想いや価値観に共感してくださる方。それらを体現できる方と一緒に事業を大きくしていきたいですね。

——Angel Bridgeとしては、今後どんな支援をしていきたいですか?

林:XAION DATAはとてもポテンシャルのある企業で、直近の1〜2年で目覚ましく成長されています。我々自身もハンズオン支援にこだわって10年間やり続けてきました。「大変じゃないか」と言われることもありますが、支援することで喜んでいただけますし、我々自身の成長にもつながっています。営業支援も含めて、XAION DATAのハンズオン支援を続けていきたいです。

三好:
私たちが大切にしているのは「キャピタリスト自身が現場に入り込む」ことです。月次の定例会はもちろん、日々のアドホックな相談にも応じながら、経営陣と対話を重ねて課題や悩みを一緒に整理していく。数字や計画をただ確認するのではなく、「次にどう動くか」を共に考えるプロセスそのものに伴走することを意識しています。
私自身も、単なるアドバイスやリソース提供で終わるのではなく、経営陣と同じ視点で悩み、時には意思決定を共に担う気持ちで関わっていきたい。そうすることで初めて、その瞬間に本当に必要な支援ができると考えています。これからも困ったときや迷ったときには、気軽に頼っていただける存在でありたいですし、そのような関わり方を積み重ねていくことがAngel Bridgeらしい支援のあり方だと思っています。

この記事の監修者

Angel Bridge編集部

Angel Bridge編集部

Angel Bridgeは世の中を大きく変革するメガベンチャーを生み出すことを目指して、シード~アーリーステージから投資を行うベンチャーキャピタルです。プロファーム出身者を中心としたチームでの手厚いハンズオン支援に強みがあり、IT/大学発/ディープテックスタートアップへの投資を行います。

私たちは「起業家のサポーター」として、壮大で破壊力のある事業の創造を全力で応援しています。

所属
JVCA : (https://jvca.jp/)
TEAM

三好 洋史の投資哲学:起業家とともに悩み、未来を形にしていく伴走者になる

【三好 洋史(Angel Bridge株式会社 シニアアソシエイト)】

2025.11.20

鉄道会社が興したCVCや戦略コンサルティングファームで、大小さまざまな企業のビジネスと向き合ってきた三好洋史は、ビジョンや働く人々の魅力に惹かれ、Angel Bridgeに入社を決めました。今回はそんな経験を持つ三好に、Angel Bridgeに入社するまでの経緯を振り返ってもらいつつ、これまで築き上げた投資哲学や今後の展望について語ってもらいます。
三好 洋史 Angel Bridge株式会社 シニアアソシエイト
  • 2015年、慶應義塾大学経済学部卒業後、西日本旅客鉄道(JR西日本)入社。2019年、JR西日本イノベーションズの設立とともに出向し、新規事業創出案件に携わる。2019年、Bain & Companyに転じ、金融業界や小売業界、家電業界におけるコスト削減や収支構造改革、ビジネスデューデリジェンスプロジェクトに従事。2021年、Angel Bridge入社。

新卒2年目に巡ってきた「CVC立ち上げ」という好機

——Angel Bridgeに入るまでの経歴を振り返ってもらえますか?

大学を卒業後、入社したのはJR西日本でした。鉄道会社を選んだのは、一般的な不動産デベロッパーとは異なる「街づくり」のアプローチに興味があったからです。鉄道会社が取り組む街づくりの特徴は、鉄道を介してオフィスや商業施設、住宅などのハードをつくるだけでなく、ホテルや物販、飲食事業など、人々のライフスタイルに密着したソフトなサービスを組み合わせられる点にあります。単なる不動産開発ではなく、人の生活にまで影響を与えられるところにワクワクしたんです。たとえば当時、JR西日本ではサバの陸上養殖のように、鉄道会社の枠を超えた新規事業にも挑戦していたんです。そんな多様な事業を展開する企業でなら、鉄道会社が持つ莫大なアセットを活用して、ユニークな新規事業に携われるチャンスがあるかもしれません。それでJR西日本を選びました。

——新規事業開発に携わりたかったのですね。

はい。夢が現実になったのは入社2年目。駅員業務や鉄道用地の管理を経験するなかで、社内の新規事業アイデア公募に挑戦したんです。運よく最優秀賞に選ばれて、そこからCVC立ち上げに関わることになりました。まさか自分が本当に新規事業に携われるとは思っていなかったので、あのときの高揚感はいまでも鮮明に覚えています。

——どんなアイデアだったのでしょうか?

新規事業のアイデアをいくつか考えて提案したのですが、そのうちのひとつがCVCの立ち上げでした。当時、自分なりに新しい事業を考えようとしましたが、ゼロからアイデアをひねり出すのは難しいと感じていました。そんなときに出会ったのが「オープンイノベーション」という考え方です。自分たちだけで悩むのではなく、スタートアップと共創することで新しい事業を生み出せばいいのではないか──そう発想を転換したのがきっかけでした。その後、コーポレートベンチャーキャピタル事業を手がける「JR西日本イノベーションズ」が設立されることになり、私も初期メンバーのひとりとしてかかわることになりました。後から聞いた話では、当時本社の経営企画部門でもCVCを立ち上げようという機運が高まっていたそうで、タイミングがよかったのだと思います。入社2年目の若手に大きなチャンスをくれたJR西日本には感謝しかありません。

——当時はどんな案件を担当されましたか?

既存事業のブラッシュアップに加え、非鉄道領域での新規事業創出を担当しました。たとえば古民家再生を手がけるスタートアップとともにホテルをつくり上げるなど、地域資源を活かした事業開発に関わる機会が多かったです。行政や金融機関、スタートアップと連携しながら、1日500万人もの利用客や地域に眠る資産を活用して新しい雇用や需要を生み出していく——そうした取り組みは、単なるビジネスを超えて「地域を元気にする挑戦」だと感じていました。特に過疎化や高齢化が進む地域において、長年にわたって地域の発展を支えてきた鉄道会社にかかる期待は非常に大きく、この挑戦はとてもやりがいに満ちたものでした。

 

「まだ存在しない未来をどう創るか」に挑戦するためのキャリアチェンジ

——やりがいに満ちた仕事を辞め、戦略コンサルティングのBain & Companyに移りました。なぜだったのでしょうか?

CVCで投資先や社内外のステークホルダーと向き合うなかで、「もっと経営課題そのものに深く関わりたい」という気持ちが強くなっていきました。目の前には、素晴らしい技術や人材を持ちながら、十分に力を発揮できていない企業がたくさんある。そうした企業のポテンシャルを引き出し、もう一段成長させる力を身につけたいと思ったんです。

そのためには、自分自身がさらに高いレベルで経営課題を解決できるようにならなければいけない。足りないビジネススキルを痛感していたこともあり、あえてコンフォートゾーンを出て、一番厳しい環境で自分を鍛えようと決め、Bain & Companyに飛び込みました。

——CVCからコンサルティングファームへの転職です。率直な感想を聞かせてください。

鉄道会社からコンサルに行くのはかなり珍しく、大きなスキルギャップがあって想像以上に大変でした。入社1年目は広島駅で駅員研修をしていて、当時はPCをまともに触ったことすらなかったんです(笑)。CVCに関わるようになってからはExcelやPowerPointも使うようになりましたが、Bainで求められる水準やスピード感はまったく別次元でした。

プロジェクトでは限られた時間のなかで論点を定め、仮説を立て、検証を重ねるプロセスをひたすら繰り返す。そのたびに「これが経営課題を解くということか」と痛感しました。課題には明確な答えがあるとは限らず、納期ギリギリまで粘り抜くのは当たり前。ときには心が折れそうになったこともあります。

ただ同時に、その過程自体がとても刺激的で、楽しかったのも事実です。優秀な仲間と議論を重ね、経営の根幹に挑む中で、自分の思考や仕事の精度が日々鍛えられていくのを実感できました。もどかしさを感じる瞬間も多かったですが、「ここで得られるものは大きい」というワクワク感の方が勝っていたと思います。

振り返れば、Bainで培ったのは「プロとしてやり切る覚悟」と「課題解決を楽しむ姿勢」です。この二つが今の自分の基盤になり、スタートアップ支援の現場でも迷わず走り切れる力につながっています。

——VCに行こうと思われたのはなぜですか?

戦略コンサルタントは、クライアントの期待に応えるために全力を尽くす仕事です。そのやりがいに疑問を感じたわけではありません。ただ、1社ごとに課題を解決するだけでなく、もっと広い視点で社会全体にインパクトを残す仕事に人生を賭けたい——そう思うようになったのが転職の動機です。

同時に、JR西日本でCVCを立ち上げ、スタートアップに投資・支援した経験がとても楽しく、刺激的だったことも大きな理由でした。Bainで大企業の経営課題に向き合った経験を経て、次は「まだ存在しない未来をどう創るか」に挑戦したいと自然に思えたんです。スタートアップへの投資と支援を通じて社会課題を解決し、新しい産業を生み出せるのはVCだからこそできるはずだと、30歳目前という節目のタイミングで、起業家と一緒に未来を形にしていく道に進もうと決めました。

——数ある選択肢のなか、なぜAngel Bridgeを選んだのですか?

ベンチャーキャピタルの仕事は、中長期で腰を据えなければ成果が見えてこない世界です。だからこそ、どのVCに身を置くかは慎重に考えました。実はエージェントはAngel Bridgeの求人を持っていなかったのですが、自分で国内のVCを調べる中で強く興味を持ち、「このVCは採用していますか?」と確認したところ、ちょうど募集していると分かり、受けることにしました。

まさに自分から探し当てたご縁でもあり、「ここなら本気で起業家に向き合える」と確信できた瞬間でした。

——どんな点に興味を惹かれたのでしょう?

規模こそ小さいながらパートナーやメンバーの経歴を見るとプロフェッショナルファーム出身者が多く、「ここでは質の高い議論が日常的に交わされているはずだ」と直感しました。そして何より、「資金を正しく投下し、正しく働かせ、日本発のメガベンチャーを多数生み出す」というミッションが自分の理想と重なったんです。

初回の面談で河西さんと話をしたとき、その直感はすぐに確信に変わりました。目の前の投資先に全力で向き合う姿勢、起業家への本気のコミットメントに触れて、「この人たちとなら未来を一緒に描いていける」と素直に思えたんです。

他にも著名なVCを紹介してもらいましたが、最後はやはり「誰と働くか」「どんなビジョンに賭けるか」が決め手でした。Angel Bridgeは、両方を満たしていると感じられた唯一の場所でしたし、ここでなら自分も本気で力を尽くせると確信しました。

 

Angel BridgeでつかんだVC投資とハンズオン支援の本質

——現在はどんな投資先を担当していますか?

私自身がソーシングから携わった案件と、投資実行段階から担当するようになった案件を含めて、現在約10社を担当しています。領域はSaaS、フィンテック、フードテック、バイオ系ディープテック、エンタメと幅広いですね。担当する投資先が増えるに従ってハンズオン支援の引き出しが自然と増えていきます。一社ごとに異なる経営課題に向き合うなかで、自分の洞察や支援の解像度が少しずつ高まっているのを実感しています。

——CVC時代との違いを感じることはありますか?

CVC時代は、スタートアップ側から声をかけてもらうことが大半で、会社としてもストラテジックリターンに重きを置いていたこともあり、純粋な投資家としての立場を強く意識する場面はあまり多くありませんでした。しかしいまはVCとして、起業家と出資者の双方への責任を負いファイナンシャルリターンを追求する立場です。独立系VCが数多く存在するなかでAngel Bridgeを選んでもらうには、言葉だけではなく具体的な成果を残す必要があります。だからこそ、自分の振る舞いや関わり方を常に意識し、「Angel Bridgeとして最大の価値をどう出すか」を自問自答しながら日々取り組んでいます。

——職場の雰囲気についても教えていただけますか?

Angel Bridgeでは、メンバー全員が毎日フル出社しており、SlackやNotionの活用も盛んです。雑談から真面目な議論まで、コミュニケーションはとても活発です。投資先の状況やリサーチ情報、他社のベストプラクティスなども、自然な流れで日々共有されるので、何気ないやり取りの中から新しい視点や学びを得られることが多いですね。オフィス全体が「常に知見が行き交う場」になっていると感じます。

——戦略コンサルタント時代の経験が活きることはありますか?

コンサル時代に培った「論点を絞って仮説を立て、実行と検証を繰り返す姿勢」は、今の仕事にも直結しています。さらに、点在する情報やアイデアを整理して論点につなげ、経営陣と意思決定の議論に落とし込む力は、スタートアップ支援の現場で特に役立っています。

スタートアップの支援では、答えが最初から決まっていることはほとんどありません。だからこそ、情報を整理して経営陣が意思決定に使える形に落とし込み、そして不確実な中でも仮説を持って「まずはこの一歩を」と背中を押せることが重要になります。これらはまさにBainで磨かれた力であり、今の自分の武器になっています。

——逆にVCだからこそ鍛えられたと感じるスキルは?

スタートアップはスピード感が命です。しかも取れる打ち手には限りがあるなかで、短期間で売上や実績を積み上げていかなければなりません。だからこそ、筋の良い仮説を立てるだけでなく、迷っている時間を最小限にし、高速で仮説検証を回して最適解を探る姿勢が以前よりも強く鍛えられたと思います。

——入社後、転機になった案件を教えてください。

特定の一社というよりも、むしろ日々の積み重ねが自分を形づくってきた感覚があります。特にハンズオン支援では、経営者が抱える悩みや不安を受け止め、ともに考え抜き、次の一歩につながる方向性を探っていく瞬間の連続です。そのプロセスこそが、自分を鍛え、ベンチャーキャピタリストとしての血肉になっていると思います。

「量が質を担保する」とよく言いますが、まさにその通りで、自分も数多くの打席に立ち続けることで、この仕事の本質が少しずつ見えてきました。ひとつひとつの経験が積み重なって、今の自分を形づくっているのだと思います。

——改めて三好さんの投資哲学を教えてください。

スタートアップ経営は不確実性の連続で、絶対的な「正解」は存在しません。だからこそ私が大切にしているのは、経営者の隣に立ち、一緒に悩み、次の一歩をどう踏み出すかを考え抜くことです。もちろん事業戦略や資金調達といった実務的なサポートも全力で行いますが、それ以上に、悩みや迷いを共有しながら一緒に進む伴走者でありたい。起業家が前を向いて次の一歩を踏み出せるような関わり方こそ、私の投資哲学です。

 

変化する社会のなかでも、起業家を支え続ける覚悟

——昨今のVC業界についてはどう見ていますか?

資本市場の変化や生成AIをはじめとする技術の進展によって、従来の前提が次々と覆されています。そんな環境だからこそ、VCに求められるのはただ資金を出す存在としてではなく、起業家と一緒に未来を切り拓く覚悟だと思います。スタートアップは日本経済の成長を牽引する存在です。その伴走者として、私たちAngel Bridgeも変化を受け止め、常に動き続けるVCでありたいと考えています。

——ベンチャーキャピタリストとしての目標を聞かせてください。

日本を代表するようなスタートアップの創出に関わりたいという思いはいまも変わりません。そのうえで目指しているのは、「三好さんに声をかければ一緒に前に進める」と自然に思っていただける存在になることです。華やかな場面だけでなく、日々の泥臭い課題解決を一緒に考え、いつでも相談してもらえる関係性を築いていきたい。単に名前を覚えていただくだけではなく、日々の意思決定や悩みの場面で思い出してもらえる、そんな投資家であり続けることで、スタートアップとともに未来を切り拓いていきたいと思います。

——Angel Bridgeのなかでどんな存在でありたいですか?

Angel Bridgeの「切り込み隊長」でありたいですね。投資先との関わりや新しいテーマに挑むとき、誰よりも先に踏み出して道を切り拓く存在でありたいと思っています。外部とのネットワークを活かして新しい機会を持ち込み、投資先のソーシングや支援でも推進力を発揮する──そんな役割で貢献していきたいです。

——最後にAngel Bridgeに興味をお持ちのみなさんにメッセージをお願いします。

スタートアップ支援は、日本に新しい選択肢を生み出す価値ある挑戦であり、時に厳しい局面に直面することもあります。それでも、起業家と肩を並べて意思決定に伴走し、未来が動き出す瞬間をともに味わえるのは、この仕事ならではの醍醐味です。

「起業家と一緒に未来を描きたい」「メガベンチャーの誕生に立ち会いたい」と思う方には、Angel Bridgeは最高の環境だと思います。私たちは、そんな挑戦を志す仲間を心から歓迎します。

この記事の監修者

Angel Bridge編集部

Angel Bridge編集部

Angel Bridgeは世の中を大きく変革するメガベンチャーを生み出すことを目指して、シード~アーリーステージから投資を行うベンチャーキャピタルです。プロファーム出身者を中心としたチームでの手厚いハンズオン支援に強みがあり、IT/大学発/ディープテックスタートアップへの投資を行います。

私たちは「起業家のサポーター」として、壮大で破壊力のある事業の創造を全力で応援しています。

所属
JVCA : (https://jvca.jp/)
INVESTMENT

Angel Bridge投資の舞台裏#33(株式会社InProc)

2025.10.28

2025年10月に株式会社InProc(以下InProc社)が、シードラウンドで2億円の資金調達を発表しました。Angel Bridgeも本ラウンドにおいて出資しています。

InProc社は、間接材の調達購買活動を最適化するためのAIエージェントと自社のプロフェッショナル人材によるBPO・プロフェッショナルサービスを提供しているスタートアップです。

今回の記事では、Angel BridgeがInProc社に出資した背景について、特に間接材コスト最適化におけるペインとInProc社の強みに焦点を当てて解説します。

  1. 間接材コスト最適化の業務と課題
  2. InProc社の事業概要と強み
  3. 経営陣
  4. おわりに

1. 間接材コスト最適化の業務と課題

まず初めに企業のコスト構造について説明します。企業のコスト構造は、間接材・直接材・人件費に分解することができます。間接材は製品の生産に直接は関わらないものの、企業活動に必要な資材全般を指します。製造備品、消耗品、各部署の間接経費など、多様な費目が存在し、関連する部門も多岐にわたります。一方で直接材は、製品の構成要素となる原材料であり、仕入品、原材料、部品などが含まれます。特徴として、費目の種類が少なく、関連する部門も限定的で、費目あたりの単価が大きい傾向にあります。最後に、人件費は従業員の労働に対して支払われる給与を指します。近年は、少子高齢化と労働人口の減少により人件費の高騰が進んでいます。

続いて、企業のコスト最適化を進める上で、各費用項目の削減余地、及び間接材コスト最適化のペインについて説明します。まず、直接材は費目が少なく大ロットでの取引が通例であるためにコスト最適化のレバーが比較的明確で、一般に買い手の力が強い取引になっています。仕入条件の見直し、サプライヤーの集約、長期契約の締結、内製化や委託先の見直しなど、効果の出やすい打ち手が限られた費目に集中しており、社内の関連部門も限定されます。そのため、自社もしくはコンサルを用いて比較的容易にコスト最適化を進めることができます。人件費は、削減余地が大きい重要な項目であるものの、日本では雇用規制など厳しい法律上の制約があり、短期間の最適化が相対的に難しい領域です。そのため、社内業務のDXによって省人化を進めるなど、中長期的な取り組みを地道に進めることが必要になります。

図1. 企業におけるコスト構造

一方で、企業におけるコスト構造の2~3割を占める間接材コストは、費目が細分化されており、多岐にわたる部門に支出が分散しているため、現状把握自体が難しい領域です。これを背景に、ガバナンスの不十分、コスト削減の不徹底、低い生産性など、様々なペインが存在します。

① ガバナンスの不十分

間接材は、購買主体が各部門に分散し、発注や支払いがブラックボックス化しているため、調達購買担当が部門を跨いで購買ルールの徹底度合いを把握するのが困難です。特に製造業、小売業、商社・卸など、拠点数が多く、多岐にわたる部門を管理する必要がある業態ではペインが顕著に現れます。

② コスト削減の不徹底

間接材は、小口でありながらも多様な費目が存在するため、現状把握や継続的なコスト統制がしづらいと言えます。また、間接材のニーズがある事業部は、コストコントロールが本業ではないため、コスト最適化の意識が低く、専門性やコミットメントが不足している傾向にあります。そのため、各部門において、細部までコスト削減をやり切れず、現状維持のままになっているケースが多いです。

③ 低い生産性

調達購買業務と調達コストの削減は、専門性のある人材が工数を割く必要があり難易度の高い領域です。その中でも、間接材の購買業務は属人的で非効率になる傾向があり、領域に特化した専門性のある人材が不足しています。

図2. 間接材コスト最適化におけるペイン

これらの理由により間接材コストの最適化は、他の費用に比べて難易度が高く、多くの企業では課題を認識しつつも、手が付けづらい領域になっているのが実情です。このような労働集約的であるものの顧客社内のデータが重要であったり、ナレッジを要するなど属人性の高い業務は従来のSaaSで最適化しづらい領域です。しかしデータを与えると学習が進むAIエージェントとの相性は非常に良いと考えており、間接材コストの最適化とAIエージェントを掛け合わせたInProc社のアプローチは有望であると考えています。実際に、海外市場ではGlobality、Zip、Vendrなど、同様のアプローチをする様々なプレイヤーが出現しています。

図3. 海外の主要プレイヤー

 

2. InProc社の事業概要と強み

続いてInProc社の事業概要について説明します。同社は、AIエージェントと自社のプロフェッショナル人材によるBPO(Business Process Outsourcing)、及びプロフェッショナルサービスを掛け合わせることで、支出状況の可視化、施策立案、実行支援、モニタリングまでを一気通貫で代行する間接材コストの最適化に特化したサービスを提供しています。

① AIエージェント

InProc社が提供するサービスの中核であるAIエージェントは、日常的に発生する間接材コストの最適化業務を半自動化します。個社ごとの調達購買データを学習し、汎用的なSaaSでは対応しきれない各社固有の運用に柔軟に適応します。日常的な業務の上流から入り込むAIエージェントを開発することで、業務の基盤を構築するスティッキネスの高いサービスを提供しています。

② BPO

同領域における経験が豊富なプロフェッショナル人材が自社のAIエージェントを活用し、高度なBPOサービスを提供します。従来のコンサルティングのような一過性のプロジェクトに制限されることなく、日常的な業務を継続的に代替することで、社内により深く入り込み、顧客のペインを本質的に解消します。総務系だけでなく、難易度の高い「修繕工事」「IT」「マーケティング」「サプライチェーン」領域にも対応できることも大きな強みの一つです。

③ プロフェッショナルサービス

組織強化、人材教育、業務分析など、より高度で専門的な課題に対して、単発のプロジェクトとしてプロフェッショナルサービスを提供します。AIエージェントとBPOを踏まえて、吉江CEOと中島COOを中心としたプロフェッショナル人材が、現状コンサルティングファームが担っている高度で専門的な課題の解決を目指します。

図4. InProc社の事業概要

単純なコンサルティングモデルではリカーリング性が薄く、市場から高いバリュエーションで評価される難易度は高まります。一方でInProc社は顧客の日常的な業務をカバーするAIエージェントとBPOをベースとし、プロフェッショナル人材がさらに高次元な課題を解決するコンサルティングを提供するモデルであり、高いリカーリング性を実現することができると考えています。また既に高い精度にあるAIエージェントは継続的に顧客の調達購買データを学習することでより精度が高まり、高いスティッキネスも実現できるビジネスモデルであると見ております。

 

3. 経営陣

InProc社に投資するにあたり、領域への知見が深く優れた経営チームの存在が最も重要な後押しになりました。

図5. InProc社の経営陣

吉江CEOは、一橋大学を卒業し、武田薬品工業とアクセンチュアを経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社し、プロジェクトリーダーまで昇進されました。BCGでは、構造改革チームで大規模案件を多数リードし、クライアントと伴走する意思決定スタイルで、調達改革の実行フェーズまで踏み込む支援を推進されていました。BCG時代の上司や部下からはハイパフォーマーとして高い評価を得ておられました。投資家としては戦略ファーム出身起業家が躓く理由としてしばしば挙げられる、「ご本人が優秀でストイックだからこそ組織マネジメントがおざなりになる」リスクについても確認を行いましたが、吉江CEOの場合はチームマネジメントにおいて、BCG社内でモデルケースとして取り上げられるほど信頼を集めておられ、この点も投資に向けて大きな後押しとなりました。その後、2度の調達購買改革プロジェクトで一緒に働いた経験がある中島COOと意気投合し、2025年にInProc社を共同創業されました。調達購買活動へのAI適用の可能性や費用対効果について議論を重ねる中で、現状のプロセス改善の必要性を強く感じるようになり、創業に至ったとのことです。吉江CEOは、調達購買活動最適化に向けた知見が豊富であり、ファウンダーマーケットフィットしている事業領域において、高い推進力を発揮されています。

中島COOは、慶應義塾大学理工学研究科で博士号取得後、PwCに入社し、その後BCGで4年ほど勤務されておりました。キャリアを通して構造改革のプロジェクトを専門的に扱い、コストコントロールにおける全ての標準費目に対して戦略策定から実行まで一連のプロセスを経験されています。なお、吉江CEOとは、各経営陣とのインタビューを通じて、単にBCGで先輩・後輩の関係であっただけでなく、共にプロジェクトで一緒に働く中で相互に強い信頼関係が構築されていることを確認させていただきました。

InProc社では、吉江CEOと中島COOが戦略コンサルティングファームで培われた調達購買活動に対する知見が遺憾なく発揮されており、確固たる競合優位性の基盤を構築しています。

4. おわりに

間接材コストは、企業におけるコスト構造の2~3割を占める重要な費用である一方で、各費目が小口であり多数存在することに加えて、費目ごとに削減手法が異なり専門性が必要であるため、コスト最適化の難易度が高いです。

こういった強いペインが存在してAIと相性の良い領域で、前職でも相性の良かったファウンダーマーケットフィットしている優秀な経営陣が勝負される点に大きく期待しております。AIエージェントは特にスピード感が重要であり、このタイミングで市場に参入されていること、まだシードの会社ではあるもののBPOも提供することでキャッシュを生み出せることも投資家として心強いポイントでした。AIエージェントとBPOで顧客の日常的な業務に入り込み、より高度で専門的な課題に対しても高い専門性を用いたプロフェッショナルサービスで解決できる体制を整えています。今後も国内における間接材コスト最適化の市場を牽引し、大きな成長を遂げるとAngel Bridgeも確信しています。

Angel Bridgeは社会への大きなインパクトを創出すべく、難解な課題に果敢に挑戦していくベンチャーを応援しています。ぜひ、事業戦略の     壁打ちや資金調達のご相談など、お気軽にご連絡ください!

この記事の監修者

Angel Bridge編集部

Angel Bridge編集部

Angel Bridgeは世の中を大きく変革するメガベンチャーを生み出すことを目指して、シード~アーリーステージから投資を行うベンチャーキャピタルです。プロファーム出身者を中心としたチームでの手厚いハンズオン支援に強みがあり、IT/大学発/ディープテックスタートアップへの投資を行います。

私たちは「起業家のサポーター」として、壮大で破壊力のある事業の創造を全力で応援しています。

所属
JVCA : (https://jvca.jp/)

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